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【air】クロスハゲのスレ【kote】vol.001

1 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/09(水) 22:25:47 ID:??? ?2BP(7780)
ここは華スレのアイドルであるクロスハゲさんに全力で萌えるスレです。
異論は認める。

ではよろしく頼む

2 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:26:53 ID:???
乙です

で、誰?

3 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:27:57 ID:???
おはようございました

好きに使っていいんですね

4 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/09(水) 22:28:58 ID:???
>>2
こんにちは。>>3の人がクロスハゲさんです。
よろしくお願いします。

>>3
ここではあなたがルールです。

5 :メロロン ◆MeLLoPrQFI :2008/01/09(水) 22:29:38 ID:??? ?2BP(1420)
迷い込んでしまいました

6 :メロロン ◆MeLLoPrQFI :2008/01/09(水) 22:31:00 ID:??? ?2BP(1420)
こんばんは
AIRを作る名人、メロロンです^^^^

クロスさん、よろしくねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

7 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/09(水) 22:31:16 ID:???
vol.001の
  ↑
ここには100スレ目への想いがこもっとるんやで


8 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:31:47 ID:???
そうか

9 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:32:03 ID:???
なんですかメッセですか

10 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:32:04 ID:???
新着レスがこんなにも・・・

なんかやりたいこといっぱいあるけど軌道に乗るまでは一問一答やりますね

11 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/09(水) 22:33:20 ID:???
華スレというのは「なんでもあり板」の華スレです

12 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/01/09(水) 22:33:27 ID:???
おい、おまえら
どうせならここにもキモハゲの名を刻め

13 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:33:29 ID:???
AIRを作る(笑)

14 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:33:34 ID:qUQlHzrs
またメッセか。いい加減にして欲しいものだ

15 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:35:04 ID:???
>>13
おはようございます。よろしくね(笑)

>>14
確かに。ひどいもんですね

16 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:36:14 ID:???
好きなアニメ5本あげて
エロゲ原作は拒否する

17 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/09(水) 22:36:43 ID:???
バイブルブラックを挙げられなくなってしまった

18 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:39:37 ID:???
>>16
ぱにぽにだっしゅ!
みなみけ
絶望先生
瀬戸の花嫁
ハルヒ

まぁ列挙してみるとアンチが多い王道ばっかりですね

19 :◆KIRA2.LeAo :2008/01/09(水) 22:40:59 ID:???
華スレから誘導されてきますた
これが池沼のすくつかwwwwwwww

20 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:41:42 ID:???
ダレダ!オマエハダレダ!

21 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:42:37 ID:???
>>19
あざまーす 池沼さんようこそ

>>20
ごめんね。存在感薄くてごめんね。
http://tmp7.2ch.net/test/read.cgi/mog2/1198509217/
ここら辺に居ます。

22 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:45:34 ID:???
いやw>>19ww

23 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:46:47 ID:???
デスノで一番好きな回はー

24 :◆KIRA2.LeAo :2008/01/09(水) 22:47:03 ID:???
     ,r- 、,r- 、
   /// | | | l iヾ
  /./ _ノ  ヽ \ヽ、
  /o゚(>) (<)゚o ヽ
r-i./`⌒(●●)⌒´ ヽl-、 
| | |   |r┬-|   .| | ノ らいー
`| |ヽ   `ー'U  .ノ| | |
  /o゚(>) (<)゚o ヽ
r-i./`⌒(●●)⌒´ ヽl-、 
| | |   |r┬-|   .| | ノ らいー
`| |ヽ   `ー'U  .ノ| | |
  /o゚(>) (<)゚o ヽ
r-i./`⌒(●●)⌒´ ヽl-、 
| | |   |r┬-|   .| | ノ らいー
`| |ヽ   `ー'U  .ノ| | |
.| | | |\ `ー-‐'' /| | | |
 ♪  / ⊂  ..) )) ♪
 ( ⊂(( ヽつ  ..〈
    (_)⌒^ヽ__)

25 : ◆sOuK/A5w8g :2008/01/09(水) 22:47:56 ID:???
てすと

26 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:48:35 ID:???
>>23
リュークがカメラ捜ししてるところかな
不遇すぎて面白かった

27 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:48:47 ID:???
創価www

28 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:50:08 ID:???
>>27
自演乙

29 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:53:12 ID:???
迷い込みました

30 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 22:53:12 ID:???
>>28
よく分かったね^^
お前には創価に入信する権利を与えよう

31 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 22:54:26 ID:???
>>29
どうぞごゆるりとしていってください。

32 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/01/09(水) 22:56:12 ID:???
>>31
だが断る!

33 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/01/09(水) 22:58:01 ID:???
>>24ってもしかして

34 :ぺろぺろ ◆i55Q3Bp6j6 :2008/01/09(水) 22:58:28 ID:???
最近、初めて錦松梅を買って食べてみたんだけど ただの「おかか」っていうw
これはぼったくり商売w

35 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/01/09(水) 22:58:44 ID:???
しょこたん?

36 :ぺろぺろ ◆i55Q3Bp6j6 :2008/01/09(水) 23:02:35 ID:???
失速したなwwww

37 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 23:03:34 ID:???
>>34
ほうほう

>>35
嫌いではないです。

>>36
airを作るので仕方がないです。

38 :ぺろぺろ ◆i55Q3Bp6j6 :2008/01/09(水) 23:04:34 ID:???
そうか

39 :ぺろぺろ ◆i55Q3Bp6j6 :2008/01/09(水) 23:08:01 ID:???
クロスは浜崎あゆみについてどう思う?

40 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 23:09:34 ID:???
>>39
好きでも嫌いでもないけど
耳が聞こえなくなったなら療養すべきです

41 :ぺろぺろ ◆i55Q3Bp6j6 :2008/01/09(水) 23:12:36 ID:???
>>39
ほう でもあれは売れなくなったから同情を誘ってるようにしか見えなくね?

ちなみに突発性難聴は
効果的な治療法がないだけで
ちゃんと静養していれば治る可能性の高い病気なんだがw

悲劇のヒロインの演出ワロスwwwww

42 :ぺろぺろ ◆i55Q3Bp6j6 :2008/01/09(水) 23:13:02 ID:???
安価間違えた\(^o^)/
>>40

43 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 23:14:01 ID:???
>>41
いや、売れてるとか売れてないとかも俺には分からんから

おらおら、名無しどももキリキリレスせんかい

44 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 23:14:06 ID:???
浜崎あゆみの歌って


わたしは孤独だ
だれかわたしと一緒にいて
こんなにがんばってるのに
なんで報われないの?


って言ってるだけだろw

45 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 23:14:48 ID:???
障害者を馬鹿にした罰が当たったんだろ

46 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/09(水) 23:16:24 ID:???
>>44
作詞作曲もやっているのでお金が一杯入ってくるのは聞いたことあるね

>>45
そんなこともありましたね。

じゃあみなさんおやすみなさい。

47 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 23:19:06 ID:???
はじめてきました
おやすみなさい

48 :メロロン ◆MeLLoPrQFI :2008/01/09(水) 23:52:11 ID:???
おやすみなさいますね(笑)

49 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/09(水) 23:59:42 ID:???
プ

50 :メロロン ◆MeLLoPrQFI :2008/01/10(木) 06:32:54 ID:???
おはようございますね(笑)

51 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/10(木) 07:33:51 ID:???
メッセのみのコテでいてくれ

52 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/10(木) 18:30:09 ID:???
おかえりなさい

>>47
おはようなさい

>>48
元スレに(・∀・)カエレ!!

>>51
ぬああ ごめんなしあ。

53 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/10(木) 18:41:26 ID:???
ニョマタ

54 :メロロン ◆MeLLoPrQFI :2008/01/10(木) 19:03:09 ID:???
だが断る

55 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/10(木) 19:36:51 ID:???
こんばんはなのですよ

56 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/10(木) 22:08:35 ID:???
>>53
なんでしたっけそれ

>>54
('A`)フエーン

>>55
よろしくなのですよ

57 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/10(木) 22:26:44 ID:???
('ω`)クロスハゲ頑張ってね

58 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/10(木) 23:09:11 ID:???
>>57
おう ありがとう('ω`)b

59 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/11(金) 18:18:21 ID:???
時が止まった

60 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/11(金) 18:26:48 ID:???
('ω`)寒いよクロスハゲ寒いよ

61 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/11(金) 18:59:07 ID:???
何か企画が始まるとか始まらないとか

62 :メロロン ◆MeLLoPrQFI :2008/01/11(金) 19:38:23 ID:???
コンビニでは恵方巻きの予約がハジマタ\(^o^)/

63 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/11(金) 20:39:39 ID:???
>>60
( ・ω・)ぽっかぽかにしてやんよ

>>61
100ぐらいいったらやります。
その時はよろしく。

>>62
俺にくれよ!

64 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/11(金) 21:40:11 ID:???
ビールうめぇ

65 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/11(金) 23:07:21 ID:???
気がついたら落ちてそうでガクブルです。

66 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/11(金) 23:29:23 ID:???
一体何が始まるんです?

67 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/12(土) 15:42:00 ID:???
>>66
書きためた小説を載っけようかと。
きめぇと言われそうだが(゚ε゚)キニシナイ!!

68 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/12(土) 23:06:30 ID:???
(゚ε゚)

69 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/13(日) 11:10:30 ID:???
あざまーす

>>68
(゚ε゚)

70 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/13(日) 20:40:22 ID:???
100までksk

71 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/13(日) 21:16:07 ID:???
え、じゃあおいらもksk

72 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/13(日) 21:42:49 ID:???
過疎化

73 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/13(日) 23:23:31 ID:???
まだまだ!

74 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/13(日) 23:25:09 ID:???
あ、ありがとう(´;ω;`)

75 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/13(日) 23:29:40 ID:???
加速する

76 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/13(日) 23:31:23 ID:???
ワクワクしてきましたよ

77 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/13(日) 23:43:19 ID:???
文才が欲しいです。

78 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/14(月) 00:35:22 ID:???
うわああああああああああ

79 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/14(月) 00:49:31 ID:???
がんばれお

80 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/14(月) 03:03:29 ID:???
80

81 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/14(月) 06:08:27 ID:???
もう80でいいじゃん!

82 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/14(月) 09:19:50 ID:???
一晩で3レス
先が見えた気がしないでもない

83 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/14(月) 20:41:15 ID:???
一日で0レス
なんという・・・なんという

84 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/14(月) 20:55:11 ID:???
新スレおめでとうヽ(´ー`)ノ

85 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/14(月) 20:57:19 ID:???
わーい 支援ありがとうございまーす

86 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/14(月) 20:59:52 ID:???
100までいったら投稿とか言っておきながら、まだあんまり書けてませんね。

100まで行かないうちに落ちそうな悪寒がしたのでそろそろ貼ろうかなと思います。

87 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/14(月) 21:08:52 ID:???
そんなわけで、有志の方々が90まで埋めておいてください。

88 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/14(月) 23:06:57 ID:???
(((((((((((っ・Θ・*)っブーン

89 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/14(月) 23:22:16 ID:???


90 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/14(月) 23:26:17 ID:???
ほれ

91 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 07:40:00 ID:???
キテター
ありがとござまーす

じゃあしばらくしたら貼ります

92 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 17:54:08 ID:???
タイトルが思いつきません。

93 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/15(火) 18:20:51 ID:???
ズコー

94 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 18:47:58 ID:???
レスが来たので貼りますね。

タイトルは「Add"E"」になりそうです。

95 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 18:50:33 ID:???
 そこは何でもない、寒村にそびえ立つバス停。そのバス停の周りには、普段と何ら変わらぬ生活があった。一日に4本しかないバス。学生が乗り過ごさないために、朝二本(あまり間を置かず)、夕二本という形になっている。
 昔、ここには学生が多かったらしい。そのためバス停付近がごった返すこともしばしばだったので、このバス停は一つの部屋みたいな大きさをしている。最近は雨漏りが酷いらしく、銀色のバケツが数個配置されていた。
 ――だから。……だからといっては元も子もないのだが。
「そこの学生君、乗らないのかい?」親切な運転手さんが、バス停の奥に座ってた生徒に向かって話しかける。が、返事はない。
「乗らないんかい?」もう一度、出来るだけバス停に響き渡るような声を出した。やはり、返事はない。「寝てるんかなぁ」それは単なる親切心から来るだったに違いない。
「おーい。そこのねぼすけ学生君……?」一歩足を踏み入れた瞬間、嫌な臭いが鼻をついた。これは何だ? 硫黄臭でもない、アンモニア臭でもない。それは。
「うわ……!」瞬間、山からのっそりと出てきた朝焼けが、その奥の惨劇を照らした。
 そこに座っている生徒は、鞄も持たず、手提げ鞄も、携帯電話も持っていなかった。ただ、怪しくてかなり不釣り合いな銀色の凶器が首――頸動脈をパックリと切り裂いている。そこから溢れた血が惨劇という名のレイトショーを繰り広げていた。

96 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 18:54:57 ID:???
 天井、側壁、床、専用の畳が敷かれたベンチ。血色のペンキは、その全てを血に染めている。
「け……警察、救急車をぉっ!」
 その姿は、死んでいなければ学校生活でよく見られる、昼食時間を楽しもうとしている姿をそのまま残していた。
 死んで濁ってしまった目は、弁当の中身を楽しみにしながらフタを開ける時の好奇さが窺い知れた。手には弁当と箸があり、完全に自分の血で塗りたくられた弁当を、自分の血でコーティングした箸で、今にも食べ始めそう。
 グリーンピースはレッドピースに。卵焼きには血というケチャップを。ご飯は、どこに梅干しがあるか分からないくらいに真っ赤。

 比類無き惨状だった。

97 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 19:00:07 ID:???
――その日の昼
 今回の事件で、村全体が騒然となったことは言うまでもない。警察は無いので隣の町から来ている。
「小ヶ谷さん、聞きましたか? 状況」
「いや? 話してくれるとありがたいな」そう言うと、刑事は慌てて手帳を取り出して話し出した。
「……被害者は苅萱村に住む学生、丹賀山華恋(にかやまけこ)さん。18歳です」首の辺りの動脈がスッパリ切られていたらしく、あちらこちらに血がホースからでた水みたいに吹き出していた。
「学生か。まぁ服装見れば一発だな」この制服は見覚えがある。たしかここから10キロほど先にある公立高校の制服だ。そのセンで調べれば、動機も浮かび上がるだろう。
 煙草に火を点けようと思ったが、この密閉された空間では煙が籠もってしまうので止めた。
「いえ、それがですね……実はこの制服、彼女の通っていた高校のではあるんですが……彼女、今年の三月で卒業してるんです」

98 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 19:37:50 ID:???
「あぁ? 何だそりゃ。大学に行ってしまったら、急に昔が懐かしくなったのか?」
「懐かしいとかでこういう事しますかね……?」
「分かんないぞ、最近のガキは……? ひょんな事で親をぶっ殺しちゃうんだからな」
 それを言うと、若い刑事は幾分気分を害したようだった。お言葉ですが、と付け加えて言う。
「それは、大人でも同じでしょう。愛すべき子供を、――言葉を借りると――ぶっ殺しちゃう事だってあるんですから」
「ははは、まぁどっちもどっちなんだな。おぉ怖い怖い。俺も愚息にぶっ殺されないように気をつけなきゃな」
 二人は『この事件はすぐ解決する、まぁ気楽に行こうぜ』という意味合いを込めて軽く笑った。しかし、事件はやがて暗礁に乗り上げ、完全に迷宮入りする事となる。
 何より、
・目撃者が少ない。というよりも、ほぼゼロに近い。
・村の体質からか、何かを隠蔽しているようであるが、それを突き止めることは不可能。
という二つの大きな壁が立ちはだかっていたのだ。
 時は過ぎてさらに3年後、今度は女子生徒が行方不明になる事件が起きた。バス停に忘れ物を取りに行ったきり、戻ってこなくなってしまったのだそうだ。
 その捜査も入って、上層部の決定により捜査本部を少しだけ拡大された。しかし、所詮は暖簾に腕押しだった。
「俺、この事件が解決できたら死んでもいいな」
「もう定年なんすから、無理しない方が……」
 そんな明るい話題を、暗い事件は軽く吹き飛ばした。

 ――25年後、殺人事件として捜査されていたこの一連の事件は時効となる。

99 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 19:38:50 ID:???
第一章「転生」 続く

100 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 20:14:30 ID:???
つかみはこんな感じです。

感想・悪口雑言・阿諛追従はこちらにどうぞ。

101 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/15(火) 20:17:46 ID:???
いきなり惨劇からスタート!
つかみはバッチリですね。

そして相変わらず文章上手いNe

102 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/15(火) 21:25:29 ID:???
気がついたら100越えしてました。俺乙

103 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/15(火) 23:34:47 ID:???
>そこから溢れた血が惨劇という名のレイトショーを繰り広げていた。

感動した

104 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/15(火) 23:50:17 ID:???
http://www42.atwiki.jp/novelsinmixi/
こちらでまとめやります

105 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/16(水) 21:26:23 ID:???
ありがとうございます。精進します。

106 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/16(水) 21:41:14 ID:???
要望があったら何なりと

107 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/16(水) 23:02:56 ID:???
一応、読者に考える余地を与えるものとなっています。
解答って欲しいもんですかね?

108 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/16(水) 23:21:01 ID:???
どういうスタンスで書くかにもよるでしょうが、
例えば東野圭吾さんの「私が彼を殺した」なんかは作中で犯人が誰かを明らかにはしてなかったりします。
考えればわかるって感じにはなってるはずですけど。

It's up to you !

109 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/16(水) 23:41:49 ID:???
いきなし時効確定ですか乙でした


適度な改行があると読みやすいかもだけど狙ってやってるクサいね

110 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 09:05:52 ID:???
オハヨゴザマース
今日までお休みでーす

>>108
なるほど。明らかにしなくても真相を察する事が出来れば万々歳ですね。

>>109
あ、やっぱ読みにくかったですか^^;
会話文が入る所ではほぼ確実に改行してますね。

111 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 20:56:08 ID:???
今日もまた適当に投下しておきます。

112 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 21:12:36 ID:???
 更にその2年後。苅萱村はかねてからの極度の人口過疎に陥り、予算問題もあったためにやむなく隣町の巣合町と合併。苅萱村の名は忘れ去られ、廃村と化した。
 今そこには、手つかずで放置された心霊スポットのような村が残っているだけである。
「肝試し行かね?」この一言が、全ての始まりだったと思う。
「アホくさ。お前の脳みそは小学11年生なのか?」
 隣の奴がビビリを隠すために必死に話す。俺もそう言いたかったが、矢面に立ってくれるならば敢えて何も言わないのが得策だ。
「無理、拒否権無しだ。明日の晩、20時にバス停にチャリ持って集合な」
 するとそいつは勝手に俺のルーズリーフを抜き出し、全員の名前を筆記した。せっかくだからここで紹介を済ませることにしよう。

113 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 21:16:16 ID:???

 リーダー、徳島航 とくしまわたる。思いついたら即実行の、全員を率いるリーダー格。その言質のしつこさは留まるところを知らない。
 その他部員
 高知悠太……こうちゆうた。俺の事だ。
 神奈川明海……かながわあけみ。俺とは幼なじみで、小学校からずっと一緒だ。周りを気遣うような性格が好み。
 栃木美穂……とちぎみほ。俺たちみたいなバカ集団の中で唯一、「出来る女子」の部類に入る。しかし、そういうことに最近になって『疲れた』らしい。
 香川幸輔……かがわこうすけ。『軍師』の異名を持つクラス最強の策士。愛読書は三国志演義、尊敬する人物は諸葛亮孔明らしい。
 千葉杏子……ちばきょうこ。読書を好み、一日の移動距離が自分の机から図書室までという恐るべき乙女。しかし意外と華奢で、運動もそつなくこなす。』

 書き終えた徳島が、クラス中に響き渡るくらい高らかに宣言した。
「東西連合軍、来晩出陣っ!」
 同時に、5校時始業のチャイムが鳴った。

114 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 21:23:48 ID:???
 夜になって、家族との会話ネタに窮した俺は、なぜか肝試しの事について親に話してみた。すると、両親揃って溜息を吐かれてしまった。
 フヒヒ、ひどい親不孝者だ。
「はぁ……やめときなさいよそんなこと。あそこは昔っから悪い事が起きるって言われてんのよ」
 どうせ、口だけの注意だ。俺だってそんなこと分かってるし、責任は自分でとる。敢えて言わなかったが、分かって貰えたかどうかは不明だ。
「あそこのバス停はやばいぞ。お前が生まれる前の話だけど、あそこで事件あったのは知ってるだろう?」俺は頷く。母親が、「あなた!」と注意するが、父は話し出したら止まらない。
「あの時の状況は酷くてな……父さんの友達があそこの村に住んでて、丁度中高生だった頃にあの事件があったんだ。朝学校に行こうと思ったらバス停前がいつもよりごった返してるから、何があったのかと近づいてみたんだそうだ」俺はゴクリ、と唾を飲む。
「そしたら、死体は既に運び出されてたから見えなかったが、バス停――分かるだろう?あの、屋根もあって倉庫みたいな造りになってる――が、天井から床まで全部血まみれになってたんだと。まさに惨劇だったそうだ」隣で飯を食ってる妹も食べるのを止めて聞き入っている。
「――だから、あそこだけは行かない方がいいぞ。……父さんは、忠告したからな。後は、お前の道徳観次第だぞ、悠太」
 聞き入ってるフリをして実は全く耳に入ってない、とは今更言えなかった。

115 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 21:25:10 ID:???
キャラ編成がどう見てもSOS団です。本当にありがとうございました。

まぁ、誰がどの位置なのかは読者の想像にお任せするとして・・・

116 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/17(木) 21:56:56 ID:???


適度な改行があると読みやすいかもだけど

117 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/17(木) 22:34:14 ID:???
やっぱそうでつか(´・ω・`)
次回から意識してみます。

118 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/17(木) 22:39:12 ID:???
「ばかかお前らこの改行位置は意図的なんだよ文学なんだよ」
くらい言っても良いですよ。

やりたいように表現してください!(`・ω・´)b

119 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/19(土) 00:47:30 ID:???
縦読みきぼんに

120 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/19(土) 19:36:53 ID:???
>>118
こんな所で独自性出していいんでしょうか

>>119
勘弁してください。

121 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/20(日) 19:39:38 ID:???
おはようとおやすみが一緒になるところでした。

122 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/01/20(日) 22:44:06 ID:???
ということはおやすみですか?

123 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/20(日) 23:28:42 ID:???
残念ながらおやすみのようです。

124 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/21(月) 18:36:26 ID:???
おはようございました。

そろそろ更新しますかね。

125 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/21(月) 21:08:47 ID:???
 その夜、夢を見た。
 自分が探偵になって、事件を調査していた。でも、最後に自分は犯人に刺し殺されて、犯人も自殺してしまった、という歯切れが悪い終わり方だった。
 夢を覚えているなんて珍しいと思ったが、そこまで誇れるような夢でもなかったので、俺は学校を出る頃には夢の内容をすっかり忘れていた。
「何寝ぼけてんだよ? 昨日ちゃんと寝たのか?」朝に寝ていたら徳島にたたき起こされた。もはや悪態ではなく溜息が出た。
「いや、なんか変な夢見てさ」打ち明けようとしたら、何か頭の中がモヤモヤする。まだ目が覚めてないらしい。
「ほう、どんな夢だ。俺たちの行く末を示唆するような、高潔極まりない夢か?」
「……内容、どんなんだったか忘れた」
「はぁ?」
 今日の20時だぜ、忘れんなよと言って徳島は席に戻った。そういえば、もう今日だったんだな。
 それがあんな事になるなんて、今の俺は思いもしなかった。

126 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/21(月) 21:14:13 ID:???
――その日の晩
「おう、明海。一緒に行こうぜ」
 家が近いので、俺たちは一緒になることがよくある。
 女子がこんな時間に一人で歩くのはヤバイから、俺が用心棒代わりってワケだ。一緒に歩けて二束三文……じゃない、一石二鳥だ。
「寒いね」夏なのに、俺たちを歓迎するかのように吹く風は寒い。
「寒いねと話しかければ寒いねと……」このフレーズなら俺でも知ってる。「俵万智だな」
「詳しいね、高知クン」
 10年以上、ディケードの付き合いになるのにもかかわらず、明海は俺のことを名前で呼ばない。それが恥じらいなのか、それとも掟と化しているのかは俺の知るところではない。
「こんな知識、俺にとっちゃ前提だぜ」俺はこの『前提』という言葉に陳腐で堅実な響きを感じる。前もってあるということは、それを後ろ盾にして相手に立ち向かうことが出来ると言うことだ。これほど安心出来る言葉は無い。屁理屈っぽいが、俺はそう思っている。
「ふふふ」明海は声を上げずに笑った。
 この笑顔、10年前からずっと変わらない。未来永劫不変のものなんてあるのだろうか。でも、この笑顔は俺の目の前では変わらない。それでいいじゃないか。
 勝手に自己解決したところで、俺は明海の顔をじっと見つめていたことに気付いて、慌てて目をそらした。

127 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/21(月) 21:20:48 ID:???
「わたしの顔になんかついてる?」明海は意味もなくむくれた。こういう怒り方をするときは怒ってない、というのも長年の付き合いの中では前提になっている。
「でもさ、……明海って綺麗になったよな」一呼吸置いたのは、その先へ行っていいのかという逡巡が俺の喉を絡め取ったからだ。
 明海は高校に入ってから、容姿的な意味でだいぶ変わった。来年になればウチの学校で一番可愛いくなるんじゃないか? なんて過度な妄想を抱くほどだ。
「なんとやらは盲目、だね」明海はそう言うと、意味ありげな表情でにこやかに笑った。
それは夜なのに、眩しかった。月と太陽に頼んで、全反射光を明海を照らすために使って欲しい。そう思った。
 その月光に対して、俺は決意した。言うなら今しかない。
「あ、明海さ。その……」明海は、「?」とこちらを向く。「す……」喉まで出かかった途端、運命が見計らったかのように、前方から声が聞こえてきた。
「高知ぃ! 神奈川ぁ! こっちこっちー!」その場所にはもう四人揃っていた。俺たちを足して六人。
「で、どうしたの高知君?」こんな所で言うなんて、公開処刑以外の何者でもない。
「……いや。また後でな」少々辛いが、しばしの辛抱だ。
 そう誓って、俺は泣く泣くお茶を濁した。

128 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/21(月) 21:22:07 ID:???
つづくのだ。

恋愛要素は書いてると完膚無きまでぶち壊したくなる!ふしぎ!

129 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/21(月) 21:36:25 ID:???
おつおつです
まだこれからですね

130 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/22(火) 17:57:22 ID:???
おいらの動かすスレだけあって過疎具合が酷いですね。

小説アニメ声優などキモオタトークもできますよ!

131 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/22(火) 18:57:03 ID:???
夏目漱石の話しようぜ

132 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/22(火) 19:20:29 ID:???
今、「こころ」の勉強してる最中だったりします。

133 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/22(火) 22:22:20 ID:???
今日は-8℃でした。
うーん、死にたい。

134 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/23(水) 00:13:49 ID:???
いつの間にかお気に入りから外れてる謎を解明して下さい
もういくつ見失ったんだろ今までに

135 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/23(水) 00:30:34 ID:???
>>113  俺用安価


乙っした。こっちが主軸っぽいけど、とりあえず登場人物が覚えられません

136 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 08:30:54 ID:???
>>135
男子は名字が四国の県名、女子は名字が関東の県名になっております。

それだけでは厳しいですか。ごめんなさい。

137 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/23(水) 17:45:40 ID:???
話の中でキャラが立ってくれば大丈夫

138 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 18:46:11 ID:???
今夜・・・今夜・・・

139 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:02:23 ID:???
まだ第一章です。あしからず。

140 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:05:06 ID:???
「お前ら仲良いな。さり気なく手も繋いじゃって。うひゃー熱い」
 香川幸輔が皮肉る。今ここにナイフの一本でもあれば間違いなく刺し違えていただろう。
「べ、別にそんなアレじゃねぇよ……」
「アレって何だぁ? 言ってみろよ、ククク」
 やめなよ香川君、と栃木美穂が止める。
「なんだ、お前らもそうなのか」自尊心を幾分傷つけられた俺は目の前の仇敵にとにかく反論したい一心だったに違いない。
「え、いや、んなこたーねーよ」
 その顔には一点の翳りや曇りもなく、むしろ晴々としている。もはや反論する気も失せた。
「徳島特派員長はどうしたんだ? というより、何してるんだ?」
 さっきから地図を見ながら独り言を呟いているのはもはや奇異であるが、俺たちにとっては普通だ。
「いつものだよ、いつもの」徳島はいつもこの状態を『スーパー集中モード』とか言っているが、端から見ればやはりただの危ない独り言である。
 声が止み、徳島は地図から顔を上げた。集中モード終わりの合図だ。
「ルートは確定した。諸君、準備はいいかね?」

「「「「オッケー、ボス!」」」」

 隊員は必ずこの返事を強要される。最初は気恥ずかしいが、俺は三回ぐらいで慣れた。ああ恐ろしや。

141 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:13:31 ID:???
ttp://ranobe.com/up/src/up252741.png
地図、徳島が見ていた所

142 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:16:10 ID:???
「まずだな、この奥に旧家がある。そこを探検した後、廃寺を見学。最後にあのバス停だ。予定時間にして合計60分強。別に奥に行って変なお札を取ってこいとか、そんな変なことは言わない。見るだけで納涼だからな」
「各員オー・ケーコール! 高知!」ここでのオーケーは『承知した』みたいな意味で取って貰って構わない。
「オー・ケーだ」『オッケー』と言うとやり直しになる。本人曰く『こだわり』らしい。
「神奈川!」
「オー・ケーよ」
「栃木!」
「オー・ケー」
「香川!」
「オー・ケーっす」
「千葉!」
「……オー・ケー」
「よぉし、東西連合軍、俺を先頭にして続けぇ!」
 よくこのテンションで今まで生きてきたな。そろそろ、頭からマグマを飛び散らしながら大噴火して死ぬんじゃないか。

143 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:19:34 ID:???
 道なりに歩いて(ほとんど獣道だったが)、俺たちはかやぶき屋根の大家にたどり着いた。
「バス停の首切り事件の二年後、ここに住んでいた女子生徒が行方不明になっている。女生徒は25年経った今でも行方不明。発覚から既に7年は経ってるから、一応死亡扱いにはなってるかな」
「25年前って。俺たち生まれてもいないんだな」香川が感嘆が入り交じった溜息を吐く。
「千葉、なんか知ってること無いのか?」

「知らないことが無い、とは言えない」
 動かざる山の如き少女が、ようやく喋った。黒髪の腰まで長い、遠くを見ているかのようなその表情は、色々な小説に出てくる『無口系美女』を彷彿とさせる。
「……調べようと思ったことも無いから。調べればなんかぽつぽつと出てくるかも」
 すると、徳島がちょっと付け加えさせてくれと言った。
「実はだな。一連の事件は報道管制が敷かれていたことが俺の調べで明らかになっている。だから、巣合警察署に行けば何かあると思うんだ。と言うより、そこ以外に手がかりが無いんだ」

144 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:22:49 ID:???
「しかし、この東西連合軍に警察にツテがある人間は一人もいない」千葉杏子による死刑宣告だった。手の出しようがない、諦めろ。そう言いたいようだ。
「だから何だってんだ? ダメなら、他の方法を考えようぜ」俺は、ある意味での確信を込めて言った。
「じゃあ、言ってみろよ。その他の方法」案の定、香川が食って掛かってきた。
「まだ、考えていない」
 でも、お前が持つ言葉の刃は、俺を絡め取ることは絶対出来ない。
「何だよ、考えもしねーでモノを言うのは止めろよ!」
 やめなよ香川君、と栃木が制する。
「急いては事をし損じるとはよく言ったもんだ。今、俺たちは何も持っていない。雲を掴むような状況、言うなれば砂漠のど真ん中だ。何も出来ないのは、お前も一緒だ」ぐっ、と香川が詰まった。
「各員の雑談は済んだかね?」徳島がイライラしながら言った。
「今、終わった。行こう」

145 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/23(水) 22:24:18 ID:???
次回から肝試し開始です。

146 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/24(木) 00:31:03 ID:???
オー・ツー!

147 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/24(木) 22:28:23 ID:???
週末は更新できそうにないので、次回は来週以降です。

それまで復習を忘れずにー。

148 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/25(金) 02:21:07 ID:???
復習します乙

149 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/26(土) 22:20:10 ID:???



           うついときらのざだんかい(第一回)
          文字起こし、企画、尻ぬぐい:クロスハゲ




150 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/26(土) 22:22:23 ID:???
鬱井(以下*):よろしくおねがいしまーす。

KIRA(以下K):わーい、ぱちぱちぱち。

*:で、何を話せというのか。

K:いや、俺はお前をアテにしてるから。お前主導で頼む

*:・・・・・・

K:・・・・・・

(ここでカンペ入る)

*:え、えーとですね。今回はクロスハゲ企画の「Add"E"」について語ろう!というモノですね。

K:出てないのに?

*:シッ!・・・で、そのAdd"E"、まだ始まったばかりなんですけどね。KIRAさんはどう?

K:(焦りと怒りが混じったような顔で)ああ、ええ。まだ始まったばかりですね。

151 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/26(土) 22:25:10 ID:???
*:序盤の凄惨なシーンは凄かったね。

K:なんか、無駄にグロくした感じはあるけどね。

*:それがどう繋がるか楽しみですね。

(またカンペ入る)

*:そして、舞台は25年後に移るわけです。

K:こいつらが主人公になるんだな。

*:このメンツってさ、一人減らしたらどっかの団みたいだよね。

(カンペさらに入る)

K:えー・・・えーと。で、この主人公は片思いしてるんですね。

*:そうですね。実ることを祈るばかりですね。

K:で、この登場人物は名字にへんなこだわりがあるようで。

*:はい。えー・・・

(カンペを見る)

*:・・・男子の名前は四国、女子の名前は関東の県名がとられているようです。

K:だから、東西連合軍なんだな。

152 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/26(土) 22:29:13 ID:???
*:茨城は?

K:は?

*:いや、茨城も埼玉も群馬も関東だろ。なんだこの作者、

(こちらを指差す)

*:お前、そこ動くなよ。
(ポケットに手を突っこむ。なんかシャカシャカ音がする)

K:あぁっ、ちょっ、タンマ、ストップ!アナリスクは無理!死ぬから!クロス死ぬから!

*:オーケー、じゃあお前で我慢してやる。やらないか。


クロスハゲ:そ、それではまた次回〜。

153 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/26(土) 22:29:50 ID:???
キーワード「F」

154 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/26(土) 22:30:53 ID:???
*はいくらなんでも卑怯過ぎるwwwwwww
声出してワロタ

155 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/26(土) 22:36:30 ID:???
オチが弱いというより酷いですね。

156 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/27(日) 02:58:53 ID:???
いや、良い解説だった
もうあのヒト代名詞ですね尻が

157 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/28(月) 17:35:03 ID:???
おそようございました
「QED 諏訪の神霊」を買いました。

まだ読んでません。

158 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/28(月) 19:48:44 ID:???
独壇場っていいもんですね。

じゃあそろそろ貼ります。

159 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/28(月) 19:51:42 ID:???
「よし、それじゃあレッツオープン!」そう言うと、扉に向かって跳び蹴りを加えた。バリバリ、という嫌な音がしてドアが倒れた。
 徳島航はマルチプレイヤーの一面も持つ。やっぱり変な奴は俺みたいな一般人かぶれとは何か違うらしい。
 中は真っ暗。そりゃあ、夜だし周りも真っ暗なんだから当たり前なんだが。
「ほら、これでどうだ」さっきまで点けていた懐中電灯で前を照らした。
「うわぁ……何も無いナリ」不気味であることは依然として変わりないものの、ただの旧家だ。真ん中に囲炉裏があるのも正にそのまんま。
「で、何を調べろと?」香川が俺たちの疑問を代弁してくれた。ああ、重苦しい。
「いや……まさかここまで何もないとは、俺も予想ガイだったぜ……」
 どうやら、徳島の精一杯のギャグだったらしい。どこのCMだ、バカ野郎。
「とりあえず、中に入ってみるか」
 そう言って俺は靴も脱がずに床に足を乗せた。

160 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/28(月) 19:58:46 ID:???
「高知君、もしかしたら腐」
 神奈川の注意が耳に入ったとき、俺の片足は完全に地面に体重を預けていた。
 メキメキメキッ! と音がして、そこでようやく俺の身体は何も掴んでいない事を知った。その次に天井が見えて、かつて無い恐怖と共に血の気が引く。
 漆黒の廃村に響き渡る大音と共に、俺は床を破壊するという悪行を成し遂げてしまった。
 ゲームなら間違いなく勝利だが、現実なら逮捕されかねない。
「高知君!」「高知!」みんなの叫び声が、俺の耳から脳へとすーっと通り抜けた。
 死ぬのかな、とかバカみたいな事を考えてしまうのも、この状況では仕方がないだろう。

161 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/28(月) 20:00:03 ID:???
今日は区切りを付けるためにここで終わりです。

162 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/28(月) 20:02:56 ID:???
お、お茶菓子用意したのに

乙です
徳島君をいただくことにします

163 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/29(火) 00:03:50 ID:???
>>97
けこさん死んだのいつ?

164 : ◆K.tai/y5Gg :2008/01/29(火) 00:04:10 ID:???
いつ? ってか何月?
あんま関係無いだろけどさ

165 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 18:03:22 ID:???
>>163
25年前の初夏です。

・・・25年前にケータイ持ってたら今は何年なんだと。

166 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 20:15:47 ID:???
ちなみに、「華恋」で「けこ」と読むのは、子供のDQNネームのサイトから拝借しました。
本当に居るのかな・・・

167 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:33:38 ID:???
「ああ……大丈夫だ神奈川、今入るとお前もこうなるぞ」
 床は思ったより高く、大した怪我もしていないように見えた。頭も痛くないし、まぁ大丈夫だろう。俺は自力でなんとか身体を起こした。
「危ないな、この床下は尖った石が多い。頭の打ち所が悪かったら死んでたぞ」
「なーんにも、無いぜ。行こう」
 俺の負傷もあってか、もはや全員がここを調べる雰囲気ではなかった。俺に促されるように、全員が外に出る。
「ドア、直さなくていいのか?」
「構わん。どうせ誰も入らないだろ」
 なるほどそれもそうか、と言うことで全員が次の場所に移動しだした。
「次はあそこにある廃寺だ。……あれ?」なぜそこに疑問符が来るのだろう。
「どうしたのよ?」
 栃木が聞いたが、なぜかこういう事に関してはズバリ言うはずの徳島がお茶を濁した。
「いや……何でもない。気のせいか」
 視線を全く動かしていない様子からして、周りに変な人が居た、とかいうことではないらしい。何だったんだろう?

168 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:35:25 ID:???
 廃寺の周りにはまだレンガの壁が残っていた。
「おや。どうするよ、コレ?」
 香川が指差した先には、『キケン ハイルナ』と赤字で描かれた木の看板が立っていた。黙って抜けようとすると、突如俺の目の前を何かが走り抜けた。徳島だった。
「アチョーッ!」
 ベキッ、という音と共にその看板が根本から吹き飛んだ。またしても、徳島のトンデモ技だった。……今時『アチョーッ』はねーだろ。
「さあ、入るぞ」
 本人にすれば、自分で道理が作れればそれでいいらしい。
「オーケー、ボス……」
 境内は銀杏の木があって、そこから特有の臭いが出ていた。それに鼻をつまめば、怖い風景のできあがり。ビュウ、と風が吹けば恐ろしさが三倍増し。

169 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:38:00 ID:???
「ここの住職の娘さんも、行方不明になってる」
「あれ……俺、そこまでは知らないな」
 香川が言った。確かに、俺が聞いた行方不明者は一人だけのはずだ。
「そりゃまぁ、完全に報道管制が敷かれてたからな。村の住民ですら、半数は知らなかったらしい」
 その言葉に、俺はふと疑問を感じる。何だろう、この感覚は?
「ここも、何もないんじゃない?」
 境内にはつきものの狛犬ですら、時の流れと共に風化していた。
「もしかして、ここって他の場所に移されたのか?」
「そうだ。今は巣合町の近くに御嵩山があるだろう。そこの麓にある御嵩神社と統合された。あそこは土地が広い上に、この村の墓地は元々御嵩神社にあるからな」
「そうなんだ……」
 俺も思わずうなるほど、徳島の下準備は用意周到だった。
「さて……、何も無さそうだけど見ていくか?」
 釣り鐘を脇目に、俺たちは真っ直ぐ進んだ。そこには数段しかない階段と、大きな扉――お堂への入り口だろう――があった。

170 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:41:56 ID:???
「この、大きな擦った跡は何かな?」
 神奈川の質問に、杏子が答える。
「賽銭箱の跡」
 ふーん、と神奈川が頷いたので俺はふと上を見た。三つほど、何かをぶら下げるための箇所がある。
「あそこに、鳴らす鐘が付いてたのか」
 俺が指差したので、全員が見上げた。
「正確には、鈴鐘だがな。……これを鳴らす理由には諸説あるが、邪気を払ったり、神に注意を向けさせたりするためにあると言われている」へー、と俺が言う。
「ここでは二礼二拍手一礼でいいけど、出雲大社などでは四礼をする」
 多分、こんな事を知らずに死んでいく人達も居るんだろうな。
「チッ。今日は勉強会じゃねえ、肝試しをしに来たんだっつーの」
 ムダ知識を言い終えてから、徳島がぼやいた。自分で勝手に喋ったクセに。
 そして俺は、ふと後ろを見やる。別に人が居た気がしたとか、そういう事ではなかったんだが。

171 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:44:53 ID:???
「どうしたの高知君?」
「いや、あれ……」
 境内の隅に、嫌に似つかわしくない井戸があった。
「こんな境内に井戸なんて……」
「いや、でも古いんだから井戸なんて普通だろ?」香川がそう言ったのを、徳島が制した。
「いやちょっと待て、確かにおかしい。ここの近くには昔から川の上流があって、水道がちゃんと引かれているはずだ」
 その水道を探すのは、ちょっと億劫かもしれない。
 俺たちは気がついたらその井戸を取り囲んでいた。木でフタがされているが、それも半分以上朽ち果てている。
「井戸は、異界への通り道。小野篁も井戸を通って地獄に通ったとされている」
 そこには、無駄におどろおどろしい文字が書かれた看板があった。

『懲罰ノ井戸 ソノ心清キモノガ飲ム水ハ清純ニナリ ソノ心濁リシモノガ飲ム水ハソノ罪ニ相応シキ毒ト流シタ血ガ混ジル』

172 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:45:55 ID:???
終わりです。

貼ろうとしたら、「ああ……大丈夫だ神奈川〜」のくだりで「あぁ・・・次はションベンだ」を思い出してしまった。

173 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/29(火) 22:46:52 ID:???


クロスって感じだなぁ

174 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:48:16 ID:???
そ、それはどういう意味合いで・・・?(´Д`;)

175 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/01/29(火) 22:49:25 ID:???
これから少しずつ主張していこうと思うのですが、徳島君は誰にも渡しません

176 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/01/29(火) 22:49:39 ID:???
賑やかな感じがいいね

177 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:49:42 ID:???
井戸の説明文がなんかおかしいなぁ。

清純ニナリ→澄ミ渡リ

がいいかなぁ。

178 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:57:36 ID:???
杏子が長門みたいなもんなんで、それ意外なら何もってってもいいです。

179 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/29(火) 22:58:28 ID:???
意外→以外

じゃあおやすみなさい。

180 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/01/31(木) 22:42:49 ID:???
小説以外のことも書かなきゃな。

そろそろ2月ですね。
いや、ただそれだけなんですけど。

181 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 22:09:38 ID:???
これからの見通し
第一章 今月中旬までには完結。
第二章 三月中には完結?
第三章・エピローグ 尺がまだ分からないので、不明瞭。鋭意制作中。

解答編「Add"E"sidE:answEr 『noisE:zEro』」(仮)鋭意制作中。

182 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/02/01(金) 22:14:23 ID:???
あ、あれ?

183 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 22:24:01 ID:???
「何だ、これ……? こんなミケランジェロもビックリの井戸が、なんでこんな所に?」
「私も、こんなのがあるなんて知らなかった」
 杏子もビックリしている。表情に表れないのが少々残念であるが。
「しかし、ここにも手がかりは無いな。新発見はあったが」
 本気になって探してねーだろと思ったが、そんなことを言ったら俺が一人で寺の中まで探索に行く羽目になりそうだったのでやめた。
「……やっぱり、バス停に行かないと始まらない、か」
 徳島が勝手に頷いている。それなら、最初からさっさと行けよ。
「いや、だってなぁ。これが最短コースなんだよ……」最短最短って、そんなに最短がいいんか。言いながら俺たちは最後の場所、バス停に着こうとしていた。
「なぁ……」何? と神奈川が聞く。
「いや……何でもない」
「お前、大丈夫かよ?取り憑かれたんじゃねーか?」
 冗談、と俺は一笑に付した。

184 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 22:26:00 ID:???
 ――バス停
「うわ、ひっでぇなコレ」
 バス停は元の姿を残していたが、如何せん保存状態は悪い。
 心霊スポットによくある、外側には無数のスプレーによる落書きだった。
 その周囲には花火の残りカスなどが散乱している。これでは肝試しなんてとんでもない。
「掃除するか?」
 何気なく言ってみたら、案の定徳島に猛反論された。
「アホか。俺たちは肝試しに来たんだ、掃除は業者にやらせろ」
 しかし、ここにだって一つの懸念がある。
「だがな、現場はもう片付けられてるんじゃないか?」
「そこについては心配ない。中を見ろ」
 中を見て、俺たちはギョッとした。キャッ、と女子が一歩後ずさる。
「何だよコレ……? おかしいだろ?」
 現場は、死体こそ無いもののほとんどそのままの惨状を残していた。
 天井や床に付いた血は殺された女生徒の怨念を残すかの如く、ほとんど拭き取られていなかった。座るための畳は、流石に取り替えられていたが。
「実は、そうじゃないんだな」そう言って、徳島は突然座席の畳をひっくり返した。

185 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 22:29:03 ID:???
「うわっ……一体、ここの自治体は何をしてたんだよ……」
 そのひっくり返された畳の裏には、どす黒く変色した血らしきものがべっとりと付いていた。
 つまり、畳も取り替えられることなく、ただ裏返して取り繕っただけだったのだ。
「な? ちなみに、この畳を全てひっくり返し、全ての畳を事件当時と同じように組み合わせると、祟りがあると言われている」
 言いながら徳島は次々に畳をひっくり返し、血痕を見ながらパズルに取り組みだしている。その鬼気迫る様子に他のメンバーもドン引きだ。
「徳島……お前なんかおかしくね?」香川が呟いた。
「残念だが、俺は一番この中でお化けなどの非科学的な分野に対して強いと自負している」
 目の前で血飛沫のジグソーパズルが完成していく。
「これで、最後だ」
 その畳だけ、唯一血痕が付いていなかった。つまり、女生徒の座っていた畳、ということだ。
 そしてそれは風化して変形したのか、それとも祟りに抵抗しているからなのか、なかなか填らなかった。その事に業を煮やした徳島は、力を入れて無理矢理はめ込んだ。

186 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 22:31:28 ID:???
 途端に、気持ち悪い風がバス停の中に吹き込んだ。生暖かかったかどうかは、一瞬のことなので覚えていないが、背筋がもの凄く寒くなったことを覚えている。
「徳島っ!」俺は即座に判断して、中心に突っ立っている徳島のシャツの襟首の辺りを掴んで思いっきり引っ張り、入り口へ引き戻した。
「ど、どうした高知。そんなに慌てて」俺は振り返った。自分の予感を確かめるために、だ。
 同時に、みんな共通のものだったことがすぐ分かった。明海も、美穂も、幸輔も、みんな青ざめた表情をしていたからだ。
 平素から無表情の千葉杏子ですら、左のこめかみのあたりを汗がすうっと滴り落ちていた。
 空を見た。月明かりは全くなく、街灯も一つしかない。漆黒の闇がこの場所を包んでいた。
『お前達は誰だ』
 突如、俺に聞き覚えのない声がした。――徳島も今になって、事態がただならぬ事になっていることにようやく気付いた。

187 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 22:33:17 ID:???
次回へ続きます。


・・・ひぐらし並の猜疑心が必要かもしらんね。

188 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/01(金) 23:23:49 ID:???
読み返したら酷い酷い。

あなたはこの物語を拒否する権利がありますって、但し書きを加えたくなる。

189 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/02/02(土) 05:07:07 ID:???
徳島君勝利エンドを願いながら乙

190 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/02(土) 21:06:50 ID:???
 俺がさっきまで誰も居ないことを確認していた、唯一血の付いていなかった畳の上に、人が座っていた。
 その人は、人と言うにはあまりにも顔が青白く、見た人を(嫌な意味で)惹きつける妖艶さを持ち合わせていた。
 何もないところから物質は現れないと、化学で習った。物質が現れないなら人間だって現れないに決まっている。それなのに。
 かつてない、異常事態。未知との遭遇だった。
 俺だって、目の前で何が起きているのかにわかには信じられなかった。そうだろう? テレビでやってるような事が今実際、目の前で起きているんだから。
『お前達も、興味本位でここに立ち寄ってきたのか』
 その物言いは、奥ゆかしさとそれと真逆の恐ろしさを持ち合わせていた。
 嘘を言ったら最後、八つ裂きにされて翌日には街の真ん中に放置されていたりしそうだ。
「いや、違う。しかし、僕らを祟り殺す前にぜひとも聞かせて貰いたい。あなたは、ここで殺された女生徒なのか」
 徳島は、こういうときに心強い。昔から俺はそれを知っていた。

191 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/02(土) 21:08:41 ID:???
『そうだったら、どうする?』
「だったら、あなたが丹賀山華恋さんであることを前提にして、勝手に話します。俺は、この事件を解決したいと思ってます」
 徳島の発言に、徳島以外のメンバー全員が驚いた。そんな事を聞いていないのは当然のことだ。たしか、肝試しじゃなかったっけ。
『……今までの言い訳の中で、そんなおかしい事を言われたのは初めて』
 被害者少女の霊は、いきなり垢抜けた年相応の声を出した。
「そうです。……ある意味では、助けに来たとも言えます。しかしその様子からして、殺した人の事は一切覚えていないんですね?」
『もちろん。できたら、とっくに呪い殺してるわ』
 ふーむ、と徳島が唸る。完全に俺たちは置いてけぼりだった。

192 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/02(土) 21:10:26 ID:???
「じゃあせめて、力を貸せませんか。僕たちは、この警察ですら明らかに出来なかった事実に立ち向かうのには余りにも非力です。ここから動けることは出来なくとも、力を貸すことは出来ませんか?」
 その問いに、被害者少女は黙り込んだ。怒っているのか悩んでいるのか、非常に掴みづらい。
「徳島、大丈夫なのか?」香川がこっそりと俺に聞いてきた。
「分からん……あいつのリーダーシップの見せ所だからな、俺には想像も付かん」
 でも、その背中はとても頼もしく見える。出会った頃は『何だこいつ』と敬遠していたが、今はすっかりこんな腐れ縁になっている。
『私に出来ることはあまりありません。死んでしまってからもうかなりの年月が経ってしまった。その中で私は段々と人間に、物事に干渉出来なくなってしまった……』
 つまり、どうにもならなくなってしまったということだった。
「で、力を貸していただけるんですね?」
 徳島は念を押した。

193 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/02(土) 21:12:20 ID:???
『でも……あなた達の中にはそんな……』突如、彼女は言葉を切った。
 何かを考えているようなその顔は、心なしか俺を見つめているような気がした。
『――この中の一人だけですが、その人に、私の思いを預けます。私の無念を晴らしていただける事を条件に、"貸し"ます。ダメだったときはその一人が……』
 つまり、俺たちの中の『誰か』の死を持って払い戻す、と。
 何が起きるんだと戦々恐々していた直後、彼女が座っている位置から外に向かって突風が吹き付けた。
 為す術もなく俺たちは吹き飛ばされ、意識を失った。

194 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/02(土) 21:13:27 ID:???
トンデモ展開を受け入れてこその読者。

ということで、続きます。

195 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/02/03(日) 06:17:03 ID:???
まだまだ全然アリな展開
おつでs

196 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/03(日) 19:11:50 ID:???
日曜は基本的にうpしません。(読んでない人が追いつかなくなるかもしれないので)

次回は明日以降になります。
座談会第二回もそのうちにうpします。

かしこ

197 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/03(日) 19:23:35 ID:???
福は内、鬼は外

節分のAAが無くて泣いた。

198 : ◆K.tai/y5Gg :2008/02/04(月) 00:17:35 ID:???
>>140
徳島君ボッスンじゃねえか

199 : ◆K.tai/y5Gg :2008/02/04(月) 00:22:17 ID:???
>>144
>「各員の雑談は済んだかね?」徳島がイライラしながら言った。
>「今、終わった。行こう」


ここいいな
台詞はもっと若々しくしてもいいかも知んないですね。クロスっぺえなぁ

200 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/04(月) 00:38:18 ID:???
  ∧_∧
 ( ・ω・)ノ>゚+。:゚
 C□ / ゚。:゚:。+゚
 /  )
(ノ ̄∪

201 : ◆K.tai/y5Gg :2008/02/04(月) 01:20:29 ID:???
既出分の設定の簡易まとめみたいなん欲しいな。新規さんもとっつきやすくなるだろし
色々複雑そうだ

ここまでか。徳島君に人気集中しそうですね

202 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:06:17 ID:???
>>198
/(^o^)\ナンテコッタイ
それがあったか・・・

>>199
うーんとですね、それは徳島の性格をとあるラノベのキャラと同じにしてるから、そういう口調になりがちになっちゃいますね。
ちなみにそれは「イ」から始まるやつです。

>>200
鬼は外・・・あれ?

>>201
そうですねぇ。第二章はいる前にちょこっとやっておきましょうか。

203 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:15:06 ID:???
 目を覚ましたら、俺は自分の家の、自分の部屋のベッドの上に居た。
 記憶があやふやになっている。それなのにあの意味不明な出来事については意識がはっきりしていて、記憶も鮮明だ。
 寝ぼけた頭を揺さぶるようにして身体を起こし、朝食を摂る。そのついでにカレンダーを覗いたところ、ある重要な事実が明らかになった。
 今日はテストだった。
「あ? 俺は知ってたぞ。お前も当然知ってると思ってた」
 香川にこう言われ、その他の女子にも同じような事を言われて、俺は朝からかなり凹んだ。
 徳島リーダーに至っては、「テストというものに対して勉強をするということの意義を問いたい」と言い出す始末だった。
 こいつの今までの人生で取ったテストの点数を俺のと比べたら、一体何倍の差が付くだろうか、今度聞いてみたい。
 とは言え、このままでは埋め合わせをするための学習時間が無くなるということで、本人には悪いが途中でこうして逃げ帰ってきたのだった。

204 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:19:45 ID:???
 テストは二時間目だった。
 一校時は厳しい先生のために勉強すら出来なかった。早い話が諦めろということらしい。神様の罰はこうも厳しいのか、肝試しなんか行くんじゃなかった、などと嘆いても後の祭り。
 ……というか、俺だけが罰くらって他の奴等がお咎め無しなのはどういう事だろう。
 そうこう悩んでいた内に、「始め」という先生の無情なコールによって俺の死刑(50分間)が始まった。
『……分かるところは書けたが、如何せん分からない部分が多すぎる……』やはりというか何というか。
 俺の解答用紙は6割が白紙、もしくはそれに準ずる滅茶苦茶な解答が描かれていた。
 もうちょっと時間をかければ分かりそうなのが3割。残り三割は応用問題みたいなもんで、これは俺でもどうしようもないかもしれない。
 せめて、時が止まればギリギリ赤点は免れるのに……ええい、チャイムが鳴るまで精一杯頑張るしかないっ!
 その後10分ぐらいしてから、俺はようやく解答への道程を思い出した。しかし残りは5分と無かったはず。とりあえずギリギリまで書き残して部分点を貰うとしようか。
 鉛筆を必死に動かしている間は時間の感覚など無かった。物事に集中すると時間の流れが速いとはこの事だ。
 ……辛うじて終わった。無事に書き終えることが出来たのだ。これなら満点は無理だとしても、多分赤点は免れるだろう。俺は一抹の嬉しさと共に顔を上げた。
 だが、不思議なことはその次に起こった。

205 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:22:20 ID:???
 腕時計は、正確な時刻を刻んでいるはず。だがその時計は、予定終了時刻の50分から4分ほど過ぎていたのだ。
 チャイムが鳴ったのは全く聞こえないし、他の奴等もざわつく様子がない。
 何があったんだ? そう思って顔を上げると、そこには、説明しがたい驚愕の光景が広がっていた。
 「高地君!」途端に背後から声がして、俺は更に驚いた。
 それは神奈川明海だった。明海は俺と同じクラスだったので、この異常事態にいち早く気付いたのだろう。いやちょっと待て。それでは何かがおかしい。
 ……肝心の異常事態とは、俺と神奈川の周辺以外の全ての物体が停止している、この状況の事だった。
 俺の腕時計はちゃんと動いているが、黒板の上に掛けられている時計は10時42分を指したまま全く動くことがない。壊れているのだろうか、などとそんな陳腐な疑問は浮かばなかった。
「ねぇ、どういう事なのよ、これ?」
 俺の前の席、隣の席のやつらは解答用紙と必死に格闘してたり、暇だからペン回ししてたり、突っ伏して死んだように寝てたりと様々だったが、その誰しもがピクリとも動いていなかった。
 回されているペンでさえも、全く落ちることなく静止している。
 「分からん……とりあえず、徳島だ」徳島もこのクラスなのだが、さっきから出てこない。まさか、徳島もこの事態に巻き込まれて……!?

206 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:23:55 ID:???
「シッ! 高地君、徳島君なら居るよ」
 徳島は、のんきに胸を上下させながら寝ていた。動いているということは、徳島も例外だ。つまりそこから分かるのは……。
「――隣のクラスだ。千葉と栃木と香川を……」
 明海は頷くと、隣の教室に駆けだした。付いていこうと思ったが、俺にはやることがあるので敢えて留まった。
 その間俺は、徳島をどう起こすかを考えた。背中を思いっきり叩いたら、死ぬまで恨まれそうだ。しかし、当たり障りの無い方法で起こしても面白くはない。だからここは穏便且つ強烈な……
「痛ぇ!」俺は両手を組み合わせるタイプのデコピンをやってみた。親指と人差し指でやる簡素なタイプと比べると威力が段違いだ。それが、この叫び声で明らかになっただろう。

207 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:26:11 ID:???
「あ、起きた」テスト用紙から顔を上げて、第一番に俺の顔を見る。謙虚に言わせて貰うと、可哀想なことこの上ない。
「何だ? テストは終わったのか?」終わっていないさ、状況を見てくれ、と俺は言う。
「……時間が、止まっただぁ!?」そんな非科学的なことは一切信じなさそうな、理系脳が服を着て歩いてるような奴だ。
 そんな奴がこの状況を見たらどうなるだろうか、即死するんじゃないか、などと俺は邪推していた。
 しかしどうやらそんな様子はなく、寧ろ興味深そうにしていた。全く動かないクラスの顔やら胸やら鉛筆やら教卓やらを弄っていた。
「高地君!」背後から神奈川がやってきた。
 ちゃんと動いている千葉、香川、栃木を連れて。

208 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:26:46 ID:???
第一章「転生」 了

第二章「散骨」に続きます。

209 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/04(月) 21:32:28 ID:???
ザ・ワ(ry

キャラ設定(既出分)と座談会第二回を書いてきますね。

210 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:09:29 ID:???



                うついときらのざだんかい 第二回

              企画・編集・謝罪担当・尻ぬぐい:クロスハゲ




211 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:10:06 ID:???

*:と、言うことで始まりました第二回!

K:わーい、ぱちぱちぱちぱち。

*:今日はゲストが来ております!

ニコフ(以下裸):こんばんわ。

K:ニコフだ!

*:(いいなー、俺達は続け撮りだからもう疲れたよニコラッシュ……)

K:鬱井、何か言いたげだな?

*:いや、別に……

212 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:11:11 ID:???
[第一章が終わって]

*:第一章が終わりましたね。いかがでしたかお二人とも。

K:なんかもう……最後の展開がもの凄いよね。

裸:すごく……DIO様です……

*:まぁねぇ。……何にせよこの事態が、彼らに何をもたらすのか、楽しみですよねぇ。

K:(……上手くまとめやがった!)

213 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:12:52 ID:???
[裏話]
*:徳島君、人気高いですよね。

K:作者的には「どのキャラも同じくらい」に書いてるらしいよ。

裸:でも徳島君って格好いいよね。元キャラって何なの?

*:えーと……「イリヤの空、UFOの夏」を読め!だそうです。

K:宣伝で回避しようとしやがったなこの作者・・・

裸:ところでこれって、なんかを推理するモノなんでしょ?

*:そう言うことになっている。まだ情報が足りなすぎるが……

214 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:14:20 ID:???
K:まぁ、そうだよな……。ん?
(カンペ)
K:ええと、「この話を構成する上での根幹になる事態は、既に第一章の時点で起きている」だそうだ。

*:……?それって、例の殺人事件とか、肝試しの事じゃないのか?

裸:それなら、取り立てて話さないんじゃ……。

K:確かに、ニコフの言うとおりだ。

215 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:16:15 ID:???
[巻末]
*:それでは今回もお開きです。

裸:もうですか。早いですね。

*:(俺たちは既に4時間ぐらいすし詰めなんだがな……)

K:こんなコトして作者は何がしたいんだろう?

裸:そうだよねぇ。次回とかどうするんだろう。

*:お前はもう出ないけどな。

裸:えっ!?

216 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 19:17:07 ID:???
キーワード「K」

(使い方は座談会:第三回で!)

217 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/06(水) 21:15:36 ID:???
あー

これは翌日になって後悔するテンションですね。

218 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/07(木) 22:13:07 ID:???
あらすじとか書けないんで、まりあさんとかニコフとかケータイパパとかに代筆をお願いしたい。

219 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/07(木) 23:47:37 ID:???
とある田舎村で見つかった若い女性の変死死体・・・。捜査は難航し、事件は時効を迎えた。
時効からさらに2年後、俺──高知悠太は徳島航率いるSOS団とともに肝試しに出かける。
幼馴染の明海への淡い桃色の恋は、静かに村を蝕む恐怖で深紅の血色に染められていく。
鬼才・クロスが贈る戦慄の第一章。

220 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/07(木) 23:48:21 ID:???
ちょっとおかしくなったけど(゚ε゚)キニシナイ!!

221 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/08(金) 17:52:39 ID:???
今晩か来晩、第二章始めまーす。

222 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/08(金) 20:45:41 ID:???
ヽ(´<_`  ) ノわーい

マダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン

223 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 20:28:06 ID:???


                       第二章「散骨」



224 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 20:30:41 ID:???
「お前ら、昨日はなんか変なことあったか?」
 いつ時間が動き出すか不明だが、とりあえず使える時間は使っておかなければならない、ということらしい。
 全員の顔を見回したが、みんな思い当たる節など無かった。俺がそうなんだからそうなのだ。
「この状況、昨日の出来事が本当に形になったのだとしたら……この力をどう使えばいいのかしら……」
 神奈川は悩んでいた。漠然とではあるが、逆に俺は一つの答を見いだしていた。徳島の顔を見ると、なにやら思案している。
 その顔は、俺が言おうとしていることの更に先のことを考えているように見えた。俺が、言い当ててみよう。
「な、なぁ。時間が止まるなら、普通は入れないところにも入れるんじゃないか?」
 千葉が肝試しの時に言っていた。『この東西連合軍に警察にツテがある人間は一人もいない』と。

225 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 20:33:12 ID:???
「期間があったりすると嫌だからな。一週間以内に、警察署にスネークする」
 思いついたら即実行に移す、徳島の特性が大爆発している。ちなみに『スネークする』ってのは『忍び込む』的なニュアンスで受け取ってもらって構わない。
「しかし、さっきから時間停止は続いたままだ。効果時間とかは無いのか?」
 確かに。そこに術者の意志はどれほど働くのだろうか。働くとすればそれは『時間よ動け』って念じるとかかな。
 そう思った瞬間、ふっと空気に暖かみが戻った。さっきまでの冬場の池に張った氷のような空気とは全く違う、所謂『日常』が舞い戻ってきた感じがする。

226 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 20:37:09 ID:???
「あなた達、何をやってるんですか!?」
 同時に、俺たち以外の人間の声が響き渡った。これは俺のクラスの担任だ。その言葉の意味を脳内で嫌にゆっくりと咀嚼する。
 同時にサアッ、と全身から血の気が引くような嫌な感覚がだんだんと現実になる。
 ……早い話が、時間停止が解けてしまったのだ。いくら何でも、テスト中に堂々とイスをより集めて教室の隅で井戸端会議をする生徒は俺たち以外には居ないだろう。
 この状況を回避する方法は一つしかなかった。だから(予測でしかないが)、その陳腐な魔法の言葉を、俺もみんなも祈った。
 混乱している教室をよそに、テスト終了のチャイムの鳴る音がしてきた。キーン、コーン、カー。……ん?
「……止まった。また、止まったぞ!」
 香川の敵将を討ち取ったような喜びの声が聞こえる。……続きはテストが終わってからにしよう。そう思い、俺はイスを片付けようとした。
 こんな事態を目の前にして、これ以上井戸端会議を繰り広げようとする変人はせいぜい徳島ぐらいなものだろう。

227 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 20:41:27 ID:???
 状況はまさに間一髪だったらしく、クラスメイト全員が俺たちの方を振り向かんとしているギリギリの所だった。
「また、変なこと考えなければいいんだろ」
 ほら、徳島はやっぱりこう言う。しかし俺たちはそうはいかない。あくまで俺たちが必死でイスを片付けている様子を見て諦めたのか、しぶしぶイスに戻って顔を伏せた。
「よし、お前らも教室に戻っとけ」そう言うと香川たちは小走りで教室に戻っていった。その姿を尻目に俺は席につく。
 なぁ、俺。分かってるんだろう? このトンデモパワーの引き金が、自分であることにさ。
 自問自答なんて、ガラじゃないのに。……そんな改めなくとも、なんとなく分かってたさ。
 だって、動……えーと、ゴーとストップ……問題ないな。ゴーし出したのは、俺がそれを思ったときだ。他の奴等が考えたかもしれない。でもな、今回で証明が出来ちまうんだよ。……願えよ、『動け』って。

228 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 20:42:46 ID:???
つづく

そういえば徳島君達って、こんな事になっておきながら一つだけやってないことがありますね。

229 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/09(土) 21:16:47 ID:???
えーと。一つだけ、不自然な点があったのでそこを記しておきます。

一章の>>167で徳島君がお茶を濁した理由です。
 >>141の地図を見て下さい(まとめサイトNimに載せて貰ったようです。見逃した方はそちらへ)。この地図上に『最短ルート』なんてものは存在しません。
そこを徳島君は疑問に思ったわけですが、それに繋がるためには『最短ルート』を強調しないといけませんでした。
しかしながら『最短ルート』という言葉が載ったのは>>183の一回きり。これではどうしようもないですね。

すいません。精進します。

230 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/09(土) 21:32:00 ID:???
時間止めたらとりあえずエロいことしますよね

231 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/09(土) 21:34:12 ID:???
>>229
完全版を書きたくなったらいくらでも書いてくれ!!!!!!!!!!!
共にがんばろう

232 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/02/10(日) 14:14:20 ID:???
時間を操る程度の能力っ

233 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/10(日) 15:08:19 ID:???
>>232
それ、パッド長さんですね。

234 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/11(月) 21:35:22 ID:???
なんとなく、新人さんが近寄りがたいふいんき(←なぜかry)になっている気がする。

・・・まぁいいか。

235 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/11(月) 21:40:55 ID:???
うーむ
困ったね

236 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/11(月) 21:57:54 ID:???
……ァーン、コーン……
 その途端、予鈴が続きを鳴らし出した。教師は奥の方に視線を移したままだったが、何も無くなっていることに目を白黒させている。
「あら……?」チャイムの合図を聞いて、後ろの席に座ってる奴らが勝手に立ち上がってテストを回収しだした。明海も、一番後ろの席だったっけ。
「神奈川さん、あなた……」
「はい? 何でしょうか?」
 明海がハートブレイクスマイル(端的に言うと笑顔)で答えると、試験監督も何も言い返せなくなってしまった。「……いいえ、何でもないわ。多分気のせいだったのよ」
 明海はかなり焦っていたに違いないが、振り返ってこっちに戻ってくるときは他の女子と出来について笑いながら話し合っていた。
 ブラフというかポーカーフェイスというか、明海はそういう事が上手いのだ。

237 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/11(月) 21:59:16 ID:???
 徳島は、寝たふりかと思ったら本当に寝ていた。
「もう逢魔が時だぞ、起きろハゲ」
 ここにも、徳島なりの微妙なこだわりがあるのだ。徳島の前では『夕方』の事を『逢魔が時』と呼ばないと、次の日にバナナの皮でスリップする呪いをかけると言い出すのだ。
 事実、侵犯した次の日の朝、俺の家から50メートル間に黒く塗られたバナナの皮が大量設置されていた。……確か、車の進行を妨げるようなことをしたら逮捕罰金じゃなかったっけ。
「何だよ、こっち見るな。バカが伝染る」
 俺はどうやら、ぼーっとして徳島の顔に視線のレーザーを浴びせていたらしい。
「さて……俺はノンケだとして、明日の計画をボチボチ立てるとするか」すると千葉が、読んでいた本から目を上げてこっちにやってきた。
「これ、警察署の地図だから」
 千葉はそう言うと、俺に六つ折りにされた紙を渡してきた。俺が読むわけにも行かないので徳島に向かって広げて手渡す。

238 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/11(月) 22:00:42 ID:???
「ほう。ふむふむ……」
 俺が読もうとしたら、地図を持ち上げて俺から見えなくしやがった。
「お前に瞥見など無い!」
 ここで一度どっちが格上なのか決着を付けてやろうと思ったが、どこぞのコマーシャルに免じて許してやることにした。
 しかし、あの見た感じ……どこかに似ていた。前に一度行ったことがあるような……。でもそれを既視感というには、余りにもリアリティがあって……。
「――その既視感ってさ、大概が気のせいなんだって」背後から、神奈川にそう言われた。
 気のせい、ねぇ。「夢じゃない?」
 即座に俺は助け船(ノア製)を求めた。「千葉。なんか知らないか?」

239 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/11(月) 22:01:38 ID:???
 その声に千葉はこっちをちょっと見て、本を閉じて語り出した。
「一般的な既視感は、その体験を『よく知っている』という感覚だけでなく、『確かに見た覚えがあるが、いつ、どこでのことか思い出せない』というような違和感を伴う場合が多い」
 すげぇな、歩く辞書なのかこいつはと俺が感心しているのを余所に、千葉は続けた。
「統合失調症や前頭葉てんかん等の現れともされる一方、小説などでは重要な伏線貼りに使われることが多い……と、書いてある」
 さり気なくひどい事を言われた気がしたが、俺はもはや反論する気にもなれなかった。


240 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/11(月) 22:04:01 ID:???
来週はちょっと展開がうざったいかもです。
まぁ、作者の望みですし。

241 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/11(月) 22:05:14 ID:???
>小説などでは重要な伏線貼りに使われることが多い
>小説などでは重要な伏線貼りに使われることが多い

242 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 19:52:18 ID:???
 翌日。天気は晴天。俺たちは所定の場所に集まることになっていた。行く途中、やはり明海と一緒になった。
「なぁ……」
 俺は、なぜか急にいつぞやの続きが言いたくなった。
「なに?」
 でも、なんか気恥ずかしい。深く言わない事が俺の美徳なのか、癖なのか。
 ――他の人に問うてもいいような疑問が口をついて出た。
「なんか上手く行きすぎてないか? 俺たち」
「ゲームのやり過ぎだよ。運命に上手いも下手も無いって」明海から久しぶりに女らしい言葉が出た事に、俺は何故かほっとした。
「運命、ねぇ」
 小説の中の主人公は、こうやって運命に対する疑問を投げかけるのが定石になっているんだそうだ。……気恥ずかしくも俺はそれを真似てみた。

243 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 19:54:50 ID:???
「うふふ」いきなり、明海は笑い出した。「どうしたんだよ、急に」
「さっきまで読んでた小説の主人公がね、さっきまったく同じ事を言ったの」
 絶妙な一致。まさか、こんなことまでもが運命なのか? ……だったら。
「なぁ、明海」なに? と明海が振り向く。
 その改めて見ると愛らしい顔に、俺は今まで言えなかった、単純で精一杯の、気恥ずかしくて真っ赤になった苺のように甘酸っぱい言葉を投げかける。
「……お前のこと、好きだ。……だから、」続きを言いたかった。でもそれは、明海の反応を見てからでも遅くはない。俺は言葉を切る。
 顔を上げると、明海はうつむいていた。いつもの俺ならば、らしくないと笑い飛ばしているところだが、今はそうはいかなかった。

244 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 19:56:44 ID:???
「ダメならダメでもいい。これまで通り、幼なじみでもいい」
 真剣な表情をしながら、一歩退いた。途端に明海が顔を上げる。
「いいよ」その顔には、一分の翳りもなかった。
「……これまで通り、付き合ってくれるならね」
 やった!と、思いっきり叫びたくなる気持ちを、理性でギリギリ抑える。本当に嬉しい時ってこんな感じなんだなって、ようやく思えた。

 ――晩夏。セミは鳴いていない。

245 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 20:07:29 ID:???
 着くなり、香川は俺たちのなんとなくよそよそしい態度が目に付いたらしい。
「よう二人とも。なんかあったの?」
 香川の小馬鹿にしたような質問に対して、何でもねーよと俺が返事をする。……? こんな事、前にも無かったっけ。
 助けを求めようとした矢先に栃木がやってきて、ようやく全員が揃った。
「さて。そろそろ時間停止をしてもらおうか」徳島に言われたので、俺は念じてみる。
 ふっ、と空気が張り詰めるような音が頭の中で響いた気がした。
 どうやら時が止まったらしい。徳島は辺りを見回して何も動いていない事を確認する。
「止まったようだな。行くぞおまえら」
 警察署は通りの端。大きな道路はここまでで、ここから三つの細い道路に分かれていく。真っ直ぐ行けば山越え。右に行けば商店街。左に行けば公民館など。

246 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 20:08:25 ID:???
「ちなみに、前に時間が止まったときにもう色々と調べておいた」そう言って徳島はメモ帳をめくる。
 そこには、俺が行う時間停止という事がどういう事であるかが書いてあった。
「簡単に話そう。
 1、時間停止は術者の思い通りに発動・解除が可能。
 2、停止の最中には、人体に干渉する事が出来ない。
 3、俺たち6人だけがこの時間の狭間に於いて動くことが可能。」

247 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 20:09:29 ID:???
 俺が入り口に立っていた人に触ろうとすると、確かに幻であるかのように手が入り込んだ。ほほう、これは面白い。
「銃、奪っちゃったりなんか出来るんだ?」
「今はそんな時間も惜しい、行くぞ。関係書類が収まっているのは二階の奥の部屋だ」走るように俺たちは二階への階段を駆け上がった。……すると。
「あ……」みんなが一同に声を上げた。ギリギリだった。
 その倉庫への入り口に人が立っていて、ドアノブに鍵を差し込んでいるまま停止している。まさに閉められる寸前だったのだ。

248 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/14(木) 20:10:31 ID:???
「ラッキーだ、鍵を探す手間が省けた」即座に徳島が鍵を奪って開け、その隙に俺たちは中に忍び込む。
「案外あっさりと入れたな……。よし、それでは探すとするか」舌の根も乾かぬうちに、千葉は既に資料室の奥に行ってファイルを次々に漁っていた。
 俺がやろうとする事はもうみんなやってるしな……。適当に話を聞こうか。

249 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/14(木) 20:18:11 ID:???
しえn

250 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/14(木) 20:51:57 ID:???
>運命に上手いも下手も無いって

感動した

251 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/15(金) 22:48:01 ID:???
 まずは千葉杏子が妥当だな。
「千葉、なんか分かったか?」
「まだ何とも。しかし、容疑者は居たらしい」
 千葉は続ける。
「死んだ少女には恋人が居た」
 それは初耳だ。あの日のついでに教えてくれればよかったのに。
「その親は、地元の有力者」なんで捜査が難航したのか、なんとなく分かってきた気がした。
「調書がここにある。読む?」言われれば読むしかない。……。

252 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/15(金) 22:48:38 ID:???
 被害者と付き合っていたことと、被害者の死亡推定時刻の数時間前まで彼女と一緒に居たのが目撃されていて、彼による犯行とほぼ確定しているらしかった。
「……それでも、証拠不十分なのか?」
 続きにはこうあった。『容疑者は被害者から別れを求められ、即座に帰宅した。使用人が時間を見ていたため、アリバイが確定した』
 何か、腑に落ちない部分が多い。
 まるで、起訴できない理由を必死にでっち上げているような字面だった。
「ちなみにこの男はファザコンで、独立した現在でも親にべったりらしい」
 容疑者1 被害者の恋人で、名前を鳥取宇宙(ととり・てら)という。
 容疑者2 被害者の恋人の父親で、名前は鳥取岸次郎(ととり・がんじろう)。

253 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/15(金) 22:50:24 ID:???
 千葉の隣の棚で、徳島がしげしげと何かを眺めていた。
「徳島、なんか分かったか……って、何見てんだ?」
「うむ……。俺もなぜこんな本がここにあるのか分からない」
 それは旧苅萱村の風土について記されたものだった。
「読まないなら、俺にくれ」徳島から渡された本の、さっきまで開かれていたページが目に入る。
 どうやら商工業の発達について書かれているようだった。

254 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/15(金) 22:51:03 ID:???
支援

255 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/15(金) 22:51:18 ID:???
『かつては辰砂が取れた事から、水銀関連のものを生成する場所として有名だった。その他にも様々な製鉄所があり、かなり発達していた地域であったとされていたが』
 ……ん? なにか違和感があるが、そのまま隣のページに視線を移す。
『ここにかつては電車が通っていたが、△◇年に○×自動車道が作られた事により廃線』
 やはり、何かがおかしい。そう訝しんでいると、横から徳島が口を挟んできた。
「これ……真ん中のページが無いな。右と左の繋がりがおかしい」
 その間のページは綺麗に裂かれていた。破るというか、刃物で切り取った感じがする。
 そこに何があったのかは気になったが、今となってはどうしようもない。諦めよう。
「なぁ……鉱物で血の色に近いモノって無いか?」ふと疑問に思ったので聞いてみた。
「さぁな。実験でもすればいいじゃないか」
 ……なんか、引っかかるなぁ。

256 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/15(金) 22:53:24 ID:???
「神奈川。なんか分かったか?」
「うん、さっき杏ちゃんが調べてた事に関連して、警察の方でも色々と掘り下げて調べてたみたい」
 今度は行方不明女生徒の事についてが書かれていた。気のせいか、杏子が近くに寄ってきている。

 ○×年11月□日、××県西磐井郡巣合町字苅萱村在住の福井瑠琉(るる、と振り仮名がふってある)さん(17)歳が、学校の帰り道に行方不明になった。
 行方が分からなくなったその翌朝、不審に思った家族が警察に通報、事件が明らかになった。
 当時発生していた少女殺害事件から2年しか経っておらず、少女の生存は絶望視されていた。
 捜査員は殺人事件の捜査に当たっていた所からも数百人引き抜き、合計500人体勢で捜査を開始した。
 その後の聞き込み調査によると、被害者は前日に鳥取宇宙と学校で喧嘩をしている事が明らかになった。』
 ……また、鳥取宇宙か。ここら辺の警察の機構は一体どうなっているんだ?

257 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/15(金) 22:53:58 ID:???
 続きを読む。

 またその後、同級生の山口晴望(やまぐち・れの)と一緒に下校している姿がハッキリと確認されている。
 後日山口晴望に対して事情聴取を行おうとしたが、彼女の母親がこれを断固として拒否。』
 拒否? 拒否できるのか。
「できる。しかし、普通は無理矢理にでも連れて行くのが筋。拒否すれば公務執行妨害を持ち出して逮捕することもありうる」
 へー、と明海は感心して頷いていた。事情聴取するということはほぼ確信があるということなのだろう。
 ……この母親も、もしかして。
「ご明察。両親ともに町議会議員で、鳥取岸次郎とも懇意の間柄」
 今日は千葉がよく喋る日だ。来週から記念日として休日にして欲しい。

258 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/15(金) 22:57:50 ID:???
色々情報が出てきましたね。
時止め大活躍。
20年以上前の事件だってのに名前がことごとくDQNっぽくていいな

259 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 15:26:23 ID:???
>>257
×来週
○来年

260 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:31:27 ID:???
ちゃんと追いついてきてもらえてますかね?

261 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:42:37 ID:???
 ――そのまま、三時間ほどが無駄に過ぎた。
 既に俺たちは引き上げて、警察署の門の前で屯(たむろ)していた。
「さて。諸君、資料は揃ったかね」
「オー・ケー。まぁ本当のところ全く足りないけど、警察ならこの程度でしょ」
 実際本人に直接聞けばこんなバカみたいな真似しなくて済むのだが、本人が期限切れみたいな様子だったのでしょうがない。
「これ、どうする?」香川が聞いてきた。
「うん。とりあえず新聞が見たいな。図書館行こう」これは千葉の提案だった。
 さっき時を動かしたので、署内の時計は現在11時半を過ぎた辺りを指している。俺の腕時計は、俺が付けているせいか止まらない。これまでの分も合わせてもう3時間半程ずれていた。

262 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:44:01 ID:???
「ねぇ」栃木が言った。
「私たちって、危機感無いんじゃない?」今更それが何だ、という言葉がまず浮かんだ。
「だって、危機感を持つ理由が無いじゃないか。夏休みの自由研究みたいなもんだろ」
「考えてもみてよ。お化けに出会って、殺人事件の調査を依頼されて、必要な道具はこの時間停止……現実が想像を飛躍しすぎてるのよ」
「あのな。言われなくても、俺だってビックリなんだ」珍しく徳島が割って入った。
「でも、だってこんな事……絶対なんかまやかしよ、トリックよ」
 なぜだろう。被害者ぶっているこの栃木美穂が、俺に対して悪意で以て武器を振るう悪来に見えてきた。
「落ち着けよ。お前が見てるのが現実だ」複雑な気分にされた俺は、ただそう言うしか無かった。

263 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:45:00 ID:???
 東西連合軍の間に、微妙な沈黙が流れる。おかげで俺は、図書館までの道のりを全く覚えていなかった。
「騒ぐなよ」そっくりそのままお前にお返ししてやるよ、徳島。
 図書館は完全に千葉と徳島の領域だったので、俺と香川と栃木でここまでで分かったことを書き出してみた。
 被害者1、丹加山華恋。当時18歳、大学生。25年前の初夏に頸動脈を切られて殺される。犯人不明で事件は時効。
 被害者2、野永芹阿(のながせりあ)。当時20歳、大学生。丹加山華恋の事件の二年後に、突如失踪。
 容疑者その1、鳥取宇宙。当時18歳なので、現在は43歳。当時被害者と交際していたらしいが、被害者と前日に口論になっているのが発見されている。……ここら辺は、お化けを問い詰めれば明らかになるだろう。
 さてこの容疑者だが、アリバイが立証されているらしい。死亡推定時刻と同時刻に、彼は隣県へサッカーの合宿に出かけていたというのだ。

264 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:47:02 ID:???
「でもさぁ、――喧嘩の内容が別れ話とかだったときに――それくらいで殺しちゃうかな? そこまでバカじゃないと思うよ」
 確かに。フられたから殺したなんて話、まるでストーカーの妄言のようだ。
「つまりそう考えると、華恋と宇宙の言い争いの内容はどうでもいいって事か?」
「マクガフィン、だな」香川から、聞き慣れない単語が飛び出してきた。「何だそれ?」
「あれ? ……ごめん、意味忘れた。おーい、千葉!」
 バカ野郎、ここは図書館だぞ。騒ぐな。
「何」いかにも迷惑そうな表情をしている千葉に構わず、マクガフィンって何だ? と香川が聞く。
「マクガフィンとは……」千葉の説明に栃木も香川も頷いていた。俺はといえば、どうでもいいとばかりにルーズリーフと対峙していた。
 適当に説明を終えたところで千葉は「じゃあ私は戻る」と行って本棚の森に消えていった。

265 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:48:19 ID:???
「分かったところで、続けるぞ」
 容疑者その2、鳥取岸次郎。名字から分かるとおり鳥取宇宙の父親で建設業の社長を営んでおり、地方では有名。
 彼は犯行当日に「家に一人で居た」としており、アリバイは無い。しかし、彼の犯行ではないとされる証言がその数日後に出たため、アリバイが成り立った事になっている。
「どう見てもクロだろ、これは」香川が嘆息した。
「でもさ、証言出てるんだぜ? どうしろってんだ」適当に反駁しておいたが、俺も自信はない。
「そいつの家は金持ちなんだろ。金で証言を買ったのかもしれないぜ?」
 そんなことを言い出したら、身も蓋もないだろう。出来ることにも範囲ってもんがある。

266 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:48:53 ID:???
「分かった!」声の主は栃木だった。
「最初の殺人の事情を知った野永さんが、華恋さんについて鳥取宇宙を問い詰めたんだ! 身の危険を感じた鳥取宇宙はこいつを消しちゃったのよ!」
 暴論だなぁ、と俺は嘆息する。
「野永の失踪に鳥取家や一連の事件が関わっているとすれば、消されたのが妥当とも言えるけど、実際はそうじゃない方が多いんじゃないか?」
「まぁ……そうかもしれないな。でもこんな時期に失踪するってのがまずおかしいんだよ。樹海に行くならもっと時期を選ぶべきだったんだ」
 確かに。彼女の失踪は冬場でも秋場でもなく、丁度初夏だった。偶然といえば偶然にも見えるが、かなり作為的に見える。

267 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:49:43 ID:???
「じゃあ、次だ」
 容疑者3、広島春子(ぱるこ)。当時20歳。
「パルコ? どっかのショッピングモールか」俺は無視した。
 丹賀山華恋の従姉妹で、事件当時丹賀山家に『たまたま遊びに来ていた』とされている。親戚間からは『常に遊び歩いている』という(悪い)印象であったようだ。特に夜はいつまでも遊び呆け、深夜徘徊で補導されたことが3回ある。
「こいつは怪しいな。だから返って、怪しくない」
 香川はなにやら意味の分からないことをブツブツと呟いている。
「この人は何か関係あったの?」
 従姉妹である上に鳥取宇宙とは幼なじみであった。ちなみに、犯行当時は『たまたま』外出していなかった。

268 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:51:06 ID:???
「でも、この記述見るとおかしいよな」
 犯行当時は外出していなかったとはいうものの、その日以外の外出状況が全く記されていない。これでは知りようがない。
 ここで手詰まりかと悩んでいると、足音が近づいてきた。それは段々と俺たちに向かってくる。
「あれ、おまえらもう終わったの?」
 徳島、神奈川、千葉が帰ってきたのだ。
「もうって……とっくに二時間は経ってるぞ」
 なんにせよ、時間が経ちすぎている。風化していると言っても過言ではない。25年というとかなり長いのだ。
 どうする? 俺は、図書館の嫌に煤けた天井を仰ぎながら考えた。

269 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 22:52:06 ID:???
第二章「散骨」終わり

第三章「出棺」に続く

270 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 23:03:15 ID:???
次回は火曜日辺りに座談会第三回をば。

(まだ書いてないなんて言えないよなぁ・・・)

271 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/16(土) 23:21:53 ID:???
「広島春子」の名前はニコフハゲさんが考えてくれました。感謝感謝。


にこ★川,,'3') の発言:
(広島春子は)徳島を抑えて人気ナンバーワンまちがいなし

272 :ニコフ ◆nikov2e/PM :2008/02/16(土) 23:33:53 ID:???
さらに情報がでてきましたね

広島パルコ、いわゆるビッチですかね…

273 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/17(日) 21:56:41 ID:???
キャラ紹介ver2.00も適当に貼っておきますね。


まだ、座談会書いてません。ごめんなしあ。

274 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/17(日) 23:29:54 ID:???
>>259訂正しときますよ?

275 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:19:48 ID:???
じゃあ適当に座談会でも・・・

276 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:22:49 ID:???


                 うついときらのざだんかい 第三回
             企画・発案・ネタ収集・宣伝広報・尻ぬぐい:クロスハゲ



277 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:25:02 ID:???
*:……ということで始まってしまった、第三回です!三といえばですね……

K:おい……その話題は非常にまずいと思うぞ……?

*:え……えー。ともかくですね、今日はゲストが来ております!拍手!

K-tai:おはようございます。今日は、しくよろ!

K:……

*:……

K:ひ、酷い空気だ……とりあえず文章量節約のために名前省略しますね。

K:お前が作った空気だ!名前、俺とかぶってるし!

K:ひっどいなぁ。おじさん泣いちゃうよ?

*:(次回からはKIRAと入れ替えだな。ってか、本当にニコフ出ないのかよ……)

278 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:26:23 ID:???
[第二章終了]
K-tai(以下父):時を止める能力が大活躍でしたね。

*:そうっすね。そして容疑者の名前が登場、さらに情報がバンバンと……。

K:正直、情報が多すぎて整理がつかない読者が居るんじゃないか?

父:僕もできてません。

*:事件の状況はなんとなく分かるけど、どれも怪しすぎて逆に怪しくないよね。

K:それはドラマの見過ぎだ。

父:僕は見過ぎてません。

*:……。

279 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:28:01 ID:???
[告白]
*:高地君は告白に成功したのかな?

父:あの様子じゃこの小説内にキスシーンは入らなそうだね。

K:……。甘酸っぱいなぁ。

*:甘酸っぱくしてやろうか。下半身的な意味で。

K:永遠に勘弁してください。

280 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:28:41 ID:???
[前回からの引き継ぎ]
父:二章の最初にクロス君は『やってないことがある』って言ってたよね。

K:そういやそんなこと言ってたけど、何の事やら。

*:そういや、さ。こいつらって高知が時を止める力を持ってるって知ってるわけ?

K:そりゃあ知ってるだろ。

父:いや、でもそこら辺の描写は無かったぞ。

*:そこら辺って、どんな?

父:普通、自分たちの中に変わったことがあったら、誰が原因か突き止めようとしないか?

K:む。でも確かにそんな事は書かれていないが、それは発動条件がよく分かっていないからじゃあないのか? 全員が祈ることで発動すると認識しているのかもしれない。

父:しかし、だ。一人ぐらい不信心な奴が居てもおかしくないだろう?特にあの香川君とかは特にそうだ。そこから疑心が起こってもおかしくはない。

*:でも、それがどう関係するというんだ?

一同、沈黙。

281 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:29:18 ID:???
[閉幕]
*:ということで座談会もそろそろお開きです。

父:これからの展開が楽しみですね。

K:犯人は誰か。どんな事態が東西連合軍を襲うのか。

*:徳島君が居れば大丈夫でしょ。

父:そういや、このお話の各章のタイトルってさぁ……。
(KIRAに耳打ち)

K:……む、確かに。つまりどういう事だ?



*:……えー。2人が盛り上がっていますけどここら辺で。さようならー。

282 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/19(火) 20:31:00 ID:???
キーワード「A」
使い方 これまでの三つのキーワードを集めて並べ替えしてください。
ただし、文字が一つ欠けています。
そういうときは、この小説のタイトルを思い出してみるといいかも。

そして、そこから現れる単語は……?

283 : ◆K.tai/y5Gg :2008/02/20(水) 00:16:31 ID:???
なんでこんなペース早いんだこの小僧は
どっかの休載作家に見せてやりたい

284 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/20(水) 00:37:06 ID:???
ごめんなさい

285 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/20(水) 17:23:06 ID:???
>>283
お父さん出した事にはコメント無しっすか。

>>284
自分のペースがあるのよ(`・ω・´)

286 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/20(水) 18:21:00 ID:???
キャラクター一覧(ver.2.00)

[東西連合軍]
・徳島航 とくしまわたる
東西連合軍の総統兼リーダ兼特攻隊長。
文武両道で肝が据わっている。しかしそれと裏腹に、つかみ所のない性格をしている。

・高知悠太 こうちゆうた
主人公で、幼なじみの神奈川明海に恋をしているが、見事に成就させた。
話内の地の文に出てくる「俺」は彼の事。

・香川幸輔 かがわこうすけ
高知と徳島とは別のクラスに所属。
栃木美穂と付き合っているような言質であるが、詳細は不明。

・神奈川明海 かながわあけみ
高知、徳島と同じクラス。高知悠太とは幼なじみ。
クラスでもみんなから好かれている。
高知の告白を快諾した。

・栃木美穂 とちぎみほ
香川と同じクラスで、香川と付き合っているようなフシがある。
成績は明海ほど芳しくない。

・千葉杏子 ちばきょうこ
東西連合軍の歩く辞書。
徳島に肉薄する成績優秀者で、その無表情さとは比べものにならないくらい知識量は豊富。
何かを知っているような言い方だが……?

287 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/20(水) 18:22:53 ID:???
[その他の人物]
・丹賀山華恋 にかやまけこ
25年前、隣村のバス停で首を切られて殺害された少女。
25年の時を経て東西連合軍の前に現れたが、何が目的だったのかは不明。
当時18歳、大学生。犯人不明で事件は時効。

・野永芹阿 のながせりあ
当時20歳、大学生。丹加山華恋の事件の二年後に、突如失踪。
法により死亡扱い。

・高知家
父、母、悠太、弟の四人家族。弟は小6。

288 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/20(水) 18:23:41 ID:???
[容疑者]
・鳥取宇宙 ととりてら
丹賀山華恋の恋人で、後述の鳥取岸次郎の一人息子。
現在どうなっているのかなどは不明。

・鳥取岸次郎 ととりがんじろう
鳥取宇宙の父親で、建設業を営んでいる。
経営は専ら上向きで、そこによくない想像をする者は多い。

・広島春子 ひろしまぱるこ
丹賀山華恋の従姉妹で、素行が悪い。
「不良少女」を絵に描いたような人物であるが、事件当時はたまたま丹賀山家に遊びに来ていた。

289 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/20(水) 18:24:28 ID:???
[土地名など]
・苅萱村 かるかやむら
25年前に殺人事件が起こった村。現在は隣接していた巣合町と合併し、名前は消えた。

・巣合町 すごうちょう
高知達が住む街。小中高大と、全ての学校が揃っている。
町内を大きな通りが一本、山の麓辺りまでを貫いている。

・御嵩山 みたけやま
旧苅萱村、巣合町両方にまたがる山。
神社があり、近くに墓地もある。苅萱村の墓地は昔からここにあった。

290 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/21(木) 19:35:54 ID:???


                       第三章「出棺」



291 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/21(木) 19:36:56 ID:???
 人に直接聞く以外に、俺たちがする事は無くなった。
「周辺人物を、出来る限りあたってみるしかないな」徳島も、こう言っている。
「心当たりは?」一人だけ、と千葉。
「かつて、鳥取家で働いていた女性が近くに住んでいる」非常にテンポがよろしい。問題は、どこまで深入りしていいか、だな。
 俺たちは千葉に導かれるがままに学校近くの長屋にたどり着いた。
「すいません、福井さんはいらっしゃいますでしょうか」もちろん、居る事が前提で来ているのだ、居なかったら話にならない。すると、遠くからはいはいと声がした。
 奥から出てきたのは初老を15年ほど過ぎたおばさんだった。昔はおそらく可愛かったのだろう、今も少しその面影が残っている。
「鳥取さんの事について聞きに来ました」
 その言葉に彼女が一瞬眉をひそめたのを、俺は見逃さなかった。

292 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/21(木) 19:39:19 ID:???
「あなたたち、あんまり鳥取さんの事には触れない方がいいわよ。あそこ、黒い噂をもみ消すためにはなんでもやるわ」
「でも、時効ですから」そうだ。俺はこの事件を解決しないと呪い殺されてしまうんだった。
「まぁ、そうなのよね。時効になったから言っちゃうけど」
 重要なことが話されると予感して、全員が息を飲む。
「あの日の晩は、坊ちゃんも旦那様も外出してらしたのよ」「!」これは最大級の破壊力を持つ証言だった。
「目的はそれぞれ違ったのよ。坊ちゃんは例の死んじゃった女の子とデートするために。旦那様はたまたま煙草が切れたから買いに行ってただけなの」
 つまりそもそもアリバイが存在しない上に、計画性はほぼゼロと言ってもいいものだったらしい。

293 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/21(木) 19:44:05 ID:???
「それなら、尚更おかしいだろ……」
 ニュースを見聞きしていると、付け焼き刃の犯行というものは『あっさり』と発覚して犯人は『あっさり』逮捕される。この犯人が例外だということは……考えにくい。
「つまり、アリバイが無いのは全員か……」つまりは、逆に絞り込むための作業が必要になってくる事を示していた。
 おばさんを見ると、もうこれ以上長居して欲しくないという感じがしていた。
 察した徳島は「ありがとうございました」と言って、俺たちをとりあえず引き上げさせることにした。見送るおばさんの心配が入り交じった表情が、妙に気になった。
「外堀は埋まった。後は照準を定めて、一気にパーン」徳島は銃を構える仕草をした。
「ちょっと待て、照準は定まってるだろ。犯人は鳥取家でいいんじゃねーのか?」と、香川。
「いやいや。あのおばさんは広島春子については話していない。アリバイが無いのは奴も同じだ。偏向した情報に惑わされるなよ」

294 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/21(木) 19:58:43 ID:???
続きは明後日。

295 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/02/21(木) 22:22:43 ID:???
ペースはえええええ

296 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/23(土) 19:52:23 ID:???
「君達」急に声をかけられて俺たちは立ち止まった。
 かなり高齢の老人と、その脇に黒いスーツを着込んだガッチリした男が居た。それはいかにも……
「あんた誰?」対する徳島の口調が、明らかに変わっていた。年上に対してフランクすぎるだろ、などということは今は言えなかった。
 なぜかって? そりゃあお前、この状況を見れば大体想像がつくだろう?
 うざったく説明すると、『会った者全てに悪という強烈なフレーズを植え付けかねない容貌を持ち合わせた愚者』とでも言うのだろうか。
 全員が、何かしらの理由を持って硬直する。

297 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/23(土) 19:54:18 ID:???
「君達、そこの福井さんに何を聞いたのかね?」その老人は、見た目は衰えていながらも、声には池にびっしりと張った氷のような無機質さと恐ろしさがあった。
「あなたも、ここに用なんですか?」息を飲む俺たちを余所に、徳島はかなり朗らかな表情をしている。敵意を見せない為なのだろうが、この場合明らかに俺たちが足を引っ張っている。すまん、徳島。
「いやぁ、ワシは『たまたま』通りかかっただけじゃよ。でも、君達の事は風の聞いておるよ」流石に徳島も何も言わなくなった。
「……正直に聞こう。何が目的だ? ワシのことを抹殺しようとする輩については山ほど覚えがあるのだが、君達はその中のどこの組かね?」
 徳島は、固まっていた。

298 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/23(土) 19:56:06 ID:???
「いや、そうではない、です。……しかし、この事が詳らかになっても所詮は時効ですよ?」
「時効になったから何だというのだ!」急に語気を荒げ、怒鳴り返された。
「時が過ぎても事実は残っている! それを嗅ぎつけようとするハイエナどもはワシの周りを常にウロチョロしておる!」こんな住宅街の中で堂々と、ハイエナみたいに五月蝿い爺さんだ。
「もみ消すためなら、ワシは例え小火でも消防車を呼ぶさ。さぁ聞こうか。一体、君達はどこからの差し金だ?」後ろの男達は常にポケットに手を入れていて、いつそこから弾丸が出てくるのか分からない。でも、ここは俺にしか出来ないことがあるんだ。

299 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/23(土) 19:57:18 ID:???
 徳島の前に、俺が出る。
「例の、殺された女の子から――、です」言い終わるのと同時に、俺は時を止めた。
 全員が時が止まったことに気付き、俺が徳島に促す。
「行くぞ!」その合図で、ようやく全員が動き出した。
「ね、ねぇ。このスキに、あいつらをどっかに監禁しておいたりできないの?」栃木の疑問に俺が答えようとしたら、明海が先に答えた。
「この力、人には干渉できないって言ったじゃない。移動できるのはせいぜい服とか装飾品ぐらいよ」一瞬だけスキは出来るが、それは完全ではない。
「そうだ。アイツに手を下すのは俺たちじゃない、依頼に……依頼『霊』だ」
 気がつけば、もう日が暮れていた。

300 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/23(土) 19:57:51 ID:???
続きはまた来週。

301 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/25(月) 22:55:40 ID:???
すっかりサボってもうた。
また明日更新します。

302 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/26(火) 19:19:51 ID:???
 ――特筆していなかったのでビックリではあろうが、そこから四日間、俺たちは集中合宿とやらで遠方の山中の宿泊施設に強制隔離されてしまった。
 徳島は相変わらず当てられれば完璧に返答して教師を唸らせ、香川は寝ていて教師に火あぶりの刑にされていた。みんな、離れてみればいつも通りだった。
 栃木は同じクラスの親しい友人と輪を作りケータイを弄っていたため没収され、千葉は授業中に堂々と『こころ』を読んでいた。……そして。
「……明海」授業の合間ぐらいしか時間がないので、なかなか明海に話しかけるチャンスが無かった。……あの告白以降、警察本部に突入した時ぐらいしか喋った覚えがない。
 別に余所余所しいというワケではないのだが、俺からすれば何かわだかまりがある。
「なぁ……明海?」ようやくこちらを向いてくれた。「何?」
「前の告白のこと、だけどさ……」本気に捉えてくれているのかと言いたかったが、何となくその真意を言うのは気恥ずかしくなってしまった。結果的に、文が尻すぼみになっている。

303 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/26(火) 19:20:36 ID:???
「何? さっきの授業、分からない所でもあった?」いや、そうじゃないんだ。そう言いたかったが、緊張で声が出ない。あの時の俺の勇気は何処に行ってしまったんだろうと言わんばかりのチキン振りだった。
「い、い、いや……別にそういうことじゃないんだけど……」
 すると明海はふーん、と特に興味がないかのような表情をして「そう。じゃ、私ちょっとトイレ行きたいから」そう言って教室を後にしていった。
 男女のトイレって、普通は隣同士なのに。

304 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/26(火) 19:22:59 ID:???
 結局その日の授業は半ば放心状態(つまり、ボーッとしていた)のまま受けた。
 何を微分すれば6xの二乗になるとか、どこを積分するとか、なんでlim_θ→0にするのかとか、そんなことは全て俺の中の末那識(まなしき)の中にとけ込んでしまった。
「なんだよ、浮かない顔して。お昼、あんまり食ってないんだな?」香川だった。
「なんだとは何だ。お前こそ変な顔してるぞ?」顔洗うのサボったな、と俺は察した。
「そりゃまぁ、今のお前を見ていればなぁ」これでは売り言葉に買い言葉だ。今の俺に口角泡を飛ばさせたら、一気に絶交への道を歩みかねない。
「ま、何があったかを聞くつもりはないが」そう言って俺の方に手を置いて言った。「焦るなよ」
 香川は、どうやら分かってくれているらしかった。何が、って……。そりゃまぁ、何かだ。
 明海は、周りの事も気遣う。人前でベタベタするのをちょっと嫌がっただけなのだろう、そう思うことにした。
 そのまま四日間は無事に過ぎたが、事件はその後間を置かずに起きた。

305 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/26(火) 19:23:25 ID:???
次回に続く

306 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/29(金) 22:01:58 ID:???
「あれ……今日、栃木はどうしたんだ?」
 強制隔離で疲れも溜まっているだろうということで、今日は特例で午前授業になっていた。
 帰り際に校門に東西連合軍に招集をかけたのはなんと香川だった。見れば香川はおとつい俺に対してアドバイスをしてくれた時とは比べものにならないくらい憔悴していた。
「珍しいな。どうしたんだよ」すると、徳島が俺の袖を引っ張った。「察してやれよ」
 そこでは徳島が俺にまともな理由で説教をするという、思いも寄らない配置換えが起きていた。そして、香川が死にそうなか細い声で話す。
「昨日から、家に帰ってないんだ」香川が、泣きもせず嫌に淡々とした声色で喋ることに俺は何故か恐怖を覚えた。それは、それがとても重要なことだったからに違いない。
「時は止まらなかったの!?」……それは、無理な話だ。俺がその場にいれば良かったのに、と唇を噛む。

307 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/29(金) 22:04:07 ID:???
「すまん……俺が側にいれば……」謝罪の言葉は、返って逆効果だったかもしれない。
「いや、いいんだ。もう過ぎたことだし」俺はさっきの言葉『違いない』を、否定したくなった。
 ……なんだろう、このもやもやとした感覚は。
「とりあえず、警察の捜査に期待するしかない」千葉、俺はお前をそんな小さいことを言う輩だとは思っていなかったぞ。
 すると千葉は「もちろん。でも今は」そう言って、徳島に目線を移した。
「高知。俺の嫌いなこと、三つ言ってみろ」徳島のいつになく真面目な声に、全員が背筋を伸ばす。そこらの上級生とは違う迫力があった。
「バイキング以外でおかずを取り合う事、箸の持ち方が汚い事、横車を押すこと」三つの内二つは食い物がらみじゃないか、とバカにしていた事もあった。
「そうだ。俺は横車を押されると、つい押し返したくなる。……全力でな!」
 徳島の目は、怒りに燃えていた。
「千葉特派員。協力を要請する」
「オー・ケー」

308 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/29(金) 22:06:35 ID:???
「本部並びに関連企業の事務所、倉庫の位置を全て書き出しておいた」
 三時間程しか経っていない(時間停止をしていたが)にもかかわらず、徳島が持つ地図の上には100以上の印がつけられていた。
「単身乗り込んで、奪還する。あと、有利な情報があればそれも持っていく。追われようが何しようが関係ない。俺が責任を取る」
 それは知略に富んだ周公瑾(しゅうこうきん)や諸葛孔明、司馬仲達にも見えるし、風車に突っこむドンキホーテのようにも見えた。
 ……どっちなんだろうな、一体。
「善は急げ。一分一秒すらも惜しい。行くぞおまえら!」前言撤回。もはやその背中は獲物に向かって突進する猪だった。

309 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/02/29(金) 22:13:26 ID:???
あと3,4回の更新でAdd"E"は終わります。
最後まで頑張って読み進んでください。

310 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/03(月) 19:34:09 ID:???
「お前、意外とアツい奴だったんだな……」
 既に時は止まっている。さっきからずっと町中の事務所を周っているのだが、香川は血眼だった。俺と明海と千葉が引っ張られている感じが、今までと違ってかなり異質だった。
 『鳥取○○事業所』と書かれたドアのノブを何度か引く。逢魔が時なのに電気すら点いていないということは、ここは留守なのではないのか。
「おい、留守なんじゃねーのか。他の場所を当たろうぜ」俺が言った途端、ドアが弾けんばかりの轟音が響いた(もちろん、時を止めているので俺たちにしか聞こえないわけだが)。

311 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/03(月) 19:38:00 ID:???
 それはやはりというか何というか、徳島だった。
「……可能性があるところは全て潰す。留守だとかそんなの関係ねぇ」猪はその勢いのまま、なんと正拳突きでドアを破壊した。
「栃木ぃ!」中に押し入る。どうやら本当に誰も居なかったようで、奥の社長室にも人っ子一人居なかった。……ここも、ハズレだったようだ。
「後は何戸だ、千葉」「32。工場が四つで、後は全部事務所」もう100世帯は回ったと思うぞ。殺す気か。
「なら、その工場を先に回ろう。散々探し回って疲れた後にだだっ広い工場を探すのは、流石に骨が折れる」
 件の鳥取家に関連している工場は、巣合町に三つ。
 そして、旧苅萱村にも一つ。

312 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/03(月) 19:40:20 ID:???
「失礼しまーす……」時が止まっている以上、絶対に隠し通す事は不可能だ。
 どうやら精密機器関連の作業場だったらしく、数人が甲斐甲斐しく作業をしている姿のままで止まっていた。こういう作業はロボットを使った方が早いんだろうな。
 こんな所に栃木は居るはずがない、そう思えてきた。まぁ、あくまでカンだが。
「ダメだ。みんな作業中だった。こんな所に堂々と女の子を連れて行けるはずがない」香川と徳島の残念そうな声が聞こえる。
「絶対見つけよう。次行こう」神奈川の声が、今は俺たちの励みだ。
 その後さらに二時間半ぐらい費やし、町内の残りの工場を回った。
 今の所、成果ゼロ。手がかりすら無い。そういえば、所々に警官が配置されていた。警察の方も捜索をしているのだろう。――とすれば、残るは――。
「行くか、あの村」
 俺たちは行くことにした。あの、全ての始まりの地へ。

313 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/03(月) 19:45:32 ID:???
淡々と小説載せるスレになってる気がしないでもない。

お題くれれば多分何でも書くよ。

314 : ◆K.tai/y5Gg :2008/03/04(火) 01:48:33 ID:???
大きく動いて来ましたね
時止めってなんか弊害ないのかな。止まってるウチは10倍くらいのスピードで老化するとか


謎の正解率はきっと1%

315 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/04(火) 21:10:51 ID:???
――旧苅萱村
「寺の奥にこんな廃工場が……」肝試しに行ったときは周りが真っ暗で見えなかったが、こんな場所があったとは。しかし周りの草も伸びっぱなしで、草いきれがものすごい。
「かつては工業が盛んだったと言われている。おそらく、数十年前にはもっとたくさん工場があったはず」この工場は唯一の生き残りか。
「あ、それなら私聞いたことがある。村の工場には幽霊が出るから、昼間でも絶対に近づいてはいけない、って」明海だった。俺はそんな事は聞いたことないんだがな。
 その時、どこかから叫び声が聞こえてきた。
「美穂っ!」香川が、工場に向かって脱兎の如く駆けだした。「お、おい香川っ!」俺たちも遅れて付いていく。

316 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/04(火) 21:11:13 ID:???
 俺が工場の入り口で息を切らして呼吸を整えている時に、中で香川が必死に工場内を漁る音が聞こえた。
「香川!」目の前には、栃木美穂を抱きかかえる香川幸輔が居た。「ようやく、見つけた……」
 周りにはいつぞやに見た厳つい男達が三人ほど立っていた。もちろん、時間を止めているので動かないのだが、それでもいつ動き出すのかと恐ろしくなった。
「ああ……良かったぁ、見つかって。国外にでも連れ出されていたらどうしようかと思った」それは流石にないだろうとは思ったが、本当にそうなっていたら今頃どうなっていただろうか。
「何にせよ、いつまでもここにいるのは良くない。早く街に戻って保護してもらおう」

317 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/04(火) 21:11:45 ID:???
 出ようと思って足を踏み出したとき、明海が蹴躓いて転んでしまった。「明海! 大丈夫か?」
「大丈夫。でも……これ、なに?」明海が指差した先には、そこには似つかわしくない『何か』があった。
「これは……」徳島がそれをしげしげと眺める。眺めるまでもなく、それはまるで。

「……この事件の証拠になる、かもしれない。お前ら、お手柄だ」

318 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/04(火) 21:13:48 ID:???
第三章「出棺」 終


EpiloguE "funEral"に続く

319 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/04(火) 21:20:42 ID:???
Add"E"は次回で終わりです。

このスレを生かすために話題をください!

320 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/03/06(木) 12:56:05 ID:???
じっくりちょっとずつ読んどります。登場人物みな魅力的
それを生かした群像劇か、別次元の話が同時進行して最後に一つに結びつくようなミステリーorSFも読みたいな
感想下手でレスすんの控えてたが、毎回楽しみにしてるよ

321 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/06(木) 18:45:59 ID:???
ありがとうございます(`・ω・´)
そういうのもやってみたいですねー。

322 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/03/06(木) 20:41:09 ID:???
じゃあ>>313のお題

「登場人物みな魅力的
それを生かした群像劇か、別次元の話が同時進行して最後に一つに結びつくようなミステリーorSF」



323 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/03/06(木) 20:42:12 ID:zEQqoW54
【宣伝】

クロスくんの作品をまとめてるのはNimだけ!
http://www42.atwiki.jp/novelsinmixi/pages/67.html

324 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/06(木) 20:45:44 ID:???
ちなみに最後になっちゃうので何だ今更という感じなんですが、
ミスチルの「Any」がこの内容にピッタリなんですよね。

325 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/07(金) 17:26:44 ID:???
ぼちぼち次回作書き始めますー。

326 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/07(金) 22:18:10 ID:???


                                 EpiloguE "funEral"



327 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/07(金) 22:19:54 ID:???
 俺たちは、ただひたすら逃げ回っていた。何のためかって? 分かってるだろ。
 俺たちは昨日の証拠を元に、犯人を証明した。犯人には申し訳ないが、おそらくこれから死よりも恐ろしい罰が待っているだろう。気の毒に。
 その代わりと言ったら余りにも嫌な表現ではあるが、俺たちもただでは済まなかった。
「どこまで追ってくるんだよ、あいつら!」
 黒ずくめの男が20人ほど、さっきから俺たちを追いかけ回しているのだ。これはもう、『捕まったら殺される』鬼ごっこだ。
「とりあえず逃げろ! 地の果てまで!」俺たちが逃げているのは警察署とは全くの逆方向だった。今からそっちに向かうと、おそらく捕まってしまう可能性が高い。
 こうやって俺たちが必死になっているのは他でもない。『時間停止』が使えなくなってしまったのだ。俺たちからそれを取り除けば、ただの世間一般の高校生でしかない。
 状況は、俺たちにとって圧倒的に不利だった。
「……、そうだ!」徳島が急に河川敷を右に曲がり、もう一つ下流の方にある橋にたどり着いた。

328 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/07(金) 22:20:35 ID:???
 その先の光景は何故か不思議だった。
 こっちがわの河川敷は砂利道で大きい岩がゴツゴツしているが、その川を隔てた先には今の心境に全くそぐわないカラフルな花畑が広がっている。
「この橋は跳ね橋だ。この跳ね橋を起動させれば、大きくリードできる!」そう言って、徳島は橋の真ん中にある機械室のドアに無理矢理押し入った。
 数分がこんなに長く感じられるのももう一生無いだろう。
 その途端に地震かとも思える大きな音がして、橋が動き出した。全員が慌てながら橋の向こうへ渡っていく。その中で、俺だけが唯一その場に残った。
「高知君! 早くっ!」「高知ぃ!」事態を察知した明海と香川の叫びが聞こえてくる。

 ……ごめんな明海、そしてみんな。俺、そっちには行けないんだ。

End

329 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/07(金) 22:21:14 ID:???
(了)

330 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/07(金) 22:22:26 ID:???
合計何レスになったでしょうか。
とりあえず、Add"E"は一旦終了です。ご愛読ありがとうございました。


解答編は、多分用意しません。

331 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/09(日) 07:48:15 ID:???
Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)ハッ

放置するところだった。

332 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/03/09(日) 21:05:04 ID:???
フヒヒ

333 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/09(日) 21:20:27 ID:???
>>332
うわああああああああああああああああああ

334 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/10(月) 20:24:29 ID:???
残り666レス、何で埋めようか。

335 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/10(月) 20:29:11 ID:???
とりあえず要求された>>322をちまちまと書いている次第ですが、その間になんか小ネタができないもんですかね。

せいぜい、昔に書き古したものを載せるぐらいでしょうか。

336 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/03/10(月) 22:48:00 ID:???
再録!再録!
それかショート・ショート
ちょっとした小咄などもどうでしょう

337 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/11(火) 18:31:00 ID:???
なるほど。考えてみます。

338 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/11(火) 22:20:41 ID:???
えーと、とりあえずご報告をば。
僕の至らない脳みそでは>>322の要求を完全に満たすことは難しいと判断しました。

ので、次回の企画もおそらく「東西連合軍」が動き回ることになるでしょう。

339 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/03/13(木) 12:48:48 ID:???
続きが気になる
時間停止が使えない状況下
高知君なにをするつもりなのか


340 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/13(木) 16:51:35 ID:???
>>339
残念ながら、Add"E"はあれ以降に続きがないのです。
なんでなんでしょう?そこを考えてみると、このお話に込められた謎が解けるかもしれません。


登場人物・背景は何となくできたので、今は話のプロットを考えてます。

341 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/16(日) 10:20:43 ID:???
放置いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

342 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/03/16(日) 10:31:04 ID:???
・)

343 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/16(日) 10:41:59 ID:???
私的ボツネタ反省会

・「T-D」 作成日:一昨年の10月頃?
「タイムマシンを組み込んだ殺人事件」という無茶苦茶なネタ。「T-D」とは「時空探偵」の略称。
作成途中で矛盾が生じるというあるまじき事態でボツ。元ファイルが消されてる。

・「i^2(ファイル名)」 作成日:去年の9月頃
コードギアス、FFT等に感化されて作った。ジョブを持った人間がゲームの中の中世の世界へ飛び込んでいく。
壮大すぎて続きが書けない上に、初期設定に無理があってボツ。

・「sober(ファイル名)」 作成日:去年の6月頃
DEATH NOTEに感化されて作ったもの。主人公がそのまんま月君。
設定もデスノのパクリすぎてボツ。

・「遼の懐剣2」 作成日:去年の10月頃
某サイトで細々と連載していた「遼の懐剣」の続き。
続き物はダメだと分かっているのにどうしてもやってしまうのがおいらの悪い癖らしい。
途中で飽きてボツ。

・「探偵錯誤説」 作成日:去年の9月
真っ当な事件もの。刑事がうり二つで性格が違う双子で、それを利用して事件を解決するというもの。
有栖川有栖の某作品のパクリなのでボツ。

344 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/16(日) 10:51:24 ID:???
・「カード・アップ」 作成日:去年の12月〜今年の1月頃
「card up one's sleeve」で「奥の手を見せる」という意味。
Nimに掲載されている「RUSH」の真相の部分。
吸血鬼まがいでトリガーハッピーの男と、刀を振り回す女と一人の少年が巻き起こすファンタジー活劇。
途中で飽きてボツ。

・「ラブコメの条件」 作成日:今年の1月
「名探偵の掟」に触発されて作った作品。
オチが思いつかなくてボツ。

ちなみに「sober」の設定の一部はNimにある「Otello」に受け継がれていたりする。


総括:鉄は熱いうちになんとやら。精進せな。

345 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/16(日) 10:55:39 ID:???
ちなみに載せる気は一切無いのでご了承を。

346 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/17(月) 20:29:27 ID:???
ショート・ショート「way to E」近日公開予定。

347 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:10:04 ID:???
way to E

※「Add"E"」既読推奨。

簡略的な人物紹介
高知悠太・・・語り手。
香川幸輔・・・高知の友人。
徳島航・・・高知、香川の入る「東西連合軍」のリーダー。

348 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:12:45 ID:???
――晩夏、放課後
夏も終わり、木々がそろそろ緑のファンデーションの上に黄色の模様を乗せ始める頃の話だ。

「フられた?」
 香川の素っ頓狂な声を聞いて、喋るべきではなかったと俺は後悔した。
「そ。肝試しの日から俺はずーっとブロモチモールブルーなのさ」その言葉は詩的を越えてもはや『気持ち悪い』の域だったが、傷心の俺は全く気にしない。
「何で?」本人曰く、『まだそういうことは考えられない』だってさ。
 香川も流石に苦笑いした。「逃げられたな、上手いこと」
 言われてみて気がついた。そう言えばそうなのかもしれない。
「それって俺に問題有りなの?」
「ねぇだろう。強いて言うならタイミングとか」香川は経験者であるかのごとく饒舌になっている。

349 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:14:19 ID:???
 そんな俺ではあるが、先日街を歩いていたら香川の恋人である栃木が『見知らぬ男性(←ここ重要)』と一緒に歩いていたのを見てしまったのだ。
 ……これは、本人には忠言しない方がいいのだろう、二人のためにも。
「タイミングって、具体的にいつだよ?」そうだ。そこまで指南できてこそ経験者というものだ。
「知らん。そういうのは一番近いお前が推して知るべき事だ」
 見事にはぐらかされたよ。

「つうかさぁ。お前無駄に妄想力があるんだから、文壇でも目指せば?」
 こんな歳になって、ようやう自分の夢について深く考えたと思う。……小説家か。
「……今は、そんな事考えられない」すると香川は、獣を獲た猟師の如く目をむいて「ほら」と言った。
「神奈川もおんなじ。時期尚早ってこった」

350 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:17:46 ID:???
「そう、か」自分の身を以て知れといったところか。「そこで、今から少しずつでもお前の魅力を以てアプローチするんだ」
 魅力?無茶苦茶な話だ。
「無茶苦茶じゃない。お前、本の話ぐらい出来るだろう? アイツ、文学少女だし大丈夫だろ。話合うって」
 本を読んでいる事ってプラス要素なのかな。……でもまぁ、一般の漫画ばかり読んでる奴よりは文字を読んでいる気がする。
「そこそこ。お前にあって他人にあんまり無いもの。それが大事。第一、前の小説はなかなか良かったぜ」
 ……あの話は、無かったことにして欲しい。
「そんなに嫌だったか? 文字嫌いの俺でも読めるくらい、読みやすかったぜ」男子から褒められたのは、こいつが多分最初だろう。ここは素直にありがとうと言うべきか。
 瞬間、ドアがガラリと開いて、徳島が顔を出してきた。
「あ、お前らここにいたのか。……愛媛、見なかったか?」愛媛とは、俺のクラスに居る男子の名字だ。

351 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:22:00 ID:???
 『東西連合軍の男子勢は徳島、高知、香川と揃っているのだから、愛媛を逃すわけにはいかない』
 ……という徳島の(かなり無茶苦茶な)言い分により、徳島が独断で愛媛を強制入部させようと躍起になっているワケだ。
「帰ったんじゃねーか? アイツ元陸上部だし、足は速いぞ」その言葉がまずかったのかもしれない。
「オー・ケー。俺から逃げられると思ったら大間違いだぁぁぁぁっ!」そのまま徳島は、教室の窓を開いてそこから校庭に走り出していった。別に、愛媛は逃げてるワケじゃないんだが。
「ほっとけ。アイツが言いだしたら止まんないの、お前が一番知ってるだろ」
 その様子はさながら戻ってこないブーメラン、端的に言えばパトリオットミサイルだった。
「新入部員、か。なんかあると良いな」
「そうだなぁ。この空気を掻き乱してくれたりすると、俺的にもかなり助かる」

――その予想はかなり間違った形ではあるものの、確かに当たっていたのだった。

352 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:22:35 ID:???
こんなもんでいかがでしょう。

353 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/03/19(水) 19:46:26 ID:+W5SCISG
キ…(-_-)キ(_- )キ!(- )キッ!(  )キタ(  ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!(゚∀゚)キタ━━!!

>「そ。肝試しの日から俺はずーっとブロモチモールブルーなのさ」その言葉は詩的を越えてもはや『気持ち悪い』の域だったが、傷心の俺は全く気にしない。

なんかキョンぽい

354 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/03/19(水) 19:47:12 ID:???
あまずっぺえのう
高校時代を思い出して軽く・・・


いや、かなりブロモチモールブルーだ
真に勝手ですが>>349は俺へのアレだと勝手に受けと勝手にったぜ

355 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/19(水) 19:56:07 ID:???
>>354
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
なんか怖いです。

356 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/03/21(金) 03:21:46 ID:???
今初めて東西連合軍の男子姓が四国なのだと気づいた

357 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/21(金) 22:54:30 ID:???
おそらくですね、今のペースでは書き上げ→発表を費やすと5月以降になりそうな感じがします。
 それ以降だとちょっと僕の方も忙しくなってくるので、どうしましょう?
 適度に貼っていきましょうかね?

358 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/03/21(金) 23:02:29 ID:???
クロスの気の向くままに負荷のかからないペースでおながいします
いつでも待っておりますので。ここはクロスのホームだぜ!

359 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/22(土) 20:45:40 ID:???
じゃあ、とりあえず順次貼っていくことにしますね。

おそらく、来週の月曜日に更新します。

360 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:44:27 ID:???
「Face to"E"」
表題 兼 著・クロスハゲ

↓Nimコピーは下レスからどうぞ

361 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:46:04 ID:???
「01 The Magician―WILL,ability,diplomacy」

 『持ち物には名前を書きなさい』と小学生の頃に耳タコになるほど言いしつけられたものだが、今、この俺自身に名前を書いてもよいのだろうか。
 生まれてこの方、自分の名前に興味を示した事なんて無かった。
 おそらく一般的な少年と一緒に、変な名前を見ればテレビの前でほくそ笑んでいたりしたものだ。何を言いたいのかと言えば、加害者が被害者になるときはいつでもあり得る、ってことだ。
「キミ、愛媛君だね?」それは今日の昼休みの事だった。突然すぎて記憶に焼き付いている。「そうだけど」靴を見れば赤色。同学年だった。
「帰り、暇ならちょっと俺に付いてきて欲しいんだけど」今日は何もすることがないし、帰ってもニュースしかやっていない。勉強する気はさらさら無いので、俺は付いていくことを決めた。
 それが失敗だった。

362 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:48:32 ID:???
 そして時間は今に戻る。目の前の男は徳島航という。
 風の便りに聞いたことがあるが、全国模試で毎回偏差値68以上を叩き出す猛者なのに、如何せん性格が偏屈で、並の人間ならば彼と普通に話をする事も難しいという。
 端的に言えば、俺とは住む世界が違う人間ってやつだ。そんな奴が、俺に何の用なのか。
 黒ミサの生け贄にでもするのだろうか、それともカエルや羊に対して腹上死を強要されるのだろうか。……答えは、そのどれでもなかった。
「お前が居れば東西連合軍の西が完成する。コンプリートリーな性格の俺にとっては愛媛が居ないことが苦痛だったんだ」
 言われてみればなるほど『奇妙』だが、それは倫理を逸脱しない『奇妙』であった。誰にも聞こえないように、俺は胸をなで下ろす。

363 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:51:34 ID:???
 徳島航に言われるがまま付いていくと、校門前に既に何人か集結していた。
「お。誰こいつ?」初っ端から、カチンときた。
「あれ、お前愛媛じゃん。愛媛……何だっけ?」こっちの男には見覚えがあった。確か、高知ナントカって言ってたな。
「あきら。春眠暁を覚えずの『あかつき』と書いて『あきら』」
 中学校の頃は『あかつき』と呼ばれていた。誰かが間違って呼んだのが始まりだったような気がするが、今はそんな懐古に耽る時間ではない。
「あかつきくんが何でここに居るの?」急に疑問符を投げたのは女だった。確かこいつは高知と同じクラスだった気がするな。……神奈川、あけみとか言ったっけ。漢字忘れた。
「諸君、彼は東西連合軍に入ることを快諾してくれたので、後はお前らだけだ。承認する奴はオー・ケーサインコール」
 もちろん、『快諾した』などと俺はゆめゆめ申すまじく候。

364 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:54:06 ID:???
「「「「オー・ケー!」」」」無駄に、統一感のあるコールだった。
「それでは新人君も来たところで活動を始めたい」これから何が始まるんだろう、と恐怖半分、ワクワク半分。
「――しかし残念ながら、今のところめぼしい事件がない故に、本日は解散!」ガクッときた。肩すかしとはこの事だ。
「ってことだ。新人君よ、今日はご足労ありがとう。もう帰っていいぞ」このまま徳島をぶん殴ってもよかったのだが、初日から不仲になるのは困るので、言われるがままに帰路へついた。
 ――結局何をするのかも全く説明されてないし、名前を知らない人が二人ぐらい女子に居た気がする。
 神奈川明海(ちゃんと漢字を調べた)は割と可愛い方だが、アレは彼氏のひとりぐらい既に居そうな気がする。
 もう一人の女子は、香川とかいうさっき俺になめた態度をとった奴とベッタリだった。もう一人は本ばっかり読んでそうで、俺とは反りが合わない気がする。
 なんであんな奴がここに居るんだ? あの徳島航の選出基準は何だったんだろう?
 何度考えても、分からない事づくめだった。

365 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:55:35 ID:???
「よぉ」急に声をかけられて、俯いていた俺はぶつかりそうになった。
 何故ここにいるのだろう、それは高知悠太だった。「……何だよ?」友達付き合いが下手くそな俺はつい、喧嘩腰な口調になる。
「お前が、昔の俺そのまんまの顔してたからさ。そこでこのイケてる先輩からアドバイスを賜ってやろうかと」ガラにもないことを言ったからであろうか、高知はニヤニヤしている。「……いいぜ、聞くだけなら」
「じゃあ、行こうか」言われて付いてきてみれば、近くの公園のベンチだった。別に他意は無い。
 広い場所に出てようやく気付いたのだが、秋風が冷たい。イスと密着している、背中や尻も冷たい。わざと俺のバッグを二人の間に挟んで距離感を作ったのは、この寒さのせいということにしておいてくれ。

366 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:57:22 ID:???
 公園の周りは、クソ暑かった夏を過ごした木々の緑の中に所々黄色の点が付いた、無秩序のマーブル模様を呈していた。
「困ってんだろ。いきなり変なところに誘われてさ」高知のしゃべり方は幾分かフランクだった。まぁ、同じクラスだし。
 ……本当なら断っても良かったのだが、「――なんかお前らの表情って、ガラにもなく生き生きとしてるよな。徳島みたいな偏屈ヤローと一体どんなことをすればああなるのかな、って知りたくなった」
「ふーん」高知はそう言うと、すぐ脇の自販機で買ったコーヒーに口をつけ、すぐ離した。「甘ったるい。やるよ」そう言って、飲みかけのコーヒーを手渡された。……熱い。
「で、何を具体的にしてくれるんですか?」ホントだ、甘い。「しようと思ったけど、やめた」
 ブッ、とコーヒーを吹いた。白砂の地面がコーヒーカラーに染まる。
「お前、何しに来たんだよ!」こんな所まで呼びだしておいて、今更それはないだろう。
「その頃の俺は、さっきまでのお前よりもっと悩んでた。でもどうやらお前の様子からして、多分大丈夫かなと思ってな」「……何だ、それ?」
「期待して損した。じゃあな」俺の質問に答えることなく、そう言って高知はどこかへ行ってしまった。
「ますますもって分からん」それが俺の正直な感想だった。空き缶をくずかごに投げ入れ、俺も家に帰ろうとする。

367 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:58:21 ID:???
「待ってください」不意に後ろから声をかけられた。……、この女子の声には聞き覚えがない。振り向いて、人違いじゃないのかと確認する。
「ハンカチ、落としましたよ」
 そこには声から想像した通りの少女が立っていた。……黒髪は肩ほど、落ち着いたような表情。襟元は黒地に黒っぽい朱色のラインで、それ以外は白と黒を基調としている、見たことのない制服だ。
 で、その手にあるハンカチは紛れもなく俺のだ。
「おおう、ありがとう」手渡された瞬間、嫌な想像が脳内のシナプスを駆けめぐる。俺と高知が公園に居たのは10分程。ハンカチを落としたのが俺だって分かるって事は、少なくとも彼女が歩ける範囲内に俺が居たって事だ。
「キミ、高知が居なくなるまで待ってたの?」なんでそんなことを聞くのだろう、俺は男として最悪だ。そう思ったがそこは俺の性格だから仕方がない。
 すると、目の前の少女の雰囲気が変わった。表情はさっきと同じでニッコリとしているのだが、目が全く笑っていない。
「はい。あの人は私じゃありませんから。……私、柊澄香。これからよろしくね」

「……どういう、意味だよ?」思えば、これが全ての始まりだった気がする。

368 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/24(月) 20:59:01 ID:???
次回「03 The Empress―UNKNOWN, length, action」

369 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/03/25(火) 01:00:12 ID:???
アルカナか

370 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/03/25(火) 12:42:23 ID:???
はてさて

371 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/25(火) 21:50:35 ID:???
別に次が03でも、間に02が割り込むわけではありません。
第二章「03・・・」程度に考えていただければいいでしょう。
大文字になっているのは、その話の中に見合った単語を抜き出しています。

ちなみに今回は愛媛君の一人称ですが、次回は高知の・・・

372 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/25(火) 21:54:28 ID:???
ハンカチ持つ男子って居るのかな。
格好いい男子が持つならタオルなイメージ。

373 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/25(火) 23:07:54 ID:???
次回更新は4月初頭です。

374 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/27(木) 21:14:25 ID:???
待機中。

375 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/28(金) 22:47:53 ID:???
「03 The Empress―UNKNOWN, length, action」

 キミは公園を出た。吹く風は、春一番に抵抗するかのように冷たく感じられる。公園で遊ぶ子供達の様子を見て、君は一人呟く。
「子供は風の子――か」そのセリフに、誰かが応える。
「――元気な子、ってやつかしら?」目の前の少女は、君には見覚えがない。「俺はもう卒業したからな」
「可哀想に。子供の心というのは何時までも持ち続けて良い、万人不変の心よ」君は彼女に感謝しても、しなくてもいい。
 君は尋ねることにする。「で、キミは誰?」すると女は急に、はにかんだような表情になる。
「私は門音美緒。――言霊使いよ」君に話しかけている少女は髪をポニーテールに結っていて、君と同じ高校の制服を着ている。しかしそれでも、君には見覚えがない。

376 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/28(金) 22:48:54 ID:???
「俺、美女に絡まれるような理由は持ち合わせていないぜ」
「ところが私にはあるのよ、高知悠太君」ない。君はそう言って否定する。「私、あなたと付き合いたいの」君はそれを受け入れても、拒否してもいい。
「残念ながら、俺は彼女については持ち合わせが――」「あるでしょ」矢継ぎ早に飛んでくる言葉の矢じりに捉えられ、君の思考は爆発寸前になる。
「な、何だよ! 玉砕したんだよ、悪かったな!」君は嫌な記憶が蘇る。
「だ・か・ら」彼女は顔を君の顔にゆっくりと、あと一歩でキスにこぎ着ける事が出来るほどに近づける。「付き合おうって、言ってるじゃない」彼女の髪からは、リンスの香りが漂ってくる。
「ダメだ。お前が居ると、尚更よりを戻せなくなる」君は考えた。彼女が脇にいながら『前の話は無かったことにしてくれ』などと言っても、説得はおろか墓穴を掘ってしまいそうだ、と。

377 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/28(金) 22:49:42 ID:???
「じゃあ、私がこれから言霊の恐ろしさを見せてあげる。それが真実だったら、私と付き合って頂戴。いい?」君の返事が取り入れられることは全くなく、勝手に話が進んでいる。
 君は、心の中で懇願する。誰か、こいつを止めてくれ、と。
「分かった。嘘だったらお前を隧道に埋め立ててやる」彼女は、全く動じない。彼女自身に度胸が据わっているのか、それとも君の言い方に迫力がなかったのかは分からないが、何となく相手にするには恐ろしい事が分かる。
「じゃあ、言うわ。――三日後、私の知り合いの男が惨たらしい、汚らしい姿で死ぬわ。罪状は――強姦」
 彼女の愛と正反対の告白に反応するかのように、木々が蠢く。
「被害者は……お前なのか?」その答えを無視し、彼女は君の手にメモを残して去っていく。「さぁ。どうでしょう」君は、もう一度呟く。
 誰か、こいつを止めてくれ、と。

378 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/28(金) 22:50:10 ID:???
次回「04 The Emperor―government, firmness, defense, ALLIANCE」

379 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/29(土) 22:36:29 ID:???
【コラム】
"E"シリーズで何となく書きたいと思っているのは、「論理はその人の中に帰結する」という事です。
何を言うのかと言えば、「正義」という言葉はその人の倫理観から生まれてくるものでしかないということで、それが万人共通とは絶対に言えないということです。法律だって全員が賛成するとは限りません。多数決などが顕著ですね。

それを典型的に表したのは徳島航。一見すると偏屈そうなキャラをしていますが、彼は独自の価値感を元にしながら、不真面目に生きているように見えてかなり芯のあるキャラです。
そして、今回それに対抗するのは前述の「柊澄香」などです。
「独自の正義のぶつかり合い」と言えば聞こえは良いでしょうが、要するに喧嘩です。
その中から、あなたが何かを見ることができたとしたら――、それはあなたが一番このお話を楽しんでくださっている証拠に他ならないでしょう。

さてさて、かなり前に執筆終了をしたAdd"E"についてですが、その解答はこっそりと「Face to"E"」や「way to E」の中に示されつつあります。これからも期待せずにお待ち下さい。

380 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/03/30(日) 20:57:04 ID:???
遅ればせながらAdd"E"を読み終えたので乙コールしにきたらとっくに新作が!
なんという……

これだけ安定した文章力でこのペース……おそろしいこ!
まずはway to Eから読ませていただきます。

381 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/30(日) 21:08:59 ID:???
シニアさんキタ━(゚∀゚)━!!

ありがとうございます(`・ω・´)精進します。

382 :アンニュイキモハゲはADHD ◆7OEabiXBL2 :2008/03/30(日) 22:06:03 ID:???
なんというエール
これはやる気出る

383 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/03/30(日) 22:45:41 ID:???
今日は結局一文字も書き進めることが出来ず・・・
4月更新分は溜めてありますが、このペースじゃあ・・・

384 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/04/01(火) 00:49:04 ID:???
追いついた
今日あたりくるかなー

385 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/04/01(火) 12:33:00 ID:???
>>379
なるほろ

柊澄香さん名前の響きがキレイなうえにキャラも濃そうですね
注目の新メンバー愛媛君のキャラが食われかけてる勢い

386 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:16:35 ID:???
今回、香川君が空気な予感が・・・
活躍の場を与えないとヤバイ。

つーこって更新しますね。

387 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:21:19 ID:???
「04 The Emperor―government, firmness, defense, ALLIANCE」

 一方その頃神奈川明海は、栃木美穂や香川幸輔と一緒に帰路についていた。
 ……明海は、近頃栃木がキューピッドに走ることをあまり快く思っていなかった。今日も今日とて、そうなのだ。
「で、どうなのよ、高地君」香川はわざと聞いていないフリをして、街の方を見やっている。
「美穂ぉ。それって、どんな解答を期待してるのかしら?」自然と、笑顔に怒りが籠もる。ポーカーフェイスとはよく言ったものだ。
「あんたが変なことばっかしてるから、私が逆にヤキモキしちゃうんじゃん!」理由は分からないが、逆ギレされた。「な……! かっ、関係ないじゃない!」
「ありあり、大ありよ! あたし達は東西連合軍、一心同体なの! 仲間の恋路を応援するのは当然でしょ!」この場合は明海にとって、ありがた迷惑というやつであろう。

388 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:23:22 ID:???
「でもでもでも、そんなこと今は考えてられないし……」「そんなこと言っちゃって、実はこっそり進展してたりするんじゃないの?」明海は一方的に言い立てられて、ついカッと来てしまったのだろう。
「だから、私と高地君はそんなふしだらな関係じゃないってば!」この発言がまずかった。
「ふしだらって何よ! 私と香川君がそんな風に見えてるの!?」そういうワケじゃないよと弁解するも、焼け石に水だった。
「もう知らないっ! あんたなんか最大のチャンスを逃して余生を寂しく暮らすのがお似合いよっ!」そう言うと、香川の手を強制的に引いて走り去っていってしまった。
「あっちゃー……やっちゃった。後で謝っておかなきゃ……。ごめんね」聞こえているはずはないのだが、つい言ってしまうのが明海の性格だった。

389 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:26:27 ID:???
「ところで、さっきから見てるあんたは誰? 場合によっては警察に突き出すわよ」異様な感覚に、明海はとっくに気がついていた。指摘された影が姿を現すと、それは明海と同年代ぐらいの好青年だった。
「その格好でストーカー? 最近の社会は怖いわね、あんたみたいなのでも平然とこんな事するんだから」その男は、街を歩けば女の二、三人は軽く釣れそうな格好だった。
「別に、ストーカーじゃあない。人捜しだ」男は低めの声で弁解した。
「で……その人は見つかったの?」何となく、明海には展開が読めていた。「見つかった。そしてそれはとりもなおさず、キミのことだ」
「そういうのをストーカーって言うのよ!」明海は反駁するが、目の前の男は飄々としていてまるでつかみ所がない。
「……何も分かっていない君達の為に、端的に言おう。僕と付き合ってくれなければ、高知悠太ほか東西連合軍の命は保証しない」
 その言葉で、反論を考えていた明海も完全に動きが止まった。
「今、何て……」聞き直さなくても良かったはずなのに、何故か聞き直さないと信じられない、矛盾した感情から来るこの感じが、果たして明海にとって怒りだったのか衝撃だったのかは分からない。

390 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:28:38 ID:???
「キミの選択肢は単純。付き合えば平穏無事、そうでなければ皆殺し。じゃなくても――」瞬間、男は一気に近づいて明海の足を払った。明海の身体が支えを失って宙に投げ出される。
「このまま押し倒して、そのまま犯すという選択肢もあるんだぜ?」転ぶ寸前の所で、明海は抱きかかえられていた。明海は、降参した。「……分かった。名前だけ、教えて」
 そういうと男は、嬉しそうな顔をして明海から手を離し、武装解除(グリコ)のポーズをとった。
「そうこなくっちゃ。俺は野直史人(のじきふみと)。よろしくな」よろしくなんて、明海が言うはずがない。
「じゃあ、私からも条件を一つだけのんで頂戴」明海はそう言うと、返事も聞かずに野直のほおを右手で思い切り張り飛ばした。
「これでお相子よ」頬に手を当てて、野直はうずくまっている。「――何よ、あんた男でしょ!? 少しぐらい耐えなさいよ!」そう言うと野直は、「……もう少し、このままがいい」と奇妙なことを言った。
「何よ? そっち系?」「……いや、パンツ見えるから」
 間髪入れずに明海はスニーカーで野直の顔を踏みつぶした。

391 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:29:18 ID:???
次回「12 The Hanged Man―wisdom, discreetness, intuition, ORDEAL」

392 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/01(火) 21:44:33 ID:???
微妙に意味と意図解説
題はニコフの言うとおり、大アルカナからとっています。意味もwikipediaなどから。
大文字になっている理由は>>371あたりを参照に。

01 魔術師――意志、手腕、外交
意志が大文字なのは、(徳島航によって)愛媛の意志が無視されていることと、愛媛が自分の意志で仲間に入るというところから。

03 女帝――不明、(月日の)長さ、行動
なぜ不明が大文字なのは言わずもがな。

04 皇帝――統治、堅固さ、防御、同盟
同盟が大文字なのは……なぜでしょう?

12 吊された男――英知、慎重、直感、試練
大文字なのは……「試練」です。

393 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:02:01 ID:???
「12 The Hanged Man―wisdom, discreetness, intuition, ORDEAL」

 偶然ってのは、つくづく不思議なもんだ。なんでこんな感傷的にならなきゃいけないんだよ、くそっ。
 そんな俺の動揺は学校でも顕著に表れた。
「高知……」という言葉と「愛媛……」と呼び止める声がほとんど同時に重なって、一瞬沈黙する。「「あ……」」また、タイミングが合って沈黙する。
 袖すり合うも多生の縁って、誰の言葉だよ。良い言葉だなこんちくしょう。
「もしかしてお前……。俺と同じ事で悩んでないか?」なんとなく、そう思った。「……多分」笑ってやりたいのだが、笑えない。
「いや、別に悩んでるって程じゃあないんだけど、嫌なものを引き摺りながら歩く羽目になったというか何というか……」高知が言えば言うほど、俺のそれと近似値をとるようになってきた。
 何か、腹立たしい。それをぶちまけるように言った。
「浮気者……」高知にとってこの一言が大打撃になることを、俺は知っていた。

394 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:03:38 ID:???
「ちっ、ちがわい! 俺だってそこら辺弁えようとしてるんだよ!」
 だったら悩むこともない。スッパリ切ればいいだろうに。「そんなモテモテだったっけ、お前って?」よくは知らないけど、モテ期というものが到来したのではないだろうか。
「何で今なんだよ……余計すぎるだろ」言わばモテ期と厄年が同時に到来したようなものだ、落ち込むのも分かる。
「とりあえずさ、二人で話合わね?」そうだそうしようと頷いた瞬間、教室のドアがガラリと開いて、徳島航が出てきた。……まさか、立ち聞きしてたのか。
「その話、俺も混ぜていただこうか。……もちろん、拒否権はナシだが」
 『全国一斉不幸のラブレター選手権』のネタにでもする気なのだろうか。その男は、不吉な笑みを浮かべながら、我が家であるかのようにズカズカと教室に乗り込んできた。
「ま、ここでいいだろう。イス借りるぞ」徳島は普通に座ればいいものを、無理矢理俺と高知の間に割って入って座った。バカじゃねぇのか。

395 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:06:49 ID:???
「少なくともお前よりは分別がある」その上、足を組んで机の上に投げ出す始末。「邪魔だ、話し合いが出来ない」
「俺はその時になったら話す。お前ら話してろ」だから、それについて邪魔なんだってば。
「徳島はいつもこうだから、ほっとけ。……で、お前は誰に告白されたんだ?」柊澄香って女だ。と、とうとうと応える。
「ちなみに、俺のは門音美緒ってんだ。」おい、なんで心なしか嬉しそうなんだお前は。
「そんで、そいつは言霊使いとかいう奇妙な職業に就いていたりするのか?」全く以てその通りだ、と頷く。
「俺もそうだよ」徳島も返事をする。それは見た目だけなら、いつも爆弾が服を着て歩いているような徳島だった。しかし、今日はなぜか視線が空を彷徨っている。
「ま、それはそれとして。そいつが人の死を予言したりする事は無かったか?」俺は頷くしかない。確か、『惨たらしい、汚らしい姿』だっけ。まぁどうせ嘘っぱちだ。そんな細部を強調する必要はない。
「で、徳島。お前の所に来た物好きは何て名前だ?」
「金建留美。ダブルドリルのチビ女」徳島は身長がそろそろセンチメートルに届かんとしている。そんなタワーから見ればどんな女もチビだろうよ。
「ダブルドリルって何だ?」すると、高知がこっそり俺に耳打ちする。「ツインテールの、徳島的呼び方だ」へぇ、と適当に頷く。

396 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:10:17 ID:???
 徳島航はこういったように、特定のものに対して特徴的な呼び方をすることがある。それも他の奴等から学習済みだ。
「それについて、対策とか立てなくていいのか?」
「いらねーよ。どうせ嘘、戯れ言、虚言、妄想乙」そんなこと言って、あいつが強硬手段に出たらどうする気だよ。「それはねぇよ。テレビの見過ぎだ」徳島にぴしゃりと言われたが、俺はまだ揺らいでいた。
「そんなこと言われてもなぁ……。というかそれ以前に、やんわりと断れないものかね」「俺は明海が居るし」こいつ、まだ言ってる。
「まぁまぁ。あいつらもなんか目的を持っているんだろう、こんな俺たちだけに集中してアプローチをかけるということは、つまりそういうことだ」なんだか、徳島が一番こだわっているような気がする。
「徳島……その金建留美って子、そんなに可愛かったのか?」何となく聞いてみた。
 徳島は虚を突かれたような表情をして、数秒の間を置いてからかなり消極的に「……ちょっと、な」と言った。

397 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:12:05 ID:???
「へぇ。徳島も人間だったんだな」高知が皮肉る。「どういう意味だよ」と、徳島は机から脚を離す。
「ジョークジョーク。な、愛媛?」俺に対して無茶振りをするな。場の空気が分からん。
「ジョークだよジョーク。オッケ」間髪入れずに徳島の丸めたノートによる一撃が飛んできた。「団員内の会話に於いて返事をするときはオー・ケーだ!」我を忘れて反論しそうになった俺を、高知が制した。
「落ち着け。とりあえずなんつーか『慣れ』ってやつだ」俺と高知が、同時に溜息をつき、徳島はなんとそのまま寝始めてしまった。
 結局、会議(それ以前にその様相を呈していたかどうかすら不明であるが)はそのまま結論も出ぬままお開きとなった。
 ――そこまでは、いつも通りだった。

398 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:13:33 ID:???
次回「15 The Devil―violence, keenness, black magic, INVARIANT AXIOM」

399 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/04(金) 23:21:17 ID:???
「15 悪魔―暴力、激烈、黒魔術、前もって定められ動かせぬもの」

400 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/05(土) 03:51:30 ID:???
さてと

401 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/05(土) 03:53:32 ID:???
キャラの使い方は手塚先生パターンなアレかな。別物語として読んでていいんですよね?
下手にリンクさせるより潔し。こういうのは好きだよ

402 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/05(土) 04:01:00 ID:???
スターシステム!

403 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/05(土) 18:04:46 ID:???
>>401
それぞれのキャラに一人、(強引に)ヒロイン(ヒーロー)がくっついた上で話が展開します。
また、Add"E"とはほぼ別物として考えて良いです。
(こっそり言うと、徳島君の性格とかもちょっと変えてます)

……が、Add"E"を読み解くためのヒントもポツポツと提示されています、そちらもぜひお探し下さい。
読者の面白みが無くなると嫌なので明言はしませんが、「way to E」の冒頭に一つ……

404 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/06(日) 09:47:30 ID:???
「15 The Devil―violence, keenness, black magic, INVARIANT AXIOM」

 話はその晩だった。
 携帯で電話するのなんて久しぶりなんだが、とりあえず受けてみる。
『愛媛か、俺だ。高知だ』「知ってる。名前見えてた」
『いきなりで悪いんだが、ニュースサイトを見て欲しい。トップにないなら地元新聞のサイトに行けばあるはずだ』
 全く使われていないPCに向かい、ブラウザを起動する。
「どんなニュースだ」『会社社長が変死、みたいなニュース』
 瞬間、ゾワッと鳥肌が立った。それは俺が、どういう事が起きているのか、高知が何を言わんとしているのかをそれとなく悟ったからに他ならない。
 検索サイトのトップ……そんなニュースはない。俺ははやる心を抑え、地方新聞のサイトへ切り替える……。残念ながら、そこにはあった。
『大手会社社長が変死』と綴られている。被害者は……門音正昭。

405 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/06(日) 09:49:23 ID:???
「門音!?」門音なんて名前は、石を投げれば三人ぐらいは当たるんじゃないかとは思うが、この時の俺にそんなことを信じている心の暇はなかった。
『信じてるだろ。別に関係ないって』もう、鳥肌が止まらない。頼む、続きを言うのを止めてくれ。それとは逆の、続きを懇願したい思いがその気持ちと反発して火花を散らす。
『――門音美緒が、死亡時刻丁度に俺にメールを送ってきやがった。……言ってること、分かるな?』このニュースによると、死んだのは今日の早朝。ニュースとしてここに載ったのは、どうやら3時間前のようだ。
「……そうだ。関係ない。偶然だ」
 自分を落ち着かせるために放った言葉が、煙のように虚しく消えていく。それはまさに、ビヨンドマイセルフ。どうしてこんな事になったのだろう。
「一人なら、まだ確実とは言えない。もっと強固なものが出てこない限り、俺は信じない。――そんな、言霊なんて」
 そうだ。考えるのも恐ろしいが、あの女や高知や徳島が付き合っている女達が共謀して、実際に手を下しているのかもしれない。……接点は、探せばあるかもしれない。
『手を下す? ――そりゃ無理だ。ニュースによると病死だ。薬物や外傷の疑いなんて全く書かれていない』
 高知がどうしてこんなに楽観的なのか、俺は小一時間問い詰めたくなった。

406 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/06(日) 09:50:27 ID:???
『何でかって? ……そりゃまぁ、俺の脳みそを凌駕するような出来事はこの世界の事象を抜け出さない限り起こりえないからな』言われて一瞬、何を言っているのか理解が出来なかった。
『経験者ってやつだ』電波がここにも居た。……俺は耐えられなくなって、一方的に電話を切った。
 その後、高知から電話は掛かってこなかった。

 ――翌々日のニュースに於いて、『金建』大朗が病死するというニュースが飛び込み、俺の中の認識が少しずつ崩れ去るのを感じていくことになる。

407 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/06(日) 09:51:50 ID:???
次回「09 The Hermit―deliberation, being worn, COLLAPSE」
「09 隠者―深慮、忠告を受ける、崩壊」

408 :シニア ◆c60kN1pi16 :2008/04/06(日) 12:34:47 ID:???
乙んこ

ワクワクしてきますね

409 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/07(月) 20:32:46 ID:???
なんとかして4月中に終わらせたいですね。

まだ書き上がっていないので何とも言えませんけれど。

410 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 08:35:58 ID:???
「09 The Hermit―deliberation, being worn, COLLAPSE」
 認識ってなんだろう。そんな意味の分からない疑問が飛び交う、俺の脳。常識って何だろう。
「――それでも、信じないっていうの?」日が山から微かに尻尾を見せている状態にもかかわらず、柊澄香は今日も今日とてそこに立っていた。
「……ああ。信じない。俺に呪いでもかからない限り、俺は信じない」発言が矛盾する。もし今俺自身に呪いがかかっているならば、それは信じるとか信じない以前の問題だ。
「だったら決まりね。あなたに簡単な呪いをかけてあげるわ。……大丈夫、死にはしないと思うから」恐ろしい事を言うもんじゃない。しかもこの得体の知れない女が言うと尚更怖い。
 何がまず恐ろしかったと言えば、この女は俺が放課になるまで、校門で待っていたということだ。単純に、ストーカーだ。訴えれば俺が勝つ。
「やだ。断る」その反応に、澄香はニヤリとする。まるでその言葉を望んでいたかのように。
「どうして? 『呪いでもかからない限り信じない』って言ったじゃない」ギクリとする。
「……お前が俺を想っているなら、俺に呪いをかけるなんていう背徳的な行為は謹んで当然のはずだ」こんな反論、無意味だ。酒に酔って繁華街を徘徊しているオヤジと口論をしているのと同じで、こんなものは堂々巡りの水掛け論でしかない。
「残念ながら」そう言いながら澄香は、俺の後ろに立とうとする。「あなたへの思いは二の次。言霊使いとしての使命が最優先よ」

411 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 08:37:19 ID:???
 嫌だ嫌だ、と俺は首を振り耳を塞ぐ。これではだだっ子だ。
「まぁ、そう気負わずに。座って話しましょう?」
「帰る」
「今あなたは南東の方角が凶よ。方違えしたら帰れなくなるんじゃないかしら?」何を今更と思ったが、その時の俺は、異物への趣向が家へ帰りたがる気持ちを抑えつけていた。
 俺の通っている学校の目の前はT字路になっていて、右を行けば街。左を行けば住宅街、とまぁ端的に言えばそんな感じになっていた。
「分かった。掛けられてやろうじゃん、その呪いとやらに!」吹っ切れば何でも出来る。
 ……間違いなく、嫌なことが起きる予兆なのだが、俺は全く気にしなかった。
「じゃあ、もう暗くなりそうだし手短に」そこで澄香はコホン、と咳払いをする。

412 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 08:39:10 ID:???
「あなたの帰り道に、踏切あるわよね?」あるな。あそこはマンションの間で音が反響するので、時々耳障りなのだ。
「――そこで、事故があったの知ってる? ちょっと、昔の話になるけどね」それは知らない。
「知らなくて当然よ、その夏に起きた事故は秘密裏に処理されたわ。……何故かと言えば、その事故の惨状が余りにもヤバい……言い換えればグロテスクだったから」澄香は続ける。
「誰が考えるかしら? そんな寝静まった深夜の住宅街に、小さい子供が線路の真ん中に立っているなんて。――結果は無惨。その子供は一瞬にして細切れの骨付き肉になってしまった」もう、続きを聞くことが空恐ろしくなってきた。聞くんじゃなかった。
「『夜中に目覚めた子供が、興味本位で外に出てしまった』――。両親は当然、息子のこんな姿を晒したくないと考え、秘密に処理させた。……問題は、その後」
 夜風が、その瞬間だけ生ぬるい。
「その時から数ヶ月間、あの踏切では事故が絶えなくなった。……一ヶ月に11件。それも夜半に集中して。あまりの事態に、地元の神社がお祓いを執り行なった程よ」そう言って、澄香は立ち上がった。「な、何だよ」と、俺。
「行ってみない? 今から」勝手に澄香は歩き出した。
 そしてそこには、拒否権が無い故に金魚のフンの如くついていく俺が居た。

413 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 08:40:23 ID:???
 歩いてメートルほど。日はすっかり暮れていて、周りには誰も居ない。……しかし、やはり。
「あのな、ここは一応俺の通学路なんだ。今までそんなの見たこともないのにどうしてそんないきなり……」
 ここは自転車や車の往来が激しい上に道路が狭いため、遮断機の外側に一本、歩道が造られている。確かこれは数年前に設置されたものであって、澄香の口ぶりからすれば例の事故はおそらくそれより前だと思う。
 一方澄香を見ると、その視線は線路の先にあった。何もないよ、そう自分を元気づけるつもりで俺も線路の向こう側を見やった。
 一瞬、俺は目を疑った。
「……嘘、だろ?」思わず、感情が口をついて漏れ出る。目の前の光景は、さっき澄香が話してくれたとおり。年端もいかない少年が、こんな初秋にもかかわらずランニングシャツに短パンのまま、線路を隔てた向こうに立っている。

414 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 08:43:21 ID:???
「待てよ……今は秋だぜ……? なんでお前、そんな格好でそこに居られるわけ? ……あはは、そうかそうか。子供は風の子ってやつか。いやしかしでもな、そこまで無理すると、風邪をひいてお母さんに迷惑が」
「危ないっ!」途端、澄香が強い力で俺を後ろに引っ張った。
「何を――」同時に、『プアーン』という電車の間延びした音が響き、間髪を入れずに鉄塊が俺の眼前数十センチを超高速で通り過ぎた。
 電車が通り過ぎても、少年はまだそこにいた。普通、消えてるもんじゃあないのかな。
「おい!」呼びかけようとした瞬間、少年は何かを呟き、そのくせ口元をニヤリと歪めながら真っ暗な住宅街の漆黒に溶けて消えていった。
「……っ、何なんだよ……」事態の深刻さに気付き、脂汗がドッと吹き出す。そう、少年は消える間際に、確かに俺に向かって言ったのだ。
 『惜しかったね』って。

415 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 08:46:33 ID:???
次回「Re:10 Wheel of Fortune―ACCIDENT, a changing circumstances for the worse」
「10 運命の輪(逆位置)―アクシデントの到来、情勢の急激な悪化」

416 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/04/08(火) 12:09:59 ID:???
おお…謎は膨らむな
全然先が読めない

417 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/08(火) 13:11:46 ID:???
>>413
× 一瞬、俺は目を疑った
○ そう気負っていたものだから尚更、俺は目を疑ってしまった

の方がいいかなぁ。
「一瞬」とか「瞬間」とか「刹那」とか「同時に」って接続表現を多用するのがちょっとしっくり来ないので。

418 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/04/08(火) 19:43:13 ID:???
こええ
夜中に読まなくてよかった

419 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/09(水) 20:09:56 ID:???
このあとすぐ、>>415更新

420 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/09(水) 20:33:33 ID:???
おいつけねえ

421 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/09(水) 20:39:01 ID:???
今日やったら土日ぐらいまで休みます(多分)。

422 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/09(水) 20:41:27 ID:???
「Re:10 Wheel of Fortune―ACCIDENT, a changing circumstances for the worse」

高知「なんかそれだけだと、ただの怖い話に聞こえるぜ」君は、嘆息しながら適当に話を聞いていた。
 あんな壮大な夢を描き挙げた君にとって、愛媛の話はかなり胡散臭く聞こえる。
香川「幽霊の正体見たり枯れ尾花、ってやつか?」今回の集まりに、君は意図して香川を加えた。
 君の調査の結果、ここ最近に於いて香川には誰も言い寄る人が居なかったという。
徳島「言霊の正体っていうのはそこだろ。……非日常が認識の中に加わることで、枯れ尾花が幽霊に見えただけの話だ」
 徳島は興味半分、めんどうくささ半分で座っている。
愛媛「じゃあ何か? 俺は遮断機をガキと錯誤したってのかよ?」さっきから興奮しっぱなしの愛媛を、君はなだめる。
高知「落ち着けよ。徳島のは極端な例だ」

423 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/09(水) 20:43:24 ID:???
徳島「大体、俺でもそんな事故があったことなんて知らないしな。知っていたらとっくに俺は徹底調査を済ませている」
 徳島の性格を想像すれば、それはごく当たり前のことだった。
徳島「そうやって他人に変な認識を植え付けるのが言霊であり、呪だ。脳に働きかけるという点に於いては、かなり優れていると言える」
徳島「そういや、今日は女性陣が全く居ないな。何処行ったんだ?」
 君はそこでようやく、状況に目が行くようになった。
香川「千葉は図書委員会が忙しい、栃木はバイト、神奈川は用事」ふーん、と君は嘆息する。「明海だけ、動機が不純だな」君は、思ったことをつい口に出す。
香川「そうか? 俺からすればお前らがコソコソやっていることの方がよっぽど不純、むしろ怪しい」
 香川は唸る。どうやら、君達のやっていることをなんとなく羨望の眼差しで見つめているようだ。

424 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/09(水) 20:45:14 ID:???
高知「お前は俺たちと違って両手が塞がってるんだろ」
香川「ふん、何とでも言え。……で、徳島はどう思ってるんだよ、そいつら」
徳島「泳がせとけって、一昨日から言っている。……まぁ、何時までも守りに徹していては仕方がない、少しずつこっちも攻めていくとして。……高知と愛媛、そいつの制服は本当に隣の学校のだったんだな?」
 君は、ちょっとずつ昨日の記憶を蘇えらせる。

高知『白黒基調……? ここら辺の制服に、そんなのあったかなぁ。……千葉、お前知らない?』
千葉『疎すぎ。隣街のお嬢様学校がその制服を着ている』

高知「ああ、ほぼ間違いなく」
徳島「そのくせ、もう一人はこの学校に居る。……つまり、その気になればいつでも調べられるワケだ」
 君達の準備は、整った。

425 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/09(水) 20:48:25 ID:???
次回「0 The Fool―DREAM, an act of folly, extreme enthusiasm」
「0 愚者―夢想、愚行、極端熱狂」

426 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/12(土) 11:17:52 ID:???
「0 The Fool―DREAM, an act of folly, extreme enthusiasm」

 ――side F
「あんたのやろうとすることなんて所詮は机上の空論、空想、妄想よ」
 神奈川明海は、ほぼ毎日野直史人によって連れ出され、けったいな魔術講義を聴かされていた。そろそろ、こちらから拒否しようと思い詰めていた矢先だった。
「もう、僕の『仲間』達は君達の友人達に取り入っている。一人は哀れな虜囚、後二人が堕ちるのも時間の問題だ」人質を取られている、ということだ。俯瞰的に見れば、状況は明海に白旗を渡しかけている。
 だがしかし、ここは町中。何かしようと思えば、周囲の目がガードしてくれている。
「信じないわ。……幽霊、超常現象、超能力? そんなものが存在するなら、私に無くてあなたにある理由は何なの?」野直はニヤリとする。―まるでその質問を待っていたかのように。
「残念ながら、『能力が人を選ぶ』。そこに優劣はなく、ただの因果律の結果論でしかない」
 こういう斜め上の発言をされることが、高知にも直して欲しいという点から彼女は嫌っていた。
 明海のケータイが振動する。偶然か何なのか、それは高知悠太からのメールだった。
『出来るだけ参加してくれよ
 みんな待ってるぜ』

427 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/12(土) 11:22:37 ID:???
「哀れな男だ。もうすぐ、大いなる力の前に跪く運命であることを知らないとは。……無知は知ではない、愚だ」明海と付き合いだした途端、この男はどこからか電波を受信したかのような発言が多い。
「ちょっ……、他人のメールをのぞき見るなんて最低よ!」明海がそう言っても、野直は全く表情を変えない。
「コメントを付けただけだ。動画みたいに」何のことだろう、と明海は訝る。
 だが、明海の行動を揺るがすことは出来なかった。呪い、呪術、黒魔術、そんなものはナンセンス。明海の理念はひたすらそこに居座った。
「まぁいいわ。とにかく……あんたがやろうとしていることは犯罪よ。今すぐ手を引きなさい」
 明海は、『私と手を切れ』という意味合いで言った。しかし逆に、その一言で野直にスイッチが入ってしまった。激昂した様子で、野直はゲームオーバーの合図を告げる。
「だったら……言霊使いの真の力を見せるまでさ!」
 ――真の力だって。最後まで明海は、それを嘲笑った。

428 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/12(土) 11:30:04 ID:???
――side M
「あなたの説もアリかもしれないわね」愛媛にとって、それは意外な反応だった。
 愛媛も愛媛で、徳島の推理を元にして、それを澄香に叩き付けていた。
「でも……それは完璧ではないわ。あると言うのは簡単。無いと言うのも簡単。でも、それを確立する方法は――」
 『悪魔の証明』というものがある。
 悪魔の存在を証明するには、たった一例を挙げるだけで良い。『私は悪魔に出会ったことがある』という証言だ。
 しかし、否定するのは不可能である。なぜならば否定するには世界中に存在する人類六十ン億人を調べ上げ、無いことを確かめる必要があるからだ。
「そうね……じゃあ、あなた達の論理、思考を完全に打ち崩す策を使うことにするわ」澄香の表情が翳る。
「……無いものが見えるとか、そういうのはもう無しだぜ」
「ええ。そんなものじゃないわ。……あなたの仲間内の誰かを操り、その人の思考の裏側を剥き出しにする。……フフッ。想像したら楽しくなってきたわ」
 その一言に、愛媛は笑う。なぜ笑うのか、愛媛もよく分からなかったのだが、とにかく笑いがこみ上げてきたのだ。
「『思考の裏側』って……そんな稚拙な――」
 ――愛媛もまた、それを嘲笑っていた。

429 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/12(土) 11:31:26 ID:???
次回「Re:21 Judgment―remorse, deadlock, BAD NEWS」
「21 審判(逆位置)―悔恨、行き詰まり、バッドニュース」

430 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/13(日) 11:56:29 ID:???
日曜日おわた

431 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/04/15(火) 00:21:49 ID:???
すごいことに

432 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:06:53 ID:???
じゃあそろそろ・・・

433 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:11:47 ID:???
「Re:21 Judgment―remorse, deadlock, BAD NEWS」

 突飛な宣言をされた翌日の事だ。
「徳島の家?」俺にとっては初耳である。
「多分、誰も行ったこと無いと思うぜ」
 高知がそう言っているということは、おそらく変ちくりんな紅白ストライプで塗られているとか、家全体が稼働してガ○ダムみたいになるとか、きっとそんな所なのだろう。……行ったことがないというより、行きたくないな。
「俺もそんな家だったら喜んで住み移るだろうな」と言ったのは徳島。なんだ、違うのか。
 何をするかといえば、そいつら3人全員を呼んで、目的を問いただすというのだ。状況は、圧倒的にこちらが有利だ。
「そんな所にノコノコ出てくるなんて、アホとしか思えないんだけど」香川の意見は的を射ている。
「あいつらプライド高そうだからな。その点を突けば釣れるって」そう言って、徳島は(俺の)ケータイでおもむろに電話を始めた。

434 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:14:13 ID:???
「もしもし、金建か。……用があってな、今晩来て欲しい所があるんだ。……喪中だぁ? ああ、別に無理にとは言わない。君の執念は所詮そこまでということか。……ああ。待ってる。場所は――。……あと、君の愚直な取り巻きどもも連れてきてくれよ」
 思いついたら即実行という、徳島航の性格がよくにじみ出ている。
「明日以降に延ばすのが面倒くさいんだろ」そう言って高知が嘆息する。そう言われると全く格好良くなく見えるから不思議だ。
「高地君、明海のこと本当にいいの? 明海寂しがっていたわよ?」高知はツンとした表情のまま、窓から夕焼け空を眺めている。
「……お前がキューピッドをする必要はないさ。上手くやるよ」
「Add"E"みたいにか?」香川が、何かおかしな事を言った。
「アッド……何だって?」俺がマジメに質問しているのに対して、香川はニヤニヤしている。
「アドイー。高知の妄想が詰まった小説の題名さ」へぇ、と頷く。
「それって面白いの?」何の気無しに聞いているが、目の前で高知が段々と小さくなっている。

435 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:18:00 ID:???
「ストップ! その話題は、非常にまずい!」
 必死に止めようとした高知だったが、そんな面白い話を見す見す聞き逃す俺ではない。
「どうせお前の言の後には『俺にとって』って続くんだろう? ……確か、ここにテキストファイルが」そう言って徳島がポケットをまさぐると、USBフラッシュメモリ(紫色のスケルトンカラー)があった。
「お前、何でそんなの持ち歩いてるんだよ! あれか、俺を常に貶めようと画策しているのか、徳島!」
 高知がいつになく必死である。それが俺にとってはちょっと面白かった。
「徳島。それについては、お前の家で愛媛と一緒にゆっくりと話し合おうぜ」香川が上手く纏めたが、それでは一切解決していない。『高知にとって』は。
「そうだな、じゃあ行こうか。無論栃木、千葉、お前らも強制だぞ」
 別に嫌とは言っていないのだが、そこら辺にちょっと気を配るのが徳島だった。案外、紳士なのかもな。

436 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:22:12 ID:???
 で、歩いて15分ぐらいか。徳島の家(本人曰)に辿り着いた。
「ふ……普通、だなぁ……」感想をうっかり漏らしてしまった高知に限らず、徳島以外が全員そう思っただろう。
 徳島は当然キレた。
「何だよお前ら、俺の家が普通なのがそんなに嫌か! ああそうだな、機動戦士でも宇宙戦艦でもなくて悪かったな!」怒りの矛先が変なところに向いている。
 しかしそれでは話が進まない。とりあえず全員が愁傷に謝罪する形で丸く収まったのは、徳島ならではといえる。
「あ、航お帰りー」家に入るなり、美女が部屋から顔を出した。「あら、お客さん? ……明日は雹が降るかもしれないわね」徳島航は、ブスッとしたまま何も言わない。
「あ、僕たち航君の友達です。今日はよろしくおねがいします」そして順々に名乗る程度の自己紹介。
「姉貴、もういいか。俺達は忙しいんだ」目の前の女性は徳島の姉だった。
「うっそ、お姉ちゃんなの!? ……鷹を生んだ鳶がアルビノの烏まで産んだのね」何だかよく分からない喩えだが、栃木の言いたいことは何となく伝わった。
「失礼だろ! ……鳶に」さっきの高知みたいに、今度は徳島が小さくなっていった。
 お姉さんと別れ、俺たちは徳島の部屋に通された。
 するといきなり、「ちょっと待ってろ」そう言って徳島は、俺たちを呼んでおきながら本人だけ部屋に入ってドアを閉めた。
 ガタガタ、バタンバタンと、泥棒が居るみたいな音が始終響き渡ること、数分。ようやく徳島が現れた。

437 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:23:45 ID:???
「待たせたな、入って良いぜ」何故か徳島は息が切れている。何をしていたんだろう。
 部屋の内装に見とれている場合じゃないのだが、初めてなのだから許してくれ。
 窓は広く、ベランダから外が見える。部屋の上にはロフト(登れるものの、荷物置き場になっているようだ)があり、徳島が普段から見せている突飛さというものが全く無い。
「広いな。俺に二畳ぐらい貸せよ」「お前には勿体ない」などと、香川や高知が口々に感想(罵倒)を述べる。
「ねぇねぇ、これって徳島君の?」栃木が見つけたのは、机の上に置いてあったハリセンボンのキーホルダーだった。
「それは後で海に帰すやつだ」徳島も意味の分からないことを言っている。
 徳島の家というだけで、軽く30分は潰れた。
「お前ら! ちょっとマジメに行こうぜ」そう言う徳島自身が、押し入れから麻雀セットを取り出しながら言っているので、全く説得力がない。

438 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:27:38 ID:???
次回「13  ―end, RUIN, scattering, a sign of death」
「13 死神―終末、破滅、離散、死の予兆」

※英字のカードタイトルは無記名です。

439 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/15(火) 21:31:19 ID:???
なぜか徳島の株が上がっているのでとことん徳島を掘り下げて。
……寧ろ、次回は千葉の株が上がりそうですが。

440 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/04/15(火) 21:58:24 ID:???
色々とニヤついてしまう回でしたw

おつんこ

441 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 00:48:08 ID:???
さて行くか

442 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 01:01:37 ID:???
>>372
タオルかけるか巻くかしてた

443 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 01:17:26 ID:???
ここまでっ

追いつけなかったな最初っから読んじゃったよ

444 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 02:05:28 ID:???
こええええええ

445 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 02:07:40 ID:???
>>424
千葉ちゃんおるん?

446 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 02:08:01 ID:???
あぁ、昨日のかすまん

447 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/16(水) 02:12:43 ID:???
>>426
なーんかハルヒ思い出したぞ小泉くん的な

448 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/16(水) 20:18:49 ID:???
一気にレスが・・・!
ありがとうございます(`・ω・´)

449 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:06:49 ID:???
「13  ―end, RUIN, scattering, a sign of death」

「ロン。四暗刻、字一色、大四喜」その声は千葉杏子のものだった。
 徳島はキレて盤をひっくり返す。で、片付けるのは俺ら。
「……がぁぁぁぁっ! 千葉! お前は何連勝すれば気が済むんだ!」俺は麻雀のルールをよく知らないまま参加しているのだが、どうやら徳島のキレ具合からして相当の大勝ちらしい。
「5倍役満」全く表情を変えずに、さらりと死刑宣告。恐るべし、千葉杏子。
「ならばこちらも全ての手段でお前を打ちのめすまでさ! 将棋、囲碁、チェス、オセロ、ポーカー、タロット!」落ち着け徳島、最後のは違う。
「囲碁は知らない」その言葉に、汗だくの徳島の眼光がキラリ。
「よぉしっ!囲碁だ囲碁!囲碁盤を出せっ!」
 既にハイテンションな徳島に冷や水をぶっかけるように、玄関の呼び鈴が鳴った。
 その場にいる全員が、表情を強ばらせる。一気に落ち着いた徳島が先に行き、呼び鈴の主を確認する。

450 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:08:25 ID:???
「奴等だ」その声を合図に、全員が玄関に集結する。……神奈川は居ないが。
「やぁ、豪勢なお出迎えご苦労。……そう、言いたいのだがね」出てきたのは男一人に女二人だった。
「だが、何だ? 恐れおののいて逃げ帰りたくなったか」徳島もここぞとばかりに言う。俺たちは空気。なんか居心地が悪い。
「いや、そうじゃない。本当はもう一人居るんだが……」その男の隣には柊澄香が立っていた。その隣にいるのは、おそらく門音美緒だろう。すると俺が門音美緒だと思った女が突然に、
「美緒が居ないの」と言った。
「ちょっと待て。お前、門音美緒じゃないのか? クリソツなのだが」高知が疑問の声を発した。そうだ、門音は高知と絡まっていたんだっけ。
「あ……すいません、私は金建留美です。黙っていましたが、門音美緒と私は双子なんです」高知はロングヘアと言っていたが、目の前の金建という女はツインに髪を結っている。
 ……あれ?

451 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:10:13 ID:???
「なぁ、神奈川も居ないよな。あいつ何してんの?」俺がそう言うと、目の前の男が応えた。
「神奈川明海なら、今日はそっちに行くと言っていた。……まだ来ていないのか?」高知が首肯する。
「じゃあ散歩がてら、探しに行こうか。家に居ると落ち着かない」徳島の提案に、反対するやつは居なかった。
 適当に挨拶を済ませ、俺たちは徳島家を後にした。外に出ると、風が冷たい。季節はすっかり秋だった。
「ダメだ。明海、電話にも出ない」まさか、事件に巻き込まれたとか……。
「それはない。アイツは強い。俺の性格が逆方向にねじ曲がるくらいにボコボコにされた」そう言ったのは野直史人(さっき自己紹介してた)だった。何があったか知らんが、復帰できない痛みでも味わったんだろう。歩き方がちょっと内股だ。
「神奈川が行くあては? 後お前も。門音美緒が行きそうな所は?」徳島がサクサクと指示を出すが、「知らん」と高知は適当に応えていた。

452 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:12:10 ID:???
「そう言えば、二人とも高地君と関わっている人よね」栃木の発言が、核心を突いていた。
「恋敵」千葉が呟く。……まさか。『こころ』じゃねぇんだから。
「じゃあとりあえず双方の家に行ってみよう。――野直とやら、門音の家はどこだ?」
 あっちだ、と誘導される。徳島の家からさらに歩いて10分ほど。ここから俺の学校に行くのはちょっと骨が折れる。
 野直が呼び鈴を鳴らす。……返事はない。
「やっぱり居ないか」ちょっと待て、と野直が言う。何事かと見れば、脇の入り口(裏口)のドアノブをガチャガチャと弄っている。
 格闘すること数秒。野直の「――やっぱり。開いてたぜ」という言葉と共に、全員が敷地内に殺到する。
 そこは広々とした庭だった。テニスぐらいなら出来そうだ。そこを、野直と澄香が先導して歩いていく。

453 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:14:59 ID:???
「裏口の裏口は――、」開いていた。明らかに住居不法侵入なのだが、そこを無視して入り込む。暗くて分からないが、とにかく広いということだけはなんとなく分かった。
「電気のスイッチはどこだ?」徳島が聞いてから少し間があって、ようやく灯りが点いた。全員が何処にいるかが分かるぞ。
 そこには俺、高知、徳島、野直、千葉、栃木、門音、金建、神奈川、柊。
「……え?」続いて響き渡る、女子達の悲鳴。
 そう、そこには確かに『全員が居た』のだ。

「明海……? お前、何でここに? というよりもなんでお前、そんなの持って……」掛けたビール瓶、そしてそこに横たわるのは、汚らしく血を噴出させて横たわる門音美緒。
 その血はどんどん滴り、カーペットのベージュ色がペンキをぶちまけたように赤黒く染まっていっている。
「美緒……っ、美緒っ!」
 澄香の叫び声が無ければ、俺たちはきっと永遠にそこでずっと氷漬けになっていただろう。
 そしてそこで――確かに俺たちの目の前で――、門音美緒は撲殺されていた。凶器になったであろう、月明かりに鈍く光る瓶は真ん中から、どんな力が加わったのか想像できないほどに破壊されており、滴る液体が血なのか、それともそれ以外なのかどうかは分からない。
 ――ただ一つ分かることと言えば、それを握りしめているのは神奈川明海だったということだ。

454 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:16:07 ID:???
次回「16 The Tower―grief, misfortune, DISHONOR, falling」
「16 塔―悲嘆、災難、不名誉、転落」

455 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:28:05 ID:???
あと2,3話ほどで終わりです。
大きく出たことが彼らの絶大なウィークポイントになってしまったという、推理小説には無い破格用法でございます。

456 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/17(木) 21:37:56 ID:???
【適当なお知らせ】
"E"シリーズ最終編が登場。
最後に吹き荒れる嵐は「東西連合軍」の崩壊!?
話は、「東西連合軍」の原点に立ち返る……
「一人欠けたら、全員がその穴を埋める!それでこそ連合軍だっ!」

「in a limit on"E"」
近日執筆開始予定

457 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/18(金) 22:51:21 ID:???
あ、なんか滑った感が

明日明後日にまた更新しますね。
(まだ最後まで出来てないんだよなぁ……)

458 : ◆K.tai/y5Gg :2008/04/19(土) 01:24:22 ID:???
なんでいきなり超展開になってんだミステリ路線丸出しや

とりあえずトリプル役満はそりゃもう怒りますよね徳島くん

459 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/04/19(土) 02:40:47 ID:???
そ、そんな…

460 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/04/19(土) 02:57:51 ID:???
おっほ
面白いことになってきてたー!

なのにあと2,3話だなんて!

461 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/19(土) 02:58:48 ID:???
クロスくんなら23枚正位置逆位置全部やってくれるはず

462 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/19(土) 21:34:35 ID:???
>>458
超展開……あれ?


一行付け足すの忘れてました……

>>459
頑張るんだ!
>>460
この行動が逆に……って感じで事態は収束していきます。
>>461
殺す気ですか

ニコフのアドバイスでようやくオチが考えつきました。もうちょっとしたら更新しますです。

463 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/20(日) 18:50:09 ID:???
ここからは説明臭い文章が多いです。

464 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/20(日) 18:52:28 ID:???
「16 The Tower―grief, misfortune, DISHONOR, falling」

――徳島家
 まず、状況を説明しよう。
 門音美緒は撲殺されていた。凶器は明らかにビール瓶。そして、明海が握っていたそれからは、明海の指紋しか検出されなかった。
 特筆すべきとすれば、明海は『酒に酔っていた』ということか。血液中にあったというワケではなく、呼気にアルコール分があったと言うことだ。未成年なので罰せられるべきなのだが、今はそんなことを言い争う時ではない。
 しかしながらそんな状況の不利さは、神奈川明海を完全に貶めるまでにはいかなかった。
 ――翌日に俺たちは事情聴取のため警察に連れて行かれたが、明海とその三人は遅くまで残されていた。

465 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/20(日) 18:54:38 ID:???
 警察の知り合いは居ないので、もはやこれ以降は俺たちの推測でしかない事を加えておく。
「あいつは無実だ。黒魔術でもなんでもない、ただの人殺しの隠蔽だ」徳島航は楽観的だった。徳島が言うなら大丈夫だろう、俺はそう祈った。……高知の為にもな。
「さて、と。千葉」徳島の合図を聞く前から、千葉はスタンバイしていた。昨日はゲームから殴り合いの喧嘩に発展しそうな状況まで持ち込んでおきながら、何だかんだで仲が良いのだ、この二人は。
「事態は飲み込みやすい。その上、真相も分かりやすい――」千葉はそう言って、調べたことを全て挙げた。
 まず持って、四人の接点。これがなければお話にならない。
「全員、名字は一緒。氏納屋(しなや)家から独立して、それぞれ一人暮らしをしているだけの話」

466 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/20(日) 18:55:24 ID:???
 やはりというか何というか、全員同じ名字だった。何となく察しはついた。
「氏納屋の会社は大企業。ライバルを潰したがるのは当然」
 俺は当然、あいつらが関係者を実際に殺したように見えている。しかし、千葉の真相は違っていた。
「別に、手を下すまでもない。社長である門音、野直、金建、柊は全員、老い先が短かった。つまり名前を借りただけ。呪い殺したように見せかけるのは簡単だった」
 そう、実際に手を下すよりも簡単な方法があった。死にそうな奴の名字を名乗っておけば、勝手に死んでくれるし、加えて呪いのご威光になる。
 死にそうな奴を4人も選べば、そのうち一人はほぼ確実に死ぬだろう。確率論ではあったが、結果として俺にとっては効果的だった。
「さて、そろそろ来るんじゃないかな」徳島は勝手に一人で頷き、玄関へ歩いていってドアを開く。その声と同時に響く、「高地君!」という声。
 神奈川明海が、戻ってきた。

467 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/20(日) 18:56:36 ID:???
次回「11 Justice―justice, good deed, consisting」
「11 正義―公正・公平、善行、両立」

468 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/20(日) 22:28:53 ID:???
新ジャンル「邪鬼眼否定」のストーリーが纏まりません・・・

469 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/21(月) 13:13:28 ID:???
なせばなる

470 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/04/22(火) 12:17:17 ID:???
エイリアンVSプレデターの様に
邪気眼VS邪気眼を延々と描き
読者に邪気眼の不毛さを悟らせる

471 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 18:09:02 ID:???
>>470
ぜひそれで書いてください。

今日貼りますね。

472 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 20:37:35 ID:???
おいらの書く推理(本当ならばそう言う事すらも甚だしいのですが、分かりにくく書くと読者が困るので敢えて使います)は、簡単な言葉で片付けられてしまうことが多いです。
「犯人は○○だ」と言うだけで全てが繋がる推理小説なんてのは、犯人視点で事が進んだりするモノ以外にはほぼあり得ませんね。
イマイチ練りが甘いという警告でしょうか(´・ω・`)

ちなみに昨日トリニティ・ブラッドを読んで、「プロットってこうやって書くんだー」って知りました。

473 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 20:38:37 ID:???
「11 Justice―justice, good deed, consisting」

 神奈川明海は、単純に言えばショック状態だった。あまり深く聞くのは自重すべきだと親や色んな人に注意されたのだが、彼女は無理をしてやってきた。
「まずもってだな、お前の見ている門音美緒と金建留美は、双子だった」それは、本人から言われたので知っている。「つまりだ。二人が入れ替わっても別に問題はないってことだ」
 ほう、と俺は頷く。俺は、その事実を知ったときから徳島と同じ事を疑問に思っていた。
「入れ替わるのはなんでだ」俺の疑問はそこだった。
「そう、それが早くも核心だ。毒を食らわば皿まで。金建に対して、門音が言う理由はなんとでもつけられるが、そこに意味はない」
 それは徳島航の、別の一面だった。怒りに身を震わせ、友人を守ろうとする姿勢。それは普段の破天荒ぶりからは想像もつかない。
 それだけならば最高だったのだが、徳島は得意げに眼鏡(伊達か?)を持ち出して、眼鏡のブリッジ部分を中指で押し上げる。……もしかして、それがやりたかっただけなのか?

474 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 20:39:35 ID:???
「本来の目的は、『金建留美』を『門音美緒』として殺す事だった。つまり、成り代わりだ」
 それを神奈川の異常行動に見せかけるために、俺たちの信用が必要だったのか。
「そうだ、愛媛。つまり、度を過ぎた兄妹喧嘩と言う奴だ」はぁ、と溜息をつく。
 余りにも世知辛いというか。喧嘩で人が死ぬのか。兄妹だぜ?仮にも。
「そういや、三人はどうやって明海をあんな格好にさせたんだよ?」高知が聞く。
「簡単さ。ビールがあっただろ、それを飲ませたんだ」アルコールに耐性が無ければ、記憶も簡単に飛ぶ。現場が酒臭かったのは、神奈川の身体のアルコール臭を誤魔化すためか。
「何にせよ、もう色恋沙汰は懲り懲りだぜ」
 徳島の表情が、恋人を失った悲しみに染まっているように見えたとしたら、俺の観察眼もかなりのものだ。
 程なくして、野直、柊、門音の三人は送検されることになる。
 こうして事件は、意外にもあっさりと終わった。

475 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 20:43:59 ID:???
次回はエピローグ二本立て!

「06 The Lovers―union, love, being absorbed in hobby, OVERCOMING AN ORDEAL」
「06 恋人達―合一、恋愛・性愛、趣味への没頭、試練の克服」

「21 The World―completion, success, JOURNEY」
「21 世界―完成、約束された成功、旅」

476 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/22(火) 20:51:31 ID:???
うわあああああああああああああああ

477 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 20:54:28 ID:???
短いのでタロットの本文内解釈を。
「15 The Devil―violence, keenness, black magic, INVARIANT AXIOM」
 死の運命は『決まっていた』、という四人からの暗示。
「09 The Hermit―deliberation, being worn, COLLAPSE」
 愛媛の超能力への倫理観の『崩壊』。
「Re:10 Wheel of Fortune―ACCIDENT, a changing circumstances for the worse」
 ↓の0番に繋がる。この場合は『どこかでアクシデントが発生してる』という意味。
「0 The Fool―DREAM, an act of folly, extreme enthusiasm」
 二人とも、超能力を『夢』のように嘲笑っている。
「Re:20 Judgment―remorse, deadlock, BAD NEWS」
 徳島の家がつまらなかったという『バッドニュース』。
「13  ―end, RUIN, scattering, a sign of death」
 神奈川明海の『破滅』。
「16 The Tower―grief, misfortune, DISHONOR, falling」
 神奈川明海の被った不名誉。
「11 Justice―justice, good deed, consisting」
 正義が勝つ。公平なので単語を大文字にしなかった。

478 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 21:07:38 ID:???
>>464
> しかしながらそんな状況の不利さは、神奈川明海を完全に貶めるまでにはいかなかった。
> ――翌日に俺たちは事情聴取のため警察に連れて行かれたが、明海とその三人は遅くまで残されていた。

文の繋がりがおかしいので、上の文を削除で。

479 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/22(火) 21:14:29 ID:???
http://www42.atwiki.jp/novelsinmixi/
クロスくんの作品がまとめてあるのはNimだけ!

480 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/22(火) 22:54:55 ID:???
次回更新は来週以降です。

481 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/04/24(木) 12:57:24 ID:???
おおお
おつ!

482 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/27(日) 19:14:57 ID:???
じゃあそろそろ貼りますか。

483 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/27(日) 19:17:31 ID:???
「06 The Lovers―union, love, being absorbed in hobby, OVERCOMING AN ORDEAL」

 高知悠太は、また改めて神奈川明海に出会う機会を得ていた。
「なぁ……前は、唐突に言ってごめん。だから全部ナシにしてさ、友達から……友達から始めようぜ」
 少しの間があって、明海の「いいよ」の声。高知はやった、と沸き上がる喜びを喉元まで抑えた。
「でもね、一つ条件」まさか変な存在を信じろとかそういう事じゃ無いだろうな、と高知は訝る。
「違う違う。あの小説の続き、ちゃんと見せて欲しいなって」高知の書いた小説は途中で止まっている。『それには続きがない』という確固たる理由があるのだが、そんな顔をされたら高知も言わないわけにはいかない。
「ああ。――でも、出てるのは俺たちなんだから、その中のことも事実に即さなきゃな」そう言って、高知は笑う。
 高知は決意していた。
 Add"E"なんかじゃない。並び替えて"DEAD"、『死』になるような、そんな暗いモノを書くわけにはいかなかった。
「なぁ、明海。もしこれを明るい物語に書き換えるなら、お前はどうする?」
「そうだなぁ。タイトルぐらいなら、この英単語を並び替えて――」
 高知はまた、描き始めた。掌の上の物語を。

484 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/27(日) 19:20:56 ID:???
「21 The World―completion, success, JOURNEY」

――最初へ戻る

「私、金建留美っていいます。単刀直入に言います、付き合っていただけませんか?」徳島航の目の前に現れた少女はそう言った。
「勝手にしろ」そんなことはどうでもいいとばかりに、徳島は適当に応える。
「別に、私もそんなことはどうでもいいです」意外な返事が返ってきて、逆に徳島が面食らった。「なんだよ、変な奴だな」
「しばらくしたら、私の兄妹によって私は殺されます」ビュウ、と晩夏には相応しくない風が吹き付ける。流石に、徳島も振り向かざるを得なかった。

485 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/27(日) 19:22:06 ID:???
「予言とか占いとかは信じないタチなんでな」それでもいいんです、と金建。
「あなたの組んでいる仲間達にも、私の友人がアプローチを掛けているはずです。そのうち、予言された死が起きて、私がその次に死ぬ」
 その発言で、徳島の中の金建へのイメージが「変人」から「奇妙」に変わった。
「じゃあ、当のお前が少しでも運命をねじ曲げるように努力したらどうだ」
 ううん、と金建は首を横に振る。「非力な私には無理です。ですから、あなたは事が終わった後に全てを明らかにして欲しい」
 その様子に対して『俺が守ってやる』だとか、『死ぬな』だとか、徳島はそんな大仰なセリフを吐く事はしなかった。
「ふむ、変な奴だな。それならば尚更分かった、引き受けよう」
 最初から、全ては徳島の掌の上だったようだ。

486 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/27(日) 19:22:50 ID:???
Face to"E"

"E"nd

487 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/27(日) 20:37:42 ID:???
全俺が泣いた

488 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/27(日) 20:47:20 ID:???
これで、Add"E"の意味、伏線並びに今回の謎を全て明かせたと思います。
後で反省会開きますね。

あと、以降の予定は全部未定で・・・

489 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/28(月) 20:14:52 ID:???
とりあえず
・もうちょっとキャラの付き合いなどを掘り下げて書くことが出来れば、読者が感情移入しやすかったかな?と思う……
・鉤括弧がめちゃめちゃ多かった。なんかドラマの台本みたいになってる。

大まかに反省するとこんな感じ……。
ま、暇が有れば小ネタでも貼ります。

490 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/04/28(月) 20:42:23 ID:???
おつかれさまです

……と思ったら明日何かが起きるのですね!

491 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 08:42:19 ID:???
|д゚)ダレモイナイ・・・ ハルナライマノウチ

492 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 08:46:40 ID:???
ブレイク・カルテット 〜邪鬼眼否定〜

もう、タイトルもとことん痛く仕上げてみる。

493 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 08:47:25 ID:???
一章「初陣指南書」

494 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 08:50:52 ID:???
 とある家で、今までに培ってきた数十年間を思い切り覆す事態が起きていた。
「転校!? その上、一人暮らし!?」無理もない。いきなりの事態に彼が一番戸惑っているのだ。
 少年の名前はカン。あだ名も、カン。その姿に、母の一言が突き刺さる。
「だってもう、こっちの学校から蹴られちゃったのよ? あんた、他に行く宛なんて無いでしょ?」更に恐ろしいことに、先日付でカンは強制的に学校を辞めさせられたのだ。暴力事件を起こしたわけではない。犯罪に手を染めたり、荷担したりしたわけでもない。
 彼には全く思い当たるフシが無かったのだ。せいぜい、一昨日の夜にチンピラに絡まれそうになったから猛ダッシュで家に帰ったぐらいだ。……それすらもダメだったのか?
 この頃、全く都市伝説に興味がなかったカンでも噂に聞いていた事がある。「理由もなく強制退学を命じられる生徒が、日本全土で広がっている」という事だ。その退学させられた生徒が何処に行ったのかについては、誰も知らないのだから恐ろしい。
「それでね、場所はここなのよ」地図を見ても一瞬分からなかった。「こんな土地、あったっけ?」「あるのよ」ぴしゃりと言われてカンは縮こまる。
 この住所ならば電車に揺られればすぐだが、こんな大きな――まるで、一つの都市が入っているかのような広大な――土地は見たことがない。というか、この狭き日本にこんなモノがあっていいのか。環境保護団体は何をして居るんだ一体、と思わずカンは突っこみたくなった。

495 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 08:53:50 ID:???
 学校はそのほぼ中心に点在している。『夢凪学園』(ゆめなぎがくえん)と小さく書いてあるのが見えた。みずなぎ……。「じゃ、あとは学園からの支援金が出るから、それ貰って暮らしてね」酷く冷めた親である。「……バスと電車代ぐらい、寄越せよ」カンは諦めた。
「とうとうあいつも……か。血は争えないってか」
 その様子を見て、父親がひっそりと呟いていた。
 ――そして、今ようやくカンは長い電車の旅を終えた所であった。「すげぇな。都会と自然が両立してら」目の前の景色は、寝ぼけ眼でも分かるほどに、セメントの群青色と艶やかな緑色が渾然一体となって綺麗だった。
 すると突然、風船が破裂するような音がして一気にカンは目が覚めた。「うわ――」思わず大きな声が出そうになって、口を手で塞ぐ。目の前に車掌のような格好をした、口ひげを蓄えて紳士っぽい印象を与える、屈強そうな男が立っている。「お待ちしておりました」

496 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 08:57:33 ID:???
「本当にここがかの有名な、よく学生が強制転校させられるって所なのか?」
「いかにも。そこについてはあなたが一番ご存じでしょう」カンは唸った。
「それでは始めにまず、学校に行く前にちょっと寄って貰いたい場所があります。乗ってください」その言葉と共に、80年代を彷彿とさせるクラシックカーが、俺たちの目の前で停まった。
「あなたの名前は?」目の前で停まったはずなのに、何故か中に運転手が居なかった。その代わりに、さっきの男がハンドルを握っている。
「カンです」「そうですか。いい名前だ」カンは名前を褒められたのは初めてかも知れない。なんといっても、自販機で120円入れれば出てくる名前であるが故に、だった。「しかし、ここで本当の名前を出すことは死に繋がる事もありうる」
 急に現実味のない話題を出されて、カンは急に道中が不安になった。「いえいえ、本当の事ですよ。名前を使って呪いを掛ける能力者も居ることですし。その為に、近年になって入ってきた者については、私が仮の名前をつけてあげることになっています。そうですねぇ……」
 思考している男の姿を見ていると、とんでもない名前をつけられそうでカンは戦々恐々だった。瞬間、車全体が大きく揺れる。どうやら車体構造もそのままクラシックらしい。

497 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 09:00:59 ID:???
「おや、着いたようですね」ドアを開くと、外にはさっきとは違う秋の風景が広がっていた。葉は紅く染まり、宙を舞っている。「あ、秋……?」カンの記憶が正しいなら、今は夏だ。カンの目の前の光景は、どう見ても先取りしすぎである。
「ここの地域一帯は四つに分かれていまして。そこが順々に春夏秋冬を入れ替えるようになっているんです。面白いでしょう?」面白いというよりも、もはやカンにとっては天変地異である。「初めての方はみんな戸惑いますよ。……さぁ、そこの丘に行ってみて下さい」
 そこは、市街地を一望できる丘だった。そこの中心のちょっと高くなっているところに、何かが一本立っている。カンも時代劇とかで見たことがあるそれは――、刀だった。「抜いてみて下さい」
 混乱していると人間はこうも従順なのかと言うばかりに、カンは言われるがままに刀の柄に手をかけ、力を込めた。キン、という音がして刀はあっさりと抜けた。鈍蒼色の刀身が、秋の夕日を受けて鈍く輝く。
「抜きましたね?」カンはいまいちこの男の挙措動作が掴めなかった。

498 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 09:04:36 ID:???
「やれって言われたからやっただけだ」目的は何なのだろう、と思案するが、全く妙案は出ない。「いいえ、別に悪いわけではありませんよ。あなたは選ばれたのです」
 数多くの漫画や小説やアニメやらで見てきた、『選ばれし者』の称号をそのカンが頂戴しようとは、本人も夢にも思わなかった。「はい、鞘」黒い鞘が手渡される。
「それでですね。あなたの名前なんですが――チーフカンマーというのはいかがでしょう?」「チーズ……ハンマー?」意味の分からない単語であるにもかかわらず、カンは自分の名前が入っているというだけで、「なんかかっけぇ!」と叫んだ。単純である。
「この刀は持ち運びしやすいように、小さくすることができます。こんな感じに」j刀を注視していると、目の前の刀はみるみるうちにキーホルダーみたいな大きさにまで縮んだ。
 どういう原理なのかについては、カンは全く気にしない。「どうぞ」チェーンをつければ、丁度首からさげられて便利だ。
「へぇ……。で、これで一体何をしろと?」意気揚々としていたのもつかの間、ちょっと厳しい冬の寒さがカンを襲った。「寒っ」その寒さに、カンは捲っていた袖を戻す。

499 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 09:08:30 ID:???
「何してんだ、オルファリオンのおっさん」それはいい感じにキめようとして失敗している、カンと同い年ぐらいの男子だった。
「おやおや。お久しぶりです」さっきからカンを世話してくれていたこの男の名はオルファリオンというらしい。多分偽名だろう、とカンは察した。
 ちなみに、群青色のニット帽に、パーカーのファスナーを腹の下辺りで留めている。そして、ようやく視線をカンに移し、目を見張る。
「もしかして、新人君!?」その声色は『よう来んさったね』という歓迎の意とは程遠い、小馬鹿にしたような口調だった。「どんな能力者なのか、ちょっと見せてもらおうじゃん!」その言葉と共に、パーカーを脱ぐ。「俺はチューバ。もちろん、偽名だけどな」
 その両手には、黒色で指先が出るタイプの手袋がはめられていた。右手を後ろに持っていくと、そこに青白色の光が溜まっていき、段々と手のひらサイズの光球へと変化していく。
 どうにもこの相手の喧嘩っ早い性格は性に合わないと、カンはこんな不穏な空気の中でもうんざりとしている。

500 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 09:09:21 ID:???
「秋冬は威力が高いぜ! 『永遠力暴風雪(エターナルフォース・ブリザード)』っ!」青白い光球がさらに光を強め、チューバの突き出された右手から強烈な冷気を帯びた光線が、カンの居る方向に向かって真っ直ぐに噴射された。「――相手は死ぬ」

501 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 09:09:41 ID:???
続きます。

502 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/04/29(火) 12:59:36 ID:???
これがクロスの選択か……

おもろい おつおつー

503 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/29(火) 13:42:42 ID:???
もう来たんかい!!!

504 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 14:19:35 ID:???
名前の由来とかは適当にググってくださいな。

505 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/04/29(火) 14:50:39 ID:???
http://www42.atwiki.jp/novelsinmixi/pages/101.html
あいよ

506 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/04/29(火) 15:26:38 ID:???
光速まとめ感謝です(`・ω・´)

507 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/01(木) 12:38:46 ID:???
Face to"E"読了しますた
何もかも承知の上だったとは…しみじみしますた

新連載ブレイク・カルテット
初回からハイテンションワロタwwwwwww

508 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 19:13:14 ID:???
>>507
読了ありがとうございました(`・ω・´)
邪鬼眼否定はもうどんどんぶっ壊れて行こうかなと思ってます。今後も何卒よろしく。

509 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 19:54:08 ID:???
じゃあ貼ります。

510 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 19:56:10 ID:???
「ちょっ、待っ」ギリギリで、その光線はカンの右脇へ綺麗に逸れた。後ろにある木々へ振り返ると、完全に凍結している。
「あっちゃー。外れたか」
 カンは完全に硬直していた。無理もない。アニメや漫画で見たような事態が、今目の前で起きているのだ。……ともすれば、この次に来るのは。カンはなんとなく身震いした。
「さっきの刀を使うのです!」オルファリオンの言葉に言われるがまま、カンはさっき首にさげたキーホルダーを出した。みるみるうちにそれが1.2メートルほどの長さの刀に戻っていく。その姿をみてチューバは笑っていた。
「武器に頼る奴は長生きしないってことを見せつけてやる!」今度は両手に光を溜めだした。カンは抜刀の構えのまま突進し、チューバに接近して斬りつけようとした。バックステップでチューバが回避するのを見て、そこに突きを加える。……当たった。
 しかしそれは刺さったというより、突いた感じがした。

511 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 19:59:55 ID:???
「フフ……アハハハハハッ! ビビらせやがって、なんだその刀は? 家に飾って置いた方がもっとためになるぜ!」
 カンが刀をよく見ると、なんと刃の部分がないことが分かった。つまり全部峰になっているのだ。模造品だとしても、もうちょっと造りが良いんじゃないかと思わせるほど酷い刀だった。
「能力発動。『未熟(ニュー・カマー)』、『探索(リサーチ)』」カンは突然、急に知りもしない言葉をしゃべり出した。しかし、刀自体に変化は見られない。
「充填完了! もう一度いくぜ、『永遠力双暴風雪』!」刀を横に持った。カンはどうやらさっきのレーザーを防御するつもりらしい。
「危険だ、避けなさい!」オルファリオンの声はもはやカンには聞こえていない。ただ、その発射口となる相手の両手のひらをじっと見つめている。「……モードを吸収(ラーニング)に変更」
「今度こそ氷漬けにしてやるっ!」その両手から避けられぬレーザーが放たれる。その二本の青白色の直線は、丁度カンの立っているところを目指して交差しようとしていた。

512 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 20:03:43 ID:???
「!」チューバの驚く声が聞こえた所で、カンはニヤリと笑った。
 カンの持つ刀は、相手のレーザーを完全に『吸収』していた。カンどころか刀も一切凍っていない。
 ……そのうち、チューバのエターナルフォースブリザードの効果時間が切れた。「次の発射までのラグは何秒だっけ?」
 全く無傷のカンの姿を見て、チューバは狼狽えている。「バカな……俺の永遠力双暴風雪が……」
「ご苦労さん。俺を馬鹿にした罰だ。……右肩、か」
 銀色の刀身は、さっきの攻撃を吸収してさらに青白く輝いていた。
「お返ししてやるぜ。……氷結剣(エターナルフォース・ブリザードブレード)!」一気に走り出すと、完全に停止したチューバの右肩から腰にかけてを、カンは刀で切り払った。
 その感触は空を斬っている感じで、なるほど見た目も無傷である。
 しかし、完全にチューバはその場から動けなくなっていた。切られた箇所から全身にかけて段々と氷が広がり、チューバの姿は今にも全身を飲み込まんとするばかりの氷柱となっていた。

513 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 20:06:01 ID:???
「これでいいのかな」刀は小さくなり、またキーホルダーサイズに戻った。
「オルファリオンさん、ご迷惑をおかけしました」そのカンの戦い振りを見て、オルファリオンは素直に感嘆していたようだった。
「こいつ、どうなるんですか?」巨大な氷柱に閉じこめられたチューバを叩く。当然ながら返事はない。
「大丈夫。そのうちチューバ君はこの町から追い出されるでしょう」カンは、小さくて蒼く透き通るビー玉のようなモノをしげしげと眺めていた。
「これは何ですか。さっきのドンパチで拾ったんですけど」
「それこそが『邪鬼眼』、この一連の超能力の原因です」その言葉を聞いて、カンは急に目が覚めたようだった。「これが……邪鬼、眼……」
「さてさて」オルファリオンは車の周りが氷漬けになっていないことを確認すると、ドアを開けてカンを招き入れた。「学校まで、お送りいたしましょう」
 車中で、カンはまた聞いた。「ここ最近、俺以外に転校してきた人は居ますか?」
「いいや、あなたが実に一ヶ月ぶりの転校生ですな。確か、気が強そうなお嬢さんでした」ふーん、とカンは頷く。
 ――もっと詳しく聞けば良かった、とカンは後に後悔する事になる。

514 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 20:06:34 ID:???
m9っ`Д´)続く!

515 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 20:28:42 ID:???
主人公補正 プライスレス

516 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 21:34:45 ID:???
>>495
一行目「みずなぎ……。」

何これ?俺何書こうとしてたん?

517 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/01(木) 23:08:09 ID:???
硫化水素発生の邪鬼眼か……エグいな。

518 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/02(金) 12:25:32 ID:???
血湧き肉躍るとはまさにこの事
展開早え〜

519 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/05/02(金) 16:59:17 ID:???
http://j-books.shueisha.co.jp/prize/
まだ間に合うよ!

520 : ◆K.tai/y5Gg :2008/05/03(土) 00:42:32 ID:???
>>489
お疲れ様
こまいトコ書いていくと「ここ書くならあれも書かなきゃ」ってなりがちで、
そんで手ぇ止まる事もしばしばあるそうです
本人がやりたいようにやるんが当たり前だけど一番だと思います
でも個人的にはも少し解説は欲しい感じはする

521 : ◆K.tai/y5Gg :2008/05/03(土) 00:48:06 ID:???
>>495
とりあえずイメージは杜王町

522 : ◆K.tai/y5Gg :2008/05/03(土) 00:52:14 ID:???
>>500
いいのか貴様

523 : ◆K.tai/y5Gg :2008/05/03(土) 00:55:54 ID:???
>>513
狙っているな貴様ぁ


お疲れさまでした
明日あたりまた来るのかな

524 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 21:25:09 ID:???
いえ、今日ですね。

525 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 21:51:58 ID:???
>「いいや、あなたが実に一ヶ月ぶりの転校生ですな。確か、気が強そうなお嬢さんでした」ふーん、とカンは頷く。
> ――もっと詳しく聞けば良かった、とカンは後に後悔する事になる。

ここを、

「いいや、あなたが実に一ヶ月ぶりの転校生ですな。でもすぐに……戻られてしまいましたが」ふーん、とカンは頷く。
 ――もっと詳しく聞けば良かった、とカンは後に後悔する事になる。

に訂正お願いします。

526 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 21:52:18 ID:???
あ、>>513の話です

527 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 21:55:56 ID:???
「すごい。こんな綺麗な学校に通ってみたかったなぁ」カンが感嘆の声を上げる。校門の辺りから見える場所はガラス張り。緑が適度にあって、気温も湿度も一定に保たれていた。
「実際、通うんですよ。明日から」真ん中のエレベーターに乗って、カンは5階に向かった。中にはデカデカと『生徒使用禁止』と書いてある。外に貼ればいいのに。
「人、居ないですね……。休みですか?」平日なのにそれはないだろう、とは思ったが一応聞いてみる。「授業中ですよ」そう言えばそうだった、とカンは顔が火照るのを感じた。
 チン、と音がしてエレベーターのドアが開く。そこは理事長室まで一直線だった。50メートルぐらい先に、両開きのドアが見える。ちなみに廊下はガラス張りで外から丸見え。カンはそこを歩いていく。
「失礼します、転入についての最終手続きに参りました」ガチャリとドアが開き、先にオルファリオンが入ってからカンを招き入れた。「彼が理事長のポルタティフになります、ご挨拶を」
 ポルタティフも偽名だろう、とカンはなんとなく察した。その顔は外を向いたまま、一切こっちに振り向こうとしない。

528 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 21:59:19 ID:???
「どうも、転校してきました、カ……チーフカンマー、です……」略したらチーカマ。最悪だな、とカンは今更になって異議を申し立てるべきだと後悔した。
 するとその声を聞いたポルタティフが、急に振り向いた。
「採用。認める」「!?」カンは、言われていることが理解できなかった。「だから、転入を認めるっての。二年生だっけ? 5組が丁度一人欠けて困ってたんだよね」目の前のやや長髪の優男はカンに対してかなりフランクで、それが返ってカンに警戒心を抱かせることになった。
 カンは探索(リサーチ)を発動し、無礼ではあるが目の前の男の能力の源を確かめることにした。すると、ポルタティフはまるでカンがやっていることが見えているかのように話し出した。
「便利だよね、その能力。相手を倒す糸口を見つける為にはもの凄い有利だ」その姿を見てカンは声も出なかった。
 ポルタティフの全身が、その能力の源になっていた。そこに何個の邪鬼眼が埋まっているのかは想像もつかない。カンがここで闘うのは明らかに無理がある。レベル1勇者VSゾーマみたいなものだ。
「ざっとお話すると……この都市の四季、天候を操作しているのは僕だ。その他にも色々あるけど、教えてあげない☆」ふわり、とその右腕を振るうと、一気に強烈な風がカンに向かって押し寄せた。

529 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 22:02:26 ID:???
「君の力は、力を他人から奪うモノ。そこには他人を制する事しか無い。それでもいいのかい?」さっきから、入学についての事は一切話されていない事にようやくカンは気付いた。
「……他人を制するとか奪うとかそんな学業以外の事は別にいいんですけど、この学校ってちゃんと勉強する所ですよね?」
 カンは世間一般の考え方から抜け出す事が出来ないでいた。こう言うと悪いようにも聞こえるが、あくまでカンは現実的だった。
「大学までエスカだ」その言葉を聞いて、ようやくカンは目が覚める。現金な奴である。「本当ですか!?」
「本当だ。ここは元々小中高大が一貫して揃っている。……表向きは私立の学校だからな」裏向きは、こういう超能力者ばかりを集める、悪く言えば『ゴミ捨て場』となっているのだ。
「本名を使わないことについてはオルファリオンからちゃんと教わっているな?」はい、とカンは頷く。
「それならいい。……能力者として注意しておくが、お前の入るクラスについて注意するのは、ネコミミの女子と、不登校男児の二名だ。逆に、他のクラスにもこれほど手を焼く奴は居ないがな」
 カンは全く意味が分からなかったので聞き流した。
「寮でのお前の部屋の鍵をやる。文句があったら一階の『意見箱』に投書してくれ」そう言うと、ポルタティフは銀色の、自分の家と同じような鍵を渡した。紫色フレームのネームプレートに『801』と書いてある。
「……や・お・い?」

530 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 22:06:57 ID:???
どこかで聞いたような言葉についてわだかまりがあったが、とりあえずカンはオルファリオンに言われた学生寮に行くことにした。荷物は全てそこに置いてあるというので、幾分か気が楽になっていた。
 アイボリーカラー一色で塗られたドアに鍵を挿して回し、ドアノブを捻る。
「うわ……広っ」フローリングの床が南向きの窓から光を浴び、眩しい。テレビなんて持ち出した覚えもないのに配置されてるし、パソコンもある。
 これならば多分インターネットも出来るだろう。カンはあまりの待遇に、しばしドアの前で硬直していた。
 カンは一体何分その場に居たのだろうか。突如「ちょっと!」後ろから声をかけられて、カンは驚いた。そこにはカンよりちょっと背が低く、警戒の表情を浮かべた少女が居る。
「ネコミミ?」その少女について特筆すべき点といえば、猫の耳のようなクセっ毛があることだろう。
「あら、私を知らないって事はあなた、転校生ね。……新入り君、ドアを開け放すのは不用心よ。部屋に入るか入らないのかはっきりさせて、ちゃんと戸締まりしなさい」指摘されて、カンは慌ててドアを閉める。
 そう言えば自己紹介がまだだった、とカンは扉を閉める前にそれを済ませることにした。
「えーと……僕はこの度転校してきた、二年のチーフカンマーって言うんだ、よろしく。……あ、あなたは?」
「私はヴィオローネ。ヴィオって呼んで。あなた、名前が長ったらしいから『カン』でいい?」
「ああ、いいよ。よろしく、ヴィオ」
 カンは吹き出すのを必死で堪えていた。

531 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 22:08:52 ID:???
つづく。

532 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/03(土) 22:32:20 ID:???
ネコミミ設定とかあったんだ……
現行の文章に全く生かされてないよ……

533 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/05(月) 20:35:59 ID:???
9月以降は完全に集中なので、載せられるとしても8月までになりそうです。
それ以降のこのスレの伸びは保証できません、あしからず・・・

534 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/05(月) 23:06:09 ID:???
「カン、あなたって……」ヴィオは何かを聞こうとして、躊躇しているようだった。
「何?」とカンが聞くと、急にヴィオはハッとして「ごめん、何でもないわ。また明日ね!」と言い残し、廊下をエレベーターホールに向かって走っていった。
「背中か……」そう呟くと、カンはドアノブに手を掛けた。
 カンはもう一度部屋に入り、中を見回す。すると、テーブルの上に分厚い本の束が置かれていた。これはおそらく教科書類だろう。
「ノート、どうすんだろう」そう思って教科書の束をもう一度見てみると、一番上の紙に『欲しいものがあったら、まずは校舎一階の売店へ。6時30分〜22時まで開いています。お昼には混雑するのでご留意を』と書いてあった。
『校舎の見取り図とか無いと、道に迷いそうだな……』
 そう思いながら教科書を束ねていた紐をカッターで切り落とすと、その紙の下に校舎の見取り図と共に『ご心配なく』と書かれたメモがあった。『……何でもお見通しかよ!』

535 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/05(月) 23:07:36 ID:???
 一応ここは都市でもあるので、学校から外に出れば普通の街だ。オルファリオンから『明日は真っ直ぐに一階奥へ来てください。授業は漢文、数学II……』と言われたので、今日はもうフリーだ。
「そういや、腹減ったなぁ」カンはポケットからクレジットカードの様な銀色と金色が混じったような色をしたカードを出して、しげしげと眺めている。
 それは、さっきオルファリオンが帰りがけにカンに渡したものだった。
『都市内の施設ではこのカードを提示することでお金を支払う手間が省けます。入金は毎月6日前後になりますので、お金の使い方にはご注意下さい』
 買い物したらポイントぐらいつけてくれればいいのに、とあくまで小市民的な思考から逸脱できないカンだった。
「不気味なくらいに、進化してんな」その手にはコンビニのおにぎり三つと、ペットボトルのお茶が提げられている。とりあえず明日の準備だけしておこう、とカンは家路を急いだ。

536 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/05(月) 23:10:17 ID:???
 そして、翌日。制服もちゃんと着こんで、カンはすっかりこの学校の生徒と同化した。学校に直行し、一階の総合職員室(小中高全て受け持ちなので総合と呼ばれる)に向かった。
「オルファリオンさん、おはようございます」挨拶ぐらいしないと心証が悪くなりそうだ、というカンなりの考えだった。
「おはよう。君は晴れてこの学校の生徒となったわけだ、その事を誇りに思うと共に、その規律に馴染んでくれたまえ」前日の夜、カンの家には制服一式と生徒手帳が置いてあったのを発見した。どこまでも用意がいい。
 カンは、もうオルファリオンに会う機会があまり無くなると思って、質問をすることにした。
「オルファリオンさん、僕は邪鬼眼を持っていません」
「知っています」オルファリオンは振り向きもしない。
「じゃあ僕はなんで特例で転校してきたんですか?」その質問に、オルファリオンはちょっと間を置いて答えた。

537 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/05(月) 23:12:01 ID:???
「……お兄さんのこと、ご存じでしょう」はい、とカンは頷く。「でも、僕が小学生の頃に居なくなってしまって、あまり記憶に無いです」
「小学校……そういえば、彼が来たのはそれぐらい前でしたね」カンには年上の兄がいた。その兄は、カンが小学校の頃にどこかへ行ってしまった。
 その時カンは『ちょっと遠いところに行ってお勉強しに行くの』という親の説明しか受けなかったが、今になってようやく察しが付いた。
「まさか、レ……兄貴は、ずっとここに……?」名前を言おうとして、カンは口をつぐんだ。
「そのまさかでございます。あなたのお兄様――レン君は快活で勇猛、自分の道には真っ直ぐという気迫に溢れた方でした。また同時に、あなたのその刀の先代所有者でもありました」
 カンにとってどうやらそれは偶然ではなく、必然だったようだ。

538 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/05(月) 23:13:35 ID:???
しばらくはヴィオローネに関するお話になりそうです。

539 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/05/06(火) 17:25:54 ID:???
>>533
新人賞の投稿に集中ですね!!!!!

540 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/07(水) 12:06:43 ID:???
兄貴カッコヨス
クロスの描くおなごはつええ

541 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/07(水) 21:06:50 ID:???
>>540
そういえば「ヒーローに守られる立場のヒロイン」は書いたことナサス
常にヒーローと同じ位置に立ってる感じがする。何故だろう。

542 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/07(水) 22:10:27 ID:???
 カンはこれまで兄を『居ないもの』として過ごしてきた。仏壇も無ければ学校に記録も残っていないのだ。
 カンにとってみれば『ああ、そんなの居たかもしれない』というレベルにまで落ちてしまっていた。「オルファリオンさんは、兄貴の名前知ってるんですね」
「左様でございます。むしろ彼のお陰で『ここでは名前をひけらかしてはいけない』ということが分かったのです」
「え? ……それって……」カンは何となくその続きを分かっていたのに、口に出せなかった。「着きました」目の前には、教室の扉があった。
「紹介します。チーフカンマー君です」カンを眺めるクラスメイトの面々は、人間味というか、大事な何かが欠落している、今をときめく現代人が憂いている状況をそのまま映し出していた。
「長いんで、カンって呼んでください」カンはこれほどまでに上手な名前の使い方をした覚えはなかった。……かのように親しみを込めたはずなのに、教室には冷たい風が吹き続けていた。

543 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/07(水) 22:15:13 ID:???
「……そういうわけで、みんな仲良くするように!」
 中学校や小学校じゃないんだから、そんなセリフは要らないだろうと思ったが、さっきのクラスの様子を見れば必要かもしれない。空拍手がクラスを包む。
 カンにとって、この雰囲気はまさに針の筵と無間地獄が同時に到来したかのようだった。
「席はヴィオの隣だな」聞き覚えのある名前だ、とカンは顔を上げ、示された席の方を向いた。
 案の定、そこには昨日会ったヴィオローネが座っていた。「カーンー!」名前を堂々と連呼し、手を振りながら。
「ここのクラスだったんだね!」これぐらい明るい奴が居ないと、クラスが成り立たないんだろうな。カンはそう思った。
「嬉しいなー」合わない。そう思ったカンは空返事を返した。

544 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/07(水) 22:18:35 ID:???
「帰りにさ、ここら辺を紹介してあげるよ! 来たばっかりのキミにはちょっとした要塞みたいなもんだからさ」カン的にはとてもありがたいのだが、どうしてもこのテンションにはついて行けそうにない。
「ありがとう」無下に断るのも酷いと思ったのか、カンは素直に聞き入れた。
 ヴィオは参考書のような本を取り出して捲っている。カンが覗き込むとなんとそれは地図だった。「お前、それ普段から持ち歩いてるのか?」
 するとヴィオはムッとして「ヴィオって呼んで」とカンをたしなめた。「悪い、ヴィオ。で、何だそれ。随分と細かい……」その地図はこの校舎近くの事が描いてある。なのだが……
「に、250分の1!?」縮尺がおかしい。つまりこの地図上では10センチが25メートルになるということだ。
「これね、私用の特注品なの」するとヴィオはバックから他の本を取り出した。それらは今ヴィオが持っている奴よりも分厚く、まるで広辞苑だ。それぞれ『北区』『南区』『西区』『東区』と書いてあり、ヴィオが今持っているのは『中央区』だった。

545 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/07(水) 22:19:37 ID:???
続きはまた次回。

546 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/07(水) 22:23:53 ID:???
辞書4冊も持ち歩いてたらめちゃめちゃ邪魔くさそう・・・

547 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/08(木) 20:53:57 ID:???
このお話には全体的にアジカンの「ブルートレイン」とかがマッチします。

>>539
かなり落ち着いたら、ですかね……
とは言え、この程度の文字列ならもっと上手い新人さんが山ほど居るはずだし……。スキルアップ出来ないかなと目下模索中。


更新はまた明日。ではでは。

548 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:08:12 ID:???
適宜に更新しないと、いつ更新できるか分からなくなるか不安だよね。

549 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:09:27 ID:???
>>548
なんか日本語おかしくなってるので読み飛ばしてくだしあ

550 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:12:50 ID:???
「特注品……。へぇ……」カンとヴィオがそう話していると、ヒソヒソと二人の方を見ながら何か話している輩が居た。からかうだとか、そういう様子ではなかったのがカンの目に留まった。
 だから、その内の一人が廊下に出たのを見計らってカンは後をつけることにした。「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるわ」とヴィオに言い残して。
 カンなりの歩き方で足音を消し(本人はそう思っている)、カンはこっそり『探索(リサーチ)』を発動する。すると、左腕の辺りが微かに光っているのが見えた。少年がトイレに入ったのを見計らってカンもトイレに侵入する。
「あっ!」入ろうとしたところで、カンは存在に気付かれた。もうここは無理矢理だ、と少年をトイレの中に押し込める。
 そこからは早かった。カンは少年の首根っこをひっつかみ、壁に押しつける。その長い刀身は、少年の左腕に今にも刺さらんばかりだ。
 左腕の光はオレンジ色をしていた。これが邪鬼眼の反応ならば、いったいどんな能力を持っているのだろうか。カンは戦々恐々としながらも問い詰める。

551 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:15:51 ID:???
「さっき、何を話してた? お前のさっきの顔を見るに、からかってるワケじゃあないんだろう?」少年が頷く。このままでは話せないので、カンは左手を相手の首から離す。
「ら、乱暴な。……ただ、またあの女が狩りを始めたか、って話してただけだよ」
 カンは別段ヴィオと仲良くしていたわけではないのだが、相手の左手を押さえつける右手に力がこもる。
「ヴィオについて何を知っている?」その質問については、カンに対して話すべきかどうか躊躇しているのか、少年が話し出すまでにはちょっと間があった。
「……あの女は昔から『新人狩りのヴィオローネ』って言われてるんだ」来たばかりのカンには、何者も信じがたい。
「都合の良い奴を見つけては容赦なくボコボコにして能力を奪って切り捨てる。だから、あいつの隣はいつも空席」ほう、とカンは頷き、少年から刀を離した。もう敵意は無いと感じたからだった。

552 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:20:54 ID:???
「今までに、何人ぐらい?」「……僕が見ている限りでは、8人ぐらい」キミもそうなるんだよ、という哀れみの目にカンは反抗したくなった。
「じゃあ俺が、その伝説とやらを打ち破ってやるよ」刀をヒュンヒュンと振り回し、鞘に収める。
「どういう事だよ?」返り討ちにしてやるのさ、とカンが息巻いたのを見て少年は青ざめる。「そんな……無理だ、女番長にサシで喧嘩売るなんて!」
「やっぱり、俺に安息の地はないんだな……」ちょっとカッコつけすぎたかな、とカンは心の中で反省する。
 少年がぽかんとしているのを見て、カンはトイレを出た。
 綺麗な薔薇にはなんとやら。理事長の『ネコミミに注意しろ』とはこういう事だったのか、とカンは心の奥で納得する。

553 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:23:42 ID:???
 席に戻るなりカンはヴィオに告げた。「いま考えたんだけどさ、南区に綺麗な場所があるじゃん。俺そこに行きたいんだけど、行き方が分からないんだ。ヴィオは知ってる?」と。
 その発現は、なかなかの良選択だったらしい。
「あ、あそこはデートスポットだよ?」カンの初日からのアプローチにヴィオが心なしか赤面する。現代なら警察を呼ばれるレベルだ。
「デートになってもいいよ。いつならいい?」しかしこのカン、ノリノリである。
「ど、土曜日、とか……」あと三日。カンの心はなぜか自信に満ちていた。

554 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/09(金) 22:28:54 ID:???
「俺に安息の地はないのか……」を言わせたかったんです。
邪鬼眼ですし。

トイレに誰も入ってこなかったのは、少年の邪鬼眼という設定もあったんですけど色々な都合があってボツになりました。結局偶然に誰もトイレに入らなかったという事に。
多分、誰も気にしないだろうけど一応……

555 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/10(土) 00:30:35 ID:???
かわいいヴィオちゃんが
トンパさんだったとは…(;´Д`)ハァハァ

556 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/10(土) 08:00:51 ID:???
>>555
ちょ、おちつけwwwwww

557 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/10(土) 08:10:44 ID:???
作者自身、まだまだ推敲中なので脱字・誤謬の指摘などはどんどんお願いします!

558 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/11(日) 21:25:41 ID:???
まとめて読みました乙乙
テンポいいなぁ キャラもわかりやすいし

探索(リサーチ)が欲しい。。。

559 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 21:36:54 ID:???
ラノベとか久しぶりに読むと、改行が多くてビックリしますね。
もうちょっと改行してもいいかなぁ。

>>558
ありがとうございましあ('ω`)
探索は今後のお話の中でも割と重要になりますよ!

560 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 21:50:50 ID:???
忙しいなぁ。適度に貼りますか。

561 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 21:52:56 ID:???
 カンが住んでいた所は大通りなんて一つしか無かったが、ここは東西南北に大きな通りがあるので、全部で4つある事になる。それぞれが3キロほどの長さだから、この都市は対角線が6キロメートルの四角形の形をしていることになる。
「ヴィオローネについて何か知らない?」南区の通りは庶民的な商店街が延びている、屯(たむろ)していた同年代の男達が居た。丁度いいとばかりに、カンは聞き漁ることにした。「お前、誰?」
「俺はカン」もはや、仮の名前を名乗る必要も無いだろうと判断した。「――ヴィオローネに標的にされた男だ」
 ハハハ、と男達が笑う。「それマジ? あのヴィオローネに? ――そいつは洒落になんねーよ」
「ならねーから、こうして情報集めに必死なんだろうが!」カンはさらに一歩前に出る。喧嘩は起こしたくないが、情報を得るためならある程度の地位は必要だ。

562 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 21:54:31 ID:???
「あーあー。分かった。信じてやるよ」
 どうやら嘘だと思われていたらしい。
「――ヴィオローネは基本的に誰も居ないところで暗殺だからな。目撃者が少ないんだよ」
 あのカンに見せた笑顔は偽物だったのかと、カンは裏切られた気分になった。
「それにしてもお前、全くそういうことに抵抗感無いんだな。女を殴る男は好きじゃないぜ?」余計な奴が割って入る。
「日が浅いから。それに、フェミでもない」さっさと話せとカンは促す。
「ああ、それでな。大学の先輩に目撃者が一人居るんだそうだ。……あ、あくまで噂だからな。身元が割れちまったら、ヤツが即座に殺しに行っちまうだろうし」カンは身元を聞き、とりあえず話だけでも聞きに行くことにした。
 で、問題はその途中。
「キミ、チーフカンマー君?」
「わっ!」ヴィオローネに声をかけられたと思って、カンは三歩ほど飛び退いた。

563 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 21:59:00 ID:???
「あはは。そんなにビックリしちゃうなんておもしろーい」
 それは、笑顔がかなり可愛い女の子だった。同じクラスに居たような、居なかったような。
「アタシはイリアン。多分覚えて貰ってないかなーと思って、自己紹介しちゃいました!」
「よ、よろしく……。カンと呼んでくれ」
「あははー。よろしくね、カン君!」クラスに一人は居そうな、無駄にテンションが高い女子だった。
「あ、いきなりでなんだけど、俺のクラスに元から居る人って何人?」調子を狂わされたカンは、変な質問をしてしまった。
「分かんない……。でも、私は結構昔から居るよ。小学1年生の頃に引っ越してきたの」そんなに昔からか、とカンは唸る。
「キミも、なんか超能力とか使えちゃうんだ?」カンには、『探索』を通して見えていた。
 イリアンの反応は両足に青色。そこから延びた線が、肺や心臓の辺りに到達している。
「足を早くする、とか?」
「すっごい、よく分かったね! 私、昔から車ぐらいに足が速かったの。だから、徒競走では絶対負けないよー!」
 後に説明されたが、その邪鬼眼の呼称は『神速(バーニングボア)』と言うらしい。

564 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 22:01:11 ID:???
「そうか……実は俺、何も能力を持っていないんだ。なのに、何で無理矢理転校させられたのかが分からないんだ」
「えーっ! 可哀想……」
 イリアンがうるうるとした瞳でカンを見上げている仕草は、かなりそそるものがある。ちょっと考えて、イリアンはカンの手を引っ張ろうとした。
「ちょっ、何処行く気だよ。俺はこれから用が……」
「いいから。キミのためだよ!」何がだよ、と呟くカンの声を無視し、イリアンは商店街の裏路地にあるいかがわしそうな店に強制入店させられた。
「ばあちゃん! この子、こんな街に居たら死んじゃうよ! 私のでいいからコピーさせてあげてよ!」
 いきなり意味の分からないことを叫びだした。コピーだって?

565 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 22:04:28 ID:???
「何だよ騒がしい。せっかくのお昼寝タイムが台無しじゃあないか」
 奥から60代ぐらいの老婆が現れた。
「お、おい、イリアン。何をするつもりなんだ?」
 するとイリアンは笑って、「ふふふん。それはねー。後のお楽しみ!」と言い残し、目の前の老婆と一緒に奥の部屋に行ってしまった。
 そのまま、十分ほど経っただろうか。老婆が戻ってきて言った。
「あんた、能力は持ってないんだってね? それなのにここに居るということは、能力に変わる何かを持っているはずだろう。出しんしゃい」
 カンは胸ポケットから刀を取り出し、元の大きさに戻す。
「思い当たるのは、これぐらいしか」
「うひゃあ、長い!」カンはイリアンのコメントをスルーして、老婆に刀を渡した。
「ほう……こりゃあ……」そういって老眼鏡をかけたり外したりしながら何度も刀を眺め回し、カンに告げた。
「あんた、アイツの血族かね?」
 その『アイツ』が誰なのか、何となくカンには見当がついていた。

566 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 22:09:09 ID:???
「あいつというか……。これを前に持っていたのは、俺の兄貴です」
 それを聞いて、ほう! と、老婆は嬉しそうな声を出した。
「なぁるほど、あいつの弟か……どおりで、どこかで見たことある顔だと思ってたんだよ」
 はぁ、とカンは頷く。兄は一体ここで何をしていったのだろうか。
「こいつは、この柄に邪鬼眼をセットして使うんだよ。あんた、何か持ってないのかね?」
 ポケットをまさぐる。すると、中に群青色の玉――エターナルフォースブリザード――が入っていた。
「持っているのはこれしか」
 老婆はそれを手に取ると、刀の凹んでいる部分に無理矢理押しつけた。壊れるんじゃないかと思ったが、それは吸い込まれるように刀の鞘へと消えていった。
「これであんたはこの邪鬼眼の能力を使えるし、刀に付与させることもできる」
 そう言うと、老婆はさっきの邪鬼眼と同じくらいの大きさの真っ白い玉を出した。
「これは?」
「このイリアンの能力をコピーした、『模造邪鬼眼』ってやつだね。これを使えば、本当の所有者には劣るけど、その能力をいくらか発揮させる事が出来るよ」
「危なくなったら、これでバーッ、ビューン、って逃げちゃってね!」
 カンは、また一歩ヴィオに近づいたという感触を持った。

567 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 22:15:47 ID:???
ここら辺はRPG感覚ですね。

次回は、早くもヴィオと決戦ムードかも……

568 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/11(日) 22:18:30 ID:???
よいしょ乙!

チーフカンマーはどうしてもニヤリとしてしまう

569 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/11(日) 22:32:26 ID:???
キャラの名前は楽器の名前から拝借しているのですが、
カンだけは名前を考えてからこのルールに当てはめたので、ちょっと無茶苦茶だったりします。
主人公が『カン』になったのは響きがいいから。『レン』はそこから派生させました。別に某弟からとったワケじゃないですよ?

570 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/12(月) 00:13:59 ID:???
おつ。そして面白!!

マイナー所では老婆に期待

571 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/12(月) 21:50:12 ID:???
そろそろスレの容量がキてるかもしれない

572 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/12(月) 21:50:54 ID:???
とおもったらまだ倍以上あった。一安心した

573 : ◆K.tai/y5Gg :2008/05/12(月) 23:52:08 ID:???
エムゼロか

574 : ◆K.tai/y5Gg :2008/05/12(月) 23:55:22 ID:???
読んだよ乙でした
今までの作品で一番内容が入ってくるのは俺の頭がどうのこうのしてるんでしょうか

テンポ良いね。つまりドラクエ的パーティ組んでカルテットなんでしょうか
ヴィオが女賢者でイリアン女僧侶がいいですヴィジュアル的に

575 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/13(火) 18:58:04 ID:???
>>574
ここまでの展開ならそう読んでくれるかなぁと思ってました。
これからも期待せずに待っててね

576 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/13(火) 20:43:20 ID:???
しばらくしたらまた更新しておきますね

577 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/13(火) 22:16:59 ID:???
 ……イリアンは、やはりというか何というか、下級生だった。下の階で授業を受けているなら、下級生に違いない。
 ちなみに学校生活といっても、前に通っていた学校とほとんど同じ感覚だ。授業の進度はちょっとこっちの学校の方が遅めだし、カンはすぐに馴染めそうだった。
「学校の周りでは事件が多い割に、この学校では一切事件が起きないよね」
 なんとなく気になったので聞いてみた。どうせ目の前の女は能力者なのだ、そこら辺は淀みなく答えてくれるだろう。
「あんた、そういうことは大きな声で言わないの!」と、たしなめられた。今はそんなこと言ってる場合じゃないんだけどな。
「いいじゃん、初心者なんだからさ」
「……じゃあ言うけど、理事長がこの学校にだけ仕掛けを施しているらしいのよ。だからここでは邪鬼眼も無用の長物ってこと」その事を聞いて、カンは半分納得して、半分疑問がわいて出た。
「でも、校内で使ってる人とかいるじゃん。それは何なの?」
「教師と一部の生徒――成績優秀者――とかは『特例生』っていうウザったい肩書きがつくの。その人たちだけは、ある程度限られてはいるけど邪鬼眼を使うことが出来るわ」
 つまり、成績がよければ邪鬼眼使い放題ということだと、カンは解釈した。
 『……そんな事はどうでもいいんだ!』何かを振り払うように、カンは髪をクシャクシャとかき混ぜた。

578 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/13(火) 22:23:50 ID:???
 そんなこんなで、ある意味無茶苦茶なデートになってしまった。
 当日からして、カンは朝からダウナーなムードだった。朝食が原因か、寝不足が原因かは不明であるが、カンはどちらにも思い当たるフシがあったのだからタチが悪い。
「今日、真っ直ぐに公園に行かない?」
 カンはもとよりそっちが目的なので、とっとと用事を済ませたかった。そのためなら心証が悪くなってもこの際仕方がない。
「そう? じゃあごめんみんな、今日は帰るね!」
 二人っきりで街の紹介をするなんておかしい、とカンは疑っていた。大体、初対面の奴とホイホイとデートに行くようなバカは、一部の男子ぐらいなものである。
 死にそうになったら逃げろ。反撃のチャンスはきっと来る。カンはそう信じていた。
 そのうち二人は、まだ冷たい秋風が吹く展望台にたどり着いた。町外れには、こういう自然が多いのだ。一応、街全体を一望できるようだ。
 そして、急にヴィオは感傷的な表情になる。それはカンとの別れの寂しさか、それとも――
「恋人、居たんだろ?」
 カンが呟いた。そう、ヴィオローネには恋人が居た。でも今は居ない。なぜ?
 答えは簡単。カンが『殺した』からだ。カンは、ポケットから青い邪鬼眼を取り出す。それが、夕日に当たって綺麗に輝く。
「これ、返すよ。――お前と俺の用が済んだら」ドン、という音がして頭上の木が裂ける。
 ヴィオローネが、本性を現した。

579 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/13(火) 22:32:13 ID:???
「狩人が武器を失ったら、生きていけない。今回は異例だったわ、先にそんなことをされるなんてね!」
 邪鬼眼の能力であろう衝撃波が、雨霰と飛んでくる。『神速』が無ければおそらく全てをまともに食らってしまうだろう。
「でもな、俺はぶっちゃけ親切心で動いてる」カンは円を描くようにではなく、ギリギリの距離でヴィオに近づくくらいの動きを繰り返していた。星形を一筆書きするように。
 模造『神速』の効果範囲は、直線で5メートル。円形を描こうものなら、途中で時間が切れて餌食だ。
 星形の頂点部分に来たとき、カンは方向転換をして、中心のヴィオローネに真っ直ぐ突進した。
「『吸収』『未熟』」
 『未熟』は短時間身体能力を向上させる。ゲーム感覚で言えば、攻撃力や素早さを増加させる能力だ。
「ここで終わりだ、狩人!」
 カンは友情と使命感を天秤に掛け、使命感を取った。その決意は、さっきまで親しげに話していた友人とは思えない攻撃に込められている。
 それに対してヴィオは全く動揺することなく、ただ呟いた。
「……アウト」
 カンの剣閃はヴィオを全く捉えることなく、そのまま空を斬った。
 もはや、動揺する暇も無い。後ろを振り向こうとしたその背中に、衝撃波が次々と叩き付けられた。
 痛い一撃をもらった、とカンは焦る。すんでの所でカンは『神速』を発動し、ヴィオの眼前から少し離れたところへ移動する。「――それが、お前の邪鬼眼か!」
「気付くのが早いわね。――カン、あなたって本当に新入り?」
 カンの真後ろで、ヴィオローネが悪意をたっぷり含んだ笑みを見せていた。

580 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/13(火) 22:34:21 ID:???
ということで続きます。
次回決着かも?

581 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/14(水) 23:49:49 ID:???
悪意たっぷりの笑みとはヴィオ様(*´Д`)ハフゥハフゥ

582 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/15(木) 20:30:47 ID:???
一日おきで集中更新中です

583 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/15(木) 20:39:59 ID:???
 カンはまた神速で間合いを取る。
「新入りだよ――でも、入ってない」
 カンの模造刀の柄には、既に7つほどの邪鬼眼の光が見えている。
 カンがふと目線を元に戻すと、ヴィオが消えていた。直感で、闇雲に走り出す。その瞬間、カンが居た場所に痛烈な衝撃が放たれた。紅、黄色、茶色の落ち葉の雨が次々と宙に舞う。
「お前の地図みたいな辞書はこれのためか!」
 ヴィオは何も言わない。敢えて多くを語らないようにしているのか、真意をはかりかねる行為だった。
『もしかしてアイツ……何かを焦っている?』
 考えられるのは二通り。態と何も言わないのか、それとも――
「俺がヴィオの手から逃げてしまう事を危惧しているのか……」
 そのカンの発言がヴィオの耳に届いたかどうかはともかくとして、彼女の心情を察すれば、カンは微細な点に於いて有利だった。

584 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/15(木) 20:42:44 ID:???
『よし……それなら寧ろ予定通り、このまま一気に決めるぞ!』カンは公園の端(外は崖)に背を向け、ヴィオに出来るだけ後ろを取られないようにした。
「残念、それじゃ逆に追いつめられてるのと同じよ」背中からヴィオの声がして、全身の毛が逆立った。
 そんなまさか。後ろは崖だ。
「くそっ!」ヴィオの姿を確認することなく、カンは背後に向かって刀で薙いだ。……そこにはやはり、ヴィオの姿は無い。
 カンは直感で横に飛び、そこに叩き付けられる衝撃波を回避しようとした。
 しかしやはり、一朝一夕の練習ではモノになるはずがなく、身体が付いていかない。逃げ切れなかった左腕の先から強烈な痛みが伝わってくる。
「あああああっ!」迸る、尋常ではない痛み。骨がいかれそうだったが、カンの腕骨はギリギリの所で耐えてくれた。カンは痛みをこらえながら必死に考える。
「諦めたら?」思考と運動を平行して行い続けるカンに投げかけられた、ヴィオの冷たくて容易いセリフ。カンの答えは、イエスかノーか?

585 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/15(木) 20:46:05 ID:???
「……お前が暴れるのを止めるなら、俺は死んでもいい。でも、それを果たせぬままに死ぬのはもっと嫌だ!」当然、ノーだ。
「私は、もう弱くありたくない。あんな奇異の目で見られるのは真っ平ご免、二度とあんな目には遭いたくない!」
 ヴィオローネが、ようやく心情を吐露した。だから、その言葉をカンは制する。
「分かった。――俺もお前も生きていたら、続きを聞いてやる」
 カンは覚悟を決めた。そして、確信した。ヴィオの邪鬼眼は、発動する直前に必ず目を閉じる。つまり邪鬼眼で移動する座標は、目線ではなく記憶に頼る必要があるのだ。カンはそう判断した。
「だから、これで終わりだ!」
 『神速』で間合いを詰め、刀に付いている白色の邪鬼眼を発動した。ヴィオとカンの間に、マグネシウムを着火したときのような白色の閃光が炸裂する。

586 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/15(木) 20:50:47 ID:???
「うっ」ヴィオは思わず目を閉じる。そして、すぐさま邪鬼眼を発動する!
「ヴィオローネ、お前の負けだ!」
 カンは『神速』を発動させ、ある方向に向かって走った。
 ……そう、カンは闇雲に走ったように見えた。それなのに、その先には何故か困惑した表情のヴィオが立っているのだ。
「勝負……あったぜっ!」カンは、刀で切り払う格好だけやってみた。刀に刃が無いので、切ると言うよりも打ち据える感じになるのだが。
 力が入りすぎたのだろうか。ヴィオは、時代劇のようにその場に倒れ伏した。

587 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/15(木) 20:53:04 ID:???
最後に技名とか叫ばそうと思ったけど、何も要素がなかったのでやめました。

次回更新は土曜日予定。

588 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/16(金) 12:56:58 ID:???
コンスタントな更新乙ですた!!
バトルシーンが目に浮かぶほどの迫力ですた
カンかっけえ。ヴィオは苦悩していたのかぁ…

589 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/16(金) 19:15:17 ID:???
>>583
>「お前の地図みたいな辞書はこれのためか!」

正しくは「辞書みたいな地図」ですね。トホホ……

590 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/16(金) 21:08:05 ID:???
ちなみにFace to"E"連載終了時以降に書き足したのは>>578の辺りから
違和感ないように出来たかな?

591 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/17(土) 09:13:18 ID:???
朝っぱらから読みに来ました
バトルうめぇwwwwww

592 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:02:40 ID:???
 カンは、苦しそうに息をしているヴィオの背中の辺りを見た。
「やっぱり背中か。……それにしても、こんなに大きな邪鬼眼も有るのか?」
 カンは、『探索』でヴィオの背中を見ていた。握りこぶし程度の大きさの、オレンジ色の丸い光が見える。
「やっぱり……やるのね」そう言うヴィオの姿を余所に、非情にもカンはその背中に模造剣を突き刺す。オレンジ色の光が、刀を引き抜くと同時にその正体を現した。
 大きい。これが人の身体に有ると言うのだから恐ろしい。まるで寄生虫だ。とりあえず、とカンは改めてヴィオに語りかける。
「ヴィオローネ。もう、こんな事するなよ」ヴィオは全く起きあがらない。「分かった……分かったから……返して……」と譫言のように呟くだけだった。
「そんなに、これが大事か?」目の前のモノに対して、ついつい手を伸ばしたくなる年頃の子供ばかりが集まっているこの街。しかしこれは、興味というより禁断症状のように見える。

593 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:06:23 ID:???
「ま、俺は固有の邪鬼眼は持ってないから、俺を殺しても全く得しないんだけどな」そう言って、ヴィオの背中に邪鬼眼を戻す。
 ゲホッ、という咳払いが聞こえた。「あんた、私に殺されかけたのにそんなんでいいの?」どうやら、邪鬼眼はニコチン中毒者と煙草のような関係らしい。ヴィオはようやく立ち上がった。
「いいよ、お前がさっき『分かった』って誓ってくれたから。俺はお前を信じるし、お前が俺を信じてくれれば万々歳だ」
 その言葉を聞いて、ヴィオはハッと目を開き、またもじもじと目線を下げる。
「理事長の所、行こうぜ」
 カンは、ヴィオやその他について聞きたいことがまだ山ほどあるのだ。

594 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:08:21 ID:???
「ちょっと待って、その前に聞かせて」
 ヴィオはスカート、スパッツの土埃を払う。垂れたネコミミらしき毛も、ピンと立った。
「カン、最後の時にあなたは私に一体何をしたの?」カンは振り向かずに、ポケットからさっき光らせた白色の邪鬼眼を見せる。
「これ、『忘却』の模造邪鬼眼なんだ。これを使って、お前の記憶の中の地図のデータを、『一箇所だけ残してあとは全部消した』」
「……え?」

595 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:09:43 ID:???
 前日の話だった。
 『しかし今ひとつ、決め手が足りない……。これではヴィオを上回るのは無理だ』思案しながら街を歩いていると、コンビニの前で厳つい男が二人、少年に絡んでいた。
 『あいつら……』カンがチェーンに付いた刀に手を触れようとした瞬間、カンの目の前に強烈な光が迸った。
「うわっ」その光は太陽に勝るとも劣らない程に眩しすぎて、カンはクラクラする。
「だ、大丈夫ですか? まさかそんな所に人が居るとは思わなくて……」カンの様子を見た少年が、カンの方に駆け寄ってきたのだ。
「大丈夫ですか? 自分の名前とか住所とか所属クラスとか思い出せますか?」少年は、光を浴びただけのカンに対して変な質問をしてくる。
「だ、大丈夫だよ……。あ、そういえば君。あの二人は――」そう思ってコンビニの方を見やると、厳つい二人は目的を忘れ、何事もなかったかのように話し始めた。
『……? どういう事だ?』カンは疑問と答え、そしてもう一つのモノを見つけ出していた。
 それは、使い道。ヴィオに届く、使い道。

596 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:13:15 ID:???
「君!」カンは、こっちに歩いてきた少年の肩を引きちぎらんばかりに引っ張った。こんな所だけは我が強い。
「その邪鬼眼はもしかして、『モノを忘れさせる能力』なのかい?」目の前の少年はかなりカンを警戒していて、今すぐにでもさっきの邪鬼眼を発動させそうだった。
「え、ええと……」少年は何故か逡巡している。と、ここでカンは気付いて両手をグリコにした。
「大丈夫だ、別に何もしない。これがそのしるしだ」それで、少年の迷いは解くのには十分だった。
「ええと……ちゃんと言うとですね、人間の記憶はタンスに仕舞われていると思っていただけると分かりやすいんですが」長そうな説明が始まったが、少年の願いぐらいは聞き届けないといけない、とカンは耐えることにした。
「つまりこの能力はですね、相手の記憶を全てタンスにしまい込んだ上に、タンスに一定時間カギを掛ける能力なんです」限界が来たカンは、彼の話を強制中断させた。
 カンは、有無を言わさずに少年を例の『邪鬼眼複製屋』へと連れて行き、模造邪鬼眼『雲散忘却(ラ・ヨダソウ・スティアーナ)』を手に入れたのだった。

597 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:17:03 ID:???
「――てなわけで、お前がよっぽどの隠し球を持っていない限りはほぼ俺の勝ちが決定していたワケだ」気分は粉砕、玉砕、大喝采の社長のようだった。
 しかし、これはカンにとっても大きな賭けだった。よっぽどの隠し球が無ければとは言ったものの、ヴィオローネがそれを持っている可能性は大いにあったはずだ。それを無視して、ヴィオの邪鬼眼だけに集中できたのはよほどの運の持ち主だと言える。
「さて、ヴィオ。お前の邪鬼眼もコピーさせていただこうか」
 カンは、すっかり悪い意味でこの土地に順応していた。

598 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/17(土) 22:18:04 ID:???
ちょっとストックが足りなくなってきたけど頑張ります。

599 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/19(月) 21:10:52 ID:???
頑張れなかった(´・ω・`)
今日はお休みします……

600 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/19(月) 23:22:05 ID:???
クロスのペースでムリなさらず

ブレイク・カルテットハマりますた

601 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/19(月) 23:51:08 ID:???
雲散忘却(ラ・ヨダソウ・スティアーナ)


こうくるとは思わなかったw

602 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 16:00:48 ID:???
>>600
ありがとうございます(`・ω・´)

>>601
狙ったお!
邪鬼眼はこうでなくちゃ。

603 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/05/20(火) 18:50:22 ID:???
ごめんね、まとめサボっててごめん

604 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 20:53:08 ID:???
邪鬼眼通信第一号
「邪鬼眼の効果についての説明・1」
・『永遠力暴風雪(エターナルフォースブリザード)』
 強烈な冷気を集中させ、直線方向に放つ。相手は死ぬ。
発動ラグ……15秒
・『未熟(ニュー・カマー)』
 一時的に腕力、脚力などを上昇させ、心身の疲れを少しだけ解消する。
発動ラグ……5時間
・『探索(リサーチ)』
 相手が邪鬼眼を所有している場合、その場所と大きさと色を視覚化する。
発動ラグ……なし
・『神速(バーニングボア)』
 脚力を極端に強化させ、移動速度を上げる。その間は無防備になる。
発動ラグ……使用者の疲労度に依る

605 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 20:55:23 ID:???
「出来ない?」カンは素っ頓狂な声を上げた。
「邪鬼眼が大きすぎるんだよ、こんなの見たこと無い」制限があるなんて、聞いたことがない
 しかしよくよく見れば、握りこぶしサイズのその邪鬼眼は7つ集めた方がよほど世界のためになりそうだった。
 その名も『世界地図(オリハルコン・オーバールッカー)』という。
 単純に言えば瞬間移動(テレポーテーション)の類なのだが、この地図はヴィオの頭の中で構築されている。
 つまり、頭の中で構築された地図が現実に存在する場合のみその場所に移動できるということらしい。……どれくらい鮮明に記憶しなければならないのかは、ヴィオでもよく分かっていないようだが。
「カン凄い! こんな便利な場所があるなんて、どうして今まで教えてくれなかったのよ?」
 教える暇なんて無かったじゃないか、とカンはぼやく。

606 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 20:58:02 ID:???
 ここに来る前に、カンはヴィオローネを連れて理事長に挨拶に行った。
「あんた、ポルタティフと親しいの?」カンはどう答えるべきか分からなかったので、
「新参だし。察してくれ」とだけ言い、ドアをノックして返事も聞かずに中に入る。
「ちょりーっす。ヴィオローネを捕まえました」
 間髪入れずヴィオに平手で頭を殴られる。
「何言ってんのよ!」その姿を見て、窓から外を眺めていたポルタティフは一瞬ポカンとしてから、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「お前ら、もうお友達か。いやしかしお前も、よりによってヴィオとは……、なかなかの物好きと見た」
 多分、カンにとってはクラスの誰よりも親しくなっているだろう。
「腐れ縁です」
 カンはそう言ったが、ヴィオはそっぽを向いていた。

607 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 21:00:58 ID:???
「じゃ、ヴィオを倒したご褒美に――」途端にカンの目の色が変わる。
 そっちを目当てにして動くのは控えめなカンからすればちょっと気が引ける事だったが、ここは貰えるものは貰っておこうという欲が先行した。
「――もう一つ、仕事を引き受けて貰おうか」
 その言葉で、カンはギャグ漫画のような肩すかしを食った。
「しょうがないだろう。この場所には警察みたいな機構が存在しないんだ。もはや政府からすれば、別の国と思われてるのかもな」ヴィオがようやくこっちを見た。
「そこで、お前らにもう一人連れてきて欲しい奴が居る。残念ながら今はあんまり学校に来てくれてないんだがな。希有な邪鬼眼の所有者だったから、手中に収めておきたかったんだが……」
 ポルタティは苦々しい表情をしている。

608 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 21:05:50 ID:???
「あーっ、そいつ知ってる! バセットホルンでしょ!」
 ヴィオの声が、興奮して上ずっている。一方カンの中では、『詳しく』コールがさっきからずっと鳴り響いている。
「私とカンの居るクラス、一つだけ空きがあるのよ。見えてた?」忙しくて見えてなかったので、カンは黙って聞くことに専念する。
「そこが、バセットホルンの席って言われてる。入学当初から姿が見えなかったって言われてるけど、本当にそうなのね」
「そうそう。あいつは多分お前ら個人で闘っても多分何も出来ないだろうから、二人をくっつけておいた方がきっと振り向きやすいと思ってな」カンとヴィオは顔を見合わせる。
『これと一緒に……?』「無理だ」と言いたかったが、流石にそれはバッドエンドになりそうなので控えた。
「じゃあ」カンは右手を差し出した。「改めてよろしく、ヴィオ」
「ええ、よろしく」ぴょん、とヴィオのネコミミが嬉しそうに跳ねた。

609 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 21:09:57 ID:???
 その二人の姿を眺めて、ポルタティフはピュウ、と口笛を吹く。
「じゃあ、チーフカンマー。お前に簡単な謎かけだ」それで人生が決まるわけでもないのに、カンは表情を引き締めた。
「お前、喉ちんこって切除したい?」
「……は?」それに応えたから何だというのだ。はいと応えたらこの場で緊急手術でもする気なのだろうか。一方ヴィオは、なぜか聞いてないように振る舞っている。
「いや……別に、邪魔だからってあれこれ切るのはどうかと……」段々と消えていくような声で、カンは答える。
「そうか、やはりお前ならそう言うと思った。……バセットを連れてきたら、お前にいいモノをやろう。今日はそれだけだ」ポルタティフはそれっきり何も言わなくなった。
 ただ、ヴィオが先に部屋を出てカンも出ようと思った時に――
「カン」
「何でしょう」
「ヴィオローネの件、感謝する」
 ただそう言って、また窓の方を向いてしまった。

610 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/20(火) 21:11:43 ID:???
一章はまだまだ続きます。

611 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/21(水) 12:04:01 ID:???
「よろしく」ぴょんかわいいぴょん(;´Д`)ハァハァ

612 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/22(木) 21:05:40 ID:???
ちょりーっす
おつりんこ

613 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/22(木) 21:53:22 ID:???
邪鬼眼通信二号
「邪鬼眼のランクについて」
SR(スーパーレア)……高ランク。組み合わせ技では1個だけ使える。
R(レア)……中ランク。組み合わせ技では2個まで使える。
C(コモン)……最低ランク。組み合わせ技は3個まで使える。
また、模造邪鬼眼は元にした邪鬼眼より一つ下のランクと同じと見なしてよい。
故に、Cランクのの模造邪鬼眼は作れない。また、一部の邪鬼眼は複製不可能である。

(夢凪学園広報部資料より抜粋)

「組み合わせ技について」
邪鬼眼を3つまでストックして、新しい技を使えるようになる。
邪鬼眼の使用数制限は上記の通り。
威力は絶大で、中には不思議な効果を持つ技もある。

614 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/22(木) 22:48:26 ID:???
 二人はエレベーターにまた乗る。
 何も言われなかったのだが、一体何から始めればいいのだろうか。カンはちょっと不安だった。
「あんな事言ったけど、まだあんたを完全に信用したわけじゃないから」ひでぇ、あの握手はウソかよ。カンは心の中で悶える。
「場所なら分かってるわよ。……北区の端に、『いかにも』誰も寄りつかないような洋館があるの。そこに行くと怪現象が起こるとかなんとか」
「具体的に、どんな?」
 すると、ヴィオは後ろに回っていきなりカンの髪の毛を引っ張った。
「痛ぇ!」
 思わず、カンは刀に手を掛けた。
「だから、こんな事をされるのよ。……意味不明でしょ、髪の毛を抜くお化けなんて。ハゲに未練でも残したのかしら」
 育毛剤の効果を試す前に死んだ幽霊なんて、聞いたこともない。その上、幽霊の存在もイマイチ信じがたいのがカンだった。

615 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/22(木) 22:49:42 ID:???
「明日は、学校が終わったら真っ直ぐあそこに行きましょ」ヴィオは、かつてカンと戦いを繰り広げた展望台を指差した。
 リベンジでもしたいのだろうかと、カンは怪しがる。
「まさか」
 ヴィオはただ否定の一言を述べると、『世界地図』でどこかへと消えていってしまった。
 カンは結局独りごちた。
「……帰るか」
 そうしようとした瞬間、誰かに肩を掴まれた。

616 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/22(木) 22:51:01 ID:???
「!?」
 それは、カンと同じクラスの男子だった。
「何だ、どうしたんだよこんなに集まって。俺、何か忘れて―」その口を、一人の男子が制した。
「そうじゃねぇ! お前、何でヴィオローネとうち解けてるんだ? 大体、ヴィオローネに狙われてたって話はどうなったんだよ!?」ああそれなら、とカンは頭をクシャクシャと掻き回してから、
「全部済んだ。ヴィオも、もういじめっ子卒業だってさ」
 ウォォ、とクラスの男子達から歓声が巻き起こる。そんなに喜ばしいことだったのか、とカンは吃驚している。
 そして、あの初日のクラスの雰囲気は全くの偽物だったということも分かった。
「あんまり騒ぎ立てると、ヴィオに目をつけられそうだったからな……。カン、悪かった。俺たちの愚行を許してくれ」
 そこまで言われると、流石にカンもきまりが悪い。

617 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/22(木) 22:53:27 ID:???
「いいんだよ、別に。何か裏があるだろうなって思ってたから」ウソだが、方便である。
 クラスともほとんどうち解けた。
 女子は……この流れなら、ほぼ間違いなく親しめるだろう。一回の行動で、ここまで目の前が明るくなることも無い。カンにとっては至福だった。
「そう。それで聞きたいことがあるんだけど、このクラスって所謂引きこもりが居るんだろ?」
 その質問に対しては、一部のものは首を傾げているようだった。
「知ってる奴、挙手を願おう」
 パラパラと手が挙がる。4,5人はハッキリと手を挙げていた。
 カンは、サグバットという少年から話を聞くことができた。
「バセットホルンの事だろ? あいつ、何かやりたいことがあるとか言って、2年ぐらい前から一方的に休みだしたんだ。噂によれば、この夢凪の中で最強って言われてるオフィクレイドを、一歩も動かずに倒せるって噂だ」
 オフィクレイドがどんな人なのかについては、今は保留にしておこう。
 今はとにかく、バセットホルンの邪鬼眼についての情報が欲しかった。
 『敵を知り己を知れば何とやら、己を知るのはともかくとして、相手を知らなければ話にならない』とはカンの弁。
「具体的に、どんな邪鬼眼なんだ?」
 さぁ……。と、全員が首を傾げる。流石にそこまでは無理か、と諦めていたカンだったが、そこに救いの手が出た。
「えーとね、よくは分かんないんだけど」
 男子の森の中から一本だけ、男のごつい手ではない、女性の細くて白い手が伸びている。
「……誰?」

618 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/22(木) 22:54:36 ID:???
ほいほい、今日はここまでさね。

619 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/24(土) 16:11:44 ID:???
乙!
続き楽しみにしてるよ

620 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/24(土) 21:37:59 ID:???
新キャラか!

621 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/24(土) 21:39:49 ID:???
今日の邪鬼眼通信は(書くことがないので)お休みです。

622 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/24(土) 21:44:00 ID:???
 それは、前回俺に便利な場所を提供してくれたイリアンだった。イリアンは男子の中を無理矢理通り抜け、カンの前に躍り出る。
「お前、下級生の上に女子だろ? 何してんだ」
 カンの問いかけを、イリアンは無視する。男子勢の中からは、『誰だよ?』『女?』などという疑問の声がそこはかとなく飛び交っている。
「今はそんなの関係ないじゃん。カン、何か知りたそうだね。私の情報網にかかれば、何でもたちどころに分かっちゃうよ!」
 その後にボソッと「ただし、有料」と付け加えた。
「殴るぞ」
 きゃあ、鬼畜が居るわと言ってイリアンが三歩仰け反る。
「法外な値段を請求しそうだから、態と強く言っているんだ。……おいお前ら、俺をそういう犯罪者を見るような眼差しで見るのはでは止めろ! ……いや、やめて下さい」
 状況は明らかに『カン<イリアン』だった。学生生活にありがちな、理不尽ムードである。
「ま、それはそれとして。バセットホルンの何が知りたいのかにゃ?」
 色々と突っ込みどころが満載なのだが、カンは敢えて無視する。

623 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/24(土) 21:47:06 ID:???
「アイツの邪鬼眼。具体的にどんな力なのか知りたい」そう言うと、イリアンはちょっと考えてから、言った。
「しめて3200え――」
 カンは、間髪入れずにデコピンを相手の額にぶち込んだ。
「痛ぁい! か弱い少女をこんな手荒く扱うなんて、この鬼畜の覇者!」もはや、『鬼畜』が定着しつつある。それに、気のせいかレベルアップしているようだ。
「いいから、黙って教えろ。俺にしか出来ないことなんだ」
 カンは『周りを気にしない度胸』を鍛えているのか何なのか、さっきから周りのヒソヒソ声を無視している。
 その後しばらく問答したが、最後には「分かった、分かったわよ」とイリアンが折れた。

624 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/24(土) 21:55:24 ID:???
「めんどくさいからタダでいいよ」
「だから、さっきからそうしろと何度も言って……」
 やはり、周囲の目が気になるのだろう。カンとイリアンはクラスの男子に背中を向けた。イリアンの目が、いつもと違って真剣ムードになったので、カンも思わず背筋を伸ばす。
「単純に言う。彼の能力は擬態、つまり変身能力に尽きると言われているわ」
 邪鬼眼は、人の姿を変化させる領域まで達しているのか。
「邪鬼眼は人間の欲の深さに比例するっての? よく分かんないけど」
 よく分からないなら言うなよ紛らわしい、などとは(みんなの手前なので)言えなかった。これ以上『鬼畜』のレベルを上げたくはなかった。
「もし『変身』をするなら……そのバセットが変身して今ここに居るってこともあり得るのか?」
 否定は出来ないね、とイリアン。
「寧ろ、お前に化けてるとか。ちょっと待てよ――」カンは急いでケータイのアドレス帳を開き、イリアンの電話に掛ける。……コール音がして、すぐに誰かが出た。
『これで、疑いは晴れたかな?』
 目の前のイリアンが、ケータイのの送話口に向かってそう話していた。

625 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/24(土) 21:55:46 ID:???
次回はカンが修行します。

626 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/25(日) 22:50:57 ID:???
>>624の最後がデスノっぽい……

627 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/26(月) 21:59:31 ID:???
 イリアンを見送り、日付は翌日。
「ちょっと、君達何処行くの?」カンがヴィオに付いて出て行こうと思ったら、急に呼び止められた。
 名前はスピネット。クラスの女子の中でも割と可愛い方だ。
「スピネットも行く? デート」
 すると、スピネットはカッと顔を赤らめて反論する。カンはこれが心地よかった。
「デッ……デートは大人数で行くもんじゃないわ! そんなの願い下げよっ!」
 そういう事を言うと、スピネットは必ずこんな反応をする。たまに、持っていた鞄を振り回すこともある。さながらバッグ・ヘル・アンド・ヘブンといったところか。
「ジョークだよ。さいなら〜」
 スピネットの声を無視して、カンは走り出した。
 場所は、いつもの展望台。寒さが、更に強まっている。どうやらそろそろ冬に切り替わる頃のようだ。
 名目は、カンの新人教育。この街での喧嘩は日常茶飯事だというのだから、治安はかなり悪いと思われる。そこを生き抜く為にはカンも強くならなければならない、というのがヴィオの言い分だった。

628 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/26(月) 22:02:15 ID:???
「まずもって、あんたにこれをあげるわ」
 ヴィオから投げられたものを、カンはキャッチする。緑色に強烈な白色を濁らせたような色をした邪鬼眼だった。
「何これ?」『風神(エアレイド・ドライブ)』の邪鬼眼よ、とヴィオが答える。
「これが無いと、この先大変だろうし」
「親切なんだな」するとヴィオはなぜか怒ったように顔を赤らめた。
「あんたが弱すぎて話にならないから、手助けしてるだけよっ!」
 何故怒られたのかは不明だが、とりあえずカンは『風神』を発動させてみる。
「お」
 自分の周りを、空気の塊が包み込んだような感じがする。まさに風の力だ。

629 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/26(月) 22:08:34 ID:???
「その調子よ。じゃあ、それを固形化するなり、剣に纏わせて飛ばすなり、何かやってみて」
 カンはなぜか、塊を足下に飛ばした。
「うわっ」すると身体全体が風に乗り、カンは浮き上がった。
「これ、応用できるかな」
 着地の時は強めに風を込めれば、自分にかかる衝撃が少なくて済む。あっという間にカンは面白い使い道を見いだしたようだ。
「そっちの訓練は自分でやるとして……今度は邪鬼眼の組み合わせ技ね」そう言うと、ヴィオはポケットから、カンが一端返却した『エターナルフォースブリザード』を出した。
「これと、私の『世界地図』『風神』を組み合わせるわ」そう言ってヴィオは目を瞑り、邪鬼眼発動の姿勢になった。

630 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/26(月) 22:14:33 ID:???
「……!」カンは一瞬、今起きていることを理解できなかった。
 数多の野球ボールほどの小さい氷の塊――まるで雹だ――が、物理法則を無視して宙に浮いている。
「もしかして、この氷の中か?」抜刀術気取りで、カンは目の前の氷の塊を切り払う。まるでカプセルのように、それは割れたのだが。
「うわっ」割れた氷の中から、強烈な吹雪が吹き付けてきた。
 すると、他の氷塊たちも次々と連鎖的に爆発し、あっという間に辺りは吹雪に包まれた。
「そして後ろはいただいた、と」呆気にとられている内に、ヴィオに背後を取られていた。
「これが、組み合わせ技。確かこれは『氷結葬(ブリザード・ハーモニクス)』だったかしら」
「……よくは分からんが、とりあえず同時発動すればなんか出るんだな!」
 そこら辺がゲームのようで、カンの興味を誘った。
「一定のルールはあるわ。でも、今はそんなこと気にしなくても大丈夫よ。例えば、これとコレで……」
 ……。そして、三時間ほど経った。

631 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/26(月) 22:17:28 ID:???
「し、死ぬわ……俺もよく頑張ってるよ……」カンは、まともに立てないほどに疲労していた。
「それじゃ、今日はこれぐらい」そう言ってヴィオは、疲れ一つ見せずに普通に歩き去っていこうとした。
 相変わらず、挙動が凛々しさと怪しさを持ち合わせている。その背中がどことなく哀愁を帯びていて、カンは何かを叫ばずにはいられなかった。
「待ってくれ!」
 ヴィオが振り向く。「何?」急だったので、カンは必死に言葉を模索する。
「……また、明日」
 それだけを言うために呼び止めたのか、と思われたら最悪だなぁとカンはちょっと心配になる。しかしヴィオは、
「うん。また明日」
 そう言って、ニッコリと微笑んだ。

632 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/26(月) 22:19:05 ID:???
次回は、バセットホルン戦を一気に載せちゃう予定です。

量、作者の作品ストックなどを考え、更新はだいぶ遅くなります。ご了承下さい。

633 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/27(火) 12:12:05 ID:???
乙乙
魅力的なおにゃのこがいっぱいなのと
カンの竹を割ったような性格が好きですの

634 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/27(火) 21:53:40 ID:???
邪鬼眼通信第03号
「邪鬼眼の効果についての説明・2」
・『風神(エアレイド・ドライブ)』 ランクC
 空気を特定の場所に固形化する。使い道は防御、牽制、攻撃、移動補助など多岐にわたる。
発動ラグ……0.03秒

・『雲散忘却(ラ・ヨダソウ・スティアーナ)』ランクR
 相手の「記憶を呼び出す働き」を抑制する。封印する部分を指定する事も出来るが、『一番強く考えていること』を優先して抑制するようになっている。
発動ラグ……15秒、効果時間1分(模造邪鬼眼はラグ5秒、効果時間10秒)

・『世界地図(オリハルコン・エクスプローラリティ)』(←読み方変更です。ごめんなさい byクロス)ランクSR?(正確なランク不明)
 自分が想像した場所に一瞬で移動する。移動できる場所は視線に依らない。
 記憶の中から地図を呼び出し、それが『現実に存在する場合』のみ、移動が可能となる。
発動ラグ……0.2秒

(文責:イリアン・パイプス)

635 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/28(水) 20:36:46 ID:???
おつかれいしょん

デッ……デートは大人数で行くもんじゃないわ!

うふふ ふはははスピネットかわいいよ

636 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/28(水) 22:21:58 ID:???
スピネットは捨てキャラ臭がプンプンするのですよ……

637 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/29(木) 19:26:02 ID:???
今、1章の執筆が終了しました。

総計26頁半となりました。
次回更新の想像などをしながら、今しばらくお待ち下さい。

638 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/05/30(金) 12:36:06 ID:???
おつ

作者に捨てキャラ扱いされかけてるスピネットたんがんがれ

639 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:30:26 ID:???
邪鬼眼通信第04号
「夢凪市の心霊スポット特集」
・山奥、不滅の赤い霊(夢凪市東区の山中)
 数年前の「貴人事件」の時、当時の反動勢力の最前線にいた「サン・ジェルマン(自称)」はその事件の時に一人の人間によって壊滅的な打撃を受けた。
 その彼の怨念が今も山中を彷徨い、山を探検しようとする輩を引きずり込んで焼き殺すと言われている。
 当時の「フラウト・トラヴェルソの反乱(※)」は、このサン・ジェルマンの消失により事態は鎮静へと向かっていくことになる。

・謎の洋館(夢凪市北区)
 心霊スポットといえばまず誰しもがここを思い浮かべると言うほどに有名である。
 殺された女性の霊が、そこを歩く人の髪を引き抜いてしまうというのだがそれは後付けであり、この洋館にはちゃんと人が住んでいる。
 中に入ればそれは当然住居不法侵入に当たるので、祟られたくなかったら見学だけに留めるべし。

(※)「フラウト・トラヴェルソの反乱」……『不当隔離』の名の下に2年前に発生した、夢凪市全体を巻き込んだ政府に対する大反乱。
 果敢にも単騎でその組織全体に挑んだ一人の少年の貢献により、事態は終息する。

(文責:キョウコ・チバ)

640 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:32:47 ID:???
 訓練と称した虐待(カン曰く)が、三日ほど続いた。
「で、ここがその家っての?」
 そこは、『不気味』を絵に描いたような家だった。ダークな色をふんだんに使った装丁の、まるで魔女が住んでいるような感じが、この場所では場違いに見える。
「学校休んでまで来るなんて、あんたもなかなかのワルね」
「心からやりたいことがあるなら、束縛されている暇はないさ」鉄柵のような門を蹴破り、了解も得ずに中に入る。
「邪魔すんぞ、バセットホルン!」
 当然ながら返事はない。
 洋館は真っ昼間にも関わらず薄暗くて、照明が無ければたちどころに暗転してしまいそうだった。

641 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:35:10 ID:???
「多分、奥の部屋か地下室だと思う。どうする?」
 洋館の奥は、この玄関付近の様子とは違って、病院の廊下みたいになっている。今にもクレオソートの香りが漂ってきそうだった。
「いや。ちょっと待て、その前にやっておくことがある。――ブレーカーを探そう」
 無いのなら無いでいいのだが、相手の心理を揺さぶるために準備しておいた方がいいというカンの考えだった。
「あったわ」古典的なブレーカーがそこにあった。小さく『35』と書いてある。
「ここの上に……これでよし」カンはブレーカーに向かってゴソゴソ何かを施して、その場を後にした。
「よし、後はバセットホルンを見つければいいな。奥の部屋に――」行こうと思った寸前で、カンは誰かに袖を引っ張られた。
 ヴィオ? 違う。ヴィオはカンの右前に居る。引っ張られたのはカンの制服の左袖だ。

642 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:37:50 ID:???
「お兄ちゃんたち、誰?」
 身長がカンの半分にも満たない少女が、ポツンと一人で立っていた。明らかに、この洋館に似つかわしくない。……特筆しておくが、服は着ている。
「君、もしかして変な男の人にさらわれてここに来たのか?」
 最近、邪鬼眼所有者の失踪が相次いでいるという。原因の一端がここにあると見てまず間違いないだろう。
 少女は首を縦に振った。
「……そうか。じゃあ、外に出て待てる?」すると、カンの袖を掴んで離そうとしなくなってしまった。
「……こわい」
「そうかぁ。じゃあ、僕たちから離れないように――」
 するとカンは、ヴィオに突然殴られた。
「信じてたのに!」
 幼女に縋られ、女に罵られ。カンは肩を落とした。

643 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:41:43 ID:???
「どこから来たの?」「西のほう」
 狭く短い廊下を歩いている間に、二人は勝手に仲良くなっていた。女の成せる習性か、とカンはまた一つ感心する。
 二人は、観音開きのドアの前に来た。廊下の様子と相まって、まるで手術室のように見える。
「じゃあ、準備するぞ」カンの模造剣が光る。ヴィオも身構えて、女の子を自分よりも後ろに下げた。
 バン! という音と共に、ドアはあっさりと開いた。
 部屋の中は手術室ではなかったが、会議が出来るほどに広かった。あの薄暗い洋館がウソのような、会社のオフィスのような佇まいである。
 部屋の隅にはパソコン他、電子機器が固まって置いてある。電源は点けっぱなし。
「誰も……居ないのか?」
 その時カンは、全身を吹き抜けていた風が段々と収まる気配に気付いた。風の入り口と出口が存在していたものが、閉じられようとしている。
「あそこの窓が空いているってことは……入り口か!」そこでようやく、カンは振り向いた。
「ご明察」
 聞き慣れない男の声と、何かを爆発させたような音が同時に響いた。

644 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:43:45 ID:???
「キャッ」ヴィオが、何かの衝撃によって5メートルほど吹き飛ばされる。そして、ヴィオが元居た位置に立っているのは、さっきの女の子ではなかった。
 眼鏡を掛けた、カンより少し背の高い男。髪は短めで、着ている服はややくたびれている。
「バセット……ホルン……?」
「正解」男はニヤリと笑みを浮かべる。
「お前、さっきの女の子をどこに!」
 すると、バセットは眼鏡を中指で直して言う。
「女の子? 『君には僕がそう見えたのかい』?」そして、気付く。
 『……擬態か!』ヴィオは壁に打ち据えられて、かなり苦しそうだ。
「おおっと。これでも優しいくらいだぜ、スミカ・ヒイラギ嬢」誰の名前だ、とカンは疑問がわき出て、瞬時に氷解する。
「何で……あたしの名前を……っ!」そう言ってヴィオは目を閉じた。『世界地図』の力で、ヴィオはカンの側に立つ。
「――えてねーから」
 え? と、ヴィオが聞き返す。
「――聞こえて、ねーから」カンは強く言った。

645 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:47:02 ID:???
「そちらは……ああ、『山砕きのレン』の弟君か」
 カンの兄がレンであることは承知の上だが、そんな二つ名があった事を、カンは当然知らなかった。
「では、キミも来たばっかりだろうし、不遇のスミカ嬢の生い立ちからを、ちょっとだけ紹介してやろう」ヴィオとカンが同時に飛びかかる。
 邪鬼眼の場所は、両二の腕。そこに、緑色の光が見える。
「小学5年生の頃だったか。彼女は今の邪鬼眼を発現させた」
 バセットはカンの剣閃をするりと抜け、ヴィオの腕を掴んでカンの方へ振り回した。
「ぐっ」二人同時に壁に叩き付けられる。
「そう。彼女は京都から生地までを一瞬で移動するという、一種のテレポーテーションに成功したのだ。こんな類い希な超能力、現実には類を見ない。しかしそんな当時の彼女の思いとは裏腹に、周りの彼女を見る目は変わった」
「止めてよっ!」ヴィオが叫ぶ。

646 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:51:36 ID:???
「俺は、何も聞こえてないぞっ!」『風神』を刀に纏わせ、無数の風の刃をバセットに向かって放つ。それは、バセットの眼前で文字通り『風』に溶けていった。
 カンは、ようやく相手の状況を見極めるくらいに冷静になった。
『まさか、風で防御をしているのか?』そうでなければ、風を打ち消す事に説明が付かない。
 バセットは一切気にすることなく、淡々と話し続ける。
「哀れなこと。そこからは、彼女に対して逆風しか吹かなかった。友達は一人消え、二人消え。最後には親も彼女を裏切った。――ついに彼女は、一人になった」
「嫌ぁぁぁぁぁぁっ!」ヴィオが叫ぶ。
 その叫びで、遂にカンの怒りは心頭に発した。
「バセットっ!」カンが一人で突撃する。
「フッ、なんとも無策な。ほら、キミの彼女をもっと勇気づけたらどうだい?」そう言ってカンの身体を掴み、ドアから外に投げ飛ばす。
「無論、そんな暇も与えはしないが」そう言ってバセットはまた眼鏡を直す。
 驚くべき力だ。単純にカンの突撃力を受け流すだけではない、何か別の力が働いている。
 為す術もなく、カンは洋館の入り口まで吹き飛ばされた。
「さぁ……お前らの本気を見せてみろ!」

647 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:54:57 ID:???
「バセット」カンは、廊下の向こうのバセットに叫ぶ。「俺は、ポルタティフの元にお前を連れて行くように言われた」
「ハッ。あの何を考えているか知れないオヤジを、キミは信用できるのかい? よほどの馬鹿正直者とみた」
「でも!」カンは、青色と薄緑色の邪鬼眼を発光させる。
「お前を生かしておくのは、俺とヴィオの心が許さない!」
「心意気だけは一人前か。その調子なら、俺を殺すにはあと数年は努力が――」
 バセットは何かに気付いたように後ろを向く。そこには、ヴィオローネが……居ない。
「あんたなんか……土に還れ!」そこでヴィオはバチッ、と邪鬼眼を発動させる。
 同時に、館内の電気が一斉に切れた。
「!」
 バセットは辺りを見回し、ようやく事態に気付いて叫ぶ。
「貴様等……ブレーカーを! くそっ、コンピュータの資料が全部お釈迦に……くそぉぉっ!」

648 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:56:31 ID:???
「こちら、高さ十分。家を丸ごと狙えます」
 カンは一端外に出てから『風神』を使い、高く高く登っていく。丁度、かなり高いところまでまで飛んだところで、カンの秘技が炸裂した。
「スピアー・ザ・グングニィルゥゥゥゥッ!」
 『風神』の空気の塊に『永遠力暴風雪』を入れて形状を槍型に固める。
 それに『神速』をつけて破壊力と速度を倍加させた『氷神槍』が、洋館の中心に深々と突き刺さる。
「そしてこれは、ヴィオローネの分だっ!」更に二本目の『氷神槍』が、バセットとヴィオの居る部屋に目掛けて突き立った。

649 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 19:59:04 ID:???
 下に降り立ったカンは、半壊した洋館に入ってヴィオを救いに行く。
「ヴィオっ!」奥部屋のドアに駆け寄ると、丁度ヴィオがやってくる所だった。
「よかった、ヴィオ。大丈夫?」
「もう大丈夫よ。行きましょ、カン」そう言ったヴィオを、カンは制す。
「まぁちょっと待て。まだ一つやることがある。――『未熟』」
「……え?」
 ドズン、という轟音とともに、ヴィオが吹き飛ばされる。カンのアッパーカットが、彼女にクリーンヒットした。
「残念ね。本物の方がもうちょっと美人よ、偽物さん」
 倒れたヴィオローネの先にいるのは、またしてもヴィオローネ。
 そう、さっきのヴィオはバセットホルンの擬態だった。
「なかなかよ、カン。練習の甲斐があったわ」
 カンが日々の訓練で編み出した秘技、と言えば聞こえは良いか。
「そうか? じゃあ、槍投げの選手にでもなろうかな」間髪入れず「それは無理」と返事が来る。
 カンは凹んだ。そして、バセットに向き直る。
「さて、クズ野郎。殺さずに済ましたのは運がいいと思えよ」
 その声で、元に戻ったバセットがゆっくりと起きあがる。

650 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 20:02:25 ID:???
「チッ。手首が折れてやがる……」そう言うと、バセットは自分の手首を何度も回して元に戻した。……手首が治ったのを確認して、バセットは言った。
「合格点だ」
「はぁ?」カンはポカンとする。
「本気でかかってきて俺一人倒せなかったら、何をしに来たのか分からないからな。目的は明白にさせておいてやる」
 その言葉にヴィオが逆上する。
「まさか、本気にさせるためにあんな事――大事なこと――を言ったの!? 酷い! 謝ってよ!」そう。一番の被害者はヴィオだ。するとバセットは、さっきまでの冷徹な表情を一変させた。
「すまん、本当にすまん」そう言ってバセットは二度謝った。
 角度30度の丁寧なお辞儀が付いて返ってきたので、虚を突かれたヴィオは何も言えなくなった。
「わ……分かったわよ、もういいから」ヴィオも案外サバサバしている。
「そうだな。こいつが本気を出してないのは何となく分かった。バセット、その様子からして不死身か?」腕が治るのに身体が治らない理由は無い。
 それ故に、二人が本気でかかってもおそらく負けていただろう。
「まぁ、厳密には違うのだが……そう言うことにしておこう」そう言って、服に付いた埃をバサバサと払う。
「さて。お前らが俺の家を滅茶苦茶にしたお陰で、これまでのサンプルがほとんどお釈迦だ。もう、この家に居る理由はない」
 ああ、やっぱりこうなるのか、とカンはちょっと後悔の念に包まれた。

651 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/05/31(土) 20:03:40 ID:???
m9っ`Д´)今日は終わり!

652 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/05/31(土) 22:52:34 ID:???
おつかれさまです

時折出てくるレンの情報にワクワクするw

653 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/01(日) 18:30:08 ID:???
スレッド購読者限定「邪鬼眼通信の不可解な点」
「邪鬼眼通信」はまとめサイトには載せていないので、スレッド読者限定です。

>>639の04号は、文責が「キョウコ・チバ」となっています。
それに引き替え、前号の>>634は「イリアン・パイプス」(イリアンのフルネーム)となっています。
これは何故かと言えば、04号はイリアンに化けたバセットホルンによって書かれたモノだからです。
なので、イリアンの本名はキョウコ・チバになります。

Eシリーズやそれ以前のシリーズから読んでくれている方からすれば、ニヤリとする場面ですね。

654 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/06/01(日) 18:51:11 ID:???
>>604 一号
>>613 二号
>>634 03号
>>639 04号


655 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:02:49 ID:???
邪鬼眼通信はお休みです。

656 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:05:43 ID:???
 その後、カンはバセットの邪鬼眼について詳しく聞こうと試みたのだが、バセットはただ、
「後々話す。今はめんどい」の一点張りだった。
 話題が切れた(というかバセットが無理矢理切る)ので、ヴィオが今度はカンに話題を移す。
「――で? あんた、『山砕きのレン』の弟ってホントなのかしら?」
「バセットの言葉を信じるなら、本当なんじゃないか」ハッキリしなさいこのガキ、と頭をはたかれる。
「あーあー、分かったよ五月蝿いな。『山砕きの何とか』のくだりは知らんが、レンは俺の兄貴だ」
 バセットが注釈を加える。
「数年前だな。例の『貴人事件』の時に、山の向こう側に居た邪鬼眼使い『サン・ジェルマン』を倒すために、当時は考えられなかった『山を切り裂く』ことで突破口を開き、そのまま撃破したと言われる豪傑だ。反乱軍を鎮圧したのもほとんどレンのお陰だ」
「その戦いの後、レンは姿を消したわ。死んでいるのか、生きているのか。もし生きていれば、こんなにここは荒れなかったわ。……というよりカン、あんたってもしや名前もカンなのね?」
 あちゃー、とカンは舌を出す。

657 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:07:32 ID:???
「木を隠すなら森の中って奴だよ。まぁ、兄貴は兄貴、俺は俺。道具は間借りしてるだけだ」
「窃盗罪だな。レンがひょっこり出てきたら訴えられてもおかしくない」
 バセットの言い方は、一々カンの癪に障る。
「あ、そうだこの野郎。ヴィオと俺の名前を勝手にバラしといて、お前が言わないのは卑怯だぞ」そうよそうよ、とヴィオが同調する。
「いいのか? 毒蝮とか赤楝蛇とか青大将とか、そんなポイズンな名前だったりしたらどうする?」
 どうもしねーよ、とカンが言う。
「気にもしないし、もし本当に面白かったなら、この街を出てから笑ってやるよ」
「フッ……そうかそうか。シオンだ。シオン・ヒザト。とっとと忘れろ、いいな?」
「――なんだ、結構良い名前じゃんか」
 三人の間に笑みがこぼれた。

658 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:11:52 ID:???
 で、すぐに笑みは崩れた。
「確かに俺はバセットをどうにかしろとは言った。しかし、家を壊すような騒ぎを起こせとは言ってないぞ!」
 やはり、ポルタティフは怒っていた。
「バセットが気むずかしかったので、攻略に時間がかかりました」
「お前がエロゲの主役なんぞ張ったら、やったら間違いなく惨殺ルート、バッドエンドだね」バセットが、スピネットの姿になっている。
「ややこしい、元に戻れ!」カンがたしなめる。
「こいつはこういう奴だ。お前が扱うのは無理だから諦めろ、カン」
 ポルタティフに諭された。遠回しに、バカにされている気がする。
 そしてそこで、ポルタティフは手を打つ。
「さてさて、三人がここに集結したということで、『邪鬼眼管制塔』――JCT部――の部活動を再開させるとしよう!」
 カンとヴィオがポカーンとしていたその側から、別の声が聞こえてきた。

659 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:13:39 ID:???
「おめでとうございます、みなさん。私からもお祝いの言葉を述べさせていただきましょう」
 カンにとっては久しぶりの、オルファリオンだった。
「カン。お前には渡す物がある」ポルタティフはそう言って、カンにあるモノを渡す。
 それは、黒色の邪鬼眼だった。今まで見てきた明るい色とは全く違う、嫌な印象を与える色だ。
「な、なんか怪しい色だな。何の邪鬼眼だよ?」
 ポルタティフは、淡々と答えた。
「『邪鬼眼否定』――。全ての邪鬼眼を無効化する、お前のための邪鬼眼だ」
 落ち着いている全員を余所に、卓上のカレンダーだけが忙しく風にはためき、水無月の終わりを示していた。

660 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:14:18 ID:???
一章「初陣指南書」 了

二章「鬼哭啾々として」に続く

661 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/02(月) 22:18:59 ID:???
まだ二章を2頁半ぐらいしか書いてないので、しばらく執筆期間を下さい。

662 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/06/02(月) 22:27:08 ID:???
休載期間がほとんどなかったのが逆に驚きです。
さすがキモハゲ文芸部のエース!

ゆっくりしていってね!

663 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/03(火) 00:35:02 ID:???
1章オワタ
おつおつ

664 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/03(火) 00:38:04 ID:???
はえーー

結局仲間になるのねこの人も

665 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/03(火) 00:42:57 ID:???
で、今後どうするの。問題児はあらかたカタついたんじゃないの

666 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/03(火) 00:43:29 ID:???
アレか。ラスボスは校長が魔王

667 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/03(火) 20:44:49 ID:???
>>665
まだカンを中心にしたことしか語っていないので、書こうと思えば色々と書けますね。
カンも、まだ目的も分からずフラフラと彷徨っているようですし。

668 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/04(水) 13:22:52 ID:???
乙んこ
各キャラスピンオフ書いてほしいwみんなキャラ立ちしてて好き

669 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/05(木) 21:48:43 ID:???
邪鬼眼通信第五号
『レアリティ改訂のお知らせ』
この度邪鬼眼のレアリティを改訂するという報告が為された。
それは、SRの上位である『AR(アメイジング・レア)』を追加するというもの。
今現在、ARとして報告されている邪鬼眼は以下の通り。
『世界地図』
『宿怨の業火(ダークフレイムオブディッセンバー)』
『探索』
『氷結の祝砲(インフェルノオブメサイア)』
この基準は夏休み後から有効とする。

『夏休みの間の校舎開放について』
夢凪学園は半ばの数日間のみ閉館しますが、それ以外はほぼ常時開放しております。
時間は9:00〜14:00まで。
売店も早めに閉まりますがやっております。
それでは、快適な夏休みをお過ごし下さい。
副学園長 オルファリオン

生徒会長 アルモニカ

670 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/07(土) 22:38:11 ID:???
じゃあ、そろそろなんかしますか。

671 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/07(土) 22:39:59 ID:???
二章「鬼哭啾々として」

672 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/07(土) 22:43:08 ID:???
 この夢凪にも、夏休みというものがあるらしい。
「何で?」
「知らないわよ」
 期間は6月末から7月上旬までだという。始まるのは早いが、長さ的には一般的な学校と大差ないな、とカンは思った。
「夏休みと言ったって、こんな狭苦しい土地じゃ勉強以外は何もすること無いじゃん。みんな何してんの?」シッ、とヴィオがカンの口を塞ぐ。
「成績と生活態度が優良な生徒は、家に帰る権利があるのよ」
 ――家。カンも、家のことを思い出してちょっと感傷的になる。でも、なぜそんな事でヴィオはカンの口を塞ぐ必要があったのだろうか。
「俺には無縁な話だな」カンは、成績はそこそこ取れているが、決して優良とは言えなかった。
 平静を装うカンの姿が、余計に無情さを誘う。
「人を傷つけるような強力な邪鬼眼を持ってたり、暴走の危険性を孕んでいたりすれば、いくら成績や態度がよくても帰れないのよ。この気持ち、分かるでしょ?」
 それは、本人にとってもの凄いストレスに違いない。思春期な人達がこの場所に軟禁されてしまうのだ、その人の青春はどうなってしまうのだろう。

673 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/07(土) 22:45:19 ID:???
「そんな状態の奴なら、家に帰せばいいのに。なんで引き留めるんだろうな」
 暴走の危険性がない上に勤勉ならば、社会に出ても特に問題はないだろう。カンはそう思った。
「知らないわ。ポルタティフに聞けばいいでしょ」カンは、そこら辺の関連性については一切話したことがなかった。
「ねぇねぇ二人、何の話?」
 そこに割り込んだのはスピネット。イリアンよりはマシだが、それでも少し空気が読めていないようだ。
 なので、反射的にこう答える。
「デートの話だが?」カッ、とスピネットの顔が赤くなる。
「デートの話ならこっそりとしなさいよっ! ……っていうかあなた達、私に合うたびにデートの話してない?」
 意外と早く気付かれてしまった。さて、どう言い訳をすべきか。
「それは……きっと気のせいだ」言い訳にしては苦しい。それを示すように、スピネットの眉根は寄りっぱなしになっていた。
「スピネット、邪魔だ」
 そうやってカンが必死に言い訳を考えている内に、更に話をややこしくしそうな奴が飛び込んできてしまった。
 バセットホルンだ。スピネットが反射運動のように数センチ飛び退く。

674 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/07(土) 22:49:20 ID:???
 その様子を見てカンは、バセットホルンが登校してきた日のことを思い出した。
 ガラリとドアを開けて入ってきた生徒を見て、カンの登校初日の如く(寧ろ、それよりも)静かになった教室があった。
『何だ、お前ら……? そんなに俺が珍しいか?』
 ああその通りだよこの野郎、とクラス全員が思ったに違いない。クラスが、悪い意味で纏まっていたのだから記念すべき事態なのだが、カンとヴィオは複雑だった。
「あ、あなたもデートなの?」スピネットは、そんなことは天地がひっくり返ってもあり得ない、と言いたげな表情をしている。かなり失礼だが、それを気に掛ける奴は居ない。
「少なくともそんな浮ついたことにはならないだろうが――、旅行に行くことは決まったぞ」
 え? と、三人は首を傾げる。
 すると、ガラリとドアを開けて誰かが入ってきた。
「長期休暇の間に邪鬼眼の所有者はこちらに引き込むことになっている。その中でも発言される危険性の高い者に同伴して欲しい。……幸いながら、今夏は一人だけだな」
 ポルタティフだった。
「あ……あんた達、一体何をやってるの……?」
 いきなり変なことを言われて驚いているのはスピネットだった。カンやヴィオやバセットが『邪鬼眼管制塔』に入っていることは、まだ公になってなかった。
「まぁ……入り用ってやつだ。どうせだしお前も行くか?」
「べ、べ……別に……どうぞ」
 スピネットが、またまた顔を赤らめた。そろそろ、顔色の赤白比率が6:4になりそうだ。
 ――そして、数日後。学校は24日間の長期休業に入った。

675 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/07(土) 22:51:39 ID:???
二章は二部構成で、前半はカンが帰郷するお話です。
後半はまだちょっと構成を捻っているので、ちゃんと決まったらお知らせします。
……一週間で更新5回分ぐらいしか書きためられませんでした。

676 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/08(日) 16:28:25 ID:???
スピネットかわいいよー

677 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/08(日) 17:30:16 ID:???
じゃ、じゃあかわいくないよー(´・ω・`)

678 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/08(日) 18:52:08 ID:YEoj+S7L
うんこちんちん

679 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/08(日) 18:54:37 ID:???
スレがあがったああああああああああああああああああああああ

680 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/08(日) 18:55:52 ID:???
あげたった

681 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/06/08(日) 21:38:18 ID:???
クロス先生の作品がまとめてあるのはNimだけ!(たぶん!
クロス先生に励ましの信(中国ではこう書く)を!
http://www42.atwiki.jp/novelsinmixi/pages/67.html



682 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/10(火) 02:44:29 ID:???
スピネットたん仲間入りじゃniceka!!!!!!!

683 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 18:07:10 ID:???
ひとまず今日更新します。

684 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 20:17:11 ID:???
ちょっと説明臭い文章が多いです。
意味を咀嚼できるかな?

685 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 20:19:26 ID:???
 カン達は最初の五日間だけ講習に参加し、残りは自由日になっていた。
「じゃあ四人とも、くれぐれもお気をつけて」
 オフィクレイドが、駅まで四人を送ってくれた。
「お前ら、何でここに居るんだ?」
 そしてそこには、クラスのメンバーも数人居た。
「彼らのために見送りぐらいしたらどうかと言ったら、みんな快諾してくれましたので」
 オフィクレイドの進言だった。カンも流石に文句は言えない。
「じゃあ、休みが明けたら仲間が一人増えてる事を期待しておいてくれ。それまで、邪鬼眼の暴走に気をつけろよ」
 おう、と誰かの返事が聞こえる。
「カン君も、あれから数ヶ月しか経っていないのに随分と成長しましたね」
 オフィクレイドから言葉を掛けられて恐縮する。さながら美髯公、関羽のように綺麗な髯が揺れていた。手入れを欠かしていないようだ。

686 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 20:24:05 ID:???
 電車の止まる金切り音が聞こえてきた。まるで、田舎から都会へ出る転校生みたいだった。
『行く前の俺と、大違いだ』夢凪に行くときの電車には、カンを見送る人なんて居なかった。みんながそこまで暇じゃないのは分かっていたが、心寂しかったのは事実だった。
 まだ、カン一行以外には乗客は居ない。適当な位置に陣取り、バセットとヴィオが窓際、カンとスピネットが内側になった。
「さて、それでは旅の主旨を説明しよう。退屈になったら俺の横顔をぶん殴ってくれれば、少し休んでやる」
 早速、意味不明である。
「とりあえず殴ろうかな」これはヴィオ。
 今日は男1:女2:人外1の比率なので、ヴィオも安心できるようだ。
「まず、この世界に於いての俺の役割について軽く説明しよう。――俺は、この世界の中の生命倫理を崩壊させる役割を持っている」
 ヴィオはどこから出したのか、持っていたスリッパでバセットの頭を引っぱたいた。

687 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 20:26:43 ID:???
「まぁ落ち着け。俺はこの通り不死身、つまり『死の概念」が欠落している。歳をとりたくなければ自分でなんとかできるし、イケメンになりたかったら整形できる。まぁ、今のままでも十分いけてるが」
 カンが、ヴィオのスリッパを借りてバセットの横っ面をぶん殴った。
「言いたいことはなんだ。お前の役割を俺たちが知ったところで何だと言うんだ」
 バセットは吹っ飛んだ眼鏡を拾い上げ、ポケットに挿す。
「主役は常にお前ら、って事だ」
 いまいち要領を得ない。
「納得できない、って顔だな」
 分かってるならこの状況を何とかしろ、とカンは言いたかった。
「じゃあ、今度は分かりやすい、この世界の真理を教えよう。カン」
 バセットが言うというだけで、カンは何を言われても分からない自身があった。
「それは何だ」
「お前は、何のために邪鬼眼を潰す?」
 バセットも、ポルタティフのように人を食ったような質問が好きらしい。

688 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 20:28:42 ID:???
「さぁ……暴力を振るうのはよくないから、かな」
 すると、バセットは『やれやれ』の仕草をした。
「弱いな。そんな理由じゃ、お前は動いてもお前の兄貴は梃子でも動かないだろうな」
 カンはブスッとする。
「じゃあ、もっと強い理由があるの?」スピネットが言った。
「あるな。それを聞けば、レンでも確実に動く。そしてそれはお前の存在目的に値する」
 そう言って、バセットはポケットからメモ帳を出す。
「単純に結論から述べよう。邪鬼眼をもっと分かりやすい単語にするなら、こう書く」

『Cancer』

「!」ヴィオが、息を飲んだ。
 電車の窓が、風でガタガタと揺れている。

689 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/10(火) 20:30:30 ID:???
スピネットの設定考えるのに必死です。

690 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/11(水) 00:18:13 ID:???
すいません

691 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/11(水) 17:59:13 ID:???
カ……キャ、キャンセル……?

692 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/11(水) 19:22:48 ID:???
スペルミスしたかと思ったじゃないか(´・ω・`)

693 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/11(水) 22:05:35 ID:???
「そう、『蟹の足』が語源の、ガンだ。正確にガンと断言するのは、お前らの不安を煽るだけなのだが、ここは敢えてそう言わせて貰おう。邪魔者であることに変わりはない」
 バセットは眼鏡をかけ直した。
「カン。お前がやっているのは、言うなればガンの放射線治療だ。しかもお前のその模造剣は、使用者に過度な負荷を掛けずに邪鬼眼を取り除くことが出来る」
 窓の外の景色の緑色の山々が、カンの震えをギリギリで抑えていた。
「じゃあ、邪鬼眼で邪鬼眼を潰す、今流の方法は何が間違いなの?」カンも、スピネットの意見に賛同する。
「単純だ――頭脳派のスピネットに言っても特に意味はないんだが――。脳みそに繋がる神経を無理矢理引きちぎるような行為だ、人格破壊や脳死に近い事が起こる」
 もう、三人は完全に沈黙してしまっていた。
「『人間は地球の癌』と言った偉人もいる。地球からすれば、この事態は決して看過できるものではないだろう」

694 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/11(水) 22:07:03 ID:???
「何で、俺たちが癌なんだ?」
 バセットの説を支持するなら邪鬼眼は人間の癌だが、そこまでは言われていない。
「簡単なこと。ガンも人間も、生きるというエゴしか身につけていない。そういう視点から言えば、ガンも人間も一緒だ。所詮、規模の問題でしかない」
「分かった。……急に話が広がりすぎてアレだが、とりあえず俺たちは目の前のモノを守るので精一杯なんだ、そうだろう?」
「それでもいいさ。お前には両手両足と一差しの剣しか無いんだからな、行動範囲なんてたかが知れている」
 カンは、ポルタティフのいつぞやの言葉を思い出していた。
『お前、喉ちんこって切除したい?』
 あの時のカンは、この質問の真意が全く分からなかったが、少しだけ靄が晴れてきたかもしれない。

695 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/11(水) 22:08:44 ID:???
「もちろんポルタティフも、既にこの事実には気付いているだろうな。……ちなみに、喉ちんこを切除することは可能だが、その後によくない影響が出ている例もあるらしい」
 それは、つまり。
「言うまでもない。あいつは、そういう奴だ」
 最後の最後で、お茶を濁した。
「だから、あんまり夢凪には居たくないんだよ……」バセットが勝手に嘆息する。
すると、誰も居なかった客車に異物が入ってきた。
「おっ。ここ空いてるっぽいよ」男女のカップルだった。
『ちなみに』こっそりとバセットが耳打ちする。顔が近い。『一般人に邪鬼眼の事は知られてはならない、という事になっている』
『まぁ、便宜上夢凪も政府の隔離都市だし……』そう思って、とりあえず二人をチラリと『探索』で見る。
『邪鬼眼反応……あるが、光ってはいないか』どうやら敵意はないようだ。それを四人に伝えると、そこで話は終わってしまった。

696 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/11(水) 22:12:01 ID:???
 ――駅に着いた。
「娑婆の空気はうめぇなー」ヴィオが、めちゃくちゃ怪しい台詞を吐いたのを余所に、カンは郷里に思いを馳せていた。
 カンの通っていた学校も、まだそこにある。少ししか居なかったのに、カンは竜宮城に居たような心地さえした。
「で、まだ正確な場所も聞いてないんだが。ここから何処へ?」
「ん? いやいや、別に何処にも。そこだ」
 バセットの指先は、さっきまでカンが見ていた学校を指していた。

 一方、当の学校では、カンがこの学校を去ってから早くも二ヶ月ほどが経っていた。
 一時期は今までの影っぷりがウソのような人気ぶりだったのだが、今はもう、文字通り見る影もない。流行り廃りというのは、何か悲しいモノがある。
『アイツ、どこで何やってるんだろう……』
 そこには、心持ち憔悴した様子の少女が居た。
 メールをしても電話をかけても、返事なんて無い。
『ただいま、電波が届かないところに――』
 その表示を見ながら、彼女は電話を閉じた。

697 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/11(水) 22:34:02 ID:???
邪鬼眼通信第六号
『邪鬼眼の効果についての説明・3』
・『瞬風(ハヤブサ・エアレイド)』 ランクR
 自身に風を纏わせ、敵の攻撃を受け流しやすくする。
 主に反撃に使う。
 発動ラグ…なし

・『変化(メタモルフォーゼ)』 ランクSR
 相手の細胞の一部を利用して、その所有者の身体を再生する。
 正確には相手の視覚情報を変更しているのだが、肉体を本人と同じように変質させることも出来る。その場合、戻るのに少し時間を要する。
 また、人間でなくても変身できる。
 発動ラグ…なし

・『邪鬼眼否定』 ランクC(暫定)
 効果を持った物体に触れた、相手の邪鬼眼を無効化する。
 他の邪鬼眼と組み合わせて使うのが主な使い方。
 発動ラグ…50分 発動時間…5分

『市内一斉清掃、生徒達の自主的な取り組みが光る』
 先日、夢凪学園の生徒200人が市内一斉清掃に取り組んだ。
 これは、昨今叫ばれている環境の悪化に伴う生徒達の声が実現したものであり、参加者は全員が真剣な顔をして落ちているゴミの回収などに取り組んだ。
 主催者のオフィクレイドは「夢凪を綺麗にする必要がある。その為に、落ちているゴミなどは積極的に拾っていきたい」などと述べている。

698 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/13(金) 00:26:46 ID:???
デスマスクか

699 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/13(金) 00:30:27 ID:???
内面解析モードか新展開か
新展開はねぇか。戦えないし。世直し軍団になっていくのかな
おつかれさんっと

700 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 19:47:04 ID:???
700ズサ

701 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 21:58:38 ID:???
新キャラ登場です。
変にてこ入れしない方が人気が出るのは何故でしょう?

702 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 22:02:01 ID:???
『忘れられるわけ無いじゃん、あんな変な奴……』
 彼女とカンは、幼なじみだった。昔は気の強かった彼女がカンを守るという図式が、小学生の辺りまで続いていた。
『カンを、いじめるなー!』それを聞けば、ガキ大将もイチコロだった。
 ……そこからは流石に彼女も体面を考えて、多少淑やかになったようだが。
 すると、閉じた電話がまた震えた。どうやら、メールの着信音ではないようだ。
「誰だろう……」見るたびに一縷の期待を寄せてしまうのが、カンが居なくなってからの彼女のクセになっていた。
『……ユキか?』
 だからその言葉を聞いた瞬間、涙腺がじわりと滲んで、手足が震えた。

703 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 22:04:35 ID:???
 まさか。カンは居なくなったんじゃなかったのか。
「うん、私だよ」
 何もよりどころがないと、溜まった涙が溢れそうになる。ユキはとりあえず電柱にもたれかかった。
『ごめん、急に居なくなったりして。事情を説明する暇も無かったから、心配してたんじゃないかな。泣いてたりしないよな』
 カンはこっちを見ているのか、と焦る。
「し、してないよ!」昔ながらの虚勢を張る仕草をしてみる。しかし涙から声に力が入らず、自然と弱々しい声になってしまった。
『そうなんだ。じゃあな』「!」
 まずい。このままでは電話を切られる。電話を握る手が汗ばんだ。
「待ってよ! 会えないの?」必死に送話口に語りかける。
『ウソだよ。後ろ見ろ、後ろ』その言葉に導かれるように、ユキは振り向く。
 ――居た。カン。紛れもない、カン。

704 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 22:19:40 ID:???
「―っ!」駆け寄って、カンの顔をつねる。
「痛ぇ! おま、久しぶりなのにその態度はねーだろ!」カンが頬を抑えて飛び退く。
 もう、流れる涙を気にしている暇なんて無かった。
「バカッ、こっちだって心配したんだから!」
 ユキはカンを引っぱたこうとしたが、流石にそこまでしたら再会がぶち壊しだと思い、寸前で踏みとどまった。
「ま、こっちも色々あってさ。……そうだ。お前の親に、これ渡してくれないかな」
 渡されたのは、やや厚めの封筒。
「開けるなよ。……まぁ、あいつは開けてもやむなしとは言っていたが」
 『あいつ』が一体誰なのかは分からないが、とりあえずカンが居なくなってから開けることに決めた。今は、カンと話をする方が大事だ。
「待って! 何処に行くのか私にちゃんと教えなさい!」
「俺、今日は家に泊まるから。あと、夜中にあんまりうろつくなよ。……危なくなったら、俺がついてる」
 カンは、『ついてくるな』と言いたげな背中を見せながら走り去った。
「!」ユキが思わず後を追う。
 角を曲がって大きな通りに出ると、カンの姿は見えなくなっていた。
「居ない……?」探しようがないし、家に居ると言っていたカンの言葉を信じることにした。
 そして、ユキはカンの姿に懐かしさと驚きを感じていた。
『そうやって、いつも泣きついてくるんだから……』ちょっとだけ、ユキに笑いがこみ上げてきた。

705 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 22:24:48 ID:???
「お疲れ、クソメガネ」カンに対してそう言ったのはヴィオローネだった。
 目の前のカンが『擬態』を解き、バセットホルンに戻る。
「俺の演技も大したもんだろ」
 他人を真似るなんて行為、カンにはとても出来そうになかった。
「演技って言うか、ほとんど本人なんだから演技もクソもないだろ」
 そう言って、カンは嘆息した。

706 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/13(金) 22:25:52 ID:???
擬態の理由は次回!

707 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/13(金) 23:16:30 ID:???
乙です。クロスのおにゃのこ可愛すぎ。2次元萌え復帰しかかっている自分が恐いです。。

708 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/13(金) 23:57:27 ID:???

このままではスピネットの居場所が……!

709 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 00:24:19 ID:???
絵を描いてくれるような有志は……流石に居ないか

710 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/14(土) 00:29:37 ID:???
作者自ら描くって手もあるぜ〜

711 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 00:31:47 ID:???
永遠に勘弁していただきたいものです(泣)

712 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/14(土) 01:14:22 ID:???
クロス作・シニア絵の奇跡のコラボって手もあるぜ

713 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/14(土) 02:05:51 ID:???
もっとすごい奇跡が起こってるっていうのに

714 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 22:29:22 ID:???
危機感とともに連続更新です。

715 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 22:31:25 ID:???
――さかのぼること数時間前――
「ユキ!? お前、ユキって言ったな?」
 カンの、驚き混じりの声が響いた。
「そうだ。ユキ・セノウ。お前の幼なじみだったな。これも運命か」バセットホルンがニヤリとしながら呟く。
「とりあえず、ユキが来るなら……」言いかけて、カンは口を噤む。
「幼なじみも、過酷な運命に巻き込むか……? まぁいい、これは学園の指示だしな、逆らうわけにもいかんし」
 しかし、問題はそこへどう持ち込むかだった。
「突然知らせたりしたら、ショックを受けるんじゃ……」とスピネット。確かにそうだ。転校しろなんて突然言われたら、はたして一般女子のメンタルでそれを受け止めきれるのだろうか。
「そうだなぁ。しかし、俺をメッセンジャーに使うと、あがって余計なことまで喋りそうな気がする」久しぶりの再会なのだ、気分が高揚するかもしれない。
「どうするかな。……あ、そうだ」ポン、とヴィオは手を打って、カンとバセットを見つめた。
「?」
 そして、現在に至る。

716 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 22:33:16 ID:???
「怪しい奴等が居たな。そもそも俺が、邪鬼眼使いがここに居ると情報を垂れ流したお陰なんだがな」
「お前、なんでそんな余計なことを……ユキに何かあったらどうするんだよ!」
「そこはお前が守ってやればいいじゃないか。『邪鬼眼否定』もあることだし、特に問題はないだろ。お前のお株もあがって、一石二鳥だ」返す刀でバセットはぬけぬけとこう言うのだ。
「分かった分かった。もういいよ」
 何だか、バセットはいつも物事の先の先を読んでいる気がする。カンはそう思った。
 ――その一方。
「逃げるなんて……本当は会いたくなかったのかな?」
 まさか、と夕闇の元でユキは必死に否定する。しかし、完全に否定する材料を持ち合わせていないが故に、かなり心苦しかった。

717 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 22:35:10 ID:???
『カンが何も言ってくれないから、何にも分かんないよ……』
 さっき、ユキは親に封筒を渡した。それを眺めている隙に、ユキは一人で河川敷に出た。ここは、カンとの思い出の場所でもある。
 だから、またユキは期待していた。
 まだ、ユキは期待していた。
『何処にいるんだろう……』ユキは、カンとの思い出を噛み締めるように目を閉じる。
 ユキはこうすると、寝ているわけでもないのに夢を見る事があった。
 自分は鳥。空を飛んでいて、行きたいところ何処へでも行ける。だから、鳥に目を貸して、カンの場所を探ってみたくなった。
『出来る、かな……?』一度だけ『鳥』が地面に落ちてしまった事があり、ユキはそのショックで失禁しかけた事があった。
 それ以来この不思議な『夢』で遊ぶ事は無くなってしまったが、今でも出来るだろうか。彼女は、試してみた。
『カンの居場所……カンの居場所……』ユキは祈る。届け届け、と祈ること数秒。
『――――ッ!』地面がふらつき、天地が逆転していく。空に向かって、自分が段々と落ちていく感覚で、ユキは意識を失った。
 目が覚めると、そこの遠く下に地面が見えた。
 ユキは飛んでいた。

718 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 22:37:49 ID:???
『――成功! やった!』
 ユキ自身がせわしなく羽を動かしているワケではない。あくまで、視覚情報が流れ込んでくるだけだった。そしてこの情報は、現在起こっていることをそのまま映し出す。
 カンは家に居るのだろうと思っていたのだが、どうやら居ないようだ。
『カンは……あれかしら?』そこはカンの家とは反対方向の、市街地だった。
 駅周辺はかつてのカンなら余り興味を示さないような場所だったのだが、何故カンはそんな所に居るのか。
 鳥が急降下する。そして、ユキはそこにカンの姿をハッキリと確認した。鳥が地面に降り立ち、カンの居る場所をじっと見つめてくれている。
『カンと話してる人……誰かしら? 男一人と、女が二人……。まさか、いけない事をしようとしているんじゃ!?』
 時間が時間だ。考えられなくはない、とユキの想像は膨らむばかりであった。
 その瞬間、ユキの意識が引き戻された。どうやら、もう時間のようだ。
『まだ、聞かなきゃいけないことが一杯あるみたいね……』
 その事だけ確認すると、ユキはまたこっそりと家に戻った。

719 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/14(土) 22:44:11 ID:???
次回からバトルパートです。

720 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/15(日) 00:23:33 ID:???
カンVSユキか……

721 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/15(日) 18:21:02 ID:???
色々あってカンがボコボコにされるんですね、分かります。

722 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/15(日) 23:07:05 ID:???
カン…

723 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/16(月) 21:00:28 ID:???
 土曜日だった。
 今日は、ちゃんとカンと会って話をすることになっている。
『まさか、昨日の人達が一緒だったりしないよね……』ユキはそれだけが不安だった。
 だから、朝に家族がどんな様子だったかなどということは、些末な問題に過ぎなかった。
「ユ・キ。何してんだよ、ちゃんと来ただろ?」
 昨日と変わらぬカンが居た。ちょっと、背が伸びている気がする。
「うん、ちょっと考え事してた。スタバでも行こっか?」
 まずは落ち着いて話がしたい。ユキはそればっかりだった。
 結局、コーヒーに先に口をつけたのも、先に話を切り出したのもカンだった。ユキから見た昔のカンなら、もっと受動的だったはずなのだが。
『なんか、調子狂うなぁ……』そう思いながら、ようやくユキもコーヒーに口をつける。
「勝手にいなくなって、悪かった。まず謝る。それは俺のことを殴った所で許されない事だと思うし、謝って謝りきれる事じゃないと思う」
 何だか、浮気がばれた夫婦みたいだ。
「い、いいよ別に。そんなにされると、こっちが悪いことしたみたいじゃん……」
 このムードでは大事な話がはぐらかされてしまいそうな気がする、とユキは危惧した。

724 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/16(月) 21:02:35 ID:???
「ちょっと待った。カン、ちゃんと学校行ってるの?」
 苦肉の策の、しょうもない質問だった。質問する内容を纏めておけばよかった、とユキは後悔する。
「行ってるけど、それがどうかしたか?」まぁ、普通ならそう答えるだろう。
「そうじゃなくて。アタシがあんたを見る限り、ここに居た頃は素行優良、成績並。そんな奴が、親から独立して転校するはずが無いじゃない。つまり、あっちで何かあったって事でしょ?」
「まさか。ちょっと、親から独立してみたかったんだよ」
 カンの表情に変化はない。そこをとってもやはり、ユキにとっては違和感がある。
「カン、やっぱりなんかおかしい。それに、昨日一緒に話してた人達は一体何処の誰なのよ?」
 カンのはぐらかすような言い口になんとなく苛立ち、ユキは『切り札』を使ってしまった。
『これで、カンがどう出るかがカギね……』
 自分の力の真偽を確かめることも出来るので、ユキにとっては一石二鳥だった。

725 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/16(月) 21:07:02 ID:???
「まさか!」
 その一言で、ユキは勝ち誇った。
 カンの目の色が変わった。見えているはずがない、と顔に書いてある。この分かりやすい性格こそが、ユキにとってのカンだった。
「ふーん。その反応を見る限りじゃあ、やっぱり昨夜は何かしてたんだ。アタシには全部お見通しなんだから」
 ユキは意味のない優越感に浸り、カンはかなり動揺していた。
「お前、それってもしかして昔言ってた『鳥の夢』ってやつか?」
「あ、すごい。カンったら、そんな事よく覚えてたね。えへへ、実はそうなんだ」
「お前、まさか……って事は、ますます……」
 カンはブツブツ言いながら頭を掻いている。
「さ、そろそろ向こうで何してたか教えて貰えない? さもないと――」
「危ない!」
 言うなり、カンが飛び出してユキを席から引っ張り出した。ユキを庇うように店の中心へ転がり込む。
 それと同時に、何かが爆発するような音が店中に響いた。中にいた客の悲鳴が木霊する。ガラスにはヒビが入っていて、少しでも突いたら全て粉々に崩れてしまいそうだ。
「ここを出よう」カンはユキの返事も聞かぬまま、ユキを抱えるように店を出る。
「ちょっ、カン、あの、下が……」ユキはお姫様だっこされてしまって、スカートが捲れる寸前だった。残念ながら、カンには全く聞こえていなかったようだが。
 カンとユキが店を出た瞬間、目の前で空気が弾けた。ユキは何が起きているのか全く分からぬまま、すぐ脇のビルの間の行き止まりの路地に下ろされた。

726 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/16(月) 21:11:06 ID:???
「あ、ありがとう。重くなかった?」何が起きているのかは不明だが、ここならば多分安全なのだろう。
「ちょっと重かった」
 パン、と間髪入れずにカンの額を叩く。
「ひどい!」
 ユキは、わざとふてくされる。これぐらいの掛け合いは、いつものことだった。しかし、カンは嫌味を返すことなく、ただ淡々としていた。
「それじゃあ、しばらくここに隠れてろよ」
 そう言うカンの右手には、日本刀が握られていた。
「カン、それ……?」ユキは何が起きているのか、カンが何をしようとしているのか、さっぱり分からなかった。
「昔、お前が俺のこと庇ったり、守ってくれたりしてくれたこと、本当に嬉しく思ってる。だから、今は俺が恩返しする番って事だ」
 カンは雪の前に仁王立ちして、振り向きもせずに言った。
「お前を守る。絶対に」
 そう言うカンの背中が、ユキの目には今まで以上に照り映えて見えた。

727 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/16(月) 21:28:01 ID:???
男子三日会わざれば刮目して見よ

728 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/16(月) 21:33:48 ID:???
カンをどこまで格好良く書けるか!という事に挑戦したわけですが。
やっぱり女を守る男の姿かなぁ、と思い至りまして。

でもやっぱり相良宗介みたいにはいかないもんです。

729 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/16(月) 22:00:41 ID:???
邪鬼眼通信に書いて欲しいこと(補完して欲しい部分)とかありますかね。

730 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/18(水) 21:19:00 ID:???
「キミ、一人じゃ辛くない?」
 攻撃を仕掛けてきたのは、カンと同じぐらいの年齢に見える少年だった。
「お前……こんな真っ昼間から堂々と。衆目に晒されたらどうするんだ。明日の新聞の一面は間違いナシだぞ」
「気にしないでいいさ。こういう時のために人払いの邪鬼眼があるんだ」
 巨大な弓矢を携えた少年。武器使用と言う点では、どうやらカンと同じようだ。
「カン……何なのよ、あれ?」ユキがたまらず質問する。
 瞬間、火に包まれた矢が飛んでくる。それをカンはおもむろに刀で弾く。
「質問は後だ! もう少しで奴等が来るから、それまでそこに居ろ!」そこまで言って、カンは通りに躍り出た。
「さぁ、何処にいる?」場所を探すのは簡単だ。『探索』で反応がある箇所を見つければいいだけだ。
『街路樹の……上!』カンは『邪鬼眼否定』と『風神』を発動させる。

731 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/18(水) 21:22:07 ID:???
「これでどうだっ!」纏わせた邪鬼眼否定の風の刃を、木に向かって放つ。木が中心から砕け、倒れる。
「! なんでここが分かった!?」もう一度少年はカンを狙おうと、弓を構える。しかし。
「……! 何故だ、何故動かない!?」少年の邪鬼眼は、既に使い物にならなくなっていた。
 その無念さを帯びた少年の前に、カンは堂々と立つ。
「当然だ。お前の邪鬼眼は『否定』された。――つまり、終わりってことだ」
 一閃。カンは、少年の邪鬼眼を真っ二つに破壊した。
「でもこっちは予想通り……キミが来てくれたお陰で、彼女は今、一人だ!」少年は意地でも行かせまいと、カンの両足にガッシリとしがみついた。
「んなっ……、離せ!」
 少年達の計画通り、ユキが居る場所に向かって二人の男が侵入しようとしていた。
「嫌っ、来ないで!」そしてユキは、壁まで追いつめられている。
「悪く思うなよ、お嬢ちゃん」
 嫌に筋骨隆々である。腕っ節が強いことのアピールであろうか。
「なぁに、ちょっとだけ俺たちの仲間になってくれればいいのさ」
 そう言って、二人はどんどんユキに歩み寄る。
「どけぇっ!」少年を『永遠力暴風雪』で吹き飛ばし、カンは走り出した。

732 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/18(水) 21:25:59 ID:???
「ユキ!」
 一瞬の静寂の後、突如ビルの間からさっきの男達が、発泡スチロールのように吹き飛ばされてきた。
「「なーんつって、な」」
 それを見て、カンは表情を緩める。
「に、偽物だと!? どこで入れ替わりやがった?」
 バセット(ユキ)はチッチッと指を振ると、片方の男の顔面に裏拳を叩き込んだ。
「残念残念。女だからって甘く見ると、痛い目見るよ?」そう言ってバセット(ユキ)は男達の顔を足蹴にする。
「これで3人か?」
「ああ。しかし、あと二人ほど居るようなんだが……」
「カン、上よ! ビルの上!」ビルの上から、ヴィオの叫び声が聞こえてきた。
「! そっちか!」カンは、足に風を溜める。
 すると、茶色い鳥の羽が舞った。
「じゃあ、俺は先に行くぜ」
 なんと、バセットは鳥に変身していた。
「おらあっ!」風を巻き込んで、数十メートルの高さまで一気に上り詰める。全身を吹き抜ける風が、実に心地よい。
「『突貫の心得(チャージ・スピリット)』!」
 上では男が、オーラの様なものを纏ってスピネットとユキの方向へ突進する。

733 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/18(水) 21:31:00 ID:???
「『黄昏の障壁(スペルオブニーベルング)』」
 ユキとスピネットを包み込むように、金色のドーム状の膜が発生する。男はまともにそれに衝突する。
 電気がショートを起こした時のようなバチバチとした音を立てて、男の突進が弾かれた。
 スピネットの邪鬼眼は、防御に優れているようだ。この攻撃を受けても、障壁はビクともしない。
「スピネット! ユキを連れて逃げろ!」カンとバセットが、ビルの屋上に降り立つ。
 女だけだと思っていたら、男が二人増えたのだ。しかも、状況は4対2。
「何だよこいつら……! 一人のために、こんなに集まるなんてどういう事だ!」男が叫ぶ。
「まぁ、最初から勝てる可能性なんて無かっただろうけどね」今度は女。
「邪鬼眼は近接戦闘が苦手なモノが多いからな。お前も、冷静に状況を見ている暇なんて無いんじゃないか?」

734 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/18(水) 21:32:28 ID:???
「そうだな、それではそろそろご退場願おうか。お前らのリーダーには、『このかわいいポチめが、計画をしくじっておめおめと逃げてきてしまいました』とでも言っておけ」
 状況は4対2。明らかに有利だが、バセットの台詞は単純な男を釣り上げた。
「てめぇ……馬鹿にしやがってぇぇぇっ!」
 男は『突貫の心得』を発動させ、カンの方向へ一気に突進する。
「先に弱そうなお前からだ!」
 スピネットの防御がなければ、おそらくひとたまりもないだろう。しかし、カンがかわそうとした所を、女はしっかりと狙っていた。
『しまった……壁際にっ!』さっき『邪鬼眼否定』を使ってしまった以上、しばらくは使うことが出来ない。
「お疲れ様……『空気散弾(エア・スプレッド)』」名前から察するに、おそらく無数の玉が飛んでいるのだろうが……空気なので、カンには見えない。
 ヴィオが移動するも、コンマ一秒だけ判断が遅れてしまった。
「邪魔」
 女も、自分を守るように常に身体に風を纏わせていた。これではヴィオもうかつに近づけない。
「カン!」ユキが叫ぶと、少女の方向へ向かって『何か』が飛び出した。
「!」
 少女が察知して回避した瞬間、それはその障壁を貫いて弾けるような音が響いた。
「まさか、今のは……!」

735 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/18(水) 21:54:19 ID:???
邪鬼眼通信第七号
『邪鬼眼の効果についての説明・4』
『須臾の閑寂(インスタント・U・N)』 ランクR
 邪鬼眼を持たない人間の脳に働きかけ、一定の範囲に一般人を立ち入れなくする。
 効果時間…最大2時間 発動ラグ…(最大使用時)2時間 効果範囲…半径2キロメートル

『黄昏の障壁(スペルオブニーベルング)』ランクSR
 全ての攻撃を無力化する障壁を、自分の周りに張り巡らす。
 その堅牢さは折り紙付きで、どのような攻撃でも一度は完全に防ぐという。
 効果時間…最大5分 発動ラグ…(障壁が破壊された場合)50分

『神鳥一体(バード・クレイドル)』 ランクAR
 以下の能力を使える。
・『鳥加護(イン・クレイドル)』
 鳥の形をした気を常に身体に纏わせる。敵意を持つ者には容赦しない。

・『鳥瞰風景(イーグル・アイ)』
 高い場所から、特定の場所やモノを探すことが出来る。

・『反逆鳥(スゥ・アロー)』
 小鳥に似た形状の気弾を打ち出す。溜めて使うことも可能。
 最大発射数…65536発 発動ラグ…一発につき0.02秒

・『反逆鳥・比翼連理(エルコンドルパサー)』
 巨大な鳥の形の気弾を打ち出す。その威力は反逆鳥とは比べものにならない。
 しかし制約が多く、この技を使うとしばらくはこの邪鬼眼の他の技が使用できない。
 最大発射数…1発 発動ラグ…30分

736 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/18(水) 23:20:17 ID:???
うおお
なんかいっぱい出てきた!
スピネット頑張れスピネット頑張れ

737 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/19(木) 15:54:13 ID:???
>>727が名言すぎるカンかっけー
ユキたんが古女房

738 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/19(木) 20:30:51 ID:???
慣用句

739 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/20(金) 01:07:11 ID:???
スカートが捲りどうのこうのがいんしょうにのこりました。ぼくわ。

740 : ◆K.tai/y5Gg :2008/06/20(金) 01:08:05 ID:???
バトルがちょいと分かりにくかった。もっかい読まないと状況が分からんな
僕が馬鹿だからでしょうかすいません

バセット便利過ぎる。ヴィオは空気化する予感

741 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/20(金) 19:05:20 ID:???
>>740
分かりにくかったのは、おいらの不徳の致すところです(´・ω・`)
後、バセットは最初から最強です。死なないし。

742 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/22(日) 15:06:10 ID:???
単発小説を書いていますが、それは別媒体で紹介したいですね。

743 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/22(日) 21:40:47 ID:???
つーことで更新しますね。

744 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/22(日) 21:47:15 ID:???
 カンの心配するような声とは裏腹に、ユキは怒っていた。
「カンを……傷つけないで……!」
 そしてユキの身体を取り囲むように、無数の鳥が羽ばたいている。正確には『鳥のような姿をした何か』なのだが、それがユキを守るように飛んでいるのだ。
「今だ!」カンは、ユキの攻撃で動きが止まった女子の方へ走り出し、『風神』と『永遠力暴風雪』を同時発動させる。
「『暴風氷雪(バーストエターナルフォース・ブリザード)』!」
 風に打ち据えられ、凍えるような寒さが襲いかかるのは、まさに雪山に居るかのような恐怖だ。
「バセット!」男の方は、カンを諦めてバセットの方へ走ろうとした。しかしバセットは逃げようともせず、漫然と構えている。そして、接近した瞬間に冷たく言い放った。
「突き進むことしか能のない猿が」
バセットの目の前で、男は花火のように空中へ打ち上げられた。
「――『空中分解(イン・ヘイズ)』」
 滑空するムササビのように、男の身体が落ちてくる。
「砕けろやぁぁぁっ!」
 バセットはその身体の背中から腹部までを貫かんばかりに拳を振り上げ、殴り飛ばした。
「喜べ、訂正してやる。お前の存在は何も持たぬ猿よりは上等だ」
 男は、ピクリとも動かない。
「鬱憤、溜まりすぎじゃない?」ヴィオがこっそりと呟いていたのを、カンは聞き逃さなかった。

745 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/22(日) 21:53:23 ID:???
 カンは相手の邪鬼眼を切り離す。紅蓮色の邪鬼眼『突貫の心得』が、昼間の太陽に輝いていた。
「じゃ、私はこれで。また会いましょう」女はそう言うと、ビルの下へ落ちていった。
 ビルの屋上に、ようやく静寂が戻った。
「ユキ、大丈夫だったか?」バサバサと羽ばたいていた鳥たちが、溶けて消えていく。
「う、うん……。カンの方こそ、大丈夫だったの……?」
 ユキは所在なげに、ただそう答えた。
「カン、この子のさっきのやつは、もしかして邪鬼眼?」
「……。なぁ、バセット」バセットは退屈そうに壁にもたれかかっている。「何だ」
「眼球って、作れるか?」邪鬼眼は邪魔なモノ。いずれ、取り除かなければならない時が来る。
 そんな彼女の邪鬼眼の場所は、両目の中。
「出来なくはないだろうが、如何せんやったことがないので分からない、というのが本音だ」
「――それでも、出来ないと断言されるよりは数億倍マシだ」これで、カンは少しだけ心のモヤモヤが晴れた。
「ところでカンよ、下がヤバい」
「漏らしたのか?」「違う!」バセットがツッコミに走った、珍しい光景である。
 話題を戻そう。どうやら、人払いの邪鬼眼が解けたらしい。下からはパトカーやら救急車やらのサイレンがけたたましく鳴り響いていた。
「こんな所を堂々と降りていく勇気は、俺にはないぞ」
 すると、おずおずとスピネットが挙手した。
「あの……もしかしたら、どうにかなるかも」どうにかなると言われれば、とりあえずそれにすがるしかない。

746 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/22(日) 21:58:48 ID:???
「お前しか居ないんだ、さっさとやってくれ」そう言うと、スピネットは空中に何かを求めるような仕草をした。
「じゃあ皆さん、出来るだけ私の側に……」
 言われるがまま、全員が寄せ集まる。なぜかカンだけ、スピネットにギュッと腕を握られた。
『え……?』カンが深く考える間もなく、目の前が花一色に染まった。
 とても広いとは言えなかったが、小ドームの中はパステルカラーの花びらが舞う空間と化していた。
「『花霞(フラワー・フレグランス)』。ヴィオローネ、この障壁一帯を丸ごと別の場所に移動させて」
「分かったわ」ヴィオが言うと、カンはドーム全体が軋む感じを覚えた。
 すると花が段々と消え、いつもの風景が戻ってくる。
「学校の門前。ここなら、色々と丁度いいわ」
 『花霞』が解かれた。本当に、カンがかつて通っていた学校の前だった。
「お前、邪鬼眼の自覚はしていないんだな?」バセットがユキに聞く。
「あ、はい……。と言うよりもそもそも、その邪鬼眼が何なのか分からないんですが」
「自覚無しでアレか。なかなか、筋がいいな」
 その問いかけの中で、ユキは別のことを考えていた。
『それ(邪鬼眼)が、カンがそうしている理由なら……。そして、昨日の手紙は……』
 そう思ったユキは、脇目もふらずに家へ駆けだした。
 ――別離の月輪ではなく、再会の太陽を背負って。

747 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/23(月) 03:50:20 ID:???
「喜べ、訂正してやる。お前の存在は何も持たぬ猿よりは上等だ」

しびれたw

748 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/23(月) 20:16:47 ID:???
バセットホルン △500
スピネット △323
ユキ △19
カン ▲5
ヴィオローネ  ▲25

749 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/24(火) 20:52:53 ID:???
展開が凄すぎて纏めきれるかどうか不安になってきました。

750 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/24(火) 22:29:13 ID:???
夢凪学園概略図?(暫定)
ttp://ranobe.com/up/src/up280145.jpg

751 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/26(木) 21:51:03 ID:???
邪鬼眼通信第八号
『邪鬼眼の効果についての説明・5』
『突貫の心得(スピリットオブブラスト)』 ランクR
一瞬の効果時間が売りの『心得』シリーズの筆頭。
オーラを纏って直線方向に突撃する。効果は一瞬だが、破壊力は最大級。
 効果時間・5秒 発動ラグ・15秒

『花霞(フラワー・フレグランス)』 ランクSR
自分を取り囲むように、花が舞い散る空間を出現させる。
周りからは一切見えなくなるので、ステルス攻撃が可能。
効果時間・最大5分 発動ラグ・10分

『空中分解(インヘイズ)』 ランクC
自分から一定の範囲に、体重がかかった瞬間に強烈な風圧を加えて相手を空中に吹き飛ばす。
発動ラグ・15分

『衝撃の心得(スピリットオブインパクト)』 ランクR
腕力を一瞬だけ爆発的に上昇させ、相手に強烈な打撃を加える。
効果時間・5秒 発動ラグ・1分

752 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/26(木) 21:54:16 ID:???
「ユキ、本当によかったのか? 親とか、心配してたんじゃないか?」
 ユキは大荷物を抱えていた。カンは何度も「持つよ」と言ったのだが、ユキは頑なに拒んだ。
「いいのよ。カンが付いてるから大丈夫、ってごり押ししてきたから」娘が一人で旅立つというのに、こうも容易く送るとは。今時見られない家族だ。
「なんとかな子供には旅をさせよ、でしょ?」
「……。ま、いいや。突っこむ気もなくなった」
 バセットがよくやる『やれやれ』の仕草を真似てみた。
「何よそれ? なんか文句あるの!?」
「お・ふ・た・り・さ・ん。こんな場所で堂々といちゃつかれると困りますよ」スピネットの忠告が入った。
「まさか。こんな時間にホームには誰も……」
 バセットはともかくとして、女子二名の背後からは嫉妬の炎が燃えたぎっているのが見えた。
「幼なじみなんて……最大級の好ポジションじゃない!」
「カンにとっては、私達みたいな一般女子に毛が生えたような輩はいらないってことかしら?」
 以上、ヴィオとスピネットのテレパシーによる会話である。
「ん、どうしたんだ二人とも、その表情は。今にも俺を殺しそうだぞ?」
 カンも、この台詞は冗談で言ったつもりだったのだ。
「人でなし」「痛っ」アッパーカット。
「見損ないました」「ぐえっ」ボディーブロー。
 かのように本当に笑えない事態になっていることに、カンは電車に乗る寸前まで気付かなかったのだ。

753 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/26(木) 21:56:21 ID:???
「ねぇ、夢凪って、なんか変な物質でも飛散してるの?」
 車内では、ユキが珍妙な質問を繰り返していた。
「いや。せいぜいスギとかブタクサとかが花粉を飛ばしてるぐらいか」
 バセットが答える。ユキにとってバセットは体のいい『物知りお兄さん』的なポジションらしい。
「言っておくけどな。そいつを見た目で判断すると、お前は地獄を見るぞ」
「カンは黙ってて」どこぞの占い師に似たフレーズが、余計に癪に障ったらしい。ぴしゃりと言われて、カンは小さくなる。
「あの弱助のカンが、数ヶ月でこんなにクールでブラックになるなんて思わなかったわよ。気が触れたか、改造人間にされたとかしか考えられないわ」
 散々な言われようである。これ以上小さくなると、炭素と融和してしまいそうだ。
「誰か、俺を遠慮無く殴ってくれ。そうだな、記憶が飛ぶくらいがいいかな」
「こう?」
「げべろぽぁ」
 ヴィオの容赦なき鉄拳制裁が、カンの左頬にぶち込まれた。

754 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/26(木) 21:58:22 ID:???
「こんにゃろ、俺が全裸で校舎内に寝そべって死んでたらどうする気だ!」
「その方が、みんなの記憶に焼き付くんじゃないかしら?」
 記憶が吹き飛ぶところか、返って酷い怨恨が生まれてしまったようだ。
 そしてバセットは一昨日と同じように、説明臭い事をだらだらと喋り始めた。
「さて。ここで一つ何も知らないお二人さんに、面白くいのに面白くない珍妙な情報だ」
 バセットはそう言って、カンとユキを見る。
「ん、俺もか」
「当然だ。数ヶ月居たほどで全てを知った気になるな」
 カンは黙った。
「――新人のために復唱するが――行きの電車でも言ったように、邪鬼眼を集めることは、地面に落ちて埃が付いて明らかに食えそうにないような食べ物を口に入れるようなものだ」
「まぁそうだな。そんな事する奴は少なくとも夢凪にはいない」
「そうだ。しかし、一部のゴミの間ではそれを美徳――いや、汚いから汚徳か――とする奴等が居る」

755 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/26(木) 22:02:25 ID:???
「そんな事したら、脳や身体が大変なことになるんじゃないのか」
「そうだ。神経いかれて頭がパー、なんて事ならまだいい。周囲に危害を加えるような、邪鬼眼の暴走が起こる事があり得る。そうなったら、相手を殺すか邪鬼眼を根っこから切り払うしかない」
 そう言って、チラリとカンの首から下げられた刀を見る。
「そんなバカの頭領が、オフィクレイド。普段は品行方正、文武両道、才色兼備の絵に描いたような優良児なんだが、こいつがとんだ獅子身中の虫だ」
「オフィクレイドが? まさか、あの人に限ってそれは無いと思います」なぜか、スピネットが反論した。バセットは、それを鼻で笑って鼻であしらう。
「お前みたいな成績至高の上位軍団からすれば、確かにそう見えるかもしれない」
 スピネットがムッとしたのを余所に、バセットは続ける。
「しかしながら、全ては演技だ。あの野郎は汚徳を美徳にしておきながら、自分は一切見本を示そうとしない。事態が急転したら、自分だけ逃げようとしてやがるという始末だ」
 話題は、段々と深刻になってきていた。

756 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/26(木) 22:15:15 ID:???
小さなお知らせ
ttp://acorn-acorn.jugem.jp/
ここで何かが起こる!? かもしれない!

757 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/26(木) 22:54:45 ID:???
>>750
立派な校舎じゃないですか

本編もさることながら邪鬼眼通信もすごい。
技のデパートクロス先生とよばせてもらおう。

758 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/26(木) 23:16:53 ID:???

テレパシーワロタ
>>756そして一体何が始まるというのです?

759 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/27(金) 19:22:42 ID:???
>>751
×〜吹き飛ばす。
○〜吹き飛ばす、不可視の罠を設置する。

760 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/28(土) 19:29:40 ID:???
http://acorn-acorn.jugem.jp/
「その氷菓子、口に苦し “The vanilla 〜 bitter sweet symphony 〜”」
プロローグ、並びに第一話を更新しました。

761 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/28(土) 19:40:19 ID:kU7B7cPl
ハゲはカス

762 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/28(土) 19:49:33 ID:???
本編は……もうちょっとストック溜めてから載せます。

763 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/28(土) 20:04:10 ID:kU7B7cPl
ハゲはカス

764 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/06/28(土) 20:15:17 ID:???
Cause it's a bitter sweet symphony this life♪

765 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/06/28(土) 20:29:47 ID:kU7B7cPl
ハゲはカス

766 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/28(土) 21:35:28 ID:???
そういうアレだったんですね!

767 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/30(月) 22:14:08 ID:???
「オフィクレイドの周りで、不穏な動きを察知した。どうやら彼奴等、ここで政府への反乱を起こすつもりらしい」
 カン達は、学園の理事長室に居た。
「事情は、昨日の電車の中で言ったとおりだ。」
「そこでなんですが。こちらのスピネットとユーフォニアムも、邪鬼眼管制塔に入れていただきませんか」
 ユーフォニアムとは、ユキにつけられた名前である。
「人手も足りないことだし、別にいいんじゃないか」至極アバウトである。
「ふん。お前のそんな態度が、生徒の反感を買うんじゃないのか」
 下らない言い合いを尻目に、ヴィオはバセットホルンが取り寄せた、オフィクレイドのグループ『黒風』のメンバー表を眺めていた。
 『あれ? この名前って……』ヴィオは、そこに気になる名前を一人見つけた。
 『チューバ』だった。

768 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/30(月) 22:15:26 ID:???
『でも、あいつはカンがボコボコにしてくれたんじゃなかったかしら……』
 てっきり、カンに倒されたものだと諦めていたのに、まさか生きているとは、ヴィオも予想だにしなかった。
「さて。もう計画はあらかた出来ている。オフィクレイドは出来すぎているから、その計画は一見して完璧。しかし小さいところを突いて崩せば、千里の堤もただの瓦礫の山になる」
 バセットはそう言って、一枚の大きな紙を出した。
「今回はそれぞれに結構重要な役割がある。一人が崩れれば、こっちもだだ崩れになる。補填策は無くはないが、そこに時間を割いてる暇はほとんど無い。これをしっかり読んでおけ。行動する奴はもう明日から予定が入っているからな」
 バセットの説明を上の空で聞いていたヴィオが、カンの目に止まった。
「おい、どうしたんだよ、ヴィオ」そう言うと、ヴィオはようやく我に返った。
「な、なんでもないの。ちょっと、考え事してただけ」

769 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/30(月) 22:18:08 ID:???
 そう言って、またヴィオは上の空に戻った。
『当然、確かめる必要があるわよね』
 さっきの対策室は、ヴィオがほとんど上の空のままに終わり、解散となった。ヴィオは単独で行動に出ている。
「確か、ここがアイツの住んでた所ね」学生寮の6階の一室。
 ドアを叩くが、返事はなかった。
『やっぱり、あの名前はウソなのかしら?』訝しむヴィオがエレベータに乗ろうとした瞬間、目の前に男が立っていた。
「……!」

770 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/06/30(月) 22:20:53 ID:???
なんかグダグダな予感ばっかりします。

771 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/06/30(月) 22:22:34 ID:???
おつつ

>>770
読者としてはむしろ盛り上がってきた! ってカンジです

772 : ◆K.tai/y5Gg :2008/07/01(火) 00:47:32 ID:???
ホレ見ろやっぱヤツが黒幕くせえ

773 : ◆K.tai/y5Gg :2008/07/01(火) 00:48:42 ID:???
いつものクロスのペースだとそろそろ佳境
つまりヴィオあたりの死亡フラグ

っていうかバセット以外のキャラ死ぬ気がする

774 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/01(火) 19:42:25 ID:???
>>773
主人公死ぬとかどこのデスノですか

775 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/07/03(木) 22:58:04 ID:???
ヴィオたんが危険な目に遭うなんてハァハァ

776 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 20:38:56 ID:???
ということで、更新タイムです

777 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 20:42:14 ID:???
 翌日、ヴィオは午後の活動に来なかった。
「ほっとけ。別に一人居なくとも今日の所は大丈夫だ」
 今日は生徒会長を謁見し、援軍の要請をするのだそうだ。
「なんか、生徒会長って気むずかしそうなイメージがあるんだが」カンがボソッと呟く。
「気むずかしくはないだろうが――、扱うのはほとほと難しいだろうな。特に、お前にとっては」
 目の前の『生徒会室』と書かれたドアを、バセットはノックもせずに開いた。相変わらず、無粋な男である。
 するとやはり、部屋の中からは怒った声が飛んできた。
「なんですか、いきなり! 話し合い中ですよ!」部屋には五人の生徒が座って、なにやら話し合っていたようだった。その中で、カン達に背を向けていた女生徒がこちらを向いてそう叫んだ。
 その女生徒は、ツインテールに眼鏡で、とても穏やかそうな顔をしている。声は怒っているのに、顔は全く怒っていなかった。
 バセットは、飄々として答える。
「何せ怠惰にくつろげる生徒会と違って、急用でな。お前らも聞いてるだろ、例の話。それに、お前らも一枚噛んで貰いたい」

778 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 20:45:37 ID:???
 あまりにも不躾すぎる。こんな事で理解を得られるのだろうかとカンは戦々恐々だった。
「生徒会は、この事態に対して無視を決め込むという事が、たった今決まりました」どうやら、このメンツの中では彼女が一番偉いようだ。どうやら、彼女が生徒会長らしい。
「そうか。そりゃ残念だ――」バセットはさも残念そうにそう言いながら、ポケットからボイスレコーダーを取り出した。
「ところで今の言葉、しっかり録音してたんだが、今から校内放送で公開していいかな、生徒会長のアルモニカさん?」
 バセットの言葉で、アルモニカの表情が段々と青ざめるのが、カンやユーフォニアムやスピネットにも見て取れた。

779 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 20:49:13 ID:???
「わ、分かりました! だ、だから、それは消して頂かないと……にゃッ」
 バセットに詰め寄ろうとした所で、アルモニカは派手に転んだ。しかも可愛い声つきで。
『……躓くものなんて、あったか?』カンは尚更帰りたくなったが、『もうちょっとだけ待って下さい!』というスピネットの言いつけにより、強制待機となった。
「にゃにゃッ、眼鏡が……」慌てて床を這う生徒会長。
「会長、頭の上です」そして、慌てて戻してようやく整える生徒会長。
『ああ……なるほど。こいつは確かに難しい……』
 そこでもってようやくカンは、ようやく納得した。
「で、何をしてもらいたいんですか!」怒りと羞恥とで、アルモニカはヤケになっているようだった。一方カンは、とうとう笑いを堪えられなくなって後ろを向いた。
「まぁ端的に言うと、お前らの人脈をフル活用して、黒風のメンバーに対して一芝居打とうと思っている。その為には、『見た目の人員』を増やさなければならないんだ。その為に、ちょっと協力して貰いたい」
 そこでようやく、バセットホルンの作った壮大な戦略が話された。

780 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 20:50:08 ID:???
「な……! そんな事、本当に出来るの?」その凄さにスピネットは感嘆し、アルモニカは疑問を呈した。
「もちろん、失敗すると思ってやる軍師は居ない。失敗するとすれば、馬鹿が馬鹿なことをやったときのみだ。気がついたときには黒風は瓦解、戦争を起こす気力も無いだろうよ」
 そしてバセットは、翳りのある表情のまま、冷酷に言い放った。
「そしてその責任を取って、オフィクレイドには死んで貰う」
 その言い口に、カンは寒気が止まらなかった。

781 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 20:50:47 ID:???
次回はオフィクレイドのターンです。

782 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/04(金) 21:03:17 ID:???
http://acorn-acorn.jugem.jp/
第二話を更新しました。

783 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/07/04(金) 23:23:06 ID:???
「にゃッ」

こいつぅ

784 : ◆K.tai/y5Gg :2008/07/05(土) 00:36:48 ID:???
おいちょっと待て

785 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:42:18 ID:???
邪鬼眼通信第九号
『人物再説明』
カン…主人公。男。友達思いだが、やや鈍感。邪鬼眼を直接使うことは出来ないが、持っている刀を依り代にすることで発動することが出来る。

ヴィオローネ…ヒロイン1、女。『世界地図』を用いた瞬間移動からの奇襲が得意。ネコミミのような髪型が特徴。メガネ無し

バセットホルン…男。『変身』で他人に成りすますことが出来る。あれこれと策を弄することも得意なようだ。メガネ有り

スピネット…ヒロイン2、女。『黄昏の障壁』や『花霞』など、主にサポート系の邪鬼眼を扱う。恋愛ごとが不得手で、すぐに赤くなる。メガネ有り

ユーフォニアム(ユキ)…ヒロイン3、女。カンの幼なじみで、『神鳥一体』を使う。献身的で、カンに一途? メガネ無し

オフィクレイド…男。アルモニカと同学年で、文武両道、才色兼備。夢凪を出たいと願っているが、特例により絶対に出られない。それを少なからず不満に感じているようだ。

アルモニカ…ヒロイン4、女。夢凪学園生徒会長。カンよりも1つ年上。
イリアン…女。広報部員で、諜報活動に長けている。カンよりも1つ年下。
ポルタティフ…夢凪学園理事長。男。役職を感じさせないほどに飄々としている。30歳前後
オルファリオン…夢凪学園副理事長。男。学園の指揮はほとんどがオルファリオンによるもの。50歳前後
ばばぁ(名前不明)…夢凪市で邪鬼眼複製を出来る店を経営している。60歳前後?

786 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:44:36 ID:???
『ここまで、一縷の妨害も無い……。わざと気付かせているつもりなのだが、奴等はそこまで馬鹿なのか?』
 思索に耽っていたのはオフィクレイドだった。
 オフィクレイドが目指すは、『隔離政策を実施した政府への反逆』。人はみな平等でなければならない。それなのに、邪鬼眼を腫れ物扱いしてこんな狭小な土地に隔離する政府は須く抹殺されるべきだ、というのがオフィクレイドの持論だった。
『逆に考えれば……こっちが気付いていないだけで、もう相手は計画を着々と進めていたりするのだろうか? それならば、こちらも秘密裏に計画を急ぐ必要がある』
「リーダー!」男子生徒が飛び込んできた。
「なんだ、ノックぐらいしろ、リュート」それどころじゃないんですよ、とリュート。
「夢凪の生徒会は、この『黒風』の行動の一切を無視するという事で一致したらしいんです!」一見すればかなり喜ばしい事態なのだが、オフィクレイドはそんなことでは油断しなかった。

787 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:46:45 ID:???
「しかしな。見かけ上の話かもしれんし、本当のところはどうだか分からんぞ」
 オフィクレイドのその見解に、リュートはちょっとションボリとした。
「ま、小さいことでも動きを報告したのは褒めてやろう。もう去れ」そう言うと、リュートは少しだけ嬉しそうにして去っていった。
『『ヴィオローネ』……まさか、こいつが入るとは……』
 つい先日の話である。兼ねてからのメンバーであるチューバが、新入りを紹介したいというので連れてきたのが彼女だった。
 『慧眼(トラスティ・ビューアー)』を使って真意を探ろうと思ったが、どうやらチューバに誘われて、感化されてしまったというのは本当の事だったようだ。
 もちろんオフィクレイドの下調べは済んでいる。どうやら、ヴィオローネは邪鬼眼管制塔を秘密裏に離反したという事で、おそらく間違いないだろうというのが彼の見解だった。
『しかし、やはり注意を払う必要はあるか……。いや、大行は細瑾を顧みず。気にしないで進めるか……』懸念事項がまた一つ増えた、とオフィクレイドは頭を抱えた。

788 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:49:26 ID:???
 ヴィオローネは、また考え込んでいた。――それもこれも、先日の会話だ。
『カンってさ、私のことどう思ってるんだろ』相談したのはバセットホルン。何故かと言えば、(ヴィオ的に見て)酸いも甘いも知り尽くしていそうだったからだ。
『それは、どういう意味合いでだ。深い意味で捉えていいのか』ヴィオは頷く。
『そうかそうか……。じゃあ言うが、あんまり気に掛けない方がいいぞ。あの竹を割ったようなバカは、恋愛沙汰に全く疎いと見た』つまりどういう事だ、と問い返す。
『何とも思っていないさ。いち友人で、ちょっと喧嘩したから仲が良い、ぐらいのもんだろ』その返事を聞いて、半分嬉しく、半分ガッカリした。
『ガッカリしてるな。お前の受動的な態度じゃ、カンの姿には全くそぐわない。お前の想いも伝わらないぞ』ちょっと言い過ぎたか、とバセットは口を噤む。
 ヴィオから、何かを啜る音が聞こえた。

789 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:51:13 ID:???
『そうね……。幼なじみが出てきたときは、私はもう終わりだと思ったわ』
『そうでもない。幼なじみは一線を越える事が出来ないし、その点で言えば新参のお前やスピネットの方が数万倍有利だろ』
 だから、一つの賭けみたいなものだった。ヴィオローネの失踪で、カンがどれほど心配してくれているか。
 この裏切りは、ヴィオの気持ちに整理を付けるためでもあった。

 ――その一方、カンとバセットは、邪鬼眼複製の店に立ち寄っていた。
「ばばぁ!」バセットが、店の奥に向かって叫んだ。
 その声で、のっそりと奥から老女がやってくる。
「こんな時間から騒がしいよ。年寄りはもっと大事に扱わんかね」
「うるせぇ。死に急ぎてぇか」とんだ極悪人である。
「ま、あんたの口の悪さは常々聞いておるがね。それで、何をして欲しいんだい」
「ちょっと、俺の作業を手伝って貰いたい。――なぁに、お前はお前の技術を生かせばそれでいい」

790 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:53:41 ID:???
>>785は自分のためにも作ってみました。
もっと多いと思ったら意外と少ないね。

791 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 20:56:56 ID:???
ということで>>685は全部
オフィクレイド→オルファリオン
なワケです。酷い誤植です。

792 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/07/07(月) 22:45:35 ID:???
スピネットが眼鏡っ子だったとは……!

793 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/07(月) 22:52:43 ID:???
>>785追記

アルモニカ…ヒロイン4、女。夢凪学園生徒会長。カンよりも1つ年上。冷静沈着で凛とした雰囲気が特徴的だが、実はかなりの天然で、ドジっ子。メガネ有り

794 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/07/08(火) 13:23:41 ID:???
目が離せない展開ktkr

795 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/07/09(水) 01:10:28 ID:???
>>604
>>613
>>634
>>639
>>669
>>697
>>735
>>751
>>785

796 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/10(木) 21:27:52 ID:???
邪鬼眼通信第十号
『邪鬼眼の効果についての説明・6』
『慧眼(トラスティ・ビューアー)』 ランクR
 正否しか存在しない事象について、真偽を判断する事が出来る。
 偽の場合(使用者の意見と違った場合)、その物体は赤く光る。

『怨念の業火(ダークフレイムオブディッセンバー)』 ランクAR
 『火炎弾』『炎陣』の使用回数で技が変化する。
 『火炎弾』
 野球ボール程度の大きさの火球を放つ。 
 『炎陣』
 直径1メートルほどの炎の陣を張る。場所は術者から一定以上離れなければ、好きな場所に配置できる。
 (どちらも発動ラグ・5秒)
 『怨念の業火(ダークフレイムオブディッセンバー)』
 使用回数・10回以上
 巨大な火球を打ち出し、相手を地面ごと吹き飛ばす。その威力は絶大。
 発動ラグ・5分
 『???』
 使用回数・15回以上

『銃器圧縮(バレット・チャージ)』 ランクSR
 邪鬼眼の攻撃を溜めて、一気に放つ事が出来る。
 使用邪鬼眼の発動ラグ・一発分につき2秒(強制)
 ただし3回連続使用すると、壊れてしばらく使えなくなる。

『遅延魔術(ディレイド・アクション)』 ランクR
 持っている邪鬼眼を1つ指定して発動する。
 その邪鬼眼を、指定した時(又は術者のタイミングに併せて)に発動できる。
 遠隔操作による発動や、同時に二発分の攻撃を叩き込むことも可能。
 発動ラグ・2分

797 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/10(木) 21:31:44 ID:???
「こちらの準備は万全。この地の利を生かしてどうやってこの土地を制圧するのかを考えればいい。こんな狭小な土地で出来ることは、非常に少ない」
 一方こちらは、バセットが勝利宣言を出していた。
「相手を挑発か。なかなかやるなぁ、バセットよ」
 おそらく相手の狙いは夢凪にはないとふんだバセットは、黒風の注意を夢凪に引くという策に出ていた。
「な、なんでそれを私の名前で……。しかも、筆跡を真似るのが上手いですしっ!」まさか、『本人』が書いたなんて言えないだろうなぁ、とカンは思っていた。
 バセットホルンが、最初から最後まで全て施してくれているのだ。カン達がやることは、当日の行動だけだった。
「だろう? これで、夢凪の中での争いは避けられなくなった。逆に、外界に被害を及ぼすことは無くなった。……少々、不本意だがな」そう言うバセットの表情は、いつになく年齢通りの愁いを帯びていた。
「『変幻自在のオフィクレイド』、まさにその名の通り。あの人一人の力があれば、おそらく夢凪を潰すことも簡単なんですよ。それが返ってつまらないんだと思います」スピネットが呟く。

798 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/10(木) 21:33:19 ID:???
「そういや、ヴィオは?」ここ一週間ほど、カンは教室以外でヴィオローネの姿をとんと見なくなった。カンが何を聞いても「ちょっと今、課題とかがあって忙しいの」の一言で片付けられてしまうのだ。
『そもそも、そんなに大量で忙殺されちまうような課題とか、あったかなぁ』
「よし。カン、スピネット、ユーフォニアム。これから、最後の会議だ」
 バセットの話のお陰で、カンはまたヴィオのことをすっかり忘れてしまっていた。
「ポルタティフによると、三日後。あいつは夢凪の外に出る。恐らく彼奴等はそこを突く。というよりも、そこを突くほか無いのだ」
 挑発により、相手の士気はかなり高まっている。今やらなければ大きな効果は期待できないだろう。そういう時にそれを利用しない馬鹿は居ない。
「ポルタティフに言って、学園内の邪鬼眼使用も認めて貰った。さぁオフィクレイドよ。今こそ、俺の手の上で踊るがいい!」
 バセットホルンの高笑いが、まるで悪人に見えるから不思議だ。

799 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/10(木) 21:35:24 ID:???
 オフィクレイドも、同様のことを思案していた。
『これは、もしや相手の挑発……!? つまりは、ここには絶対に罠が仕掛けられているに違いない! 生徒会は不問としたが、邪鬼眼管制塔はだんまりを決め込んでいる。しかし、この士気が高揚している状況ならば、今が最大のチャンス……!』
 それならば、むしろ控えるよりは。
「よし! お前ら、三日後だ! 三日後に、俺たちは外へ攻撃を仕掛ける!」
 オォォ、という声。ざっと見て、500人は居る。
『とりあえず、夢凪の制圧が終わればどうにでもなる……それまで頼むぞ、みんな』
 オフィクレイドの邪鬼眼が、左手の中で赤々と輝いていた。

800 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/10(木) 21:38:52 ID:???
「何!? そんなに人が集まっていないだと!?」カンは青ざめた。
「ああ。……というか元々、人が集まっていなくてもあまり問題はないんだが」バセットホルンはケロッとしている。何があってそんなに余裕なのか、カン達にはさっぱり理解できなかった。
 そのカンの叫びを聞いて申し訳なく思ったのか、アルモニカが謝罪してきた。
「元々、生徒会の信用自体があんまり無いですし……」
 つまりは、生徒会の人脈とやらを過信しすぎた、こちらのミスということか。
 そう思ったカンは、思わず持っていたアルミ缶を潰す。
「どうする? こんな時間になってしまったんだ、もう集めようがないぜ」
「人が居ない方が返って油断するだろ。大丈夫だ」
 人が居ない方が、とバセットは言うが。
「これをなんとか出来たら、俺たちは歴史に名を残すぜ」

 軍勢は15人対500人。相手の油断以前の問題だった。

801 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/10(木) 21:39:27 ID:???
次回からいよいよバトルパートです。

802 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/07/10(木) 23:29:19 ID:???
乙乙!!
いよいよか

803 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/13(日) 22:24:57 ID:???
更新は明日以降に……○| ̄|_

804 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/16(水) 21:24:14 ID:???
「そんじゃま、時間だし俺はもう行くぞ」ポルタティフとオルファリオンが、スーツを着こんで出かける準備をしていた。
「念のため聞くが、本当に市街地への通達は『アレ』だけでいいんだな?」最後に、バセットに対して念を押す。
「あぁ、問題ない。変なことを書くと、返って健全な市民の不安を煽るからな」さて、と言ってバセットは振り向く。
「配置は例の通りだが、ちょっと変更がある。カン、お前はアルモニカの補佐に回って、学園の中枢を死守しろ」
 カンは当然異を唱えた。
「待てよ。俺は遊撃手でナンボだぜ? それとも、俺に代わる役が現れたのか?」バセットは、その小うるさい鼻にデコピンを放つ。いや、この場合はハナピンだが。
「自分しか使えない能力だからって、自惚れやがって。お前は立ってるだけで戦況を変化させる、大きな役割を持っているんだ。だから、バカみたいに外に出られると俺が困る」
 一応述べておくが、そのバカみたいな指示を出したのは他ならぬバセットホルンである。
「だから。俺の代役が居るのかって言ってるんだよ」
 すると、バセットは眼鏡をかけ直して明快に答えた。
「居ないなら、最初から言わないさ」
 カンは、周りにいるスピネット、ユーフォニアム、ポルタティフ、オルファリオンを見回してから、ますます首を傾げた。

805 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/16(水) 21:27:26 ID:???
――そして、数時間後。
「罠の設置は完了。天気は晴れ、雲量3。まずまずだな」空虚な夢凪学園を眺めながら、カンは一息ついた。
 ちなみに15人とは、
・邪鬼眼管制塔(カン、バセットホルン、ユーフォニアム、スピネット)
・夢凪生徒会(アルモニカ、テオルボ、バンジョー、サントゥール、チェレスタ)
・アルモニカ親衛隊(クラビノーヴァ、ヴィオリラ、バラライカ)
・その他の有志(ハイハット、フロアタム、ヘッケルフォン)
 である。
「あなたが、そのティーフカンマートーン? 残念だけどお姉様を守るのなら、私たちで十分ですわ」
 おしとやかそうで潔癖症くさい、所謂『お嬢様』を絵に描いたような高飛車そうな人が居た。これはヴィオリラである。ヴィオと略せるからなのか、ヴィオローネと何か微細な点で似ている、とカンは思った。ちなみに、『ティ』の発音はうざったい。
「お、お姉様……?」ええそうよ、とバラライカ。こちらはちょっとスポーツもやっていそうな、短髪の少女である。
「そんな、堅苦しく考えなくていいから安心して頂戴、カン君」そしてようやく生徒会長、アルモニカ。
 残る親衛隊のクラビノーヴァは、さっきから外を眺めて状況把握に努めているようだった。
「異常なし。相手陣に開幕砲を叩き込むには良好です」らしからぬ台詞。どうやら、侍か何かの家系らしい。

806 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/16(水) 21:29:55 ID:???
「よし、準備はいいな、アルモニカ。開戦まであと1分だ。準備しろ」バセットホルンが来た。今回の総指揮官である。
 お姉様に命令するなんて! と憤慨したヴィオリラを諫め、アルモニカは前に出る。
「ええ。『氷結の祝砲(インフェルノオブメサイア)』」
 英名と和名がマッチしないのは気のせいである。
「彼我の距離、およそ830メートルだ。いけるな?」
 アルモニカが、ゆっくりと頷く。
「このアルモニカの力、なめないで頂戴!」
 白色の大筒と、それを補佐する小さな大砲のユニットが4つ、合計5つの大砲が現れた。
「さぁ……、今日を伝説に残る一戦にしようじゃないか!」
 巨砲から、白色に輝くレーザーが相手陣目掛けて真っ直ぐに発射された。

807 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/16(水) 21:32:07 ID:???
続きはもうちょっとお待ちください。

808 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/07/16(水) 22:57:28 ID:???
多忙ななか更新乙です(`・ω・´)
毎回引きがウマすぐるよクロス

809 : ◆K.tai/y5Gg :2008/07/17(木) 02:42:01 ID:???
佳境か

810 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/19(土) 21:48:46 ID:???
「市街地に人気がないだと!?」黒風の小隊長が叫んだ。
 その叫びの通り、夢凪市一帯はさながらゴーストタウンのようになっていた。
『住民が居ない……? 果たして、本当にそうなのか?』オフィクレイドはとにかく訝しんだ。
『穴掘りは土方の仕事か。……ならば、』
「中央部へ進軍している部隊の一部を、市街地の調査へ回せ」オフィクレイドは『ただそれだけ』告げた。それを受けて、小隊長は指示を出す。
「聞こえたか、一班! その中から5人ほどでチームを作り、市街地を制圧せよ! 抵抗する者は攻撃して構わない!」
 ――1班・分隊
「本当に誰も居ないぞ……? どうなってるんだ?」一班の分隊は、東区の商店街を進んでいた。
 店はシャッターが閉まっていたり、暖簾を出していなかったり、店内が真っ暗だったり。まるで、『一斉休業日』のようだった。
「しかしこれが敵の罠なら、俺たちは一体どんな相手と闘おうとしているんだ……?」住民を消す事が可能ならば、自分たちが消される可能性が如くは無し。

811 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/19(土) 21:49:43 ID:???
「まさか! そんな邪鬼眼があったら、とっくに俺たちは――」振り向いた一人の目に、驚愕の光景が焼き付いた。
 目の前を通り過ぎる、白色の大波。しかしそれを波と言うにはあまりにもうねりが無く真っ直ぐで、あまりにも水位が高すぎた。それが周りの物体を少しずつ侵食するように破壊し、飲み込んでゆく。
 それは正に、『レーザー』というフレキシブルでメカニカルな名前が相応しい。
「ちょっと待てよ……。あそこって、まさか」
 そう。そこは、さっきまで自分たちが居た位置だ。だから――、
「あ……あああああああああああああっっっっ!」
 予定通りならば自分達の大隊、第一班が進軍中だった。打ちのめされる分隊に対して、誰かが声をかける。
「『花霞(フラワー・フレグランス)』」
 まるで花が散ってゆくように、分隊はその場から消えていった。

812 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/19(土) 21:52:41 ID:???
「よし。一撃目は大成功だな」
 進軍中の隊のほとんどが戦闘不能となり、分断した隊のメンバーも全員捕縛に成功したという知らせを聞いたバセットホルンは、愉快そうに頷いた。
「それにしても……この入り口の損傷は酷いわね。後で理事長に怒られそう」
「大丈夫だ。全部、アイツらのせいにする」
 まさかこの中を堂々と進んでくるような、一騎当千の猛将は居ないだろう。
「でも、いいのかしら? 私が必殺技を使用不能になったということが相手に知れ渡れば、きっと大多数で攻め寄せてくるはず」
 まるでその質問を待っていたかのように、バセットはニヤリとして答えた。
「無論、別の手段もある。しかしながら、オフィクレイド自身が出てくるまでは、俺の考えたシナリオが、そのままに『演じられる』事になっている」
 そう言って、白い歯を見せながらカンに向き直った。
「その為にも、お前はもっと冷酷でなければな」
「――俺が、何だって?」
 バセットホルンのパーフェクトスマイルだけが、その計画の完璧さを物語っていた。

813 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/19(土) 21:53:45 ID:???
よし。更新終わり

814 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/07/19(土) 22:29:03 ID:???
>>604
>>613
>>634
>>639
>>669
>>697
>>735
>>751
>>785
>>796

815 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/07/20(日) 22:00:34 ID:???
いーい盛り上がりだぁ

816 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:21:46 ID:???
邪鬼眼通信第十一号
『檄文』

 本日はお日柄もよく、……
 (中略)
 さて、昨今に於ける貴殿等の迷惑行為、生徒会活動への妨害行為が深刻化したため、ここで一度、どちらがこの夢凪を収めるのに相応しいか、白黒を付けたいと願う次第です。
 つきましては、明明後日の朝から、当該組織『黒風』の弾圧作戦を開始したいと考えております。
 無論、手を抜くつもりは一切ありません、最大の戦力を持って叩き潰します。

 夢凪学園生徒会長 アルモニカ
(このメールに返信は出来ません)

817 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:25:58 ID:???
「前方から、発熱体を確認! このままでは本陣に直撃します!」
 パニックになっている本陣の中を掻き分けて、オフィクレイドが庇うように前に出た。
「邪魔だ、お前らは下がれ」
 オフィクレイドの邪鬼眼が赤々と光り、その力を発動する!
「オフィ――」
 その白色の光は、オフィクレイド一人で何とかできる大きさには到底見えなかった。なのに、その男は――不適にも笑っていた。

「『怨念の業火(ダークフレイムオブディッセンバー)』!」

 炎と氷が触れ合って、爆発と共にかなり濃い霧が生じた。
『相手も然る者、ということか……』

818 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:27:01 ID:???
「こちら、被害ナシです!」
 そうか、とオフィクレイドは事も無げにそう言うと、電話が鳴っているのに気付いた。
「もしもし。……ああ。それで、伏兵はどうだ? ――――ああ。そのままで頼む。――――いや、そこは気にしないでいい。成功を祈る。では」
 そう言うと、オフィクレイドは電話を切った。
「――前衛部隊が少数だったのは、そういう理由だ」一班の全滅を聞いて、オフィクレイドは淡々と返した。
「つまり、体のいい囮か?」
 その質問に、オフィクレイドは答えない。
「ああいう大技は、大体休み時間が長い。だから、その間に決着をつける」とは言え、と付け足す。「予定ではあと20分ぐらいあれば大丈夫だ。相手も、切り札のカンを出していない。そこに注意しながら散開して、学園に接近するように仕向けろ」

819 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:27:49 ID:???
 トランシーバー(オフィクレイドなりの拘りらしい)で話していた小隊長の表情が、急に険しくなった。
「オフィクレイド。監視役からの報告で、カンが出てきたらしい。どうする?」オフィクレイドの表情も、同時に険しくなった。
『まさか、この時になって、何故ヤツが? ――ここに来ていきなり切り札を出すとは……。ここで大量殲滅を狙うつもりか? いやしかし、一対多数ならば邪鬼眼使いでも覆すのは難しい……』
 しかし、あれこれと考えている時間はない。相手はあの、邪鬼眼を無効化する力を持っているカンなのだ。
「二班に専用の部隊を! 三班は後方援護に周り、四班以降は路地裏を周りながらカンを追いつめるんだ!」
『多分、何かあるんだろうが……今は考えないことにしよう』

820 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:30:11 ID:???
「さぁて。――次は、誰が死にたい?」
 風吹く閑散とした街で、カンは黒風と対峙していた。その表情は至って愉快そうで、『戦争』の名が持つシリアスさは微塵も感じられない。
「なぜ進まない! ラインを上げなければ一気に攻め込まれるぞ!」この場所では、カン以外は全部敵だ。相手は50人ほど。ほぼ全力で潰しにかかっているとみて間違いはない。
 それなのに――、全員が怖じ気づいて進まない。
「こうなるのが嫌だからか? ――せっかく俺が邪鬼眼を外してやると言っているのに、抵抗したのはこいつらだ。そう――、俺はただ黙らせただけだ」
 カンの前には、完膚無きまでに打ちのめされた兵士が5人。骨が折れているかも知れない、出血が多く、生きているか死んでいるかも分からない。
「見ての通り、俺は動く物体を痛めつけるのは大嫌いだ。よって――これからは処刑タイムとする」サラッと、奇妙なことを言う。おかしい。常軌を逸している。その場にいる誰もがそう思った。

821 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:31:19 ID:???
「だから、こうやって――」そう言って、一人の腕をねじり上げる。その腕は、人が曲げられる角度を超えていて、凄く歪だった。
「――死体を凌辱するとか、かな」
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」その視界の暴力に、とうとう耐えられなくなってしまった者が出てきた。カンに向かって闇雲に突進する。
「『突貫の心得』か。……悪くはないが、決して良いとは言えないな」カンはそう言って、刀を真っ直ぐに構えて直立不動になった。

822 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:32:10 ID:???
「うげッ」決着――と言えば聞こえは良いかもしれない。
 止まれなかった相手は、そのままカンの刀によって串刺しにされてしまった。
「また、一人」そう言って、刀を抜き放つ。そこから噴水のように血が噴き出し、カンの姿を血に染めてゆく。
「かかってこいよ。――俺は一人だぜ?」
 その状況を見て、明らかに全員が萎縮していた。
 ある者は、殺された者への涙を流す。
 ある者は、死への恐怖で足が地面から離れない。
 ある者は、逃げようか逃げまいかと葛藤している。

 ――その様子、まさに鬼哭啾々として。


823 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:33:21 ID:???
「それならば、俺の相手をしてもらおうか」
 その声が聞こえると同時に、バスケットボール大のサイズの火球が真っ直ぐにカンの元へ飛んできた。カンは、それを易々と切り払い、嗤う。
「もう、大将のお出ましか? 多勢が無勢な様子は、見ていて無様だったからな。これで退屈はしないな」
「怒りもある。しかし今は、お前の本気を見たくなった。――ただ、それだけだ」

 それは見紛うことなき大将、オフィクレイドだった。

824 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/22(火) 22:34:05 ID:???
次回、カンVSオフィクレイド!

825 : ◆K.tai/y5Gg :2008/07/24(木) 00:49:39 ID:???
返事しろ

826 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/07/24(木) 00:54:35 ID:???
>>604
>>613
>>634
>>639
>>669
>>697
>>735
>>751
>>785
>>796
>>816

827 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 20:25:45 ID:???
更新ターイム、です。

828 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 20:27:35 ID:???
「悪いが、手加減をするつもりはない。――最初から、全力だ」そう言うと、オフィクレイドの右手の辺りに赤い光が点った。
「『銃器圧縮・拾』!」さらにそう唱えると、赤い光は段々と大きくなる。
「見せてみろよ、お前の得意な『アレ』を!」カンは慌てたように間合いを離す。
「ああ。見せてやるよ」
 そう言ったオフィクレイドの手から、今度はさっきよりも大きい、軽自動車サイズの火球が飛んできた。カンはなんとそれを避けもせず、持っている刀で上手に切り開いた。
 炎は尻すぼみになって消えていく。
「『突貫の心得』」カンが突進した瞬間、オフィクレイドの周辺が紅く染まった。
「さぁ、そこまで俺たちを挑発しておきながら、無傷で済むと思うなよ!」
 ギュルギュルと背後で炎が揺らめき、今にも相手が強烈な攻撃を加えてくるということが分かる。
「まさか、本当に使うと思ったか?」カンはオフィクレイドに衝突するほどに接近したが、すぐに方向転換をする。これは、『突貫の心得』では出来ない事だ。

829 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 20:39:24 ID:???
「しかし、さして問題ではない。どれだけ動こうと、俺の『怨念の業火(ダークフレイムオブディッセンバー)』から逃げることは出来ないからだ!」
 魔方陣のようなものが見える。そこから、巨大な炎の龍が現れ、カンの方へ突撃してくる。
「なんとこれは……アルモニカの大砲を受けて無傷なワケだ!」
 だがまぁ、とカンはこんな状況でも笑顔を崩さない。
「終わりだ、レンの嫡子よ!」そのカンの姿に向かって、炎の龍が覆い被さる。
 そして、さらに五里が霧中になってしまうほどの煙幕がその場所を覆った。
「やはり名前だけで、いとも容易い……」そう言って立ち去ろうとするオフィクレイドの顔目掛けて、何かが打ち込まれる。
「!!」そして、その光景に全員が驚愕した。……そこには、紛れもないカンが無傷で立ち、オフィクレイドの顔目掛けて『エターナルフォースブリザード』を発動していた。
「貴様……あの攻撃をどうやって!」オフィクレイドは、自分が逆の状況ならばどうなっていただろうかと想像していた。顔を掠めた冷気は、オフィクレイドの髪を少しだけ凍らせていた。
「んー」カンはしばらく考えてから、「主人公補正、ってヤツかな?」と言い放った。
「ふざけやがって……お前ら!」そう言って、周りの者を扇動した。
「オフィクレイドを援護しろ!」という観衆からの声と共に、カンの居る場所へ衝撃波やらレーザー光線やら鎌鼬やら、様々なモノが飛んできた。
 これでは、カンの動きは更に制約が掛かってしまう。カンは学園の屋上に向かって、出来るだけ聞こえるように叫んだ。
「ユーフォニアム! こいつらを何とかしてくれ!」

830 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 20:44:18 ID:???
「はいはい、こちら聞こえています。それじゃあ、予告無しで行きますよ」
 パッ、とユーフォニアムを取り囲むように、無数の青白い小さな光が見える。
「『反逆鳥・6000』」その弾丸は、カンの居る辺りへと真っ直ぐ飛んでいった。

 危険を察知したオフィクレイドは、周りに促す。
「何か来るぞ! 総員、防御態勢をとれ!」その声も響かぬうちだった。もはや、防御態勢を取る暇も与えない。
「うわ……うああああああああああああああああああああああ」
 それは、端から見ればただの激しい雨だった。でも、それは雨ではない。その雨が物にぶつかると、弾けて小さな爆発を起こす。
 それが6000発。
 言うまでもなく、地獄である。
「くそっ、狙撃手か……。ならば、逆にそっちを」攻撃の準備をしたオフィクレイドの前に、カンが立ちはだかる。
「深く考えているところ悪いけど、行かせる気はさらさら無ぇよ?」邪鬼眼を斬る刀が、カンの命の躍動を受け、輝いているように見えた。

831 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 20:49:49 ID:???
 しかし、カンを追いつめる状況は尚も続いた。
「カン!」聞き慣れた声と同時に、二人の間を衝撃波が通り抜ける。
「この声は……『ヴィオローネ』か!」その脇には、どこかで見たようなフツメン男。
 ヴィオローネと、チューバが加勢したのだ。
「だいぶ疲れてるじゃない、カン。――オフィクレイド、悪いけどトドメは私が刺すわ」カンが最初の頃に見た、『狩人』の名を冠するに相応しい冷徹な目つき。
 カンは気のせいか物怖じしているように見える。
「勝手にしろ。『火炎』」掌から野球ボールサイズの小さい弾が飛んでくる。それをカンは難なく避ける。
 すると、思いも寄らぬ方向から刀に強い衝撃が走った。カンは為す術もなく吹き飛ばされ、刀はさらに遠くへ飛んだ。
「くそっ、ヴィオローネ! 裏切り者が、俺の邪魔ばっかりしやがって!」
「あら? 単身で突撃するあなたの愚かさから出た錆よ」
「なまくらめ、砕け散れ」オフィクレイドといったら、奪った刀を地面に叩き付け、破壊行動に移ろうとしている。まるでガキだ。
「あんたの相手はそっちじゃない、こっちよ!」
「あの時のヤツ、300倍返しにしてやるよ」
 迫る、ヴィオローネとチューバ。

 刀は使えず、為す術無し。


「チェック・メイトだ」
 その声だけが、騒々しい街の一瞬の閑寂の中に響いた。

832 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 20:53:18 ID:???
うまく次回へ引っ張れたかな?

833 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/25(金) 22:26:56 ID:???
カンとヴィオローネをもっとボコボコやらせればよかったなぁ、と後悔。
書き足せれば書き足したい所存。

834 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/07/26(土) 02:29:33 ID:???
どこかで見たようなフツメン男w

835 :おいら名無しさんヽ(´ー`)ノ:2008/07/27(日) 11:36:27 ID:???
ヴィオたんの存在感は異常。
カンから見たチューバの、存在の耐えられない軽さが素晴らしいです

836 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/29(火) 20:52:50 ID:???
http://acorn-acorn.jugem.jp/
第三話を更新しました。

837 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/07/30(水) 22:32:29 ID:???
チャッカメイトだ

838 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/31(木) 21:40:35 ID:???
バセットホルンのイメージがスイッチからルルーシュへ変わってきた
オフィクレイドは垢抜けない月君みたいな感じ

839 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/31(木) 21:42:31 ID:???
「なっ……何だ、何が起きてるんだ!」驚愕と恐怖の表情を浮かべたのは、オフィクレイドである。
 それもそのはず、周りにいた兵隊が、次々と魔法のように風に溶けて消えていくのだ。後には、砂しか残らない。
 動揺が小さな渦を巻き、段々と全員を飲み込むように巨大化していく。
「これぞ、我が必勝の策!」カンも動揺に、溶けるようにその本当の姿を現した。
「バセットホルン……! 貴様、一体何を……!」
 一応説明を加えておくが、さきほどまでのカンは全てバセットホルンである。
「君が簡単に引っかかってくれたもんだから、あまりに楽しくてつい調子に乗ったんだ」
 そうして、バセットホルンは計画を述べ始めた。
第一段階:黒風に誰かを潜入させる。
 ヴィオローネが潜入したのだが、それには内部の介入が不可欠だった。その役割を果たしたのがチューバである。しかし――
「チューバも砂になった。つまり、このチューバも偽物。つまり、俺の分身みたいなもんだ」
「……!」オフィクレイドは手をギュッと握りしめ、悔しさを滲ませた。

840 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/31(木) 21:46:29 ID:???
「何故気づけなかったか、お前が悔しがるのはその一点だろう。残念ながら、俺は『雲散忘却』の本物を持っているのでな。お前のその『チューバの存在に対する疑念』の一切を消させて貰った」
 そして第二段階:黒風のメンバーの中で、気の弱い人間を中心に離反させる。
「彼奴等は賢明だったよ。こんな馬鹿な運動に参加するくらいなら、家で導関数でも求めていた方がよっぽど有益だ」
 そして、居なくなった者の穴を埋めるために『バセットホルンの人形』が使われる。
「本人をなるべく忠実に表現させるために、今日の日までに大急ぎで邪鬼眼を複製したんだ。なかなか苦労したぜ」
 つまり、敵のほとんどは最初から物言わぬ泥人形だったということだ。
「……。なるほど、始まる前から既に終わっていた、と言うことか」
「さて。大人しく降参したらどうだ、オフィクレイド。お前の負けは既に……」続きを言おうとした時、バセットは何かの気配に気付いて、学園の方向を見やる。
「でもな。今回の目的は俺ではなく、黒風が夢凪を潰すことだ。今の夢凪には、誰が居るんだったかな?」
 そう言うと、目にも止まらぬ速さでオフィクレイドが二人の間を駆け抜けた。
「しまっ」どうやら『神速』か何かを使っているらしい。オフィクレイドはまるで忍者のように速かった。
「ヴィオローネ! 『世界地図』だ!」そう言って、ヴィオの手をしっかりと掴む。
 全く躊躇がないその行為に、ヴィオは一瞬ドキリとしてから少し笑みを浮かべた。
「! ……もうっ、しっかり掴まっててよね!」

841 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/31(木) 21:49:11 ID:???
「囲まれた……だと!?」
 バセットホルンが単独で本陣に斬りかかると言って出て行ったその数分後。
 夢凪学園は包囲されていた。
「カン! これは一体どういう……!」アルモニカが悲鳴にも似た声を上げる。
『まさか……最初から少数精鋭と踏んで、ここの守りが手薄になる時を狙っていたのか……!?』
 『それだけ』を考えれば、オフィクレイドもなかなかの謀略家である。カンも刀を抜き、攻撃に転じざるを得なくなった。
「お前らはアルモニカをひたすら守れ! そして、『氷結の祝砲』の二発目まで耐えるんだ! アルモニカも、何か他に邪鬼眼があれば俺に援護を頼む!」
 こんな時レンならどうしたかな、とカンは必死に考えていた。

842 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/07/31(木) 21:51:15 ID:???
ようやく全員が揃うかな?といったところで本日はお仕舞いです。

843 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/07/31(木) 21:52:20 ID:???
くそっ
ヴィオに萌えちゃった
ごめんねスピネット

844 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/04(月) 21:35:41 ID:???
邪鬼眼通信第十二号
『邪鬼眼に関連する言葉についての説明』
・弩『白菊』
弓矢。邪鬼眼をセットすることでその効果を乗せた矢を放つ事が出来る。

・日本刀(名称不明)
刃を持たない模造刀だが、所有者から邪鬼眼のみを切り離す能力を有する。
邪鬼眼をセットすることで本来の力を発揮する。普段は小さくして持ち運び可能。

・不死者
邪鬼眼の能力ないしその他の要因によって不死となった者。(便宜上、不老ではない)
現在はバセットホルンのみがこれに該当。

・邪鬼眼管制塔
邪鬼眼の危険を防ぐという目的のために、当時のレンの為だけに設立された委員会(夢凪の中等部以上の生徒は必ず一つ、委員会へ加入する義務がある)。
レンが失踪を遂げた後は有名無実のものとなっていたが、ポルタティフがカン達を入れて復活させた。

845 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/04(月) 21:37:44 ID:???
 外からは「窓を壊せー!」のコールが鳴り響いている。
「ふつうに正面から入ればいいのに……」
 アルモニカの『氷結の祝砲』の攻撃のせいで、正面玄関の自動ドアはその枠ごと大破していた。
「さて、」
 キッと表情を変え、カンは真っ直ぐに進み続ける。敢えて、正面のドアから出てみたのだ。
「どいつから死にたい?」
 『突貫の心得』で、目の前の壁に突っこむ。コンクリートの外壁が一瞬にして砕け散り、その破片が四散する。
「馬鹿な……! カンがなぜここに居る!? 報告では、今ヤツはオフィクレイドと交戦中だと……!」
 驚愕の表情を尻目に、カンは相手の邪鬼眼を次々と切り裂いていく。
「俺は、この世に2人いる。――今、そう決めた」

846 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/08/04(月) 21:38:05 ID:???
>>604
>>613
>>634
>>639
>>669
>>697
>>735
>>751
>>785
>>796
>>816
>>844

847 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/04(月) 21:42:53 ID:???
 その目の前を、白銀の一矢が音速で通り過ぎた。空気を切り裂いて飛ぶその矢は、校舎の壁面にしっかりと突き刺さった。
「再戦のチャンス、ってヤツかな?」
「お前……あん時の弓ヤローか!」
 そこには、かつてユキ(ユーフォニアム)を掠いに来た弓持ちの男が居た。
「伏兵ってのも悪くないね。とりあえず、あの時の続きでもしようか? 僕はテルミン。来世でもよろしく」
 弓が放たれる。逃げるまでもなく、カンは首の運動だけでサクサクと避ける。しかし、ここはテルミンが一枚上手だった。
「ほらほら、全然届いてないよ?」
 テルミンは退きながら撃つので、カンは自然と前に出る形になってしまった。
『何だろう、この頭痛は……?』カンは頭痛もあり、その事に気付くのに一瞬遅れてしまった。
「でもね。残念ながら今日は沢山のギャラリーが居るんだ。さぁ、君はどうする?」
 周りが一切攻撃してこなかったのは、その時まで邪鬼眼の使用回数を抑えるため……。
 カンの命の炎が、大風で揺らめき出す。
「死は楽だよ。何も考えなくていい。そこなら丁度お兄さんも探せるしね」
 その言葉に対して、カンは頑として言い返した。
「死ぬ? そんな考え、安価で惰弱だ。兄貴に会えるまで、お前らを救うまで、俺は絶対に死なない」
 メシアになりたい?
 違う。
「五月蝿いっ! 綺麗事を並べ立てやがって、俺たちを救えるのはオフィクレイドだけだっ!」
 周りのガヤガヤとした音が、段々キーンと高くなって耳を裂く。バセットホルンは上手くやっただろうか、ヴィオローネはどうしただろうか。

848 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/04(月) 21:55:03 ID:???
 それはまるで走馬燈。それを切り裂くのは、いつだってカンより大きな背中を持った男だった。

 ……誰だ?

「格好いいこと言って、結局死ぬのか、お前は? そんなんで、お前の兄貴は満足するのか?」
「……!? お前、誰だ!」
「部外者は黙れ」
 そう冷たく言い放つと同時に、ドン、という空気を裂く重厚な音が響いた。テルミンは、そのまま背中から地面に倒れ伏した。
「起きろよ。そして、さっき言った覚悟を俺に見せろ」
 レン? 違う。レンはこんなに長躯ではない。レンの髪はこんなに赤茶けていないし、こんなに長くない。
 女? ……女か? でも、仕草が全く女っぽくないし、その右手にはかなり重厚そうなコルト・ガバメントが握られている。
「「「「カン!」」」」
 バセットホルン、ヴィオローネ、スピネット、ユーフォニアムの声が響く。
「立て。そして、反撃の合図をするんだ」
 その声に導かれるがまま、カンはその刀を支えにして立ち上がる。

「愉快な演奏会は……終わりだ!」

849 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/04(月) 21:59:35 ID:???
最後のセリフが『ブレイク・カルテット』に繋がるわけです。
ということで、ようやく出したいキャラクターが全員揃いました。

初期プロットでは、カン・バセット・ヴィオ・今回の新キャラの四人(カルテット)で暴れ回るつもりだったのですが、ヒロインが二人も増えてしまってこんな事に。

850 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/04(月) 22:00:48 ID:???
あと、カンの持つ刀の名前を募集しています。
採用された方には、なんか差し上げます。

851 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/08/04(月) 22:03:05 ID:???
「ねこ」

852 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/08/04(月) 22:16:41 ID:???
こう……エムゼロ的な

853 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:01:17 ID:???
さてと

854 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:04:06 ID:???
今更だけどカンの能力強くね?

855 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:07:27 ID:???
今読み返してるんだけども


>>733-734
この辺誰の台詞か分かりにくかった。読解力乏しくて申し訳ない

バトルはテンポ速いけど熱いな

856 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:12:29 ID:???
「ところでカンよ、下がヤバい」
「漏らしたのか?」「

これいいよね

857 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:17:20 ID:???
え、なんでモテんのこいつ
応援する気が50%ダウンしたぞ

858 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:28:58 ID:???
生徒会長なんとかしろ

859 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:33:04 ID:???
兄貴出てくんのかな

860 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/05(火) 00:34:13 ID:???
>>850
ギャラクシアンエクスプロージョン

861 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/05(火) 18:19:37 ID:???
>>855
上から
スピネット
カン
敵男
敵女
バセット(分かりにくかったのはここら辺かな?)
バセット
敵男
敵男
カン
敵女
敵女
ユキ
敵女
カン

あと、先の記述を見れば分かるようにバセットホルンは全員をフルネームで呼びます(カン以外)。
>>831の三行目が『ヴィオローネ』と強調してあるのはそれをそれとなく知らせるためでした。

862 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 19:35:24 ID:???
『夢凪・広報誌』
『町内の皆様へのお知らせ』
来る○月×日は夢凪学園の運動会となっております。
生徒達の買い食い行為などを一切禁止するため、町内の一斉閉店をしてもらう事となっております。
時間帯は6:00〜14:00となっていて……
(後略)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どうやら、○月×日とはオフィクレイド達が戦争を仕掛ける日のようだ……

863 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 19:39:00 ID:???
「よっしゃ、死ぬほど元気出た」ひどいパラドックスも、今は誰も気にしない。
「やれやれ。大将がここまでバカだと、俺たちが奮闘しても無駄にされそうだ」カンの疲れた様子を見て、バセットホルンは嘆息する。
「どういう意味だよ」カンも、カッとなって言い返した。
「別に。そのままだ」
 アルモニカを取り囲むように、カン、バセット、ヴィオ、ユーフォニアム、スピネットは立つ。
 最前線には、カンに変なことを語りかけた謎の女が立っていた。
「お前、来るの遅いんだよ。そんなに家業が忙しいか」バセットが愚痴を言うと、女は淡々と言い返した。
「んにゃ。実は、寝ててすっかり忘れてた」声は艶やかでいかにも女っぽい。だからこそ、そのセリフとはあまりにもギャップがある。
 先の一言で、バセットはもう文句を言う気もなくなったようだった。

864 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 20:01:31 ID:???
「俺はイメルストレフ。見ての通り、便利屋だ」イメルストレフはそう言って、また銃を撃つ。
「今はお前らを守ることが仕事だが、時々、邪鬼眼複製の店番のババァの代わりをやってる」
 しかし、当然ながらカンは店にこんな女が居たのを見た覚えは無い。
「言ってることがさっきからさっぱり……」詳しく聞こうとしたカンを、イメルストレフは制した。
「積もる話は後だ。今はこいつらを何とかしよう」そこが重要なのだが、そこを押し通す勇気はカンにはなかったので引き下がった。
 バババババン、とイメルストレフはまるで西部劇のように華麗に銃弾を放っていく。
「それ、実弾なのかよ」
「いいや。俺はチキン野郎だから、ゴム弾だ」
 上空に一発放ってから、弾を拾い上げてカンに見せ、さらに言った。
「援護、願い奉る」
「周囲の雑魚は俺たちが引き受けた。カンとイメルはオフィクレイドの居る場所まで突っ切れ。……ユーフォニアム」その呼び声で、ユーフォニアムを囲む光はより強くなった。

865 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 20:03:46 ID:???
「1時の方向へ。この距離ならば問題ない」バセットホルンがそう言うと、光は更に巨大になり、先ほどのアルモニカの大砲並みに大きくなった。
「――カン、絶対勝ってね! 『反逆鳥・比翼連理』」
 その光が最大まで大きくなり、ついにそこから巨大な鷲のような顔が現れる。流石に負担がかかるのか、ユーフォニアムは辛そうだ。
「ユキ!」カンはそう言って、ユーフォニアムの背後に立ち、その辛くて今にも崩れ落ちてしまいそうな肩を支える。
「こんな変なことに巻き込んで、本当に悪かった。でも、感謝してる。お前が居なけりゃ、多分俺はここに居ても長くは持たなかった」今更ながら弁解の言葉が口をついて出た。
 そろそろ充填完了か。巨大な鷲は、今にも飛び立とうとしている。
「これが終わったら……お前を助ける。きっとだ」
 その瞬間、鷲は遂にユキの手を離れ、飛び立った。
 羽を広げたそれには、オリュンポスの時代に人々に災厄をもたらしたかのような大怪鳥だった。その全ての者を萎縮させるかの如く赤く光る目は、視線が交錯すると石にされてしまいそうだ。

866 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 20:06:49 ID:???
「潰せ、潰せー!」そう言いながら、恐れを成した者達が次々に道を空け、そこには綺麗にオフィクレイドへの花道が出来た。
 邪鬼眼の攻撃を受けても、双頭の大鷲はその勇猛そうな姿を一切崩すことがなく、むしろその攻撃を受けて抜け落ちた大きな羽が、地面に触れた瞬間に大爆発を起こしていた。
「カミカゼが爆弾背負ってやって来たってか。……ある意味最強の兵器だな」バセットは闘いながらボソリと呟いた。
 双頭の鷲は周りの兵を吹き飛ばしながら直進し、オフィクレイドの方へ段々と近づいてくる。
「戦争ごっこはもう終わりだ、オフィクレイドっ!」その鷲の後を追うようにカンとイメルストレフは走り出す。
「負けはない……勝ちか引き分けのみだ!」オフィクレイドはその鷲の頭部目掛けてダークフレイムを放ち、鷲の進行方向を僅かに上に向けることで直撃を避けた。
 逆放物線を描いて飛ぶ鷲はとうとう風に溶け、そこには酷く平坦で真っさらな地面だけが残った。
 イメルストレフはその身体の中心目掛けて発砲する。オフィクレイドの右脇腹が軽く避け、少しだけ血が滲む。
「当たっても死にはしない。が、数日間病院送りには出来るな」
「カン。お前は、一体何のために俺を止める? お前はこの監獄が嫌じゃないのか?」
 オフィクレイドはカンの攻撃を易々とかわして、間合いを詰められぬように炎で威嚇する。闘う気があるのか無いのか分からない。

867 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 20:11:19 ID:???
「俺だって、正直好きじゃない。でも、このまま破壊行為に走っても、きっと良いものは得られない。むしろ、世界はこの夢凪を本気で敵視するぞ!」
 空論だ、とオフィクレイドは叫んだ。
「ならば良しとせよ! 俺たちに権利を渡さぬ報いだ!」
「ここには良い奴等が一杯居る。友達が居る!」
 そう言って、次には「『邪鬼眼否定』!」と叫ぶ。
「お前の計画には成功はない。必ずバッドエンドだ。夢凪市の崩壊という、最悪の結果をもたらしてな!」
「倒すのか……? 俺を!」目の前から、オフィクレイドが消えた。
 カンは自然と空を仰いだ。
 ビルの上に、オフィクレイドが漫然と立っていた。
「さっきので丁度15発。お前の力がどれくらいなのか、見せて貰おうか!『火怨(ザ・メテオアーダー)』」

868 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/07(木) 20:12:10 ID:???
次回、あの子に何かが起きる?

869 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/08/07(木) 20:38:14 ID:???
なんと熱い展開w 

870 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/08(金) 22:26:15 ID:???
シビアさんの勢いに負けていられない気分

871 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/09(土) 19:53:48 ID:???
 そこには、太陽を多い隠そうとするくらいの火の弾が現れていた。まるで隕石だ。こんなものが直撃したら、絶対にただでは済まないだろう。
「カン、なんだあの野郎は!」イメルストレフは狙いを定めるともなく撃っているように見える。
「今度の調査で地球の温度が上がってたら、90パーセント彼奴のせいだな」
 そこでカンは気付いた。イメルストレフはさっきから銃を適当に撃っているように見えるのだが、その弾痕は少しずつオフィクレイドの立っている場所を目指しているのだ。
 一方、火の玉はまるで不安定な線香花火みたいで、いつ墜落してもおかしくない状況だ。
「そうだ! イメルストレフ、俺の方向に向かって撃て!」
「はぁ?」当然イメルストレフは訝しむ。気が狂ったのかと思われるのも当然だ。
「いいから! この刀身に目掛けて撃ってくれ!」どうせ当たっても大事には至らない、と付け加えた。
 すると、カンの必死な表情にイメルストレフが折れた。
「あー、わかったわかった。言うが、大人のオモチャで遊ぶのはこれっきりしにしてくれよ?」 バン、という銃声と共に、火球は嫌にゆっくりと下降を始めた。
『『風神』で切り開いてもいいが、炎相手では逆に効果が薄いかもしれない……ここは、中央突破だ!』

872 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/09(土) 19:55:44 ID:???
 弾は直線軌道をそらすことなく、刀身にしっかりと当たって弾けた。それをしっかりとキャッチする。まだ少し熱い。
「これ……実弾じゃないか!」その弾を見てカンは叫んだ。
「さーてね。たまに間違って入ってたりするのかもな」カンのやりたいことを察してくれたのか、はたまた偶然か……。ともかくも、今はオフィクレイドを何とかしなければ、とカンはもう一度炎を見据えた。
「届け!」その銃弾を投げ、それを真っ直ぐに刀で突く。「『銀弾(シルバー・ブリット)』!」
 落ちなかった。その金色のブリットは刀の力を受けるように、その斜め45度の方向へ向かって飛んでゆく。
「まさか、お前はその弾一発で何とかできるというのか?」
 小さな弾は、その勢いを全く落とさずに火球の中心へ進み続けた。まるで、糸に引っ張られているように進むその光景は、奇跡にも見える。
「労力は、なるべく少なくした方が社会のためだぜ」
 火球の中心から光が溢れる。その次の瞬間には、溢れた光が火球を覆い尽くし、炎は全て塵と化した。

873 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/09(土) 19:56:56 ID:???
「『邪鬼眼否定』を、弾に込めたのか!」
 カンは攻め手を緩めない。
「『残骸爆破(グレイブ・エクスプロージョン)』」
 オフィクレイドの立っているビルに振動が伝わり、そこから崩壊が始まった。一瞬にしてコンクリートは砂になり、オフィクレイドが逃げてゆく。
「逃がすかっ!」イメルストレフはオフィクレイドの背中目掛けて乱射する。が、どれもぎりぎりでかわされるか、ダークフレイムで無効化される。
「お前、そこはしっかり当てろよ!」
「こちとら、スナイパーライフルじゃねぇんだ。過信すんな!」初対面の相手にボロクソ言い過ぎてしまった、とカンは反省した。
「悪かった。……追うぞ」
 反省を述べてから走り出そうとした瞬間、何とオフィクレイドの方から急に引き返してきた。
「!?」
「『銃器圧縮・二十』!」ドカンと一発。景気の良い火球がカン目掛けて飛んできた。

874 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/09(土) 20:04:16 ID:???
「カン!」イメルストレフも一瞬反応が遅れた。
 負けを覚悟したその時だった。
「『黄昏の障壁』」突如としてカンの目の前にシールドが張られ、火球はそこに激突して消える。
「スピネット!」
「動かないで、バリアの位置がずれるわ」ゾワッ、とカンは嫌な予感がした。
「スピネット、逃げろ! ここに居ちゃまずい!」なんとなく察知していた。バセットホルンの話に依れば、『ダークフレイムオブディッセンバー』が放てるのは『ダークフレイム』10発を撃った後だと。
 今、オフィクレイドは20発分を溜めて放った。つまり、何かを意図して……。
「賢いな、カン! だがもう遅い!『炎賢神の加護(アフラ・マズダ)』」
 地面が揺れ、オフィクレイドに力が集まっている。そのまま手をかざすと、そこから赤々としたレーザービームが放たれた。それは何故かカンとは見当違いの方向を狙っていて……。
「スピネット!」相手の攻撃を待っていたかのように、スピネットは『黄昏の障壁』を発動させて自分の周りにバリアを張って、防ごうとした。
 しかし。
「あっ」その光景は、カンから嫌にしっかりと見えた。
 『黄昏の障壁』は炎のレーザーに打ち砕かれ、その炎はスピネットを直撃していた。
「スピネットオォッ!」

875 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/09(土) 20:17:53 ID:???
邪鬼眼通信第十三号
『邪鬼眼の効果についての説明・7』
『火怨(ザ・メテオアーダー)』
『火炎弾』使用回数・15回以上
 巨大な火の玉を放つ。

『炎賢神の加護(アフラ・マズダ)』
『火炎弾』使用回数・20回以上
 『加護一式・極滅火炎』
 極太の炎のレーザーを放つ。
 『加護二式・閻魔笏』
 武器・閻魔笏を取り出して攻撃する。

『所有者の証(リターン・トゥ・カイザル)』
特定の道具が、本人に呼応して戻ってくる。
その道具自体に付与して使用するので、その邪鬼眼を持つ必要はない。

876 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/09(土) 20:19:27 ID:???
>>875
追記
『火怨(ザ・メテオアーダー)』
発動ラグ・3時間
『炎賢神の加護(アフラ・マズダ)』
発動ラグ・3ヶ月
『所有者の証(リターン・トゥ・カイザル)』
発動ラグ・なし

877 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/08/09(土) 21:09:16 ID:???
スピネぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇット!!!!!!!

878 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/13(水) 21:08:30 ID:???
「これは……。あの障壁が無ければ、恐らく彼女は骨も残さず溶けていただろう」
 スピネットは腕や足などに火傷を負っていた。
「それだけを考えれば、あのバリアは恐るべき防御力だ。――そして、それを破った熱線も」
「ごめんなさい」スピネットはただそう言った。
「喋るな! イメルストレフ、何とか出来ないのか!?」
 こういうシチュエーションでは、何ともならないのが常套句なのだ。だが――
「出来るとも」イメルストレフはそう断言した。「――だが、ここでは応急処置のみだ。皮下の壊死を食い止めるぐらいしかできん」
「それで十分だ。……俺は行くから、イメルストレフはスピネットを頼む」
「生きて、帰れよ。このお嬢のためにも」
「分かってる」カンは刀を一振りすると、その衝撃で地面が裂けた。「1分でぶっ殺す」
 そう言って、オフィクレイドを逃すまいとしっかり睨み付ける。
「怒りに燃える男! まさにシチュエーションは最高じゃないか。さぁ、半端な能力など使わずに、お互いに最大の力を――」
 スニーカーで地面を踏みしめる音が聞こえた後、何もないのに地面が砕けた。
「ゲームじゃねぇんだ。お前が言ったんだろう? これは『戦争』だ」
カンはオフィクレイドの背後に立っていた。

879 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/13(水) 21:10:27 ID:???
「! ……ならば、お前はそっちに立つべきではない! こっちに来るんだ、カン!」差し出されたその手を、カンは力強く振り払った。
「さっき言っただろ? お前らのやってる行為は夢凪を殺す。そんな悪事、空き地のガキ大将も荷担しねえんだよ!」
 金属が触れ合う音がして、カンは一歩退いた。
「『加護二式・閻魔笏』」オフィクレイドが手にしていたのは孫悟空に出てくる如意棒のような武器で、持つ部分以外は燃えている。熱伝導とかそういうのは何でもあり(無視)らしい。
「残念ながらお前のお得意な邪鬼眼については考察済だ。強力な邪鬼眼ほどハイリスクローリターン、発動時間は短く溜め時間は長い。つまり、『邪鬼眼否定』はもう使えない!」
 そう言って、オフィクレイドは一気にケリをつけようと襲いかかってきた。
「!」カンが避けた場所が爆発した。どうやら触れた場所に爆発も起こせるようだ。
「いつまで持つかな?」
 その瞬間裏路地に逃げ込んだカンを、大爆発が襲った。

880 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/13(水) 21:11:34 ID:???
『ちくしょう、切り札も意味無しか……?』そこで、ハッと気付いた。
 カンは路地を走り抜け、街の真ん中に出る。どうやら、さっきの中心地(学園)よりも相手陣に近い場所にいるようだ。
「チェックメイトだ」オフィクレイドが炎で気温を上げながら、冷たく言い放った。
「そうかな? ――主人公はここからの快進撃が見せ場なんだぜ」
 今度はカンから仕掛ける。これが最後だ、ここで仕留められなければ負ける、と覚悟を決めた。敢えて堂々と、正面から殴り込む。
「『風神』!」ドン、と二人の僅かな間に強烈な風圧が発生した。
 その如意棒の中心に風の塊を押し込む。そして空いた場所に刀をねじ込む!
「なるほど、悪くはないぞ」
 しかし、カンは競り負けた。棒はカンの刀を持つ手首を正確に打っていた。
「うっ……!」痛さと熱さで、刀から手が離れてしまった。これでは、邪鬼眼が使用出来ない。
「滅びろ、レンの弟よ!」
 オフィクレイドも勝利を確信した。そしてその武器はカンの命を真っ直ぐに突こうとしている。

881 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/13(水) 21:13:33 ID:???
「『所有者の証(リターン・トゥ・カイザル)』ッ!」
 叫んだのはカンだった。その声に呼応するかのように、落ちていた刀が宙を浮いてカンの手に綺麗に収まった。
「それが戻ったところで、何だと言うのだ!」その刀が収まるよりも早く、その棒はカンを突いていた……はずだった。
 カンの銀色に輝く刀はその棒の先を正確に受け止めていた。更に、カンは相手の燃えている棒をしっかりと握った。
「スピネットの痛みに比べれば……熱くなんかねぇ!」オフィクレイドは危険を察知して棒を放し、さっきスピネットを捉えた灼熱光線の構えをとる。
「『加護一式・極滅火炎』」一歩下がったところで、オフィクレイドは何かを踏んだ。
 カンは一瞬だけ、勝利の笑みを浮かべた。
「『空中分解(インヘイズ)』」
「しまっ――」ズドン、とオフィクレイドが空中高く打ち上がる。
「『剣戟の心得』『風神』……『遅延魔術(ディレイドアクション)・邪鬼眼否定』!」
 カンは邪鬼眼三つを同時発動した。その中には、カンがあらかじめ溜めておいた『邪鬼眼否定』も混ざっている。
「何……だと……!?」そして、オフィクレイドがカンの丁度目の前に来た時だった。
「運命を受け入れろ。『凱旋剣(ジ・エクスカリバー)』!」剣から放たれた波動が嵐となり、オフィクレイドを襲う。
 カンの全身全霊を込めた一撃は、オフィクレイドをしっかりと捉えていた。

882 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/13(水) 21:25:15 ID:???
邪鬼眼通信第十四号
『邪鬼眼の効果についての説明・8』

『剣戟の心得(スピリットオブブレイド)』 ランクR
邪鬼眼の組み合わせ技専用。単体では効果を為さない。
発動ラグ・効果時間・なし

『凱旋剣(ジ・エクスカリバー)』
発動条件:『剣戟の心得』+『風神』+『邪鬼眼否定』
相手を中心にした嵐の塊を発生させ、纏めて相手を吹き飛ばす。
鋭敏に動いている相手には当てにくい。

『奮激陣(インペリシャブル・フィールド)』 ランクSR
範囲内の者の体力を回復する陣を生成する。
発動時間・8分 発動ラグ・1時間

883 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/08/14(木) 00:05:22 ID:???
最近オフィクレイドかっこいいなって思うようになってきた
スピネットに何かあったら許さないとこでしたが

884 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/14(木) 08:00:28 ID:???
流石に殺すのは憚られました……

885 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/08/14(木) 10:48:06 ID:???
せ……憚られ……

886 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/15(金) 01:52:35 ID:???
スピネット生きてたのか
っていうかやべえじゃん終わりかもう

887 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/15(金) 01:53:05 ID:???
ギャラクシアンエクスプロージョン ボツったああああああああああああ

888 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/16(土) 20:46:31 ID:???
『憤激陣』は元々スピネットが使う予定だったんですが、結局使うタイミングを逃してしまったためにボツりました。

とは言え、出すときがあれば出すかもしれないので一応上げてみました。

889 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/16(土) 20:53:46 ID:???
 オフィクレイドは、数十メートル以上吹き飛ばされてビルに激突し、ようやく止まった。
『終わった……か?』「カン!」
 そこでようやく、みんなの声が聞こえてきた。
「どうだった?」その満足そうな顔を見れば、答えは聞かなくても分かる。
「「「大勝利っ!」」」
「ほとんどがヴィオローネさんがボコボコにしてましたもんね……」ユーフォニアムが寂しそうに語っている。
「そうでもないよ!? ユーフォニアムも、あの邪鬼眼は悪質すぎるわ」ヴィオが声を上ずらせて言い返す。
「どっちも女らしくなかった事は事実だな」当然、この後バセットホルンが二人にボコボコにされたということを付記しておくべきだろう。
 その後、イメルストレフが現れた。
「彼女なら大丈夫だ、バセットホルンが処置を施してくれた」と、嬉しい報告もあった事で、ようやく戦争は終わりを迎えたようだった。
「さて……犯人を流罪にしてやろうか」バセットホルンがそう言って、決戦の跡地を見る。
 廃ビルがあり、その敷地の壁にもたれかかるようにオフィクレイドは倒れていた。
「オフィクレイド、諦めて投降しろ」所々に銃創と刀傷があって、その姿は満身創痍だった。
 が、何かがおかしい。
「……? オフィクレイド――」
 オフィクレイドは、紐が切れた操り人形のように頽(くずお)れた。
「! カン、ちょっと手伝え!」一時、その場は騒然となった。

890 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/16(土) 20:56:32 ID:???
 ――例によって、死者は出なかった。邪鬼眼はこんなに危険な能力を秘めているのに、何故死者は出ないのだろうか、とカンは思った。
「多分……邪鬼眼を発現させる年齢が関わっていると思う」復帰したスピネットがそう答える。
 邪鬼眼を発現させる年齢は中高生程度。思春期の子供達が本気で人を殺すことを考えるだろうか? ということらしい。
「そんな事言ったってなぁ。邪鬼眼使わなくても人殺してる中高生はわんさか居るぞ」
 そんな人は例外よ、とスピネットが反発する。
「そう言う人には邪鬼眼を発現させる要因すらないわ。心が荒んでいて、想像力過多になったりしないのよ」
 なんだかカンが説教されているみたいになってきたので、カンは無理矢理話題を変えた。
「そ、そう言えば、明明後日ってお祭りだったよな?」
「あ、そう言えばそうだね。カンはどうするの?」
「いや、別に特に何も無いけど……」
「じゃあ、私と一緒に行こうよ!」すると、急にカンの目から見たスピネットが可愛く見えてくる。
 えーと、えーと、と必死に詰まった挙げ句に出た言葉が、
「バセットと行けば?」だった。
「嫌だ。暗くなったら変な事されそう」即答。
 どうやらこれが、信頼の差と言うやつらしい。この場にいないバセットに対して、カンは一時の優越感に浸っていた。
「で、どうするの? 行ってくれるの? それとも……」
 他の人と予定でもあるの、と言いたげだ。

「……考えとく」言葉に詰まって、こう答えることしか出来なかった。

891 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/16(土) 21:01:17 ID:???
 悲劇……ではなく喜劇は更に続いた。色々終わった後の寮の前での事だった。
「カン」呼び止めたのは、ヴィオローネだった。
「何?」辺りが暗くて、ヴィオの表情がよく見えない。
 少しの間があって(逡巡していたのだろうか)、ヴィオは続けた。
「夏祭りあるでしょ。二人で一緒に……行かない?」
 ドーン、と来た。カンの脳を震源とする直下型地震は、カンの四肢の末端までをマグニチュード8.0で揺さぶり続けた。
 疚しいことなんて無いのに無性に冷や汗と普通の汗が出てくる。カンにとっては合わされば丁度いい、などという問題ではないのだ。
「駄目? 駄目なら別に……」どんな顔をしているのかは全く分からなかったが、とりあえず凄く悲しい顔をしているんだろうな、とカンは察した。
「い、行くよ! 多分!」ギリギリで言葉を濁して、カンは何とかその場を脱した。
 しかし、カンを絡みとる糸は異様にネバネバとしているらしい。
「カン、夏祭り一緒に行こうよ!」最終にして最強の刺客、ユキだった。
 三人分の重みが、地震で揺れる地面の上で巨大な桐箪笥を背負うかのようにカンにのし掛かってくる。出来るならば、刀で微塵切りにしてやりたい。そんな衝動に駆られた。
「あ、ああ。でも、俺も忙しいから分かんないぜ?」すると他の二人とは違い、
「ふーん」と言ってそれ以上問い詰める事はなかったが、ただ一言。
「三人だもんね。大変だよね」
 お茶を濁そうとしたカンが悪いのかもしれない。おかげで、とんでもないカウンターパンチを拝領する羽目になったのだ。
 この幼なじみは心を読み取る邪鬼眼でも持っているのだろうか。カンは意味もなく不安になった。

892 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/16(土) 21:03:26 ID:???
 さて、こんな状況になったカンは考えた。
『バセットホルンに俺の人形でも作ってもらうか……』どこまでも虫のいい奴だ、と罵られるのだろうか。答えを考えながら、カンはバセットホルンの家へ向かった。
「よぉ。折り入って頼みが――」バセットホルンはなにやら楽しそうにPCとにらめっこしているようだったが、カンの様子を見て何かを思い出したようだった。
「お前、祭りの日って暇か?」
 カンは、衝動的に壁に頭をぶつけるという自傷行為に走った。バセットは慌てて止める。
「お前、とうとう頭が邪鬼眼に乗っ取られたか? そんなに死にたいならその前に俺にその脳のサンプルを――」間髪入れずに頬をぶん殴った。不死だし、大事には至らないだろう。
「お前、俺、親父にも……っ!」馬鹿なやりとりがしばらく続き、ようやくカンは事情を話せる所まで落ち着いた。
「……ほう? つまり貴様は優柔不断であるが故に、三人からはとても選べそうにない、と。しかもその穴埋め作業を、全部俺がやれと?」ああ、とカンが答えると今度はカンが殴られた。
「親父!」なんの脈絡もないが、とりあえずバセットを真似て叫んでみた。
 残念ながらセリフを端折り過ぎていて、さながらホームドラマになっている。
「それは俺がさっき言ったセリフだろうが! 大体、お前が撒いた種なんだからお前自身で何とかしろ!」
 俺は何もしてないっての。そうとしか考えないカンは、もはや溜息しか出なかった。

893 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/16(土) 21:03:59 ID:???
第二章「鬼哭啾々として」 終わり

第三章「形影相伴う」に続く

894 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/19(火) 19:12:41 ID:???
現在ワードとにらめっこ中です。
今週末には更新したいですね……

895 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/21(木) 22:08:55 ID:???
【コラム】
邪鬼眼についての元ネタなどを少々。

・『須臾の閑寂(インスタント・U・N)』
東方永夜抄と東方紅魔郷。輝夜の二つ名とフランドールのスペルカードから。

・『神鳥一体(バード・クレイドル)』
『クレイドル』という読み方はアーマードコアfAから。

・『黄昏の障壁(スペルオブニーベルング)』
『ニーベルゲンの指輪』ということで、ヴァルキリープロファイルからです。

・『反逆鳥(スゥ・アロー)』
「スワロー」をちょっと変えただけ。

・『空中分解(インヘイズ)』
「ヘイズ」のフレーズはアーマードコアfAから。

・『反逆鳥・比翼連理(エルコンドルパサー)』
「コンドルは飛んでゆく」。ニコフからのアイディア。



896 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/21(木) 22:18:22 ID:???
・「○○の心得」シリーズ
効果はSEGA『三国志大戦』の『刹那計略』から。
『スピリットオブ』のフレーズはアーマードコアfAから。

・『慧眼(トラスティ・ビューアー)』
『トラスティベル』を知った頃からこのフレーズを使いたいなと思ってたり。

・『遅延魔術(ディレイド・アクション)』
某魔法先生漫画の『遅延呪文(ディレイ・スペル)』から。

・『檄文』
三国志大戦から。もともとは『自分が相手より優位であることを示す手紙』。

・弩『白菊』
『白菊』は重ねの名前。白に青みがかった緑色。

・『瞬風(ハヤブサ・エアレイド)』
キャプテン翼より。ニコフのアイディア。

・『炎賢神の加護(アフラ・マズダ)』
アフラ・マズダはゾロアスター教の主神。

・『所有者の証(リターン・トゥ・カイザル)』
「カエサルの者はカエサルへ」。

・『奮激陣(インペリシャブル・フィールド)』
『奮激』は三国志大戦から。
読み方は東方永夜抄のサブタイトルより。

・『凱旋剣(ジ・エクスカリバー)』
Fate/stay nightから。読み方に合わせてどんな漢字を当てるかに苦労しました。

897 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/08/23(土) 19:41:23 ID:???
実は全然じゃきがんじゃなく普通にかっこいいネーミングが多い件

898 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:08:40 ID:???
全然邪鬼眼ですよ。

ということで、今日はショートショートでも張りますね。

899 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:11:55 ID:???
『金太郎飴ごっこ』

丁字路だった。

右の道は落盤で通れなくなっている。
左の道は獣道。それにどうやら、いく先は崖らしい。

僕は、右の道にいきたかった。
崖があると知って進むバカは居ない。
道の途中で引き返す事は出来ない。


知ったからには、そこはただの一本道なのだ。

900 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:13:03 ID:???
5歳の冬の頃だった。
年端もいかない僕が蹴球や排球や籠球を嗜んでいた頃の帰り道。

暗くて、なんだか不気味だ。

昨日の心霊番組を見るんじゃなかった、と後悔しながら、日の光も当たらぬ真っ暗な道を歩く。

街灯が100メートルおきにしか存在せず、その間は丁度漆黒の闇。

月明かりも無く、どうやら曇りのようだった。


「そこの少年」


全身がピンと筋張った。漏らしかけた。
そして、昨日の番組が内容をありありと思い出される。

『あたし、きれい?』正直に答えても答えなくても末路は最悪。
鼈甲飴が有効手段だったような気がするが、学校にお菓子を持っていく理由はない。

「ほっほっほ。別に取って食いはしないよ」

嘘くさい。お化けはそうやって僕を騙すんだ。

理由も分からぬ所から生み出された猜疑心が、声の主の像を段々と恐ろしい姿へ変えてゆく。

「ちょっと気になったものでね。あんたにゃ死相が出てる」

901 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:14:08 ID:???
当時の僕の語彙力で、『死相』が分かるはずもなかった。

「?」

僕が疑問のトーンの声を出すと、どうやら伝わったらしかった。

「分かんないのかい。じゃあ分からないうちに言っておくよ。まぁ、これも前世からの因縁ってヤツさね」

そして、一瞬溜めてまた話す。

「24歳の冬、あんたは死ぬ」


その言葉だけ咀嚼した僕は、飛ぶように家に帰った。


そしてその事を深刻そうに話してみたのだが、当然ながら(当時の僕から見れば『残念ながら』)親と姉からは一笑に付された。

902 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:15:53 ID:???
飛んで24歳。

僕はその事を半分信じていた。だから、死ぬ前にやることはやっておかなければと思い、必死に勉学に励んだ。
母親が病に倒れたのが、僕が22歳の頃。
丁度働き出していた頃だったので、入院費などは主に僕が捻出していた。

出来ることはやった。後は迎えるのみ。

しかし、いざとなるとやはり怖い。

やられる前に、やってしまうのもありか。
そんな最悪の考えが、僕の頭を渦巻き始めていた。

冬。僕は河川敷にいた。
少年達が、走り込んだりサッカーをやったり。子供は風の子だ。

こんな日常の風景に、僕の死が滑り込むなんてあり得るのだろうか。

「危ない!」

誰かの声が響いた。
その声に河川敷の子供達も凍り付いて、周りを確認する。

軽トラックだった。運転手は……これまた都合の良いことに、居眠りをしている。
それが僕の方向へふらふらと、それでいて正確に突進してくる。

903 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:17:40 ID:???
「うわあ」

叫び声も途中から、声にならなくなった。
それ程に、夢中で逃げた。

下に降りればどうにかなる、そう思っていたのが間違いだった。
軽トラックは姿勢を崩し、正に横車を押すかの如く落ちてきた。

殺されるくらいなら、死んでやる。
必死に逃げる中で、そんな事がふと浮かんだ。魔が差すというのはこの事か。

そして、僕は冬で冷たく流れる深い川に、頭から飛び込んだ。

流されて凍死。
もしくは、石に頭をぶつけて脳挫傷。

どっちでもいいや。

904 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:18:31 ID:???
僕は、何故か生きていた。
24歳の冬の出来事は、僕を殺しはしなかった。

何故?分からない。運命を僕が知ることは出来ないのだ。


「人の話は最後まで聞きな」


5歳の僕の運命を決定づけた声の主が、そこに座っていた。

どうやら、占い師をやっていたようだ。
こんな狭い路地に開いて、客は来るのだろうか。
そして、また僕は運命を決められるらしい(この『られる』は可能ではなく受身の意であることを付記しておく)。


「あんたは確かに前世の因縁で死ぬ事になってた。でも、さらにその前世は、あんたを幸せにしてくれる。それが死の運命と丁度打ち消しあったのさ」


ああ、とそこで僕は納得する。

死の運命は元から避けられていたのだ。
むしろ、これで僕は一般的な人間に戻れたワケだ。

905 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:19:59 ID:???
「そんな事、一言も言ってないさね」


横から現れた4トントラックが、老婆の店の前を薙ぐように走り去った。


「そこの運命はそれで帳消し。でもね、さらにその前世の因縁ってやつがあるのさ」


キリがないや。
僕は、やっぱり終わった。

906 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/23(土) 20:21:09 ID:???
原題は「禍福はあざなえる蝿の如し」でした。
誤字じゃないよ?

907 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/08/23(土) 23:52:58 ID:???
おもろい!

908 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/08/24(日) 11:02:17 ID:???
ふむ

909 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/08/24(日) 11:15:12 ID:???
ヽ(`Д´)ノべ、別に悔しくなんかないんだからね!

910 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/24(日) 12:12:59 ID:???
即興で書くと粗が多いNE!

911 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/26(火) 23:41:52 ID:???
諸事情により、今週いっぱいは何も更新できそうにありません…

912 : ◆K.tai/y5Gg :2008/08/28(木) 00:02:28 ID:???
なんかめじゅらしい文体に見えた
こっちのが合ってるように感じたなぁ。お疲れ様

913 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 21:49:06 ID:???
それでは約束通りSS張ります。

914 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 21:51:21 ID:???
珍妙な一文が私の頭を締め付けた。

『僕は僕の部屋で、僕の死体を発見した』

これを読んで、続きの話を書けという、無茶苦茶な課題が出た。
流石に、これを一晩でこなせと言う悪来は(少なくとも私の周りには)居ない。週末を跨いでの課題だ。

諸手を挙げてグリコ(降参)せよと言えば、きっとクラスの8割はそうしただろう。
本気でそうするかは別として。

そもそも、その死体認識がどうなのか。そこを考えなければならない。

自殺したのかもしれない。そうではないかもしれない。

そして、最後にはオチを付けなければならない。


小説家の苦労が、一縷ではあるが分かる気がする。

915 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 21:52:51 ID:???
下らないことを考えていると、電柱が私に突撃してきた。

ピンクチラシが眼前数センチの所にまで近づいたところで、ようやく私は棒立ちの猪に気付いた。

危なく、漫画の1シーンが完成する所だった。
そうはさせるか。

そんな事を繰り返しながら、ようやく家に着いた。
ドアノブを捻る。
どうやら開いているらしい。不用心な。

そうやって、普段通りの行動をとる私の目に飛び込んできたのは、
甲斐甲斐しく夕食の準備をする母親でもなく、
デスクワークをする父でもなかった。



畳の上に虚しく転がった、私の死体だった。

916 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 21:54:24 ID:???
動悸を抑えるのが手一杯だった。

落ち着け、考えろ私。
これは私だ。

しかし、これを私以外の人物が見ればどうなる?

あまりにも珍妙な事態だ。
自分が居て、そこに自分が転がっている。


当然、私にはうり二つの姉妹など居ない。
身代わりはないと言える。

では、これは誰だ?

とりあえず警察を呼ぼうか。いやしかし、どう説明すればいいのだろう。


『自分が死んでます』なんて言ったら、速攻で電話を切られるに決まっている。

『人が死んでいます』。これが無難だろう。
しかし、来た警察に何を説明する?

917 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 21:55:37 ID:???
そうなると、結局の所面倒になるのは間違いない。

……それを考えれば、死体を移動して遺棄するのも手かもしれない。

そうなると、場所を探さなければならない。

河川敷?
樹海の奥?
海底?

車はない。
残念ながら、車無しで行ける場所にそのようなおあつらえ向きの場所は存在しない。


結局、私はそうやって私の前でうずくまって必死に考えていた。


だから、大切なことを忘れていた。


この事態を根本から見いだすのに、相応しい接続詞があるということを。


「……そうだ!」



部屋は、もぬけの殻になった。

918 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 21:56:55 ID:???
「現実、眼目」おわり

919 :ニコフ川д゚) ◆nikov2e/PM :2008/08/31(日) 22:04:59 ID:???
   \    .|       ,,...-‐‐‐--、,      l    /    /      /  
   |、  /  |   ,.べ;;;;;::、--- 、:::;;`ヽ、   ''‐-‐'゙/   /      /   
 、,_,.! ゙'-'゙(.    //::/´       ``ヾ、      l         /     
  )    (.  /:,`!ヾ、.      ,      ゙>-    ヽ、_,,./  /      /
 '゙"`ヽ, /``/::;:゙;゙::!:.:| ``'''‐--‐''゙   '-‐'゙ ゙、       /         /
   ヽ ヾ /:;'/:.:!:::l  、,r''"゙`'ヾ    ,:',-‐-、,'l      /       /
 -=,'゙   ./:::/:.:.|::::l  /  (・),.    ヾ,_(・) ,'゙l      (           嘘だ・・・!!
   `ヽ ,゙:::,'::::;':!::::l   `"´ ''"´     | ̄__,,l,,...,,_   \
   -='゙ l::::l::::;':. l:::::l               ` ゙、.,,_,,.``ヽ、
   __) l!゙,l:::;'-、 ';::::!          ,.-‐‐:、    l `ヽ、  \
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920 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/08/31(日) 22:24:27 ID:???
「そうだ!」は接続詞じゃありません。

921 : ◆K.tai/y5Gg :2008/09/01(月) 00:26:30 ID:???
変化球か

922 : ◆K.tai/y5Gg :2008/09/01(月) 00:27:18 ID:???
この難題は例によって答え無しですか
ショートショートいいなぁ

923 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/09/01(月) 01:07:05 ID:???
む……?

924 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/01(月) 07:36:54 ID:???
>>922
そうですね、AddEから続くおいらのスタンスがそのまんまですね。
とは言え、カギを落として限定しているので幾分想像はしやすいかと。

さて、おいらのスタンスと言えば本文だけでなく……?

925 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/01(月) 10:10:35 ID:???
今晩辺りに見切り発車とかなんとか

926 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/01(月) 23:44:22 ID:???
あ、明日以降に見切り発車とかなんとか

927 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:13:04 ID:???
第三章「形影相伴う」宣伝
・話は大きく分けて7話+エピローグの8話構成(予定)。
・みんなの邪鬼眼がレベルアップします。新登場の邪鬼眼or組み合わせ技は10個以上!
・カンとレンが夢凪に来る前の話があるかも?
・そしてとうとうみんな(とくにシビアさん辺り)が期待のアイツが登場!?

というワケで、これから更新しまーす。

928 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:18:10 ID:???
1 祭り破り

そんなわけで、夏祭りだった。

「暑いな」
「夏っぽくするために、今日明日は全区の季節を夏で統一させるらしいわ」
ヴィオローネが呟く。

期待を裏切るようですまないが、もちろんここに居るのはカンとヴィオだけではない。

「カン、地元に夏祭りとかあるの?」
今度はスピネット。
「幼稚園のなんたらかんたらで、踊りに出たことも無くはない」
カンが無駄に胸を張る。凡庸すぎる。
「え、そうだったの? 私知らなかった」
そして最後にユーフォニアム。

何を隠そう、この三つ巴の戦い(デストラクション)が、遂に決着を迎える運びになったのだ。
浴衣姿なのだから、まだ目の保養になるとして。
普段着ならば恐らくすぐにでも戦争が起きているだろう。

「暑い暑い。こんな所に居たら地球の温度も上昇するわ」
そう聞こえるように呟いたのは、三女傑がカンを取り囲むように作った三角形の外側に居るバセットホルンだった。

その瞬間、爆発音が迸り、五人の歩いていた道は凍りつき、バセットは正四面体のバリアの中に閉じ込められた。
一応解説しておくと、ユキが『反逆鳥』をぶっ放し、ヴィオローネは『永遠力暴風雪』を照射し、スピネットが『花霞』を作って閉じ込めたのだ。無駄な連係プレイである。

929 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:24:16 ID:???
「昇天セヨ」
その無機質なセリフを三人の内の誰が呟いたかは定かではないが、何故かそれが誰かを探ろうという気持ちには、カンはならなかった。
「おかしいな、三人とも表情が人間じゃないヨ?」
カンはそのセリフが喉まで出かかったところで、言いしれぬ威圧感(磁場か何かの類かもしれない)に気圧され、その言葉を強制的に飲み込む羽目になった。
「さ、あんなのほっといて行きましょ」
この均衡を崩してはなるまい、とカンはひたすら三人の和を乱さぬように努力することに決めた。

三女傑の戦いは、まだ始まったばかりだった。

すると唐突に、カンの電話が鳴った。
バセットホルンからだった。
「もう復帰したのか。さすがは不死人」

『五月蝿い。とにかく、今日はどうしても話したいことがあるんだ。仕方がないから変装してそっち行くからな』

バセットが一方的にそう言うと、電話は切れた。
「変装ったって、何を……」
そもそも、何処に居るのかを教えられていない。どうすればいいのだ。
「カン、電話誰から?」
スピネットから刺すような視線が伸びている。
人はそれを殺気と呼ぶ。

「ん、バセットから。今日はもう半死半生だから行かないって」
来ると知ったら、ただでさえ緊張の糸が張り詰めた場所に警戒のムードが出ることになる。
そんな事はごめんだ、とカンは機転を利かせたのだ。

「そう。ちょっとやり過ぎたかもね」
ねー、と残り二人。誤魔化すのは成功したが、三人全く反省の色がないのが逆に恐ろしかった。

930 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:32:29 ID:???
夜半の祭りはさらに勢いが増して、客も増えていた。
大半が夢凪学園の生徒なのだが、どうにも顔見知りが多い。中には、カンの顔をみるだけでサッと回避行動を取る輩さえ居た。

「すっかり有名人じゃない、あたしら」

感無量、とばかりにヴィオは胸を張る。

「そうですね、ある意味英雄ですし……」

控えめなスピネット。

「まぁ、悪くはないよねー」

飄々としたユーフォニアム。
一時はどうなる事かと思ったが、意外と釣り合っているじゃないか。カンはそう思った。

「なぁ、あれってイメルストレフじゃないか?」
店番もしないで今日は祭りに参加のようだ。彼女の黒色の服は見事に夜に溶け込んでいた。

「こんばんは。誰か待ってるんですか?」
カンのその声で、イメルストレフはようやくこっちに気付いたようだった。

「あ、遅いぞお前ら。今日はお前ら待ちなんだ」
すると、側から何かがひょこっと顔を出した。

931 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:33:48 ID:???
カン達より少し幼い、可愛らしい浴衣の女子だった。浴衣はピンク地に花柄で、その顔にはどことなく恥じらいが見える。カンはその姿に少し見惚れていた。

「この子も?」

スピネットの声でカンはようやく正気に戻る。ばれたら打首獄門だっただろう。
するとその子は、蚊が鳴くような声で「カルシア」と言った。どうやら名前らしい。

「ああ。この通りちょっと無口だが、あんまり気にしないでくれ」

そのカルシアは、さっきからカンだけを見つめている気がした。
『ファンか何かの類かな』
調子に乗り過ぎか、とカンは自重した。

932 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:34:59 ID:???
1 祭り破り 1/2 終わり

933 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/02(火) 20:37:43 ID:???
修正>>929最終行
「三人全く」→「三人とも全く」

934 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/09/03(水) 00:03:32 ID:???
ハーレム過ぎるw
しかしこれはスピネット活躍のチャンスです

935 : ◆K.tai/y5Gg :2008/09/03(水) 00:26:40 ID:???
この無駄にモテるのもエムゼロ仕様

936 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:04:16 ID:???
書こうと思って忘れてたりしてたんですが
『邪鬼眼否定』を使うときのカンの刀は真剣になります。斬れます。

理由とかは聞かないで下さい。

937 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:08:41 ID:???
「あ、そろそろ花火が始まるっぽいよ」時計を見てスピネットが言った。
「む、それは急がねばな。行くぞ二人とも!」

「え?」

イメルストレフはカンとカルシアを軽々と両脇に抱えると、人間離れした跳躍力(スーパーマン並)で一気に花火会場までひとっ飛びしてしまった。

「「「あー!」」」

三女傑の残念そうな叫び声を背中に、三人は夜の空に漂った。
見た目は幻想的なのだが、何だか暑苦しい。

「あと何秒、このままで居ればいい?」カルシアは何も言わずに景色を眺めている。
「もう着く」

ドカン、という音がして木が砕けた。着地スペースがないので強制的に作ったと言う事か。
ここの住民は全く以てエコロジーではない。

「よーし。誤差2センチ、問題なし」

ここは開けた花火会場……のはずだった。しかし、どこをどう見てもここは鬱蒼とした森の中だ。

「問題ない。飛んでもいいし歩いてもいい、花火には間に合う」

 そうか、とカンは溜息をつく。

938 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:11:37 ID:???
「で? 用事は何だよ、バセット」

カンのその視線は、物言わぬ少女の顔に注がれていた。

「……よく分かったな?」
声がバセットのそれでない。
なんというか、ある時はネギ持ってそうな、そんな声だった。

「だってなぁ。お前みたいな美少女がふらりと俺の前に現れるなんて、天地がひっくり返ってもありえないし。不審がるのが道理だ」

流石はバセットホルンの真骨頂と言ったところか。存在が詐欺である。

「しかし、これがお前の好みとはな。ロリコンの気でもあるのか」

どの点から罵倒してやろうかとニヤニヤしていたカンの表情も、流石に引きつった。

「俺の……何だって?」

聞き捨てならぬ言葉が耳を通り抜けたため、カンは聞き直した。

「だから。『お前の』好み。この姿はお前が惹かれる最高のプロポーション」
「そう言って身体をくねらせるな、気持ち悪い!」

カンは色々と複雑な思いに駆られたが、一通りの文句だけ述べて押し黙った。

939 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:15:59 ID:???
「さて、本題に入ろう。左を見ろ」

カンの視界にはには何の変哲もない山しか見えない。鬱蒼としていて、野犬や熊が徘徊していそうだ。
そして特筆すべきなのは、その山頂部分がその部分だけ伐採されたかのようにはげている。暗闇でここまでハッキリと分かるのということは――

「まさか――」
「察しが付いただろう。ここは、お前の兄貴が山頂を吹っ飛ばしたその山だ」

かつての戦いの跡地。世界の支配を目論むサンジェルマンが夢凪を根城にして支持者を集め、反旗を翻した戦争だった。オフィクレイドの時までその体質は変わりないらしい。

「サンジェルマン伯爵とは時空を超えて存在する不死の象徴だ。もちろん彼は偽名だが、本名は終ぞ明かされないままに倒されてしまった」

そのサンジェルマンの軍が残り数十人となったとき、軍は山に籠もるという作戦をとった。地の利を知り尽くした同盟軍はなかなか攻め込めない。

「だから、そういうまどろっこしい手段が大嫌いだったレンは、その超絶的な剣技でその山を切り開いた。予想外の事態に軍は総崩れとなり、レンはそのままサンジェルマンを討ち取った」

その瞬間、山頂で何かの光が発生した。
黒と紫のマイナスなオーラが織りなす波動を見れば、何か良くないことが起こっているという事を察すのは容易だった。

940 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:23:00 ID:???
「その光はすぐに消えた。後を追った同盟軍が見たものは、サンジェルマンの亡骸のみ。レンは消えていた」

「分かった。――が、そんな昔語りをして俺に何をしようってんだ?」

カンはイライラして聞き返した。あの三人だけを残しておくのは危険すぎる。カンはそれだけを考えていた。

「お前からは、兄貴の背中を追うという気概が見られん。そこに成長はない」
「……余計なお世話だ」

 カンは気付いたら叫んでいた。

「そこで、最悪な情報だ。最近、多くの邪鬼眼使いが失踪をしている。動機がないし、何しろ邪鬼眼使いだけという時点で何かあるだろう?」
「それが兄貴とどう繋がるってんだ」
「――サンジェルマンが現れる前も、全く同じ事が起きていたんだ」

カンは絶句した。

「偶然だろ?」
「偶然で済ませるなら、俺はお前にこんな話をしない」
「お前だって、時々女を誘拐してたフシがあったじゃないか」

バセットホルンが仲間になる前は、確かそんなことが騒がれていたような気がした。

「逆だよ。俺が、それに乗ったんだ。それに俺の時は、街全体の一斉捜索なんぞせずにだんまりを決め込んでいただろう? それはそういう理由だ」

黙っているカンに、バセットは追い打ちを掛ける。

「だから。お前はそういう時のために強くなっておかなければならない」

941 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:27:17 ID:???
とりあえず、カンは降参した。

「だったら、手始めに何から?」
「兄を超えろ。あの山を吹き飛ばせ」

さらりと恐ろしいことを言う男だ。

「でもな、」

カンは反論しようと口を開いた。
カンとレンは違う、そう言いたいのだ。
そんな必殺技を身につけたところで、カンがレンになれるわけではない。

「違うな、間違っているぞ。その行為自体に個性は要らない」
「……」

カンの言い訳は頭から否定された。

942 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:28:33 ID:???
諦めたカンは、持っている邪鬼眼に目を通す。
『未熟』『探索』『風神』『邪鬼眼否定』『神速』『剣戟の心得』『残骸爆破』『所有者の証』『遅延魔術』。
『永遠力暴風雪』はヴィオに預けてある。この場では恐らく必要ないだろう。

「手持ちのカードが少なすぎるだろ。こんなんで出来るのか?」

さぁな、とバセット。

「レンは、手持ちのカードが少なくても技術と体力でそれをカバーしていた。それを考えれば、お前はだいぶハンドに恵まれていると思うが」

無理難題という四字が、マグロのようにカンの頭の中をひたすら泳ぎ回っている。

「まぁ、これは俺だけでなく、ポルタティフの願いでもある。適当でいいから、頑張って欲しい」

『ポルタティフ』と言うときだけ、バセットは心から嫌そうな表情をしていた。

943 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/06(土) 22:32:43 ID:???
1 祭り破り 終わり

944 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/09/06(土) 23:47:38 ID:???
カンが限界突破のヨカン
ところでバセット女装癖があるんじゃないかと思ってます

945 : ◆K.tai/y5Gg :2008/09/07(日) 01:06:09 ID:???
変身したまんまお風呂入るくらいはしたことありそうですね

946 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/07(日) 07:47:22 ID:???
>>944
あります。彼は変態です。

>>945
ありますあります。彼ならきっと。

947 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/08(月) 22:26:57 ID:???
邪鬼眼通信は次回以降に張ります。
付け加える情報がないのです。ごめんなさい。

948 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/08(月) 22:30:00 ID:???
2 穴あき、水風船

「とりあえず今日は話だけだ。そろそろ戻らないとあいつらが不審がるぜ」

バセットはそう切り上げ、一行は花火の会場に戻った。

「あ、カン!と、カルシアちゃん!」

三人が目ざとくこちらに気付いたらしい。

「いやあ、イメルが変なところに着地するからここに着くのに時間がかかっちまった」
「お空が綺麗だった」

苦しい言い訳だが、カルシアの無邪気なコメントが付け加えられ、異論を唱える者は居なくなった。

『あれ……? そもそも、隠す理由とかあったっけ?』

まぁいいや、そのうち話すだろうとカンは気楽に流す事にした。

「綺麗だね」

花火が始まって、その光景に全員がうっとりとする。一瞬のその光に、何が詰まっているのか。
それほどに雄大な花火は、腹の底に響く轟音と、その後に見える光の落下だけを残して去ってゆく。雄弁は銀、沈黙は金とはよく言ったものだ。

949 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/08(月) 22:33:11 ID:???
「カンも、そう思うよね?」
「ああ」

誰が言ったか分からないが、カンはその声に同意した。
花火の光で、みんなの頬が一瞬だけ染まったように見えた。

『本当にそうならな』

とカンは少しだけ残念がる。

「カン」
イメルストレフがカンを小突いた。
そう言えば、イメルストレフはカンと仲良くなった様子が全く見られないのにも関わらず、しっかりとした信頼関係が築けている。

「あれ見ろ。止めさせるぞ」

イタズラで炎を放っている人が居た。こんな場所じゃ周りの木に引火するぞ。
なんだか過敏であるが、転ばぬ先に杖を衝くのは悪いことではない。

「じゃあ、私が何とかするわ。この場所なら周りに被害も――」

ヴィオローネが、『エターナルフォースブリザード』を構えた。
放たれた青白色の光が、夜を一瞬だけ明るくする……。

「え?」

その光は前に進まず、一瞬だけ弾けて消えた。

「ヴィオっ!」

光より後に、スピネットの悲鳴にも近い声が聞こえた。その光景を見れば誰もが驚愕する、とカンは思った。
――結局、ヴィオが氷漬けになるという事態を以て、皮肉にも花火大会は終了となってしまった。

950 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/08(月) 22:35:06 ID:???
「邪鬼眼の使いすぎで、今の邪鬼眼じゃ耐えられなくなってやがる。こんなのをずっと使ってたら、俺たちも危ないぞ」

イメルストレフが、端的に結論を述べた。
ヴィオローネを病院に運んで、カン達はヴィオの寝ている病室に集まっていた。

「しかし、『永遠力暴風雪』は俺にとっても欠かせない邪鬼眼だ。このまま使えなくなるのは痛すぎる」

これまでの戦いの中で、カンはこれをかなり使っている。そのせいでもあるのだろうが、これを今更になって無くすのは厳しい。先ほど、バセットの山砕きの話を聞いた後なのだから尚更だった。

「方法が無いこともない。しかし、ちょっと時間が掛かる」

イメルストレフはそう言って、『邪鬼眼の昇華』について話した。
邪鬼眼は生きている。故に何時か寿命がやってくることは明白である。寿命がやってきた邪鬼眼は、効果を正常に発揮できなかったり、時には暴発して所有者に危険を及ぼす場合がある。
それを防ぐにはどうすればいいか。

「ちょっと時間はかかるが、修理すればいい。ただし全く同じものを作るのは不可能だから、能力は上がったり下がったりするけどな」

951 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/08(月) 22:37:31 ID:???
一種の博打のようなものだが、暴発されるよりはマシだ、ということだ。

「よければすぐにでも作業にとりかかりたい。渡して貰えれば」
「あ、じゃあ俺行くよ」

行こうとしたその手をスピネットが引き留める。

「駄目よ」

何の説明もなく、ただそう言った。
理由を聞きたいのに、当のスピネットはそうできるような表情をしていない。
強ばった、そして少しだけ悲しみが募った顔をしていた。

「ヴィオの事、少しは考えてあげて」

諦めるようにスピネットはそう言って、さらに「私はもう帰る」と残して病室を去っていってしまった。

「下心が見え見えよ」

ユーフォニアムが呟いた一言が、カンにとって唯一の気がかりだった。

952 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/08(月) 22:42:04 ID:???
2 穴あき、水風船 おわり

953 :シビア ◆U8nOHRFI0. :2008/09/08(月) 22:48:35 ID:???
ヴィオの氷漬けフイタw

954 : ◆K.tai/y5Gg :2008/09/09(火) 01:02:59 ID:???
新展開か。スピネットが漫画の影響でまともに観られなくなりました
邪気眼の新解釈もしくは新設定来るかな


955 :クロス ◆Xxxxxxx7yY :2008/09/09(火) 22:55:24 ID:???
次回更新分には書かれていないのですが、>>951の後にカンはさっさと帰ります。

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